JPH08112376A - ラケット用ガット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 本発明の目的は、ナイロンフィラメントに柿
渋、またはタンニン成分を含有させることにより、安価
で、耐久性が高く、打球感のよい新規なラケット用ガッ
トを提供することにある。 【効果】 ナイロンのフィラメントに柿渋、またはタン
ニン成分を含有させることにより、ラケット用ガットの
結節破断強度を高め、耐久性を向上させることができ
た。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、耐水性、耐久性に優
れ、安価なテニス用などのラケット用ガットに関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】テニス、バトミントン、スカッシュなど
に使用されるラケット用ガットは、従来、動物性繊維で
ある羊や牛の腸（天然ガット）が使用されていた。しか
し、ナイロンを初めとする合成繊維が出現し、その強靱
性、耐久性などが優れている事から、急速に普及してき
た。

【０００３】合成繊維ガットは、合成繊維の素材の特性
が優れているだけでなく、繊維の構造に手を加えること
ができる点で、さらに優れている。近年、球技自体の技
術の高度化と一般への普及に伴い、競技面での要求特性
も多彩になってきたため、ガットも素材の改良のみなら
ず、繊維構造の改良も行われている。

【０００４】特に、最近では、大型ラケットの普及に伴
い、競技のスピード化が進み、従来のガットでは風切り
性が悪く、スピードに対応しきれなくなり、細ゲージガ
ットが要求されるようになった。

【０００５】この要求に応えるために、特公平２−２８
９８９号公報に記載されたような、芯糸に巻糸を巻いた
構造を取ることにより、ガットの太さが細くなっても、
強度、特に結節破断強度が低下しないような技術が一般
化している。

【０００６】しかしこの方法では、ガットの製造の工程
が非常に複雑になり、結果としてガットが高価になる。
また、芯糸と巻糸との接着部が繰り返しの打撃、日光の
暴露、温度変化、湿度変化などにより弱くなり、結果と
して耐久性が落ちる、という欠点も持っている。

【０００７】本発明は、前記従来技術の課題を解決する
ため、巻糸構造を取らず、モノフィラメントで結節破断
強度を向上させ、打球感が良好で、強度的にも強く、安
価で、耐久性のよいガットを提供することを目的とす
る。

【０００８】

【問題点を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明のラケット用ガットはポリアミド系合成繊維
フィラメントからなり、このフィラメントに柿渋、また
はタンニン成分を含有させることを特徴とするラケット
用ガットに関する。

【０００９】柿渋は、一般に防水効果を与えたり、艶、
光沢を良くしたり、傷が付きにくくして耐久性を向上さ
せる目的で、漁網、傘などの表面を処理するために使用
されている。本発明者等は、このような性質をラケット
用ガットに応用できないかと鋭意検討し、結節破断強度
が高く、打球感が良好で、強度的にも高く、耐久性のよ
いガットが得られることが判明し、本発明に至った。

【００１０】柿渋は、天然物であり、渋柿をつき砕いて
搾汁することにより得られる。その組成は複雑である。
分かっている成分としては、糖類、エタノール、酢酸、
柿渋タンニンなどである。この中に含まれる柿渋タンニ
ン成分が特に重要な役割をするものと思われる。柿渋タ
ンニン成分は、縮合型タンニンに属し、平均組成はＣ₇₆
Ｈ₅₂Ｏ₄₆であり、アルカリと亜鉛粉末による分解でフロ
ログルシンと没食子酸を生ずる。

【００１１】また、これと類似のタンニン成分を使用し
ても同様な効果が得られる。タンニン成分は植物界に広
く存在し、植物の樹皮や、果実中に含有する。水によく
溶け、水溶液は吸れん性が強く、皮を革に変化させる性
質を有する。タンニン成分とは、加水分解によって多価
フェノール酸を生じる物質の総称であり、一定の化合物
ではない。分子量６００〜２０００ぐらいで、ポリオキ
シフェニルを基本構造とし、アルカリ分解するとフェノ
ール類、フェノールカルボン酸が得られる。また、タン
ニン成分はカリ融解によってピロガロールを生ずるピロ
ガロールタンニンとカテコールを生ずるカテコールタン
ニンとに二大別される。また、希酸と加熱すると加水分
解され没食子酸、エラグ酸などを生じる加水分解性タン
ニンと、重合して水に不溶のフロバフェンを生じる縮合
型タンニンとに分類される。加水分解性タンニンは没食
子酸、ポリオキシジフェン酸などが糖とデプシド結合し
たものであり、縮合型タンニンはカテキン、ロイコアン
トシアンなどが数分子重合したものであると考えられて
いる。

【００１２】柿渋あるいはタンニン成分をナイロンに含
有させる方法は、特に限定するものではないが、次のよ
うな方法が一般的に考えられている。水または他の溶剤
に柿渋を溶解し、この溶液にナイロンガットを浸漬する
方法。ナイロンと柿渋をあらかじめ溶融混練し、その後
ナイロンガットに成形する方法などである。なお、タン
ニン成分についても同様の方法により含有させることが
できる。例えば、柿渋溶液にガットを浸漬する方法を取
ると、その浸漬条件によって、ガットのある厚みを持っ
た表層部に柿渋が含浸され、中心部は影響を受けていな
いような構造になり、結節破断強度、打球感、耐久性に
優れたものが得られる。この方法は、巻糸構造のガット
に対抗できる特性を安価にモノフィラメントに付与でき
るという意味で、特にモノフィラメントに好適である
が、巻糸構造あるいはマルチフィラメントのガットにも
有効である。

【００１３】これを、従来の巻糸構造のガットと比べる
と、巻糸構造では芯糸と巻糸を接着剤で接着しているた
めに、繰り返しの打撃によって芯糸と巻糸が剥離しやす
く、耐久性に問題がある。さらに巻糸構造は、その製法
が複雑になるため、高価になる。また、今日のラケット
の発達に伴い、細ゲージガットの要求があるが、この要
求に応えるには、本発明の方法では簡単であるが、巻糸
構造では技術的に困難である。

【００１４】以上に述べた方法によって得られるナイロ
ンモノフィラメントガットは、その構造が簡単であるた
め、安価で実使用時の耐久性が高いものが得られる。ま
た、漁網に柿渋処理する場合と同様に、テニスガットに
も防水性が付与されることが期待できる。

【００１５】また、断面形状を変えることも簡単であ
り、多角形の断面形状にすることにより、打撃コントロ
ール性、ガット同志の滑りを制御することによるガット
の摩擦切断の防止などの効果を与えることができる。

【００１６】

【実施例】以下実施例を用いてさらに具体的に説明す
る。実施例および比較例の特性をまとめると表１のよう
になる。なお、以下の実施例および比較例において示し
た各物性は、下記の試験方法で測定した。 （１）引張り強さ、伸び：ＪＩＳ Ｌ１０７０ （２）結節引張り強さ：ＪＩＳ Ｌ１０７０ （３）硬さ：ロックウェル硬度、Ｒスケール ＡＳＴＭ
Ｄ−７８５ （４）光沢：変角光沢計 ＡＳＴＭ Ｄ−５２３ （５）滑り性テスト：図１のように、ガットの末端を柱
から１８３ｃｍ離れた位置に固定し、柱まで斜め上方に
引っ張る。このガットに、同じガット３０ｃｍを使って
作った直径５ｃｍの輪を引っかけておく。そして、斜め
に引っ張ったガットの末端を徐々に上げて、輪が滑りだ
す時の引っ張ったガットの末端の位置を測定した。

【００１７】比較例１ テニスガット用に１．３ｍｍ径のナイロンモノフィラメ
ントを成形した。

【００１８】実施例１〜３ 比較例１のモノフィラメントを、８０℃の柿渋水溶液中
に表中に記載の時間漬けておき、これを水洗、乾燥し
た。以上の試料の結節破断強度、破断応力、破断伸度を
測定したところ、柿渋処理時間が長くなるほど、結節破
断応力が強くなった。直線の破断応力、破断伸度は、あ
まり変化せず、テニスガットとして実際に使用してみる
と、実施例２の試料が最も打球感がよかった。このよう
に、柿渋処理時間を変えるだけで打球感の違うガットが
得られることも、この方法の利点である。

【００１９】柿渋処理したガットでは、処理しないガッ
トと比べて表面硬度が上がっていた。打球感がよくなる
のは、このためだと思われる。さらに、表面硬度が高く
なることによって、傷が付きにくくなり、ガットとして
の耐久性も向上する。また柿渋処理により、光沢、滑り
性も向上した。光沢が出ることにより、外観がよくな
り、滑り性が増すことにより、ガットをラケットに張る
ときの操作性がよくなった。

【００２０】テニスガット以外のラケット用ガットにつ
いても、モノフィラメントの直径の変化に応じて柿渋処
理時間を変えることにより、良好なガットを簡単に得る
ことができる。

【００２１】

【表１】

【００２２】

【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、安
価な方法で結節破断強度を高めることができ、耐久性が
高く、打球感が良好なガットを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明の滑り性テストの測定方法を示
す。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ポリアミド系合成繊維フィラメントに柿
   渋、またはタンニン成分を含有させることを特徴とする
   ラケット用ガット。