JPH08197244A - ガスメタルアーク溶接方法 - Google Patents

ガスメタルアーク溶接方法

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JPH08197244A
JPH08197244A JP2720095A JP2720095A JPH08197244A JP H08197244 A JPH08197244 A JP H08197244A JP 2720095 A JP2720095 A JP 2720095A JP 2720095 A JP2720095 A JP 2720095A JP H08197244 A JPH08197244 A JP H08197244A
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welding
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weld metal
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JP2720095A
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English (en)
Inventor
Hajime Ishikawa
肇 石川
Yoshinori Ogata
佳紀 尾形
Yoshio Terada
好男 寺田
Hiroshi Tamehiro
博 為広
Hiroyuki Ogawa
洋之 小川
Koichi Shinada
功一 品田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、CO2 を含んだ石油,天然ガス,
またはCO2 を輸送するラインパイプの円周溶接に適す
るガスシールドアーク溶接方法を提供する。 【構成】 鋼管の円周溶接において、重量%でC:0.
01〜0.06%,Si:0.05〜0.60%,M
n:0.8〜3.1%,Cr:0.7〜2.0%,C
u:0.05〜0.30%,Ti:0.003〜0.0
45%,Al:0.06%以下を含有し、0.17≦P
cm≦0.28を満足する溶接金属が得られるように鋼
管母材と溶接ワイヤと溶接条件との組合せによりシール
ドガスに0.5〜10%O2 +Arを使用した鋼管のガ
スメタルアーク溶接方法である。 【効果】 高強度,高靱性,かつ耐溶接割れ性と耐CO
2 腐食性に優れた溶接金属が得られ、ラインパイプとし
て優れた効果を発揮し得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、CO2 を含んだ石油,
天然ガス,またはCO2 を輸送するラインパイプの円周
溶接方法、特に溶接金属の選択腐食や低温靱性および溶
接性に優れたガスシールドアーク溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】寒冷地やオフショアにおける石油,ガス
輸送用大径ラインパイプに対しては、高強度とともに優
れた低温靱性,現地溶接性が要求される。さらに近年、
原油の2次,3次回収におけるCO2 注入や、深井戸化
によるインヒビター効果の低下によって、CO2 ガスに
よるラインパイプの腐食が大きな問題となり、耐CO2
腐食性が要求されるようになった。
【0003】現在までにCO2 腐食に関しては、Cr添
加が有効であることが公表されている(石油技術協会誌
第50巻,第2号図9,10)。また、例えば特開平
03−211230号公報において、鋼管の母材の耐C
2 腐食性改善にCrを添加する方法が提案されてい
る。しかし、CO2 を含む腐食環境下で使用されるライ
ンパイプ円周溶接部のCO2 腐食,選択腐食抑制を考慮
したガスメタルアーク溶接方法は開発されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般にシームレス鋼
管,または溶接鋼管をCO2 を含んだ石油,天然ガス輸
送に使用すると、円周溶接金属が選択腐食を起こす場合
が多い。これは溶接金属と母材との化学成分や組織が異
なり、溶接金属の耐CO2 腐食性が劣化するためであ
る。
【0005】従来、前述のような環境下で使用されるラ
インパイプに対して、選択腐食を防止した円周溶接方法
は検討されていなかった。
【0006】本発明は前記課題に鑑みなされたもので、
特に円周溶接金属部のCO2 腐食,選択腐食の防止とと
もに、充分な強度と靱性を具備した溶接金属が得られる
ガスメタルアーク溶接方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するものであって、すなわち鋼管の円周溶接において、
鋼管母材の化学成分として、重量%で、C :0.01
〜0.08%, Si:0.5%以下,Mn:0.
7〜1.5%, Nb:0.02〜0.06
%,Cr:0.4〜1.4%, Ti:0.0
05〜0.030%,Al:0.05%以下,
N :0.001〜0.005%,O :0.00
1〜0.005%を含有し、かつ、P :0.03%以
下, S :0.005%以下に規制し、残
部が鉄および不可避的不純物であって、含有元素および
不純物元素について、 0.35≦C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 ≦0 .52 を満足する鋼管を、溶接ワイヤの化学成分として、重量
%で、C :0.01〜0.06%, Si:0.
10〜0.60%,Mn:1.0〜3.2%,
Cr:0.7〜2.0%,Cu:0.05〜0.30
%, Ti:0.005〜0.06%,Al:0.
08%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物か
らなる溶接ワイヤを用い、溶接条件として、 シールドガス:0.5〜10%O2 +Ar, ワイヤ径 :0.8〜1.6mm, 溶接電流 :100〜500A, アーク電圧 :15〜45V, 溶接速度 :5〜150cm/min, 溶接姿勢 :全姿勢 にてガスメタルアーク溶接方法で溶接することにより、
溶接金属の化学成分として、重量%で、C :0.01
〜0.06%, Si:0.05〜0.60%,M
n:0.8〜3.1%, Cr:0.7〜2.
0%,Cu:0.05〜3.0%, Ti:0.
003〜0.045%,Al:0.06%以下を含有
し、残部が鉄および不可避的不純物であり、含有元素お
よび不純物元素について、 0.17≦Pcm=C+Si/30+Mn/20+Ni/60+Cu/20+ Cr/20+Mo/15+V/15+5B≦0.28 を満足する溶接金属を得る溶接を行うことを特徴とする
鋼管のガスメタルアーク溶接方法である。
【0008】また上記鋼管のガスメタルアーク溶接方法
において、鋼管母材の化学成分として、さらに、V :
0.005〜0.060%, Ni:0.05〜0.5
%,Cu:0.05〜0.5%, Mo:0.0
5〜0.30%,Ca:0.001〜0.005%,
Zr:0.005〜0.025%,REM:0.000
5〜0.01%の1種または2種以上を含有することを
特徴とするものである。
【0009】
【作用】前記課題を解決するために発明者らは、ガスメ
タルアーク溶接ワイヤの化学成分を種々変化させて、C
2 と塩水(NaCl水溶液)を含む腐食環境中で、溶
接部の耐食性,耐選択腐食性と,機械的性質について綿
密な調査を重ねた結果,Cの低減かつCrの添加等によ
って、溶接金属部の化学成分を調整することにより、円
周溶接部の選択腐食を効果的に防止し得るガスメタルア
ーク溶接方法を見出した。
【0010】本発明において、溶接金属の化学成分を限
定した理由は以下の通りである。
【0011】C:CはシールドガスとしてO2 ガスを使
用した場合、CO2 をシールドガスとして使用した場合
と異なり溶接金属中へのCのピックアップはほとんどな
い。そのため溶接金属中のC量が下げられ、耐CO2
食性が向上する。一方Cは良好な機械的性質,作業性を
得るために、ワイヤ中に添加する。
【0012】0.01%未満では溶接金属中の粒界フェ
ライト,フェライトサイドプレートが生成,粗大化する
ため強度及び靱性が低下し、機械的性質が母材に対して
不十分である。また溶滴移行が不安定になり、スパッタ
量が増加する。一方0.08%より超にすると、溶接金
属内のカソードサイトとなり得る炭化物が増加し、耐C
2 腐食性,耐選択腐食性を劣化させる。また溶接金属
の強度が母材に対して過大となり、それによる靱性不足
が生ずる。さらに硬さが上昇するとともに溶接割れ感受
性が上昇する。よってC量は0.01〜0.08%の範
囲とした。
【0013】Si:Siは良好な作業性および溶接金属
の機械的性質を得るためには、溶接金属中で0.05〜
0.6%必要である。0.05%以上では濡れ性が低下
しビード形状が不良となり、融合不良などの欠陥の原因
となる。特に含有量が少ないと脱酸力が低下してブロー
ホールが発生する。
【0014】また溶接金属の強度が母材に対して不足す
る。0.6%より多く添加すると溶接性および溶接金属
の靱性が劣化するので、上限を0.6%とした。さらに
硬さが上昇するとともに溶接割れ感受性が上昇する。よ
ってSi量は0.05〜0.60%とした。
【0015】Mn:Mnは良好な機械的性質,作業性を
得るために溶接金属に添加する。しかし0.8%未満で
は、溶接金属の強度が母材に対して不足したり、焼入性
が低下するため靱性が低下する。また特にMn量が過度
に少ないと脱酸不足によるブローホールが生ずる。
【0016】一方3.1%超にすると溶接金属の硬さが
上昇し、強度が母材に対して過大となり、それによる靱
性不足が生ずる。さらに硬さが上昇する。よってMn量
の適正範囲を0.8〜3.1%とした。
【0017】Cr:Crは溶接金属の耐CO2 腐食性,
耐選択腐食性の改善と良好な機械的性質を得るためにワ
イヤ中に添加する。Crは溶接金属の耐選択腐食性を向
上させる有効な元素であり、0.70%未満ではその効
果が得られない。
【0018】また2.00%超にすると溶接金属の強度
が母材に対して過大となり、それによる靱性不足が生ず
る。さらに硬さが上昇するとともに溶接割れ感受性が上
昇する。よってCr量の適正範囲を0.70〜2.00
%とした。望ましくは溶接金属のCr量は母材のCrよ
りも0.3%以上添加するとよい。
【0019】Cu:Cuは本発明では重要な元素であ
る。溶接金属の耐CO2 腐食性,耐選択腐食性の改善
と、良好な機械的性質を得るためにワイヤ中に添加す
る。特にCrとの複合効果により不安定な腐食生成物を
形成し、耐CO2 腐食性を向上させる。
【0020】溶接金属の耐選択腐食性を向上させるため
には、0.05%未満ではその効果が得られない。また
0.30%超にすると、溶接金属の強度が母材に対して
過大となり、それによる靱性不足が生ずる。さらに硬さ
が上昇するとともに溶接割れ感受性が上昇する。よって
Cu量の適正範囲は0.05〜0.30%とした。なお
Cuは溶接ワイヤにメッキされるが、上記の量はこれを
含んだものである。
【0021】Ti:Tiは溶接金属の低温靱性を確保す
るためにワイヤ中に添加する。Tiはフェライトの微細
化による溶接金属の靱性向上に有効である。しかし0.
003%未満にするとその効果が得られない。一方0.
045%を超えるとスラグ量が増加し、スラグ巻き込み
等の欠陥の原因となる。よってTi量は0.003〜
0.045%とした。
【0022】Al:Alは溶接性を確保するために規制
する。0.06%を超えるとスラグ量が増加し、スラグ
巻き込み等の欠陥の原因となる。よってAl量は0.0
6%以下とした。
【0023】なお不可避不純物の量は少ない方が望まし
く、特にP:0.030%以下,S:0.030%以
下,Nb:0.02%以下,V:0.02%以下,N
i:3.0%以下,Mo:1.0%以下,Zr:0.0
5%以下,B:0.002%以下,N:0.01%以
下,O:0.08%以下の範囲内であれば、溶接金属の
耐CO2 腐食性および機械的性質を阻害しない。これら
の成分が上記範囲を超える場合には、溶接欠陥の発生
(P,S,B,N),機械的性質の低下(Nb,V,N
i,Cu,Mo,N,O)等の不具合が生ずる。
【0024】Pcm:また個々の量を限定するだけでは
不十分であり、Pcmを0.17≦Pcm=C+Si/
30+Mn/20+Ni/60+Cu/20+Cr/2
0+Mo/15+V/15+5B≦0.28とする必要
がある。
【0025】0.17より小さいと、焼入性が低下する
ため粗大なフェライト,フェライト・サイド・プレート
が生成し、低温靱性を劣化させる。0.28超になる
と、焼入性が上昇し硬化するため、低温靱性の劣化と溶
接割れを引き起こす。このため0.17≦Pcm≦0.
28以下とした。望ましくは、0.20〜0.26の範
囲がよい。
【0026】次に、鋼管の化学成分を限定した理由は次
の通りである。
【0027】C:C量の下限を0.01%としたのは、
母材および溶接部の強度の確保ならびにNb,V等の添
加時に、これらの効果を発揮させるための最小量であ
る。しかしCが多過ぎると、HAZ靱性に悪影響をおよ
ぼすだけでなく、母材靱性,溶接性を劣化させるので、
上限を0.08%とした。
【0028】C量が多いとマルテンサイトが生成し、低
温靱性を著しく劣化する。過量のC添加は、耐CO2
食の防止の観点からは炭化物などのカソードサイトを生
成するので、C量は低い方が望ましい。
【0029】Si:Siは、脱酸上0.05%以上鋼に
必要であるが、多く添加すると溶接性および溶接部の靱
性が劣化するので、上限を0.5%とした。
【0030】Mn:Mnは、強度,靱性を確保する上で
不可欠な元素であり、その下限は0.7%である。HA
Z靱性を改善するには、γ粒界に生成する粗大な初析フ
ェライトを防止する必要があるが、Mn添加はこれを抑
制する効果がある。しかしMnが多すぎると、焼入性が
増加して溶接性,HAZ靱性を劣化させるため、上限を
1.5%とした。
【0031】Nb:Nbは本発明による溶接において重
要な元素であり、高強度鋼においてはNbを添加するこ
となく優れたHAZ靱性を得ることは困難である。Nb
はγ粒界に生成するフェライトを抑制し、結晶粒を微細
化して鋼を高靱化する。この効果を得るためには、最低
0.02%のNb量が必要である。しかしながら、Nb
量が多すぎると、逆に微細組織の生成が妨げられるの
で、その上限を0.06%とした。
【0032】Cr:Crは、耐CO2 腐食防止の観点か
ら重要な元素である。下限値0.4%は耐CO2 腐食性
の効果を得る最小値である。しかし多過ぎると現地溶接
性やHAZ靱性を劣化させる。そのため、上限を1.4
%とした。
【0033】Ti:Tiは本発明による溶接において重
要な元素であり、TiNを形成してHAZ組織を微細化
し、HAZ靱性を向上させる。下限の0.005%は、
この効果を得るための最小量であり、また上限の0.0
30%は、TiC形成によるHAZ靱性劣化を防止する
ためである。
【0034】Al:Alは、一般に脱酸上鋼に含まれる
元素であるが、0.05%を超えると、Al系非金属介
在物が増加して鋼の清浄度を害するので、その上限を
0.05%とした。
【0035】N:Nは、TiNを形成しγ粒の粗大化抑
制効果を通じて母材,HAZ靱性を向上させる。このた
め最小量は0.001%である。しかし多すぎると、ス
ラブ表面疵や固溶NによるHAZ靱性劣化の原因となる
ので、上限は0.005%以下に抑える必要がある。
【0036】O:HAZにおいて鋼靱化に有効な酸化物
を生成するためには、O量が0.001%以上必要であ
る。O量の上限を0.005%としたのは、非金属介在
物の生成による鋼の清浄度,靱性劣化を防止するためで
ある。
【0037】P:本発明において、不純物であるPを
0.03%以下とした。これは、母材,HAZの低温靱
性をより一層向上させ、スラブの中心偏析を軽減するた
めである。P量の低減は、HAZにおける粒界破壊傾向
を減少させる傾向がある。好ましくは、P量は0.01
0%以下がよい。
【0038】S:S量の上限を0.005%以上にする
と、MnSによる靱性の劣化を引き起こす。従って本発
明では、S量を0.005%以下とした。好ましくは、
0.003%以下とするのがよい。
【0039】本発明の溶接にあたっては、所望によりさ
らに強度調整元素として、V,Ni,Cu,Mo,C
a,Zr,REMの少なくとも1種類以上を添加する。
【0040】V:Vは、Nbとほぼ同じ効果を持つ元素
であるが、0.005%以下では効果がなく、0.06
0%超添加しても効果は飽和する。
【0041】Ni:Niは、0.05%以上の添加によ
り、溶接性,HAZ靱性に悪影響を及ぼすことなく母材
の強度,靱性を向上させる。一方1.0%を超えると、
経済性の点で好ましくないため上限を1.0%とした。
【0042】Cu:Cuは、Niとほぼ同様な効果が
0.05%以上の添加によって得られる。しかし1.0
%以上添加すると、熱間圧延時にCu−クラックが発生
して製造困難となる。このため上限を1.0%とした。
【0043】Mo:Moは、0.05%以上の添加によ
り母材の強度,靱性を向上させる元素であるが、多過ぎ
ると母材,HAZ靱性,溶接性の劣化を招き好ましくな
い。その上限は0.30%である。
【0044】Ca:鋼中介在物であるMnSの形態を制
御し、靱性を向上する。しかし0.001%以下では実
用上効果がなく、また0.005%を超えるとCa系の
大型介在物やクラスターが生成し、鋼の清浄度を害する
だけでなく、靱性,現地溶接性に悪影響を及ぼす。従っ
て0.005%を上限とした。
【0045】Zr:Zrは、ほぼTiと同様の効果を持
つ元素である。その上下限は、それぞれ、0.005
%,0.025%である。
【0046】REM(Yを含む希土類元素):Caの場
合と同様に、MnSの形態制御のために0.0005%
以上添加するが、0.01%を超えると清浄度が損なわ
れるので、その上限を0.01%とした。
【0047】0.35≦C+(Mn+Cr+V)/5+
(Ni+Cu)/15≦0.52については、個々の量
を限定するだけでは不十分であり、0.35≦C+(M
n+Cr+V)/5+(Ni+Cu)/15≦0.52
の範囲としなければならない。これは低温靱性や現地
溶接性がCrを含めた化学成分の全量で決まるからであ
る。下限の0.35は必要な母材,溶接部の強度を得る
ための最小量であり、0.52は優れた低温靱性,溶接
性を得るための上限値である。
【0048】本発明において、ガスメタルアーク溶接ワ
イヤにおける化学成分の限定理由は以下の通りである。
【0049】C:Cは、良好な機械的性質,作業性を得
るためにワイヤ中に添加する。0.010%未満では、
溶接金属中の粒界フェライト,フェライトサイドプレー
トが生成,粗大化するため、強度及び靱性が低下し機械
的性質が母材に対して不十分である。また溶滴移行が不
安定になり、スパッタ量が増加する。
【0050】一方0.060%超にすると、溶接金属内
のカソードサイトとなり得る炭化物が増加し、耐CO2
腐食性,耐選択腐食性を劣化させる。また溶接金属の強
度が母材に対して過大となり、それによる靱性不足が生
ずる。さらに硬さが上昇するとともに溶接割れ感受性が
上昇する。よってC量は0.010〜0.060%の範
囲とした。
【0051】Si:Siは脱酸元素として0.10%以
上添加する。0.10%未満では、脱酸能力が低下し溶
接作業性が低下する。また0.60%超にすると、溶接
金属の強度が母材に対して過大となり、それによる靱性
不足が生ずる。さらに硬さが上昇するとともに溶接割れ
感受性が上昇する。よってSi量は0.10〜0.60
%とした。
【0052】Mn:Mnは、良好な機械的性質,作業性
を得るためにワイヤ中に添加する。しかし1.0%未満
では、溶接金属の強度が母材に対して不足したり、焼入
性が低下するため靱性が低下する。また特にMn量が過
度に少ないと、脱酸不足によるブローホールが生ずる。
【0053】一方3.2%超にすると、溶接金属の硬さ
が上昇して強度が母材に対して過大となり、それによる
靱性不足が生ずる。さらに硬さが上昇する。よってMn
量の適正範囲を1.0〜3.2%とした。
【0054】Cr:Crは、溶接金属の耐CO2 腐食
性,耐選択腐食性の改善と、良好な機械的性質を得るた
めにワイヤ中に添加する。Crは溶接金属の耐選択腐食
性を向上させる有効な元素であり、0.70%未満では
その効果が得られない。
【0055】また2.00%超にすると溶接金属の強度
が母材に対して過大となり、それによる靱性不足が生ず
る。さらに硬さが上昇するとともに溶接割れ感受性が上
昇する。よってCr量の適正範囲を0.70〜2.00
%とした。
【0056】Cu:Cuは本発明では重要な元素であ
る。溶接金属の耐CO2 腐食性,耐選択腐食性の改善
と、良好な機械的性質を得るためにワイヤ中に添加す
る。特にCrとの複合効果により不安定な腐食生成物を
形成し、耐CO2 腐食性を向上させる。溶接金属の耐選
択腐食性を向上させるためには0.05%未満ではその
効果が得られない。
【0057】また0.30%超にすると、溶接金属の強
度が母材に対して過大となり、それによる靱性不足が生
ずる。さらに硬さが上昇するとともに溶接割れ感受性が
上昇する。よってCu量の適正範囲は0.05〜0.3
0%とした。なおCuは溶接ワイヤにメッキされるが、
上記の量はこれを含んだものである。
【0058】Ti:Tiは、溶接金属の低温靱性を確保
するためにワイヤ中に添加する。Tiはフェライトの微
細化による溶接金属の靱性向上に有効である。しかし
0.005%未満にするとその効果が得られない。一方
0.06%を超えるとスラグ量が増加し、スラグ巻き込
み等の欠陥の原因となる。よってTi量は0.005〜
0.06%とした。
【0059】Al:Alは溶接性を確保するために規制
する。0.08%を超えるとスラグ量が増加し、スラグ
巻き込み等の欠陥の原因となる。よってAl量は0.0
8%以下とした。
【0060】なお不可避不純物の量は少ない方が望まし
く、特にP:0.030%以下,S:0.030%以
下,Nb:0.02%以下,V:0.02%以下,N
i:3.0%以下,Mo:1.0%以下,Zr:0.0
5%以下,B:0.002%以下,N:0.01%以
下,O:0.08%以下の範囲内であれば、溶接金属の
耐CO2 腐食性および機械的性質を阻害しない。これら
の成分が上記範囲を超える場合には、溶接欠陥の発生
(P,S,B,N),機械的性質の低下(Nb,V,N
i,Mo,N,O)等の不具合が生ずる。
【0061】本発明における溶接条件の好ましい範囲を
示した理由は次の通りである。
【0062】シールドガス:先ずガスメタルアーク溶接
として使用されるシールドガス組成とする。このガス組
成として、O2 +ArシールドガスはCO2 ガスを使用
するより溶接金属のC量を低減でき、耐CO2 腐食性を
向上できる。0.5%未満のCO2 ガスではアークをと
ばす溶接ができない。また10%を超えると溶接金属内
に酸化物が多量に生成し、溶接金属の健全性を低下させ
る。望ましくは3〜7%O2 +Arがよい。
【0063】ワイヤ径:開先形状および溶接姿勢に応じ
て、一般に使用される溶接用ワイヤ径として0.8〜
1.6mmとした。
【0064】溶接電流,アーク電圧,溶接速度:開先形
状,溶接姿勢およびワイヤ径に応じて、一般に使用され
る溶接電流,アーク電圧,溶接速度とする。溶接電流は
100〜500A,アーク電圧は15〜45V,溶接速
度は5〜150cm/minとした。
【0065】溶接姿勢:鋼管の円周溶接を考慮して全姿
勢とする。
【0066】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。
【0067】表1に示す化学成分の板厚25mmの供試
鋼を外径910mmで造管した後、表2に示す化学成分
の溶接ワイヤを用いてガスメタルアーク溶接を実施し
た。ワイヤ径は1.2mmφを使用し、溶接入熱4〜1
2kJ/cmで溶接した。
【0068】その結果得られた溶接金属の化学成分を表
3〜表4に、また機械的性質を表5にそれぞれ示す。Y
SはAPI平型引張りを用いて評価し、靱性はJIS4
号試験片を用いて−30℃での吸収エネルギーで評価し
た。溶接割れ発生の有無は溶接後の5断面を観察し評価
した。
【0069】耐CO2 腐食性は10%NaCl水溶液に
1atmCO2 をバブリングし、80℃,pH5.0に
調整し、試験片を96hr以上浸漬し評価した。同時に
溶接部の浸漬試験を実施し、選択腐食の有無を調査し
た。なお試験片から溶接割れ、溶接欠陥,ブローホール
等を極力排除するよう心掛けた。しかしながらAPI引
張では採取困難な場合は測定不可能(表4および表5中
の−印)とした。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】表5に示すように、本発明例による鋼管1
〜10のガスメタルアーク溶接方法では、溶接性に優
れ、かつ高強度,高靱性で耐CO2 腐食性の優れた溶接
金属が得られた。
【0076】これに反し比較例では、鋼管11〜23は
ワイヤの化学成分が適切でなく、溶接作業性,機械的性
質が得られない。このうち鋼管11はC量が少なく、強
度靱性が不足した。鋼管12はC量が過多で耐CO2
食性が劣化した。鋼管13はSi量が少なく、逆に鋼管
14はSi量が多くて溶接性が悪く、また低温靱性が劣
化した。
【0077】鋼管15ではMnが少ないために、また逆
に鋼管16ではMnが多いためにそれぞれ溶接作業性,
靱性が低下した。鋼管17ではCr量の不足のため耐C
2腐食性が劣化した。鋼管18ではCr量が多いた
め、鋼管19ではTi量が少ないため、それぞれ溶接金
属の靱性が低下した。
【0078】さらに鋼管20はTi量が、鋼管21では
Al量がそれぞれ多く、靱性が劣化した例である。また
鋼管22はCu量が少なく、耐食性が向上しない。鋼管
23はCu量が多く、溶接性の低下とともに靱性も劣化
した。
【0079】鋼管24〜26では、母材の化学成分が不
適切である。このうち鋼管24では母材のCr量が低い
ため、鋼管26では母材のC量が多いため選択腐食が発
生した。また鋼管25では、母材のCr量が高いためH
AZ靱性が低下した。
【0080】鋼管27〜28では、シールドガスのO2
ガス量が適切でないため材質特性の確保が出来ない。こ
のうち鋼管27では、O2 ガス量が少ないため良好な溶
接性が得られない。また鋼管28ではO2 ガス量が多い
ため溶接金属の酸化物が増加し、溶接金属の靱性を劣化
させた。
【0081】
【発明の効果】以上説明したように本発明の鋼管のガス
メタルアーク溶接方法によれば、鋼管母材,溶接ワイ
ヤ,溶接金属それぞれの化学成分および溶接方法条件を
厳密に限定することにより、高強度,高靱性を有し、か
つ耐溶接割れ性と耐CO2 腐食性に優れた溶接金属を得
ることができ、特に寒冷地やオフショアにおけるCO2
を含有する石油,天然ガスを輸送するラインパイプの中
継(円周)溶接に適しており、また耐選択腐食性に優れ
た円周溶接金属が得られ、ラインパイプとして優れた効
果を発揮し得る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 為広 博 東京都千代田区大手町二丁目6番3号 新 日本製鐵株式会社内 (72)発明者 小川 洋之 東京都千代田区大手町二丁目6番3号 新 日本製鐵株式会社内 (72)発明者 品田 功一 東京都千代田区大手町二丁目6番3号 新 日本製鐵株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼管の円周溶接において、鋼管母材の化
    学成分として、重量%で、 C :0.01〜0.08%, Si:0.5%以
    下,Mn:0.7〜1.5%, Nb:0.0
    2〜0.06%,Cr:0.4〜1.4%,
    Ti:0.005〜0.030%,Al:0.05%以
    下, N :0.001〜0.005%,O
    :0.001〜0.005%を含有し、かつ、 P :0.03%以下, S :0.005
    %以下に規制し、残部が鉄および不可避的不純物であっ
    て、含有元素および不純物元素について、 0.35≦C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 ≦0 .52 を満足する鋼管を、溶接ワイヤの化学成分として、重量
    %で、 C :0.01〜0.06%, Si:0.10〜
    0.60%,Mn:1.0〜3.2%, C
    r:0.7〜2.0%,Cu:0.05〜0.30%,
    Ti:0.005〜0.06%,Al:0.08
    %以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からな
    る溶接ワイヤを用い、溶接条件として、 シールドガス:0.5〜10%O2 +Ar, ワイヤ径 :0.8〜1.6mm, 溶接電流 :100〜500A, アーク電圧 :15〜45V, 溶接速度 :5〜150cm/min, 溶接姿勢 :全姿勢 にてガスメタルアーク溶接方法で溶接することにより、
    溶接金属の化学成分として、重量%で、 C :0.01〜0.06%, Si:0.05〜
    0.60%,Mn:0.8〜3.1%, C
    r:0.7〜2.0%,Cu:0.05〜3.0%,
    Ti:0.003〜0.045%,Al:0.0
    6%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物であ
    り、含有元素および不純物元素について、 0.17≦Pcm=C+Si/30+Mn/20+Ni/60+Cu/20+ Cr/20+Mo/15+V/15+5B≦0.28 を満足する溶接金属を得る溶接を行うことを特徴とする
    鋼管のガスメタルアーク溶接方法。
  2. 【請求項2】 鋼管母材の化学成分として、さらに、 V :0.005〜0.060%, Ni:0.05〜
    0.5%,Cu:0.05〜0.5%, Mo:
    0.05〜0.30%,Ca:0.001〜0.005
    %, Zr:0.005〜0.025%,REM:0.
    0005〜0.01%の1種または2種以上を含有する
    ことを特徴とする請求項1記載の鋼管のガスメタルアー
    ク溶接方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103350289A (zh) * 2013-06-21 2013-10-16 江苏省沙钢钢铁研究院有限公司 一种低温韧性优异的高强度埋弧焊丝熔敷金属
JP2020111791A (ja) * 2019-01-11 2020-07-27 日本製鉄株式会社 鋼材
JP2020111790A (ja) * 2019-01-11 2020-07-27 日本製鉄株式会社 鋼材

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CN103350289A (zh) * 2013-06-21 2013-10-16 江苏省沙钢钢铁研究院有限公司 一种低温韧性优异的高强度埋弧焊丝熔敷金属
JP2020111791A (ja) * 2019-01-11 2020-07-27 日本製鉄株式会社 鋼材
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