JPH0820645A - 射出成形容器用の高分子量ポリアリーレンスルフィド - Google Patents

射出成形容器用の高分子量ポリアリーレンスルフィド

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JPH0820645A
JPH0820645A JP6176206A JP17620694A JPH0820645A JP H0820645 A JPH0820645 A JP H0820645A JP 6176206 A JP6176206 A JP 6176206A JP 17620694 A JP17620694 A JP 17620694A JP H0820645 A JPH0820645 A JP H0820645A
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JP
Japan
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reaction
molecular weight
temperature
polyarylene sulfide
injection
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Application number
JP6176206A
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English (en)
Inventor
Takashi Tsuda
孝 津田
Osamu Komiyama
治 小味山
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Tonen Chemical Corp
Original Assignee
Tonen Sekiyu Kagaku KK
Tonen Chemical Corp
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Publication date
Application filed by Tonen Sekiyu Kagaku KK, Tonen Chemical Corp filed Critical Tonen Sekiyu Kagaku KK
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  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐衝撃性、非破壊性等の機械的強度に優れた
射出成形容器を与える安価な高分子量ポリアリーレンス
ルフィドを提供する。 【構成】 有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物と
ジハロ芳香族化合物とを反応させ、かつ該反応中に反応
缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一
部を凝縮させ、これを液相に還流せしめて製造したポリ
アリーレンスルフィド(A)を、気相酸化性雰囲気下で
加熱処理して得られる射出成形容器用の高分子量ポリア
リーレンスルフィド。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、射出成形容器用の高分
子量ポリアリーレンスルフィド及びそれから製造された
射出成形容器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子材料等の分野において使用さ
れる薬液や超純水を入れるエッチング槽、洗浄槽等は、
耐薬品性及び不純物の非溶出性等の観点からポリ塩化ビ
ニル(以下ではPVCと略すことがある)、ポリテトラ
フルオロエチレン(以下ではPTFEと略すことがあ
る)、ポリふっ化ビニリデン(以下ではPVDFと略す
ことがある)、テトラフルオロエチレン‐ペルフルオロ
アルキルビニルエーテル共重合体(以下ではPFAと略
すことがある)等のプラスチック材料が使用されてい
た。しかし、これらは機械的強度が弱いという欠点を有
していた。
【0003】一方、ポリアリーレンスルフィド(以下で
はPASと略すことがある)は、元来有する耐薬品性、
非溶出性に加えて、その高分子量化技術の発展に伴う機
械的強度の著しい向上のため、上記プラスチック材料の
代替として注目されている。高分子量のPASを製造す
る方法として、特公昭52‐12240号公報には、酢
酸ナトリウム、酢酸リチウム等のカルボン酸金属塩を共
存させて重合を実施する方法が記載されている。しか
し、上記化合物は高価であり、かつ該化合物を無公害に
製品から分離、回収、処理を行うには、多大な付帯設備
と技術と費用が必要であり、この面からも著しく不利で
あった。
【0004】特開昭61‐7332号公報には、高分子
量のPASを製造するために重合反応を二段階で行い、
第二段階の反応において積極的に多量の水を添加する方
法が開示されている。即ち、有機アミド溶媒中でアルカ
リ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させてPA
Sを製造する方法において、第一段階ではアルカリ金属
硫化物1モル当り0.5〜2.4モルの水の存在下、1
80〜235℃の温度で反応を行って、ジハロ芳香族化
合物の転化率を50〜98モル%とし、続く第二段階で
は水を追加して2.5〜7.0モルの水の存在下で、2
45〜290℃の温度で更に反応を継続するものであ
る。
【0005】この方法では、反応途中で水を追加しなけ
ればならない。これを行うためには、第一段階後に温度
を一旦下げて常圧とした後に水を加えるか、第一段階と
第二段階とで反応缶を変えるか、あるいは高温高圧下に
ある反応缶に水を圧入するしかなく、設備的、経済的、
操作的に不利益であった。また、第二段階で硫化ナトリ
ウム1モル当り2.5モル以上の水を存在させ、245
℃以上の温度にするので、圧力は20kg/cm2 G以
上にもなる。従って、反応缶は、実際30kg/cm2
G以上の耐圧が必要となり、この点でも設備的、経済的
に不利であった。
【0006】上記問題に鑑み、特開平5‐32781号
公報には、同じく重合反応を二段階で行い、第二段階で
トリクロロベンゼン等を添加する方法が開示されてい
る。即ち、第一段階でアルカリ金属硫化物1モル当り
0.5〜2.4モルの水の存在下、180〜250℃の
温度で反応を行って、続く第二段階では、第一段階で使
用したジハロ芳香族化合物の0.01〜5モル%に相当
するトリクロロベンゼン等を加え、PASの貧溶媒が2
0〜60重量%存在する状態において、250〜290
℃の温度で反応を継続して高分子量PASを製造する方
法である。
【0007】しかし、該方法により得られたPASは、
未だ機械的強度が十分ではない。また、反応途中でトリ
クロロベンゼン等を添加しなければならない。従って、
上記の特開昭61‐7332号の発明と同じく設備的、
経済的、操作的に不利益であった。
【0008】また、特開平5‐43691号公報には、
重合によって得られたPASを、不活性ガス雰囲気下の
有機アミド溶媒中、100〜260℃の温度で10〜3
00分間処理した後に、高温状態のまま固液分離を行っ
て高分子量PASを製造する方法が開示されている。
【0009】しかし、該方法により得られたPASも、
未だ機械的強度が十分であるとは言えなかった。
【0010】この様に、強度上及び経済上等の問題か
ら、現状では電子材料等の分野において使用される容器
の材料として、PVC、PTFE、PVDF、PFA等
のプラスチック材料の代替たるに十分なPASは得られ
ていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐衝撃性、
非破壊性等の機械的強度に優れた射出成形容器を与える
安価な高分子量ポリアリーレンスルフィドを提供するも
のである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記種々
の欠点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、有機
アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化
合物とを反応させ、かつ該反応中に反応缶の気相部分を
冷却することにより製造したPASは、続く気相酸化性
雰囲気下での加熱処理により、優れた耐衝撃性及び耐破
壊性を持つ射出成形容器を与える高分子量PASにし得
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】即ち、本発明は、有機アミド系溶媒中でア
ルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させ、
かつ該反応中に反応缶の気相部分を冷却することにより
反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せ
しめて製造したポリアリーレンスルフィド(A)を、気
相酸化性雰囲気下で加熱処理して得られる射出成形容器
用の高分子量ポリアリーレンスルフィドである。
【0014】本発明の反応缶の気相部分を冷却すること
により反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に
還流せしめてPASを製造する方法としては、特開平5
‐222196号公報に記載の方法を使用することがで
きる。
【0015】還流される液体は、水とアミド系溶媒の蒸
気圧差の故に、液相バルクに比較して水含有率が高い。
この水含有率の高い還流液は、反応溶液上部に水含有率
の高い層を形成する。その結果、残存のアルカリ金属硫
化物(例えばNa2 S)、ハロゲン化アルカリ金属(例
えばNaCl)、オリゴマー等が、その層に多く含有さ
れるようになる。従来法においては230℃以上の高温
下で、生成したPASとNa2 S等の原料及び副生成物
とが均一に混じりあった状態では、高分子量のPASが
得られないばかりでなく、せっかく生成したPASの解
重合も生じ、チオフェノールの副生成が認められる。し
かし、本発明では、反応缶の気相部分を積極的に冷却し
て、水分に富む還流液を多量に液相上部に戻してやるこ
とによって上記の不都合な現象が回避でき、反応を阻害
するような因子を真に効率良く除外でき、高分子量PA
Sを得ることができるものと思われる。但し、本発明は
上記現象による効果のみにより限定されるものではな
く、気相部分を冷却することによって生じる種々の影響
によって、高分子量のPASが得られるのである。
【0016】本発明においては、従来法のように反応の
途中で水を添加することを要しない。しかし、水を添加
することを全く排除するものではない。但し、水を添加
する操作を行えば、本発明の利点のいくつかは失われ
る。従って、好ましくは、重合反応系内の全水分量は反
応の間中一定である。
【0017】反応缶の気相部分の冷却は、外部冷却でも
内部冷却でも可能であり、自体公知の冷却手段により行
える。たとえば、反応缶内の上部に設置した内部コイル
に冷媒体を流す方法、反応缶外部の上部に巻きつけた外
部コイルまたはジャケットに冷媒体を流す方法、反応缶
上部に設置したリフラックスコンデンサーを用いる方
法、反応缶外部の上部に水をかける又は気体(空気、窒
素等)を吹き付ける等の方法が考えられるが、結果的に
缶内の還流量を増大させる効果があるものならば、いず
れの方法を用いても良い。外気温度が比較的低いなら
(たとえば常温)、反応缶上部に従来備えられている保
温材を取外すことによって、適切な冷却を行うことも可
能である。外部冷却の場合、反応缶壁面で凝縮した水/
アミド系溶媒混合物は反応缶壁を伝わって液相中に入
る。従って、該水分に富む混合物は、液相上部に溜り、
そこの水分量を比較的高く保つ。内部冷却の場合には、
冷却面で凝縮した混合物が同様に冷却装置表面又は反応
缶壁を伝わって液相中に入る。
【0018】一方、液相バルクの温度は、所定の一定温
度に保たれ、あるいは所定の温度プロフィールに従って
コントロールされる。一定温度とする場合、 230〜275
℃の温度で 0.1〜20時間反応を行うことが好ましい。よ
り好ましくは、 240〜265 ℃の温度で1〜6時間であ
る。より高い分子量のPASを得るには、2段階以上の
反応温度プロフィールを用いることが好ましい。この2
段階操作を行う場合、第1段階は 195〜240 ℃の温度で
行うことが好ましい。温度が低いと反応速度が小さす
ぎ、実用的ではない。 240℃より高いと反応速度が速す
ぎて、十分に高分子量なPASが得られないのみなら
ず、副反応速度が著しく増大する。第1段階の終了は、
重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が1モル%〜40
モル%、且つ分子量が 3,000〜20,000の範囲内の時点で
行うことが好ましい。より好ましくは、重合反応系内ジ
ハロ芳香族化合物残存率が2モル%〜15モル%、且つ分
子量が 5,000〜15,000の範囲である。残存率が上記範囲
を越えると、第2段階の反応で解重合など副反応が生じ
やすく、一方、上記範囲未満では、最終的に高分子量P
ASを得難い。その後昇温して、最終段階の反応は、反
応温度 240〜270 ℃の範囲で、1時間〜10時間行うこと
が好ましい。温度が低いと十分に高分子量化したPAS
を得ることができず、また 270℃より高い温度では解重
合等の副反応が生じやすくなり、安定的に高分子量物を
得難くなる。
【0019】実際の操作としては、先ず不活性ガス雰囲
気下で、アミド系溶媒中のアルカリ金属硫化物中の水分
量が所定の量となるよう、必要に応じて脱水または水添
加する。水分量は、好ましくは、アルカリ金属硫化物1
モル当り0.5〜2.5モル、特に0.8〜1.2モル
とする。上記範囲を超えては、反応速度が小さくなり、
しかも反応終了後の濾液中にフェノール等の副生成物量
が増大し、重合度も上がらない。上記範囲未満では、反
応速度が速すぎ、十分な高分子量の物を得ることができ
ない。
【0020】反応時の気相部分の冷却は、一定温度での
1段反応の場合では、反応開始時から行うことが望まし
いが、少なくとも 250℃以下の昇温途中から行わなけれ
ばならない。多段階反応では、第1段階の反応から冷却
を行うことが望ましいが、遅くとも第1段階反応の終了
後の昇温途中から行うことが好ましい。冷却効果の度合
いは、通常反応缶内圧力が最も適した指標である。圧力
の絶対値については、反応缶の特性、攪拌状態、系内水
分量、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とのモ
ル比等によって異なる。しかし、同一反応条件下で冷却
しない場合に比べて、反応缶圧力が低下すれば、還流液
量が増加して、反応溶液気液界面における温度が低下し
ていることを意味しており、その相対的な低下の度合い
が水分含有量の多い層と、そうでない層との分離の度合
いを示していると考えられる。そこで、冷却は反応缶内
圧が、冷却をしない場合と比較して低くなる程度に行う
のが好ましい。冷却の程度は、都度の使用する装置、運
転条件などに応じて、当業者が適宜設定できる。
【0021】ここで使用する有機アミド系溶媒は、PA
S重合のために知られており、たとえばN‐メチルピロ
リドン(NMP)、N,N‐ジメチルホルムアミド、
N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルカプロラク
タム等、及びこれらの混合物を使用でき、NMPが好ま
しい。これらは全て、水よりも低い蒸気圧を持つ。
【0022】アルカリ金属硫化物も公知であり、たとえ
ば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫
化ルビジウム、硫化セシウム及びこれらの混合物であ
る。これらの水和物及び水溶液であっても良い。又、こ
れらにそれぞれ対応する水硫化物及び水和物を、それぞ
れに対応する水酸化物で中和して用いることができる。
安価な硫化ナトリウムが好ましい。
【0023】ジハロ芳香族化合物は、たとえば特公昭4
5‐3368号公報記載のものから選ぶことができる
が、好ましくはp‐ジクロロベンゼンである。又、少量
(20モル%以下)のジフェニルエーテル、ジフェニル
スルホン又はビフェニルのパラ、メタ又はオルトジハロ
物を1種類以上用いて共重合体を得ることができる。例
えば、m‐ジクロロベンゼン、o‐ジクロロベンゼン、
p,p´‐ジクロロジフェニルエーテル、m,p´‐ジ
クロロジフェニルエーテル、m,m´‐ジクロロジフェ
ニルエーテル、p,p´‐ジクロロジフェニルスルホ
ン、m,p´‐ジクロロジフェニルスルホン、m,m´
‐ジクロロジフェニルスルホン、p,p´‐ジクロロビ
フェニル、m,p´‐ジクロロビフェニル、m,m´‐
ジクロロビフェニルである。
【0024】PASの分子量をより大きくするために、
例えば1,3,5‐トリクロロベンゼン、1,2,4‐
トリクロロベンゼン等のポリハロ化合物を、パラ及びメ
タジハロ芳香族化合物の合計量に対して好ましくは5モ
ル%以下の濃度で使用することもできる。
【0025】また、他の少量添加物として、末端停止
剤、修飾剤としてのモノハロ化物を併用することもでき
る。
【0026】こうして得られたPAS(A)は、当業者
にとって公知の後処理法によって副生物から分離され
る。
【0027】本発明においては、上記のようにして得ら
れたPAS(A)に、更に酸処理を施すこともできる。
該酸処理は、100℃以下の温度、好ましくは40〜8
0℃の温度で実施される。該温度が上記上限を超える
と、酸処理後のPAS分子量が低下するため好ましくな
い。また、40℃未満では、残存している無機塩が析出
してスラリーの流動性を低下させ、連続処理のプロセス
を阻害するため好ましくない。該酸処理に使用する酸溶
液の濃度は、好ましくは0.01〜5.0重量%であ
る。また、該酸溶液のpHは、酸処理後において、好ま
しくは4.0〜5.0である。上記の濃度及びpHを採
用することにより、被処理物であるPAS中の−SNa
及び‐COONa末端の大部分を−SH及び‐COOH
末端に転化することができると共に、プラント設備等の
腐食を防止し得るため好ましい。該酸処理に要する時間
は、上記酸処理温度及び酸溶液の濃度に依存するが、好
ましくは5分間以上、特に好ましくは10分間以上であ
る。上記未満では、PAS中の−SNa及び‐COON
a末端を−SH及び‐COOH末端に十分に転化できず
好ましくない。上記酸処理には、例えば酢酸、ギ酸、シ
ュウ酸、フタル酸、塩酸、リン酸、硫酸、亜硫酸、硝
酸、ホウ酸、炭酸等が使用され、酢酸が特に好ましい。
該処理を施すことにより、PAS中の不純物であるナト
リウムを低減できる。従って、製品使用中のナトリウム
溶出及び電気絶縁性の劣化を抑制することができる。
【0028】PAS(A)において、その溶融粘度V6
が、好ましくは600ポイズ以上である。上記未満の溶
融粘度では、加熱酸化処理後のPAS分子量が小さすぎ
るので、製造した射出成形容器の耐衝撃性、耐破壊性等
の機械的強度が改善されず好ましくない。溶融粘度V6
は、フローテスターを用いて320℃、荷重20kgf
/cm2 、L/D=10で6分間保持した後に測定した
粘度(ポイズ)である。
【0029】次に、PAS(A)は、気相酸化性雰囲気
下で加熱処理される。該加熱処理は、公知の方法により
実施することができる。加熱処理を行う温度は、好まし
くは100〜280℃、特に好ましくは170〜250
℃である。該温度が上記範囲未満では、加熱処理に要す
る時間が増加し、上記範囲を越えては、処理したPAS
の溶融時の熱安定性が悪いので好ましくない。熱酸化処
理に要する時間は、上記の加熱温度あるいは所望するP
ASの溶融粘度により異なるが、好ましくは0.5〜2
5時間、特に好ましくは5〜20時間である。該時間
が、上記範囲未満では高分子量のPASが得られず、上
記範囲を越えては、処理したPAS中にミクロゲルの発
生が増加し好ましくない。
【0030】上記の加熱処理は、好ましくは空気、純酸
素等又はこれらと任意の適当な不活性ガスとの混合物の
ような酸素含有ガスの気相酸化性雰囲気下で実施され
る。不活性ガスとしては、例えば水蒸気、窒素、二酸化
炭素等又はそれらの混合物が挙げられる。上記の酸素含
有ガス中の酸素の濃度は、好ましくは0.5〜50体積
%,特に好ましくは10〜25体積%である。該酸素濃
度が、上記範囲を越えてはラジカル発生量が増大し溶融
時の増粘が著しくなり、また色相が暗色化して好ましく
なく、上記範囲未満では、熱酸化速度が遅くなり好まし
くない。
【0031】本発明の加熱処理を行う装置は、回分式で
も連続式でもよく、公知の装置を使用することができ
る。例えば、攪拌機を備えた密閉容器中において、PA
Sを酸素含有ガスと接触させる装置等を挙げることがで
き、好ましくは、攪拌機を備えた流動層式熱酸化処理装
置が使用される。該装置を使用すると、槽内の温度分布
を小さくすることができる。その結果、熱酸化を促進す
ることができると共に、分子量の不均一化を防止するこ
とができる。
【0032】以上のようにして製造された射出成形容器
用の高分子量PASは、その溶融粘度V6 が、好ましく
は2,000〜30,000ポイズ、特に好ましくは
3,000〜10,000ポイズである。溶融粘度が上
記範囲未満では、射出成形容器の耐衝撃性、耐破壊性等
の機械的強度が低下し、上記範囲を超えては、流動性の
低下により射出成形の際の射出速度の低下、あるいは成
形性の低下等を生じ好ましくない。ここで、溶融粘度V
6 は、上記と同一にして測定したものである。
【0033】射出成形容器用の高分子量PASには、慣
用の添加剤を配合することができる。例えば、無機充填
材としてのシリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリ
ン、クレー、シリカアルミナ、酸化チタン、炭酸カルシ
ウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カル
シウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸
マグネシウム、窒化ケイ素、ガラス、ハイドロタルサイ
ト、酸化ジルコニウム等の粒状、粉末状あるいは鱗片状
のもの、又はガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、炭素
繊維、マイカセラミック繊維等の繊維状のものを配合す
ることができる。これら無機充填材は、夫々単独で、あ
るいは二種以上組合わせて用いることができる。また、
これらの無機充填材は、シランカップリング剤やチタネ
ートカップリング剤で処理したものであってもよい。充
填材の配合割合は、上記機械的強度及び成形性の観点等
から、PAS100重量部に対して好ましくは0.01
〜400重量部、特に好ましくは1〜25重量部であ
る。
【0034】更に、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定
剤、滑剤、離型剤、着色剤等の添加剤を配合することも
できる。
【0035】以上のような各成分を混合する方法は、特
に限定されるものではない。一般に広く使用されている
方法、例えば各成分をヘンシェルミキサー等の混合機で
混合する等の方法を用いることができる。
【0036】本発明の射出成形容器は、公知の射出成形
機を用いて公知の方法により、上記PASを射出成形す
ることにより製造することができる。
【0037】該射出成形容器は、電子材料等の分野にお
いて、薬液や超純水を入れるエッチング槽、洗浄槽等と
して使用でき、PVC、PTFE、PVDF、PFA等
の従来のプラスチック材料の代替として十分な機能を発
揮し得る。
【0038】以下、本発明を実施例により更に詳細に説
明するが、本発明はこれら実施例により限定されるもの
ではない。
【0039】
【実施例】実施例において、ポリフェニレンスルフィド
(以下ではPPSと略すことがある)の溶融粘度V
6 は、島津製作所製フローテスターCFT‐500Aを
用いて320℃、荷重20kgf/cm2 、L/D=1
0で6分間保持した後に測定した粘度(ポイズ)であ
る。
【0040】
【重合実施例1】4m3 オートクレーブに、フレーク状
硫化ソーダ(60.6重量%Na2 S)524.8kg
と、N‐メチル‐2‐ピロリドン(以下ではNMPと略
すことがある)1200kgを仕込んだ。窒素気流下攪
拌しながら204℃まで昇温して、水126.3kgを
留出させた。その後、オートクレーブを密閉して180
℃まで冷却し、p‐ジクロルベンゼン(以下ではp‐D
CBと略すことがある)597.2kg及びNMP40
0kgを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用いて1
kg/cm2 Gに加圧して昇温を開始した。液温220
℃で3時間攪拌しつつ、オートクレーブ上部の外側に巻
き付けたコイルに20℃の冷媒を流し冷却した。その後
昇温して、液温260℃で3時間攪拌し、次に降温させ
ると共にオートクレーブ上部の冷却を止めた。オートク
レーブ上部を冷却中、液温が下がらないように一定に保
持した。反応中の最高圧力は、8.81kg/cm2
であった。
【0041】得られたスラリーを常法により濾過、温水
洗を繰り返し、130℃で約4時間熱風循環乾燥機中で
乾燥し、白色粉末状の中間製品を得た。得られたPPS
(P‐01)の溶融粘度V6は970ポイズであった。
【0042】次に、上記の中間製品を5m3 の熱酸化処
理装置に仕込み、槽内温度220℃で16時間攪拌し
た。その後、冷却して製品を得た。得られた製品(P‐
1)の溶融粘度V6は8,210ポイズであった。
【0043】
【重合実施例2】熱酸化処理時間を9時間とした以外
は、重合実施例1と同一に行った。得られた製品(P‐
2)の溶融粘度V6は3,920ポイズであった。
【0044】
【重合比較例1】4m3 オートクレーブに、フレーク状
硫化ソーダ(60.8重量%Na2 S)523.1kg
とNMP1,200kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌し
ながら204℃まで昇温して、水124.3kgを留出
させた。その後、オートクレーブを密閉して180℃ま
で冷却し、p‐DCB605.1kgとNMP400k
gを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用いて1kg
/cm2 Gに加圧して昇温を開始した。液温が260℃
になった時点で昇温を止め2時間攪拌した。次に200
℃まで1.5時間かけて降温した。反応中の最高圧力
は、10.52kg/cm2 Gであった。
【0045】得られたスラリーを常法により濾過、温水
洗を繰り返し、130℃で約4時間熱風循環乾燥機中で
乾燥し、白色粉末状の中間製品を得た。得られたPPS
(P‐C01)の溶融粘度V6は525ポイズであっ
た。
【0046】次に、上記の中間製品を5m3 の熱酸化処
理装置に仕込み、槽内温度220℃で35時間攪拌し
た。その後、冷却して製品を得た。得られた製品(P‐
C1)の溶融粘度V6は7,620ポイズであった。
【0047】
【実施例1〜2、及び比較例1〜3】実施例1及び2で
使用したPPSは、夫々重合実施例1及び2で製造した
熱処理後のPPS、P‐1及びP‐2である。
【0048】一方、比較例1で使用したPPSは、重合
実施例1でオートクレーブ上部冷却をして製造した、熱
処理前のPPS(P‐01)である。比較例2で使用し
たPPSは、重合比較例1でオートクレーブ上部の冷却
なしに製造した、熱処理後のPPS(P‐C1)であ
る。比較例3で使用したPPSは、重合比較例1でオー
トクレーブ上部の冷却なしに製造した、熱処理前のPP
S(P‐C01)である。
【0049】上記の各PPSを、二軸押出機を用いて3
20℃の温度で溶融して、ペレットを作成した。更に、
得られたペレットをシリンダー温度320℃、金型温度
130℃に設定した射出成形機を使用して、縦200m
m、横250mm、高さ250mm、厚さ3mmの容器
を成形した。次に、該容器を試料として、下記の機械的
強度を測定した。 <非破壊率>上記の容器20個について、各容器につき
1回、80cmの高さから落下させ、全く破壊しなかっ
た容器の数を測定し、下記式により算出した。
【0050】非破壊率(%)=(全く破壊しなかった容
器の数)×100/20 <耐衝撃性>上記容器から60×12.7×3mmのた
んざく型のテストピースを切り出し、ASTM D25
6に準拠してアイゾット衝撃強度を測定して評価した。
【0051】以上の結果を表1に示す。
【0052】
【表1】 実施例1は、本発明のPPSを使用したものである。成
形品の非破壊率及び衝撃強度は、比較例1〜3と比べて
いずれも著しく良好であった。実施例2は、熱処理時間
を短縮した以外は実施例1と同一の条件で実施したもの
である。成形品は十分に良好な非破壊率及び衝撃強度を
示した。
【0053】一方、比較例1は、実施例1において製造
した熱処理前のPPSを使用したものである。実施例1
と比較して、成形品の非破壊率及び衝撃強度はいずれも
著しく悪かった。比較例2は、オートクレーブの上部冷
却を行わず製造したPPSを更に熱酸化処理して得たP
PSを使用したものである。PPSの溶融粘度は実施例
1と同程度であるものの、成形品の非破壊率及び衝撃強
度は実施例1と比べていずれも著しく悪かった。比較例
3は、オートクレーブの上部冷却を行わずに製造した熱
処理前のPPSを使用したものである。成形品の非破壊
率及び衝撃強度はいずれも著しく悪いものであった。
【0054】
【発明の効果】本発明は、耐衝撃性、非破壊性等の機械
的強度に優れた射出成形容器を与える安価な高分子量ポ
リアリーレンスルフィドを提供する。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化
    物とジハロ芳香族化合物とを反応させ、かつ該反応中に
    反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相
    の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめて製造した
    ポリアリーレンスルフィド(A)を、気相酸化性雰囲気
    下で加熱処理して得られる射出成形容器用の高分子量ポ
    リアリーレンスルフィド。
  2. 【請求項2】 溶融粘度V6 が2,000〜30,00
    0ポイズである請求項1記載の射出成形容器用の高分子
    量ポリアリーレンスルフィド。
  3. 【請求項3】 溶融粘度V6 が3,000〜10,00
    0ポイズである請求項1記載の射出成形容器用の高分子
    量ポリアリーレンスルフィド。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一つに記載の射
    出成形容器用の高分子量ポリアリーレンスルフィドによ
    り製造された射出成形容器。
JP6176206A 1994-07-06 1994-07-06 射出成形容器用の高分子量ポリアリーレンスルフィド Pending JPH0820645A (ja)

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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007308612A (ja) * 2006-05-19 2007-11-29 Toray Ind Inc ポリフェニレンスルフィド樹脂、その製造方法およびそれからなる成形品
US9604156B2 (en) 2013-09-25 2017-03-28 Ticona Llc Method and system for separation of a polymer from multiple compounds
US9617387B2 (en) 2013-09-25 2017-04-11 Ticona Llc Scrubbing process for polyarylene sulfide formation
US9868824B2 (en) 2013-09-25 2018-01-16 Ticona Llc Method of polyarylene sulfide crystallization
US9938379B2 (en) 2013-09-25 2018-04-10 Ticona Llc Salt byproduct separation during formation of polyarylene sulfide

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