JPH08225911A - 耐久性に優れる溶射被覆電極およびその製造方法 - Google Patents

耐久性に優れる溶射被覆電極およびその製造方法

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JPH08225911A
JPH08225911A JP7026964A JP2696495A JPH08225911A JP H08225911 A JPH08225911 A JP H08225911A JP 7026964 A JP7026964 A JP 7026964A JP 2696495 A JP2696495 A JP 2696495A JP H08225911 A JPH08225911 A JP H08225911A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 Ti基材の表面を、ブラスト処理した後、Arガ
ス:50〜300hpa雰囲気下にプラズマ炎によるスパッタリ
ング処理を施してその表面を活性化し、ついで同じ雰囲
気中で粒径:5〜50μm のマグネタイト粉末を用いるプ
ラズマ溶射法により、厚み:100 〜800 μm のマグネタ
イト皮膜を被成する。 【効果】 基材と溶射被覆層との密着性が良く、また電
気抵抗を小さく大電流の通電にも耐え得る溶射被覆電極
を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電気めっきや可溶性
塩類を含んだ電解質の電気分解操作、さらには塩酸、硫
酸、苛性アルカリおよび中性塩などを含む水溶液の電気
分解等の用途に供して好適な耐久性に優れる溶射被覆電
極およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】陰極における金属の析出現象を利用する
電気めっき法では、多くの場合、析出金属と同質の陽極
を用いて、電解液(めっき液)から陰極へ析出した金属
量を補給する方法を採用している。しかしながら、クロ
ム酸(CrO3)を主成分とする電解液を使用する工業用ク
ロムめっき法では、金属クロムを陽極に用いると不働態
化現象を呈して溶解しないだけでなく、浴電圧を過度に
上昇させて電気消費量の増大を招くことから、主に鉛お
よびその合金(例えばPb−Ag, Pb−Sb等)、鋼鉄または
酸化鉄を主成分とするフェライト(マグネタイトとも呼
ばれている)等が不溶性電極として使用され、金属成分
のクロムは専らめっき浴中へ水溶性塩として補給されて
いる。
【0003】しかしながら、鉛およびその合金製の電極
は、浴成分と反応して酸化鉛やクロム酸鉛膜を生成する
と共に、これが電解時間の増加と共に粗大化し、めっき
浴中に脱落するため、浴全体が次第に汚染されめっき浴
としての性能が次第に低下するという欠点がある。
【0004】また、鋼鉄製の電極では、、微量ながら鉄
が溶出するため、めっき浴中の鉄イオンの増加を招き、
浴の電気伝導度の低下、めっき時の浴電圧の上昇、電気
めっき効率の低下および陰極におけるめっきの“ツキマ
ワリ性”の低下などが顕在化することが知られている。
【0005】なお、フェライト製の電極は、以上のよう
な従来電極の欠点を補うために開発されたものである
が、焼結プロセスによって製造されているため極めて脆
弱であり、しばしば取扱い時に破損したり、また高温
(50〜60℃)のめっき浴中で使用すると陽極の基板金属
(芯金)の変形によって“き裂”や局部剥離などが生じ
る欠点がある。さらに、焼結体特有の問題として、単純
な形状のものしか製造できないため、クロムめっき浴の
ように“ツキマワリ性”の悪い浴では、複雑な形状の陰
極(被めっき部材)に対しては適用できない等の問題が
ある。なお、一部では、Ti材料にPtを被覆した電極が使
用されているが、高価であるうえ、この電極でも大電流
を通した場合にはしばしばPt膜が剥離するという欠点が
あった。
【0006】その他、水や食塩電解工業でも多種類の不
溶性電極が使用されている。例えば、(1) 水の電解によ
る水素ガスの製造にはNi電極、(2) 塩酸、食塩水の電解
による Cl2の製造には黒鉛電極、(3) 苛性アルカリの溶
融塩電解による金属Naの製造にはNiや鋼鉄製電極、(4)
ハロゲン化合物の溶融塩電解によるハロゲンガスの製造
には炭素または黒鉛電極等が使用されている。かような
電解工業における不溶性陽極の選択基準は、電解操作の
電力消費量、熱収支と共に、酸素過電圧、陽極表面にお
ける反応生成物の有無とその影響度などであり、これら
の点について、従来から精力的に研究開発が進められて
いるが、未だ十分とはいえない。
【0007】上述したような電気めっきや電解工業にお
ける不溶性陽極の現状を改善するため、次のような技術
が提案されている。 (1) 特開昭53−103980号公報による、Ti, Zr, Ta, Nbな
どの耐食性金属基体上にFe2O/FeO が重量比で 2.4〜2.
6 組成のマグネタイト粉末を還元性雰囲気中でプラズマ
溶射した後、この皮膜を鉄塩水溶液中に浸漬して引き上
げ、さらに水蒸気を主成分とするガス中にて 550〜700
℃で熱処理を施すことからなる電極の製造方法。 (2) 特開昭57-82485号公報による、セラミックス基材上
に導電性樹脂を塗布した後硬化させ、その上にAlなどの
金属を溶射する電極形成方法。 (3) 特開昭63−230895号公報による、板状の多孔質導電
性基体上に鉄シアナイド化合物層を形成し、その上にさ
らに金属を蒸着した電極材料。 (4) 特開昭61−168512号公報による、ポリアクリロニト
リル、フェノール樹脂、セルローズ樹脂またはピッチを
焼成した電極材料。 (5) 特開平2-57159号公報による、金属基材上にその金
属および酸化物と、酸、アルカリ、水のいずれかに溶解
する成分との混合溶射層を形成し、この溶射層から易溶
性成分を溶出させた多孔質層を中間層または触媒担持層
として有し、その上に電極触媒能を有する物質を被覆し
た不溶性電極。 (6) 特開昭59-23890号公報による、金属基材上にその金
属、その金属の炭化物、ケイ化物、硼化物、酸化物、W
C、WSi、WB、MoC、MoSi、MoB等を溶射し、その上
に中間層または触媒担持層を形成した不溶性電極。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た特開昭53−103980号公報に開示のマグネタイト粉末の
溶射、特開昭57-82485号公報に開示の金属溶射、特開昭
59-23890号公報に開示の金属、酸化物もしくは各種の非
酸化物系セラミックスの溶射は全て大気中で行われてい
るため、基材と溶射被覆層の密着性が悪く、電極として
使用中にしばしば剥離する上、多孔質であることから電
気抵抗が大きいというところに問題を残していた。この
発明は、上記の問題を有利に解決するもので、基材と溶
射被覆層との密着性が良く、また電気抵抗を小さくして
大電流の通電にも耐え得るようにした溶射被覆電極を、
その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に述べ
る知見を得た。 (1) マグネタイト溶射被覆層の形成に先立ち、基体表面
を、減圧状態のAr雰囲気中でプラズマ炎によりスパッタ
リング処理し、その表面を活性化しておけば、緻密で基
材との密着性が良く、しかも電気抵抗の小さい皮膜を形
成できる。 (2) 最初のプラズマ溶射は減圧状態のAr雰囲気中で行う
必要があるが、その後は大気中で行っても密着性の良好
な被覆層を得ることができる。 (3) 溶射被覆の形成に用いる溶射用マグネタイト粉末の
粒度を変化させることによって、溶射被覆層の有効面積
を大きくしてやれば、大電流の通電にも耐え得る。 (4) 溶射被覆層の有効面を鉄めっきし、その後に酸化処
理を施すと、溶射被覆層を構成するマグネタイト粒子の
相互結合力が向上し、電極の寿命延長を図ることができ
る。 この発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0010】すなわち、この発明の要旨構成は次のとお
りである。 1.Ti基材の表面に、厚み:100 〜800 μm のプラズマ
溶射によるマグネタイト皮膜をそなえることを特徴とす
る耐久性に優れる溶射被覆電極(第1発明)。
【0011】2.Ti基材の表面に、厚み:80〜800 μm
のプラズマ溶射によるマグネタイトの2重皮膜をそなえ
ることを特徴とする耐久性に優れる溶射被覆電極(第2
発明)。
【0012】3.Ti基材の表面に、厚み:80〜800 μm
のプラズマ溶射によるマグネタイトの2重皮膜をそな
え、その上にさらに厚み:1〜5μm の鉄の酸化皮膜を
そなえることを特徴とする耐久性に優れる溶射被覆電極
(第3発明)。
【0013】4.Ti基材の表面を、ブラスト処理した
後、Arガス:50〜300hpa雰囲気下にプラズマ炎によるス
パッタリング処理を施してその表面を活性化し、ついで
同じ雰囲気中で粒径:5〜50μm のマグネタイト粉末を
用いるプラズマ溶射法により、厚み:100 〜800 μm の
マグネタイト皮膜を被成したことを特徴とする耐久性に
優れる溶射被覆電極の製造方法(第4発明)。
【0014】5.Ti基材の表面を、ブラスト処理した
後、Arガス:50〜300hpa雰囲気下にプラズマ炎によるス
パッタリング処理を施してその表面を活性化し、ついで
同じ雰囲気中で粒径:5〜50μm のマグネタイト粉末を
用いるプラズマ溶射法により、厚み:30〜300 μm のマ
グネタイト皮膜を被成したのち、さらにその上に、大気
雰囲気中で粒径:10〜100 μm のマグネタイト粉末を用
いるプラズマ溶射法により、厚み:50〜500 μm 厚のマ
グネタイト第2皮膜を被成したことを特徴とする耐久性
に優れる溶射被覆電極の製造方法(第5発明)。
【0015】6.Ti基材の表面を、ブラスト処理した
後、Arガス:50〜300hpa雰囲気下にプラズマ炎によるス
パッタリング処理を施してその表面を活性化し、ついで
同じ雰囲気中で粒径:5〜50μm のマグネタイト粉末を
用いるプラズマ溶射法により、厚み:30〜300 μm のマ
グネタイト皮膜を被成したのち、さらにその上に、大気
雰囲気中で粒径:10〜100 μm のマグネタイト粉末を用
いるプラズマ溶射法により、厚み:50〜500 μm 厚のマ
グネタイト第2皮膜を被成し、ついでその上に鉄めっき
法によって厚み:1〜5μm の鉄めっき層を形成した
後、 500〜700 ℃の水蒸気中にて1〜5時間の加熱によ
る鉄めっき層の酸化処理を施すことを特徴とする耐久性
に優れる溶射被覆電極の製造方法(第6発明)。
【0016】以下、この発明を具体的に説明する。ま
ず、この発明に従う、良好な密着性と大電流の通電可能
なマグネタイト溶射被覆電極の製作要領の概略について
説明すると、次のとおりである。 (1) 電極の基材と直接接触するマグネタイト粉末の溶射
層の施工は、実質的に酸素を含まないAr雰囲気中で行う
が、この際基材の化学的活性度を上げるためにアルゴン
ガスイオンによるスパッタリングを行い、その直後にマ
グネタイト溶射を施工する。 (2) 引き続きAr雰囲気中で溶射被覆を続けてもよいが、
(1) の工程が終了すれば大気中で溶射を行い所定の膜厚
にまで施工する。 (3) 溶射被覆層の有効表面積を大きくし、大電流の通電
を可能とするため、上記(1) および(2) の溶射に用いる
マグネタイト粒子の粒径に変化を持たせ、被覆層の気孔
率を上げる。 (4) (3) の操作に伴う溶射被覆層の機械的強度の低下
は、これを鉄めっきを行うことによって補い、さらにこ
の鉄を水蒸気を主成分とする 500〜700 ℃の雰囲気中で
1〜5時間加熱することによって Fe3O4へ変化させ、不
溶性電極としての特性を発揮させる。
【0017】
【作用】以下、上記の各製造工程順に従いこの発明を具
体的に説明する。まず、この発明では、基材として、Ti
およびTi合金(例えばTi−6%Al−4%V)を用いるが、そ
の理由は、比較的軽く取扱いが容易であるとともに、耐
食性に優れているためである。
【0018】かかる基材の表面に、密着性に富み、かつ
無気孔のマグネタイト溶射皮膜を被成するわけである
が、かかる溶射皮膜の形成方法は3通りある。形成方法1(第4発明) Ti基材の表面に、緻密で密着性の強い酸化膜を形成する
ためには、溶射加工前にブラスト処理を施す。しかしな
がら、たとえブラスト処理を施したとしても、その上に
形成されるマグネタイト溶射皮膜は密着性に乏しい上、
気孔の多い皮膜となるため、電極用の皮膜としては適当
でない。
【0019】そこでこの発明では、Ti基材を、例えば A
l2O3粒子でブラスト処理したのち、空気を除去し、Arガ
スを50〜300hpa導入した容器中でプラズマ溶射ガンを陰
極、Ti基材を陽極として20〜50V、25〜40A程度の直流
を負荷し、2〜10分間Arガスのプラズマ炎を流しつつス
パッタリングを行う。この結果、Ti基材表面はブラスト
処理による2〜10μm 程度のマクロ的な凹凸に加え、1
μm 以下のミクロ的な凹凸が全面に形成され、しかも空
気が存在しないためその表面は極めて活性に富んだ状態
となる。上記のスパッタリングにおいて、Arガスのガス
圧が50 hpaに満たないとスパッタリング効果に乏しく、
一方 300 hpaを超えるとプラズマ炎の輻射熱が大きくな
って、Ti基材が熱変形しやすくなるので、スパッタリン
グ処理時のArガス圧は50〜300 hpa とする必要がある。
【0020】ついで、この活性Ti基材表面に対し、スパ
ッタリング施工を行ったプラズマ溶射ガンを用いて直接
マグネタイト粉末を溶射し皮膜を形成させる。この皮膜
は、活性なTi基材表面に密着するため極めて強固に結合
する。ここに、この溶射に用いるマグネタイト粉末の粒
径を5〜50μm に調整し、減圧下のプラズマ炎中で完全
に軟化、溶融させておくと、それぞれの粒子は相互に密
に結合するため、皮膜中での気孔の生成は極めて少な
く、緻密な皮膜とすることができる。また、皮膜厚さは
100〜800 μm とする必要がある。というのは、膜厚が
100μm より薄いと電極としての寿命が短く、一方 800
μm より厚い場合には電極の性能には変化はないもの
の、経済的に得策でないからである。
【0021】なお、Ti基材表面に直接施工するマグネタ
イト粉末の粒径が5μm より小さいと、溶射ガンへの連
続した安定供給が困難なだけでなく、プラズマ熱源中で
過熱されてフューム化するため、緻密な皮膜が得難く、
一方50μm より大きい粒子ではプラズマ熱源中で完全に
溶融せず、未溶融粒子として皮膜中に混在するため、気
孔率が高くなるだけでなく基材との密着性が低下し、必
然的に電気抵抗値も大きくなるので、Ti基材表面に直接
施工するマグネタイト粉末の粒径は5〜50μmとする必
要がある。
【0022】Ti基材上に、この発明法および従来法に従
って 500μm 厚の皮膜を形成させた後、その比抵抗を基
材側から電流を通して測定した結果を以下に示す。 (a) ブラスト後、Arガス中でスパッタリングし、その上
に粒径:5〜50μm のマグネタイト粉末で 500μm 厚に
成膜(発明例)。 (b) 同上の操作で粒径:100 〜180 μm のマグネタイト
粉末で 500μm 厚に成膜(比較例)。 (c) 大気中で10〜55μm のマグネタイト粉末で 500μm
厚に成膜(従来例)。 比抵抗 (a) 0.05 〜 0.06 Ωcm (b) 0.08 〜 0.09 Ωcm (c) 0.07 〜 0.08 Ωcm 上記のとおりであり、この発明法で得られる皮膜の比抵
抗が最も小さく電極用皮膜として適していることが判
る。
【0023】形成方法2(第5発明) 上記1の方法に従い、減圧のArガス雰囲気中で30〜300
μm 厚にマグネタイト溶射皮膜を形成してこれをアンダ
ーコートとして用い、その上にさらに大気中でマグネタ
イトを50〜500 μm 厚に被成することによって電極皮膜
をつくる。この大気プラズマ溶射に用いるマグネタイト
粒子の径は10〜100 μm が適当である。というのは、大
気中で形成する溶射皮膜は減圧下で形成した皮膜ほど緻
密ではないが、この発明法では、下地皮膜とて減圧下で
緻密な皮膜を形成しているので、大気中で形成した溶射
皮膜が多孔質であっても電極の寿命や特性を損なうこと
はなく、むしろ多孔質の溶射皮膜を形成することによっ
て電極の有効表面積が拡大され、電解時の分極の低下に
役立つからである。なお、この場合における皮膜厚は、
第1皮膜:30〜300 μm 、第2皮膜:50〜500 μm 、合
計:80〜800 μm が適当である。
【0024】形成方法3(第6発明) 上記2の方法に従い、マグネタイトの2重皮膜を形成す
るが、この皮膜があまりに多孔質では、皮膜を構成する
マグネタイト粒子の相互結合力が弱く、使用中に表面か
ら脱落するおそれがある。そこで、この対策として、多
孔質な溶射皮膜に対してはその表面を鉄めっきで1〜5
μm 厚に処理して溶射粒子の結合力を上げる。その後、
鉄めっき面を水蒸気を主成分とする雰囲気中で 500〜70
0 ℃、1〜5時間の熱処理し、鉄めっき面を Fe3O4に酸
化させて、耐久性を向上させる。ここに、鉄めっきの厚
みが1μm に満たないと、溶射粒子の結合力を向上させ
る効果が少ないうえ、溶射皮膜部によっては未めっき部
分が存在するおそれがあり、一方5μm を超えると、め
っき処理に長時間を要し、生産コストの上昇を招くの
で、鉄めっきは1〜5μm 厚の範囲で被成するものとし
た。
【0025】鉄めっきを行うための浴組成およびめっき
条件は概略次のとおりである。 ・スルファミン酸第一鉄 :400 g/l ・スルファミン酸アンモン:30 g/l ・ホルマリン :100 ml/l ・水素イオン濃度(PH) :2〜2.5 ・温度 :40〜50℃ ・電流密度 :10〜15 A/dm2 また、鉄めっきを行う溶射皮膜はその表面の気孔率が5
%〜25%の範囲が適している。というのは、それより緻
密な皮膜では鉄めっきを行う必要がなく、一方25%以上
ではこの種の鉄めっきを施しても溶射粒子の結合力強化
は少なく、効果に乏しいからである。
【0026】
【実施例】
実施例1 この発明の電極用皮膜のTi基材に対する密着性を従来法
により得た皮膜のそれと比較検討した。実験条件は次の
とおりである。 A.溶射用の基材:Ti板(JIS H 4600(1988)第1種) 幅:30mm、長さ:500 mm、厚み:2 mm B.溶射用マグネタイト粉末の化学成分および粒度 a. 化学成分 (wt%) Fe:99.18 %, Mo:0.14%, C
a:0.03%, Si:0.24%,Al:0.34%, その他:0.07% b. X線解析の全要ピーク Fe3O4 c. 粒度 5〜50μm
【0027】C.溶射皮膜の形成方法 a. この発明の溶射皮膜 (1) Al2O3粉末を用いてTi基材をブラストした後、Arガ
ス 100〜150hpaの減圧雰囲気下でスパッタリングを行
い、そのままの状態でマグネタイト粉末を溶射し 150μ
m 厚の皮膜を得た。 (2) (1)と同じ工程によってマグネタイト皮膜を50μm
厚に形成した後、その上に大気中でプラズマ溶射を行
い、皮膜厚の合計を 250μm とした。 (3) (2)と同じ工程でマグネタイト皮膜を被成したが、
大気プラズマ溶射時に用いたマグネタイト粉末の粒径を
30〜100 μm の混粒とし、皮膜表面を多孔質化した。そ
の後この皮膜上に鉄めっき(3μm 厚) を施し、さらに
600℃の水蒸気中で1時間の熱処理を行った(全溶射
厚:250 μm)。 b. 比較例の溶射皮膜 (1)大気プラズマ溶射法によって、Ti基材上にマグネタ
イト粉末 (粒径:10〜50μm)を 150μm 厚に施工した。 (2) (1)と同じ工程によって粒径:30〜100 μm の混粒
マグネタイト粉末を用い250 μm 厚に施工した。
【0028】D.溶射皮膜の密着性評価方法 成膜後のマグネタイト皮膜の性能は次のような方法によ
って評価した。 溶射皮膜の密着性:JIS H 8600セラミック溶射試験方法
(1990)制定の溶射皮膜の付着力試験方法に準じて行っ
た。
【0029】E.試験結果 試験結果を表1にまとめて示す。
【表1】
【0030】同表から明らかなように、大気中でマグネ
タイトを溶射した皮膜(No.4, 5)の密着性は 180〜280
kgf/cm2 程度であり、この中では粗粒を含む溶射皮膜(N
o.5)の方が密着性が低くなっている。これに対し、この
発明に従い得られた溶射皮膜(No.1. 2. 3)はいずれも、
400〜560 kgf/cm2 の密着力を示し、比較例と較べると
1.2〜2.2 倍の強さを示している。この理由は、(1) Ti
基材をArガスの減圧雰囲気中でスパッタリング処理をし
てその表面を活性化させた後、マグネタイト粉末を溶射
してその密着性を向上させたこと、および(2) 粗大粒子
を含むマグネタイト粒子を溶射した後、その表面に鉄め
っきを施して粒子間結合力を向上さたことによるもので
ある。
【0031】実施例2 この実施例では、実施例1で作製した溶射皮膜試験片を
電気クロムめっき浴の陽極として長時間使用し、その耐
久性について調査した。 A.溶射用の基材 実施例1と同じ B.溶射用のマグネタイト粉末 実施例1と同じ C.溶射皮膜の形成方法 実施例1と同じ D.電気クロムめっき浴の組成と電解条件 浴組成 :CrO3 250 g/l, H2SO4 2.5 g/l 電解条件:53℃±1 ℃, 30 A/dm2(電流密度) E.評価方法 陰極に鋼(SS400), 陽極にマグネタイト溶射皮膜試験片
を用い、ともにめっき浴中に浸漬する面積を同じとした
後、30 A/dm2の直流を連続 300時間通電し、その後陽極
を引き上げ、外観変化を目視観察すると共に、皮膜を切
断し光学顕微鏡によって皮膜断面の一般性状( 主として
気孔の大きさ) とTi基材への密着性を調べた。
【0032】F.試験結果 試験結果を表2に示す。
【表2】
【0033】同表から明らかなように、比較例の溶射皮
膜(No.4, 5)は、300 時間の使用後、皮膜の剥離は認め
られないものの、小さなフクレが発生していた。またこ
れらの皮膜の断面を観察すると、Ti基材との密着性の悪
いところが点在し、皮膜の気孔率も11〜17%程度観察さ
れた。以上のような結果から、比較例の皮膜ではめっき
液が気孔部を通って内部へ浸入してTi基材部に達し、こ
れを酸化して酸化膜を生成し、この酸化膜の成長によっ
て陽極としての作用が劣化したものと考えられる。これ
に対し、この発明の溶射皮膜(No.1, 2, 3)はいずれも、
Ar雰囲気の減圧下で溶射しているため、皮膜は 1.5%以
下の気孔率を示すにすぎず、しかも貫通気孔が認められ
ないことからめっき液はTi基材部まで達することはなか
った。このため、第2層として多孔質な皮膜を形成した
り、鉄めっきを処理した皮膜が形成されても健全な状態
を維持することができた。なお、この発明の溶射皮膜は
いずれも電気クロムめっきに対し、悪い影響を与えるよ
うなことは全く観察されなかった。
【0034】
【実施例3】この発明の電極を用いて、3wt%NaClおよ
び1wt%HCl 水溶液中で電解したときの陽極電極として
の消費量を求めた。 A.溶射用の基材 実施例1と同じ B.溶射用のマグネタイト粉末 実施例1と同じ C.溶射皮膜の形成方法 実施例1と同じ D.電解用水溶液の組成と電解条件 (1) 3wt%NaCl水溶液:25℃ 陽極電流密度:5 A/dm2 (2) 1wt%HCl 水溶液:25℃ 陽極電流密度:5 A/dm2 E.評価方法 上記の条件で連続 100時間電解した後、電極の外観状況
を観察すると共に、試験前後の重量を測定し、年間の電
極消耗量を推定することによって耐久性を比較した。
【0035】F.試験結果 試験結果を表3にまとめて示す。
【表3】
【0036】同表に示したとおり、電極の外観は殆ど異
常は認められなかったが、重量変化から年間の消耗量を
推定すると、この発明電極と比較電極の間には明瞭な差
が見られた。すなわち、3wt%NaCl水溶液中における比
較用の電極の消耗量は年間、1A当たり大気プラズマ溶
射皮膜(No.4)で 0.6〜1.2 g/A 、No.5で 1.0〜1.8 g/A
であったのに対し、この発明の皮膜(No.1, 2, 3)は 0.3
〜0.6 g/A 程度と消耗量は極めて少なかった。この傾向
は1wt%HCl 水溶液の電解においても同様に認められ、
この発明の電極は耐久性においても優れていることが確
認された。
【0037】
【発明の効果】以上、説明したとおり、この発明に従
い、Ti基材をブラスト処理後、Arガスの減圧雰囲気下で
スパッタリング処理を施してその表面を活性化させのち
に、マグネタイト皮膜を形成することによって、緻密で
密着性が高く、しかも電気抵抗の小さい皮膜を形成する
ことができる。その結果、その上に重ねて大気溶射によ
りマグネタイト皮膜を被成してもその皮膜の密着性は良
好であり、電極として優れた性能を発揮することができ
る。さらに、大気中で粗粒を用いて成膜した場合には、
電極の有効表面積が拡大される結果、大電流の通電が可
能となり、またこれを鉄めっきした後水蒸気中で熱処理
することにより、 Fe3O4に変化させると共に溶射粒子相
互の結合力を高めることによって、電極としての性能を
一層向上させることができる。かくして、この発明に従
い得られた電極は、電気クロムめっき浴、NaCl、HCl水
溶液中で従来技術の大気溶射によるマグネタイト電極に
比べ、耐久性においてはるかに優り、電解工業の安定し
た操業および生産性の向上に寄与するところ極めて大と
いえる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古谷 雅春 福岡県北九州市門司区小森江2丁目2番1 号 神鋼メタルプロダクツ株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ti基材の表面に、厚み:100 〜800 μm
    のプラズマ溶射によるマグネタイト皮膜をそなえること
    を特徴とする耐久性に優れる溶射被覆電極。
  2. 【請求項2】 Ti基材の表面に、厚み:80〜800 μm の
    プラズマ溶射によるマグネタイトの2重皮膜をそなえる
    ことを特徴とする耐久性に優れる溶射被覆電極。
  3. 【請求項3】 Ti基材の表面に、厚み:80〜800 μm の
    プラズマ溶射によるマグネタイトの2重皮膜をそなえ、
    その上にさらに厚み:1〜5μm の鉄の酸化皮膜をそな
    えることを特徴とする耐久性に優れる溶射被覆電極。
  4. 【請求項4】 Ti基材の表面を、ブラスト処理した後、
    Arガス:50〜300hpa雰囲気下にプラズマ炎によるスパッ
    タリング処理を施してその表面を活性化し、ついで同じ
    雰囲気中で粒径:5〜50μm のマグネタイト粉末を用い
    るプラズマ溶射法により、厚み:100 〜800 μm のマグ
    ネタイト皮膜を被成したことを特徴とする耐久性に優れ
    る溶射被覆電極の製造方法。
  5. 【請求項5】 Ti基材の表面を、ブラスト処理した後、
    Arガス:50〜300hpa雰囲気下にプラズマ炎によるスパッ
    タリング処理を施してその表面を活性化し、ついで同じ
    雰囲気中で粒径:5〜50μm のマグネタイト粉末を用い
    るプラズマ溶射法により、厚み:30〜300 μm のマグネ
    タイト皮膜を被成したのち、さらにその上に、大気雰囲
    気中で粒径:10〜100 μm のマグネタイト粉末を用いる
    プラズマ溶射法により、厚み:50〜500 μm 厚のマグネ
    タイト第2皮膜を被成したことを特徴とする耐久性に優
    れる溶射被覆電極の製造方法。
  6. 【請求項6】 Ti基材の表面を、ブラスト処理した後、
    Arガス:50〜300hpa雰囲気下にプラズマ炎によるスパッ
    タリング処理を施してその表面を活性化し、ついで同じ
    雰囲気中で粒径:5〜50μm のマグネタイト粉末を用い
    るプラズマ溶射法により、厚み:30〜300 μm のマグネ
    タイト皮膜を被成したのち、さらにその上に、大気雰囲
    気中で粒径:10〜100 μm のマグネタイト粉末を用いる
    プラズマ溶射法により、厚み:50〜500 μm 厚のマグネ
    タイト第2皮膜を被成し、ついでその上に鉄めっき法に
    よって厚み:1〜5μm の鉄めっき層を形成した後、 5
    00〜700 ℃の水蒸気中にて1〜5時間の加熱による鉄め
    っき層の酸化処理を施すことを特徴とする耐久性に優れ
    る溶射被覆電極の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2000031313A1 (de) * 1998-11-25 2000-06-02 Joma Chemical As Werkstoff und verfahren zum herstellen einer korrosions- und verschleissfesten schicht durch thermisches spritzen
KR100790768B1 (ko) * 2003-08-29 2008-01-03 티디케이가부시기가이샤 전극용 복합 입자의 제조방법, 전극의 제조방법 및전기화학 소자의 제조방법 및 전극용 복합 입자 제조장치,전극 제조장치 및 전기화학 소자 제조장치
JP2016132813A (ja) * 2015-01-21 2016-07-25 株式会社豊田中央研究所 不溶性電極およびその製造方法

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