JPH08102999A - 立体音響再生装置 - Google Patents

立体音響再生装置

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JPH08102999A
JPH08102999A JP6237664A JP23766494A JPH08102999A JP H08102999 A JPH08102999 A JP H08102999A JP 6237664 A JP6237664 A JP 6237664A JP 23766494 A JP23766494 A JP 23766494A JP H08102999 A JPH08102999 A JP H08102999A
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JP6237664A
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English (en)
Inventor
Hirohiko Shibuya
広彦 渋谷
Izuho Hirano
出穂 平野
Yuichi Sakuma
裕一 佐久間
Tomoyuki Matsuzawa
智之 松澤
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】残響を有する一般的な空間でも満足できるレベ
ルで立体音響を再現することができ、低周波成分の再生
を良好に行え、しかも安価で済む立体音響再生装置を提
供する。 【構成】立体音響再生装置15を、例えばコンサートホ
ール等の原音場において収録した再生用音源16と、再
生音場3内に配設されたスピーカ4L,4Rと、スピー
カ4L,4Rの入力側に配設されたアンプ7L,7R
と、このアンプ7L,7Rの入力側に設けられた加算器
20L,20Rと、再生用音源16及び加算器20L,
20R間に介在する伝達関数補正フィルタ17と、この
伝達関数補正フィルタ17と並列に再生用音源16及び
加算器20L,20R間に介在するローパス・フィルタ
18L,18Rと、このローパス・フィルタ18L,1
8Rの出力側に直列に設けられた遅延手段としての遅延
回路19L,19Rと、を備えて構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、原音場において例え
ばダミーヘッドマイクロフォンを用いて録音を行ってこ
れを再生用音源とし、この再生用音源を再生音響空間に
配設された複数のスピーカで再生することにより、再生
音響空間に居る人間に、あたかも原音場に居るのと同じ
ような臨場感を有する立体的な音響を聴かせることがで
きる立体音響再生装置に関し、特に、再生用音源と複数
のスピーカとの間に介在して音響再生系の伝達関数を補
正する伝達関数補正フィルタを、再生特性を低下させる
ことなく、小容量のディジタルフィルタで実現できるよ
うにしたものである。なお、伝達関数補正フィルタと
は、立体音響再生装置の再生用音源から複数のスピーカ
に供給される音響情報をフィルタ処理することにより、
再生音響空間でのスピーカから人間耳位置までの音響伝
達系(音響再生系)の伝達関数を適宜補正してクロスト
ーク除去等を行うためのフィルタである。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の技術としては、例えば特
開平5−115098号公報や特開平5−227600
号公報等に開示されたものがある。これら従来の技術
は、完全無響室のような自由音場に適用されるものであ
り、自由音場内に、再生時におけるスピーカと人間との
位置関係と同様の位置関係となるように、スピーカとダ
ミーヘッドマイクロフォンとを設置し、それらスピーカ
及びダミーヘッドマイクロフォン間の伝達特性(音響再
生系の伝達特性)を測定し、その測定結果に基づいて伝
達関数補正フィルタのフィルタ係数を演算して伝達関数
補正フィルタを設計し、伝達関数補正フィルタが設計さ
れたらそれを再生用音源とスピーカとの間に介在させ
る。一方、再生用音源は、例えばコンサートホール等の
原音場においてダミーヘッドマイクロフォンを用いて録
音することによりバイノーラル収録方式により音響情報
を記録する。
【0003】そして、その再生用音源から伝達関数補正
フィルタを介して各スピーカに音響情報を供給すること
により、再生音響空間に居る人間の両耳位置に、ダミー
ヘッドマイクロフォンの両耳位置の音圧を再現して、臨
場感を有する立体的な音響を聴かせることができた。こ
こで、上記従来に技術における伝達関数補正フィルタの
設計には、東京電気大学総合研究所報告Vol.2,No.2,198
3 「基準的収音・再生を目的としたOrthostereophonic
Systemの構成」で述べられている音響等価回路(p.13
〜18)が適用されている。これは、測定されたスピー
カ及びダミーヘッドマイクロフォン間の伝達特性(イン
パルス応答)をフーリエ変換し、周波数領域において音
響等価回路を構成した後、その等価回路を構成する伝達
関数を逆フーリエ変換してFIRフィルタ(有限インパ
ルス応答型フィルタ)を設計するようになっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ここで、上記従来の技
術は、あくまでも完全無響室や野外といった非常に限定
された空間である自由音場での適用を前提としており、
残響を有する一般的な室内空間には実質的に適用するこ
とができなかった。つまり、そのような一般的な室内空
間にあっては、上述のようにスピーカ及びダミーヘッド
マイクロフォン間のインパルス応答を測定しても、その
インパルス応答には、空間の床面や壁面等での反射波成
分が含まれているため、そのような反射波成分を含んだ
インパルス応答に応じて伝達関数補正フィルタを設計し
てしまうと、反射波成分がフィルタ係数の作成段階で悪
影響を及ぼしてしまい、結果として再生音の定位感・音
質等を著しく損なってしまう。
【0005】そこで、低周波帯域まで十分に再生しよう
とすると、残響成分の影響によりインパルス応答が長く
なり、タップ数の大きい(フィルタ係数の個数が多い)
FIRフィルタが必要となってしまい、それに伴って演
算量も増大してしまい、高速演算が可能な従って高価な
マイクロプロセッサが必要になるという問題点が生じて
しまう。
【0006】また、仮に残響の影響が小さい再生音場で
あったとしても、低周波帯域まで十分な再生特性を得る
ために、インパルス応答の低周波成分まで十分に考慮し
て伝達関数補正フィルタを設計すると、やはりタップ数
の大きいFIRフィルタが必要となってしまい、演算量
が増大し、高価なマイクロプロセッサが必要になってし
まう。
【0007】さらには、時間軸上で十分な長さをとって
伝達関数補正フィルタを設計したとしても、タップ数が
大きいと、僅かな位相ずれによってインパルス応答の後
側の数値の精度が低下してしまう。つまり、当初求めた
フィルタ係数が有効でなくなってしまい、音像の再生に
とって悪影響を与えることにもなり、精度を下げないた
めには制御と並行してフィルタの再設計が必要となって
しまうのである。
【0008】本発明は、上述した従来技術が有する未解
決の課題や、上記のような技術的要求に着目してなされ
たものであって、残響を有する一般的な空間でも満足で
きるレベルで立体音響を再現することができ、また低周
波成分の再生を良好に行え、しかも安価で済む立体音響
再生装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る発明である立体音響再生装置は、立
体音響再生用の音響情報を出力する再生用音源と、前記
音響情報が入力される複数のスピーカとを備え、それら
再生用音源と複数のスピーカとの間に、その複数のスピ
ーカ及び所定の受音位置間のインパルス応答の所定周波
数よりも高周波の成分に基づいて設定され且つ音響再生
系の伝達関数を補正する伝達関数補正フィルタと、ロー
パス・フィルタとを、並列に介在させた。
【0010】また、請求項2に係る発明は、上記請求項
1に係る発明である立体音響再生装置において、前記所
定周波数と、前記ローパス・フィルタのカットオフ周波
数とを、一致又は略一致させた。そして、請求項3に係
る発明は、上記請求項1又は2に係る発明である立体音
響再生装置において、前記伝達関数補正フィルタ又は前
記ローパス・フィルタと直列に遅延手段を設けるととも
に、前記伝達関数補正フィルタを介しての前記再生用音
源及び複数のスピーカ間の音響情報の伝達時間と、前記
ローパス・フィルタを介しての前記再生用音源及び複数
のスピーカ間の音響情報の伝達時間とが一致するよう
に、前記遅延手段の遅延時間を設定した。
【0011】さらに、請求項4に係る発明は、上記請求
項1〜3に係る発明である立体音響再生装置において、
前記ローパス・フィルタと直列にイコライザを設けた。
またさらに、請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4
に係る発明である立体音響再生装置において、前記イン
パルス応答の所定周波数よりも高周波の成分を抽出する
際の減衰特性及び前記ローパス・フィルタの減衰特性
を、緩やかな特性に設定した。
【0012】
【作用】請求項1に係る発明にあっては、再生用音源か
ら出力される音響情報は、伝達関数補正フィルタを介し
て複数のスピーカに供給されるとともに、ローパス・フ
ィルタを介しても複数のスピーカに供給される。そし
て、伝達関数補正フィルタは、音響再生系のインパルス
応答の高周波成分に基づいて設定されているため、音響
情報の高周波成分のみが伝達関数補正フィルタを通過し
て複数のスピーカに供給される。また、伝達関数補正フ
ィルタが高周波成分に基づいて設定されていると、低周
波成分をも含めて設定した場合に比べてフィルタ長は短
くて済むから、伝達関数補正フィルタにおける演算量は
少ない。
【0013】一方、ローパス・フィルタに供給された音
響情報は、高周波成分が取り除かれてから複数のスピー
カに供給される。つまり、音響情報の低周波成分は、従
来のステレオ再生と基本的に同一の再生系によって再生
される。ここで、立体音響再生装置は、主としてバイノ
ーラル収録した原音場の音像を再生することが目的であ
るが、人間の特性を調べると、音像の定位を決定するの
は、主として可聴周波数領域(通常、20Hz〜20kHz
程度)のうちの高周波領域(例えば、8kHz以上)であ
ることが判明している。
【0014】そこで、この請求項1に係る発明のよう
に、音像の定位にとって重要な高周波成分は、伝達関数
補正フィルタで補正してスピーカに供給するとともに、
音像の定位に対する寄与が小さい低周波成分は、ローパ
ス・フィルタで再生してスピーカに供給すると、低周波
成分の再生を犠牲にすることなく、伝達関数補正フィル
タのタップ数が小さくなる。つまり、安価な構成で、残
響を有する一般的な空間でも満足できるレベルで立体音
響が再現される。
【0015】また、請求項2に係る発明であれば、音響
情報の全ての周波数成分は、伝達関数補正フィルタ又は
ローパス・フィルタのいずれかを介して複数のスピーカ
に供給されるから、音響情報の全ての周波数成分の再生
が保証される。ここで、伝達関数補正フィルタ及びロー
パス・フィルタにおけるフィルタ処理の時間が一致すれ
ば特に問題はないのであるが、一致しない場合には、音
響情報の高周波成分と低周波成分とが時間軸上でずれて
再生されてしまう。そこで、請求項3に係る発明のよう
に、それらフィルタの一方と直列に遅延手段を設け、そ
の遅延手段の遅延時間を適宜設定すれば、伝達関数補正
フィルタを通過する音響情報と、ローパス・フィルタを
通過する音響情報との間の時間のずれが補正されて同時
にスピーカに供給されるから、両再生系の再生音が同時
に所定の受音位置に到達する。
【0016】さらに、請求項4に係る発明であれば、音
響情報の低周波成分は、イコライザによって周波数特性
が変更されてから複数のスピーカに供給される。そこ
で、イコライザの特性を、例えば、ローパス・フィルタ
を通じての再生用音源及び所定の受音位置間の伝達特性
による低域通過特性の逆特性となるように設定すれば、
ローパス・フィルタで再生される信号の周波数特性がフ
ラット又は略フラットになる。
【0017】そして、請求項5に係る発明であれば、減
衰特性を急峻ではなく緩やかにしたため、例えば単一周
波数の音源がスイープして原音の周波数が変化するよう
な場合でも、遮断周波数を越える時に音像が不連続に変
化することが避けられ、自然な再生が行われる。
【0018】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて説
明する。図1乃至図6は本発明の第1実施例を示す図で
あり、図1が伝達関数補正フィルタ設計装置1の構成を
示すブロック図であり、図5が立体音響再生装置15の
構成を示すブロック図である。
【0019】先ず、伝達関数補正フィルタ設計装置1の
構成を説明すると、この伝達関数補正フィルタ設計装置
1は、ホワイトノイズ信号xを生成し出力するM系列信
号生成装置2と、再生音場3の壁面に適宜左右に離隔し
て配設された一対のスピーカ4L,4Rと、これらスピ
ーカ4L,4Rに正面から対向するように配置され且つ
人間の耳位置に当たる部分にマイクロフォン5L,5R
が埋め込まれた人間頭部を模擬したダミーヘッド6とを
有している。
【0020】そして、スピーカ4L,4Rの入力側にア
ンプ7L,7Rが配設され、それらアンプ7L,7Rの
入力側が切換スイッチ8を介してM系列信号生成装置2
の出力側に接続されている。つまり、切換スイッチ8を
適宜切り換えることにより、スピーカ4L,4Rのいず
れか一方にホワイトノイズ信号xが供給されるようにな
っている。
【0021】なお、スピーカ4L,4R及びアンプ7
L,7Rは、後述する立体音響再生装置15に用いられ
るものと同一であり、スピーカ4L,4Rの位置も立体
音響再生装置15における配置と同じになっている。そ
して、ダミーヘッド6は、後に再生音場3において立体
音響を再生する場合に人間の頭部が位置するのと同じ位
置に配置されている。
【0022】一方、マイクロフォン5L,5Rの出力側
は、切換スイッチ9を介して伝達特性測定装置10に接
続されている。つまり、切換スイッチ9を適宜切り換え
ることにより、マイクロフォン5L,5Rのいずれか一
方が測定した音圧が、音圧測定信号yとして伝達特性測
定装置10に供給されるようになっている。従って、伝
達特性測定装置10には、切換スイッチ8及び9を適宜
切り換えることにより、左側のスピーカ4Lから発せら
れて左側のマイクロフォン5Lで受音したホワイトノイ
ズ信号x,左側のスピーカ4Lから発せられて右側のマ
イクロフォン5Rで受音したホワイトノイズ信号x,右
側のスピーカ4Rから発せられて左側のマイクロフォン
5Lで受音したホワイトノイズ信号x及び右側のスピー
カ4Rから発せられて右側のマイクロフォン5Rで受音
したホワイトノイズ信号xが、音圧測定信号yとして選
択的に入力されるようになっている。
【0023】また、伝達特性測定装置10にはM系列信
号生成装置2からホワイトノイズ信号xも供給されるよ
うになっている。そして、伝達特性測定装置10は、ホ
ワイトノイズ信号xと、上記のように選択的に入力され
る音圧測定信号yとに基づいて、各スピーカ4L,4R
と各マイクロフォン5L,5Rとの間の4通りのインパ
ルス応答を測定するようになっている。
【0024】ここで、本実施例の伝達特性測定装置10
は、図2に示すように構成されている。即ち、この伝達
特性測定装置10は、実際にはマイクロコンピュータや
A/D変換器等のインタフェース回路等を含んで構成さ
れていて、機能的には、I個のフィルタ係数Wi (i=
0,1,2,…,I−1)からなり且つ各フィルタ係数
i が可変の適応ディジタルフィルタWと、適応アルゴ
リズムの一つであるLMSアルゴリズムに従って適応デ
ィジタルフィルタWの各フィルタ係数Wi を更新するフ
ィルタ係数更新部10Aと、加算部10Bと、を有して
いる。そして、加算部10Bには、ホワイトノイズ信号
xを適応ディジタルフィルタWでフィルタ処理した結果
と、音圧測定信号yとが入力されるようになっていて、
加算部10Bでの加算結果が誤差信号eとしてフィルタ
係数更新部10Aに入力されるようになっている。
【0025】また、フィルタ係数更新部10Aにはホワ
イトノイズ信号xも入力されるようなっていて、フィル
タ係数更新部10Aは、それらホワイトノイズ信号x及
び誤差信号eに基づきLMSアルゴリズムに従って適応
ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を更新するよ
うになっている。即ち、フィルタ係数更新部10Aで実
行されるLMSアルゴリズムは、評価関数E〔e
2 (n)〕を最小化するように適応ディジタルフィルタ
Wのフィルタ係数Wi を逐次更新するアルゴリズムであ
り、その具体的な更新式は下記の(1)式のようにな
る。
【0026】 Wi (n+1)=Wi (n)−αx(n)e(n−i) ……(1) ただし、(n),(n+1)が付く項はそれぞれ離散時
刻n,n+1における値であることを表しており、αは
フィルタ係数Wi の収束安定性や収束速度に関与する収
束係数である。つまり、音圧測定信号yは、ホワイトノ
イズ信号xがスピーカ4L又は4Rから発せられてマイ
クロフォン5L又は5Rで測定された信号であるから、
理論的には誤差信号eが零になった時点で、適応ディジ
タルフィルタWによってスピーカ4L,4Rとマイクロ
フォン5L,5Rとの間のインパルス応答が同定された
ことになる。適応ディジタルフィルタWによって表現さ
れたスピーカ4L,4Rとマイクロフォン5L,5Rと
の間のインパルス応答は、例えば図3に例示するような
時間軸上の波形となる。
【0027】ここで、インパルス応答は、時間軸上で見
て、直接音成分,初期反射音成分及び残響音成分に分け
ることができる。これらのうち、直接音成分は、スピー
カ4L,4Rからマイクロフォン5L,5Rに直接到達
した音の成分であり、初期反射音成分とは、スピーカ4
L,4Rやマイクロフォン5L,5Rに近い床面や壁面
で1〜数回反射してマイクロフォン5L,5Rに到達し
た音の成分であり、残響音成分とは、何回も反射を繰り
返した後にマイクロフォン5L,5Rに到達する音の成
分である。
【0028】そして、伝達特性測定装置10は、切換ス
イッチ8,9を適宜切り換えることにより、上述した組
合せの4通りのインパルス応答h00,h01,h10及びh
11を測定するようになっていて、それら測定されたイン
パルス応答h00〜h11が、フィルタ係数演算装置11に
供給されるようになっている。フィルタ係数演算装置1
1も実際にはマイクロコンピュータや必要なインタフェ
ース回路等から構成されていて、伝達特性測定装置10
から供給されるインパルス応答h00〜h11に基づいて、
立体音響再生装置の伝達関数補正フィルタのフィルタ係
数を演算する処理を実行するようになっている。
【0029】図4は、フィルタ係数演算装置11内で実
行される処理の概要を示すフローチャートである。即
ち、ステップ101において伝達特性測定装置10から
供給されるインパルス応答h00〜h11を読み込み、次い
でステップ102に移行し、インパルス応答h00〜h11
をフーリエ変換して、周波数領域におけるインパルス応
答H00,H01,H10及びH11を求める。
【0030】次いでステップ103に移行し、下記の
(2)式,(3)式に従って周波数領域における伝達関
数補正フィルタのフィルタ係数A0 ,A1 を演算する。 A0 =−H01/H00 ……(2) A1 =−H10/H11 ……(3) 次いでステップ104に移行し、下記の(4)式,
(5)式に従って周波数領域における他のフィルタ係数
0 ,B1 を演算する。
【0031】 B0 =1/{(1−A0 1 )H00} ……(4) B1 =1/{(1−A0 1 )H11} ……(5) このようにフィルタ係数A0 ,A1 ,B0 ,B1 の演算
を周波数領域で行うこととしたのは、時間領域で行う場
合と異なり簡単な四則演算で済み、演算負荷が小さくな
るからである。
【0032】次いで、ステップ105に移行し、フィル
タ係数A0 ,A1 ,B0 ,B1 をハイパス・フィルタ処
理して、それらから所定周波数以下の成分を除去する。
具体的には、人間の可聴周波数領域(20Hz〜20kH
z)のうち、音像の定位にとって重要な周波数帯域(例
えば、8kHz以上)の成分が残るようなハイパス・フィ
ルタを用いてフィルタ処理を行う。
【0033】そして、ステップ106に移行し、ステッ
プ105で低周波成分が除去された各フィルタ係数
0 ,A1 ,B0 ,B1 を逆フーリエ変換して時間領域
におけるフィルタ係数a0 ,a1 ,b0 ,b1 を演算
し、ステップ107でそれらフィルタ係数a0 ,a1
0 ,b1 を例えば所定の外部記憶装置に出力し、それ
らフィルタ係数a0 ,a1 ,b0 ,b1 で伝達関数補正
フィルタを構成して立体音響再生装置に組み込む。
【0034】ここで、本実施例では、ステップ105で
低周波成分を除去しているため、伝達関数補正フィルタ
は、ハイパス・フィルタとしての機能をも有している。
図5は、立体音響再生装置15の構成を示すブロック図
であり、この立体音響再生装置15は、図1に示したよ
うなダミーヘッド6を利用して例えばコンサートホール
等の原音場において収録した再生用音源16と、再生音
場3内に配設されたスピーカ4L,4Rと、スピーカ4
L,4Rの入力側に配設されたアンプ7L,7Rと、こ
のアンプ7L,7Rの入力側に設けられた加算器20
L,20Rと、再生用音源16及び加算器20L,20
R間に介在する伝達関数補正フィルタ17と、この伝達
関数補正フィルタ17と並列に再生用音源16及び加算
器20L,20R間に介在するローパス・フィルタ18
L,18Rと、このローパス・フィルタ18L,18R
の出力側に直列に設けられた遅延手段としての遅延回路
19L,19Rと、を有している。
【0035】つまり、再生用音源16には、いわゆるバ
イノーラル収録方式により左耳用の(ダミーヘッド6の
左耳側のマイクロフォン5Lで収録した)音響データD
L と、右耳用の(ダミーヘッド6の右耳側のマイクロフ
ォン5Rで収録した)音響データDR とが区別可能に収
録されていて、それら音響データDL ,DR が伝達関数
補正フィルタ17を介して、アンプ7L,7Rの入力側
に設けられた加算器20L,20Rに入力されるように
なっている。
【0036】また、音響データDL ,DR は、ローパス
・フィルタ18L,18Rにも入力されるようになって
いて、それらローパス・フィルタ18L,18Rの出力
が、遅延回路19L,19Rを介して加算器20L,2
0Rに入力されるようになっている。そして、加算器2
0L,20Rは、伝達関数補正フィルタ17を介して供
給される音響データと、ローパス・フィルタ18L,1
8R及び遅延回路19L,19Rを介して供給される音
響データとを重畳して、アンプ7L,7Rに供給し、そ
のアンプ7L,7Rの出力がスピーカ4L,4Rに供給
されるようになっている。
【0037】伝達関数補正フィルタ17は、周波数領域
で表現すると(実際には時間領域のフィルタ係数a0
1 ,b0 ,b1 で構成されるが、ここでは説明を判り
やすくするため、周波数領域で表現した)、左耳用の音
響データDL にフィルタ係数A0 を乗じる乗算部17a
と、右耳用の音響データDR にフィルタ係数A1 を乗じ
る乗算部17bと、乗算部17bの出力及び左耳用の音
響データDL を加算する加算部17cと、乗算部17a
の出力及び右耳用の音響データDR を加算する加算部1
7dと、加算部17cの出力にフィルタ係数B0 を乗じ
て加算器20Lに供給する乗算部17eと、加算部17
dの出力にフィルタ係数B1 を乗じて加算器20Rに供
給する乗算部17fと、から構成されている。
【0038】一方、ローパス・フィルタ18L,18R
のカットオフ周波数は、ハイパス・フィルタとしても機
能する伝達関数補正フィルタ17のカットオフ周波数と
同じ又は略同じ周波数に設定されている。また、遅延回
路19L,19Rの遅延時間は、伝達関数補正フィルタ
17における処理時間と、ローパス・フィルタ18L,
18Rにおける処理時間との差を補うように設定する。
つまり、伝達関数補正フィルタ17における処理時間
と、ローパス・フィルタ18L,遅延回路19Lの直列
回路並びにローパス・フィルタ18R,遅延回路19R
の直列回路における処理時間とが一致するように、遅延
回路19L,19Rの遅延時間を設定する。
【0039】次に、本実施例の動作を説明する。即ち、
再生用音源16から出力される左右の音響データDL
R は、伝達関数補正フィルタ17と、ローパス・フィ
ルタ18L,18Rとに入力されるが、伝達関数補正フ
ィルタ17は上述したようにハイパス・フィルタとして
も機能するため、音響データDL ,DR の高周波成分は
伝達関数補正フィルタ17を通じて加算器20L,20
Rに供給され、音響データDL ,DR の低周波成分はロ
ーパス・フィルタ18L,18R及び遅延回路19L,
19Rを通じて加算器20L,20Rに供給される。
【0040】この場合、伝達関数補正フィルタ17及び
ローパス・フィルタ18L,18Rを比較した場合、ク
ロストーク等を除去する機能が必要なため伝達関数補正
フィルタ17における処理時間の方が長くなるのが一般
的であるが、それらの処理時間の差は遅延回路19L,
19Rによって補われる。つまり、伝達関数補正フィル
タ17を通過する高周波成分と、ローパス・フィルタ1
8L,18Rを通過する低周波成分とは、時間的な整合
が採られて加算器20L,20Rに供給され、スピーカ
4L,4Rで同時に再生されるから、高周波成分に対応
する音と、低周波成分に対応する音とが、時間的にずれ
てスピーカ4L,4Rで再生されることはなく、音響デ
ータDL ,DR を正確に再現することができる。
【0041】そして、伝達関数補正フィルタ17が(周
波数領域の表現であるが)図5に示すように構成されて
いれば、左耳用の音響データDL の高周波成分に対応し
た音が受聴者Mの左耳に再現され、右耳用の音響データ
R の高周波成分に対応した音が受聴者Mの右耳に再現
されるようになる。例えば、伝達関数補正フィルタ17
を介しての再生用音源16の左耳用の音響データDL
受聴者Mの左耳との間の伝達特性は、 B0 00+A0 1 00 ={1/(1−A0 1 )}(1−H0110/H0011) ={1/(1−H0110/H0011)}(1−H0110/H0011) =1 となり、左耳用の音響データDL の高周波成分に対応す
る音が受聴者Mの左耳に完全に再現されることが判る。
同様に、伝達関数補正フィルタ17を介しての右耳用の
音響データDR と受聴者Mの左耳との間の伝達特性は、 A1 0 00+B1 10 =(−H10/H11)H00/{(1−A0 1 )H00} +H10/{(1−A0 1 )H11} =0 となり、右耳用の音響データDR の高周波成分に対応す
る音は、受聴者Mの左耳には全く再現されない(クロス
トークは除去される)ことが判る。以上の伝達特性の結
果は、受聴者Mの右耳についても同様である。
【0042】つまり、伝達関数補正フィルタ17を用い
ることにより、再生用音源16に収録されている原音場
における立体的な音響の高周波成分が、再生音場3に居
る受聴者Mの両耳に忠実に再現されるのである。一方、
音響データDR ,DL の低周波成分は、クロストーク等
の除去のための伝達関数補正フィルタを介せずに、遅延
回路19L,19Rを通じてスピーカ4L,4Rにその
まま供給されるから、音響データDR の低周波成分に対
応する音が左側のスピーカ4Lから再生音場3に発せら
れ、音響データDL の低周波成分に対応する音が右側の
スピーカ4Rから再生音場3に発せられる。
【0043】従って、左側のスピーカ4Lから発せられ
た音響データDL の低周波成分に対応する音は、受聴者
Mの左耳のみならず右耳にも到達し、同様に右側のスピ
ーカ4Rから発せられた音響データDR の低周波成分に
対応する音は、受聴者Mの右耳のみならず左耳にも到達
することになる。つまり、音響データDL ,DR の低周
波成分に関しては、基本的には通常のステレオ再生と同
様の再生が行われることなり、立体的な音響の再生に悪
影響を与えるようにも思われるが、低周波成分は音像の
定位に対する寄与が小さいことから、低周波成分につい
てのみ伝達関数補正フィルタを介せずに再生しても、原
音場との音像の不一致の影響は小さくて済むのである。
【0044】換言すれば、低周波成分については、演算
負荷の大きい伝達関数補正フィルタ17を通過させなく
ても、立体音響は良好に再生することができるのであ
る。そして、本実施例の構成であれば、低周波成分は、
完全に無視されるのではなく、従来のステレオ再生と同
様の方法により再生されるから、低周波帯域の音も十分
に再生される。従って、このような立体音響再生装置1
5を例えば自動車の車室内騒音評価装置として応用する
ことを考えた場合、自動車の車室内騒音は概ねレベルの
高い低周波成分を含むことが多く、低周波成分の良好に
再生することが評価装置として応用した場合に要求され
るのであるが、本実施例の構成であればその要求を十分
に満足することもできる。
【0045】しかも、伝達関数補正フィルタ17を作成
する際にインパルス応答h00〜h11の高周波成分のみを
考慮するようにしているため、その伝達関数補正フィル
タ17のタップ数を小さくすることができるという利点
がある。即ち、十分に減衰するのに要する時間は、周波
数が高いほど短いのであるから、フィルタ長を長くする
要因はインパルス応答の低周波成分にある。つまり、F
IRフィルタである伝達関数補正フィルタ17は、イン
パルス応答の全周波数成分を考慮すると、図6(a)に
示すような波形となってタップ数が大きくなるが、イン
パルス応答のうち減衰速度の速い高周波成分のみを考慮
すると図6(b)に示すような波形となってタップ数が
小さくなるのである。
【0046】そして、タップ数が小さくなれば、それだ
け演算量が軽減されるから、安価なマイクロプロセッサ
でも十分に実現が可能となる。例えば、伝達関数補正フ
ィルタ17に含まれる最低周波数成分が、従来の80Hz
から本実施例の8kHz程度に変更した場合、80Hzの音
と8kHzの音とが同一のレベルに減衰するまでの時間は
1:100になるから、フィルタ長も同様に短くなり、
それだけ演算量が軽減される。また、フィルタ長が短く
なれば、位相ずれによってインパルス応答の後側の数値
の精度低下もそれほど問題とならないから、当初求めた
フィルタ係数を再設定することなく使用できるという利
点がある。
【0047】以上のように、本実施例の構成であれば、
伝達関数補正フィルタ17のタップ数を小さくしてその
演算量を軽減することができる一方、音響データDL
Rに含まれる低周波成分も再生することができるか
ら、安価な構成で、残響を有する一般的な再生音場3に
おいても満足できるレベルで立体的な音響を再生するこ
とができ、しかも低周波成分を犠牲にすることがないの
である。
【0048】また、伝達関数補正フィルタ17を設計す
る際のハイパス・フィルタのカットオフ周波数と、ロー
パス・フィルタ18L,18Rのカットオフ周波数と
を、一致又は略一致させているから、音響データDL
R の全ての周波数成分の再生が保証されるから、原音
場の音響を再生音場3において漏れなく再現することが
できる。従って、現実的には、両フィルタのカットオフ
周波数を一致させるよりも、ローパス・フィルタ18
L,18Rのカットオフ周波数を、ハイパス・フィルタ
のカットオフ周波数よりも若干高くして、両フィルタの
通過帯域特性を若干オーバーラップさせることが望まし
い。
【0049】さらに、インパルス応答の高周波成分のみ
を求めて伝達関数補正フィルタ17を設計すると、図6
の(a)及び(b)を比較しても明らかなように、直接
音と反射音との分離が容易になるという利点がある。従
って、直接音のみを考慮した伝達関数補正フィルタ17
の作成も可能であり、これにより反射の影響のない立体
音響の再生が可能となる。つまり、初期反射音成分や残
響音成分は上述したように時間軸上で後になるほど変動
し易いため、これらを含めて伝達関数補正フィルタ17
を設計してしまうと、却って正確にフィルタ係数を求め
ることができなくなる可能性があるのに対し、直接音の
みを抽出してフィルタ係数を演算すれば安定した効果が
得られるのである。
【0050】図7は本発明の第2実施例を示す図であっ
て、上記第1実施例の図5と同様に立体音響再生装置1
5の構成を示すブロック図である。なお、上記第1実施
例と同様の構成には、同じ符号を付し、その重複する説
明は省略する。即ち、本実施例では、遅延回路19L,
19Rの出力側にイコライザ21L,21Rを介在させ
ていて、これによりローパス・フィルタ18L,18R
で抽出された低周波成分の周波数特性をイコライザ21
L,21Rで適宜調整してから加算器20L,20Rに
供給するようにしている。
【0051】そして、イコライザ21L,21Rにおけ
る各周波数成分のゲイン変更量は、ローパス・フィルタ
18L,18Rを介しての再生用音源16及び受聴者M
の耳位置間の伝達特性の逆特性が実現されるように設定
する。つまり、図4の処理で求められる伝達特性H00
11の逆特性に基づいて、イコライザ21L,21Rの
周波数特性を決定する。
【0052】このような構成であれば、ローパス・フィ
ルタ18L,18Rを通じて再生される音響データ
L ,DR の低周波成分のスペクトル形状が、再生の途
中で変化することがイコライザ21L,21Rによって
キャンセルされるから、原音場における音響にさらに近
い再生音が得られるという効果がある。なお、イコライ
ザ21L,21Rの周波数特性を決定するのに必要な伝
達特性H00,H11は、図8に示すように、アンプ7L,
7Rの入力側にローパス・フィルタ18L,18R及び
遅延回路19L,19Rを配設した状態で測定すること
とすれば、伝達特性H00,H11にそれらローパス・フィ
ルタ18L,18R及び遅延回路19L,19Rの特性
を含めることができるから、イコライザ21L,21R
の周波数特性をより正確に設計することができるように
なる。
【0053】図9及び図10は本発明の第3実施例を示
す図であり、図9は本実施例における伝達関数補正フィ
ルタ17を設計する際に用いるハイパス・フィルタ(図
4のステップ105参照)の周波数特性図、図10は本
実施例におけるローパス・フィルタ18L,18Rの周
波数特性図である。なお、伝達関数補正フィルタ設計装
置1や立体音響再生装置15の構成は上記第1実施例と
同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0054】即ち、本実施例では、ハイパス・フィルタ
のカットオフ周波数を8kHzよりも若干低くし、ローパ
ス・フィルタ18L,18Rのカットオフ周波数を8k
Hzよりも若干高くして、ハイパス・フィルタ及びローパ
ス・フィルタ18L,18Rの通過特性を若干オーバー
ラップさせるとともに、減衰特性を急峻にせず、緩やか
(例えば12dB/オクターブ以下)にしている。
【0055】ハイパス・フィルタ及びローパス・フィル
タ18L,18Rに本実施例のような特性を持たせる
と、伝達関数補正フィルタ17による再生音と、ローパ
ス・フィルタ18L,18Rを含む系による再生音と
が、カットオフ周波数近傍で重なるため、例えば単一周
波数の音源がスイープして、発生する音の周波数が上昇
又は下降するような場合に、そのカットオフ周波数を越
えるときに音像が不連続に変化することを防止でき、自
然な再生が可能になり、違和感のない立体音響が再生で
きるという利点がある。
【0056】なお、上記実施例は、インパルス応答h00
〜h11は、図2を伴って説明したように適応ディジタル
フィルタWを利用して求めるようにしているが、これに
限定されるものではなく、例えばホワイトノイズ信号x
と音圧測定信号yとをそれぞれフーリエ変換し、各周波
数成分毎に伝達特性を演算し、その結果を逆フーリエ変
換して直接求めるようにしてもよい。
【0057】また、再生用音源16は、上記実施例のよ
うに予め収録したものに限られることはなく、図1のよ
うなマイクロフォン5L,5Rを有するダミーヘッド6
を原音場に配設し、その測定音をそのまま再生用音源と
して用いてリアルタイムで立体音響を再生するようにし
てもよい。そして、上記実施例では、処理時間を整合さ
せるためにローパス・フィルタ18L,18Rと直列に
遅延回路19L,19Rを設けるようにしているが、伝
達関数補正フィルタ17における処理時間よりもローパ
ス・フィルタ18L,18Rにおける処理時間の方が長
い場合には、ローパス・フィルタ18L,18Rと直列
の遅延回路19L,19Rを設けずに、伝達関数補正フ
ィルタ17の処理時間とローパス・フィルタ18L,1
8Rの処理時間との差を補うような遅延回路を、伝達関
数補正フィルタ17と直列に設けるようにすれば、上記
実施例と同様に処理時間の整合がとれるから、再現性を
損なわずに済む。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る発
明によれば、再生用音源と複数のスピーカとの間に、伝
達関数補正フィルタとローパス・フィルタとを並列に介
在させたため、伝達関数補正フィルタのタップ数を小さ
くしてその演算量を軽減することができる一方、再生用
音源の出力に含まれる低周波成分も再生することができ
るから、安価な構成で、残響を有する一般的な再生音場
においても満足できるレベルで立体的な音響を再生する
ことができ、しかも低周波成分を犠牲にすることがない
という効果が得られる。
【0059】また、請求項2に係る発明であれば、再生
用音源から出力される音響情報の全ての周波数成分の再
生が保証されるから、原音場の音響を漏れなく再現する
ことができるという効果がある。そして、請求項3に係
る発明であれば、伝達関数補正フィルタによる再生音と
ローパス・フィルタによる再生音とが同時に所定の受音
位置に到達するようになるから、原音場の音響を正確に
再現することができるという効果がある。
【0060】さらに、請求項4に係る発明であれば、イ
コライザの周波数特性を適宜設定することにより、より
原音場に近い音を再生できるという効果がある。そし
て、請求項5に係る発明であれば、遮断周波数を越える
時に音像が不連続に変化することが避けられ、自然な再
生が行われるから、違和感のない立体音響の再生が可能
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例における伝達関数補正フィ
ルタ設計装置の構成を示すブロック図である。
【図2】伝達特性測定装置の一例を示すブロック図であ
る。
【図3】インパルス応答の一例を示す波形図である。
【図4】フィルタ係数演算装置における処理の概要を示
すフローチャートである。
【図5】立体音響再生装置の構成を示すブロック図であ
る。
【図6】伝達関数補正フィルタの形状を示す波形図であ
る。
【図7】第2実施例における立体音響再生装置の構成を
示すブロック図である。
【図8】第2実施例における伝達関数補正フィルタ設計
装置の望ましい構成を示すブロック図である。
【図9】第3実施例におけるハイパス・フィルタの周波
数特性図である。
【図10】第3実施例におけるローパス・フィルタの周
波数特性図である。
【符号の説明】
1 伝達関数補正フィルタ設計装置 2 ホワイトノイズ生成装置 3 再生音場 4L,4R スピーカ 5L,5R マイクロフォン 6 ダミーヘッド 10 伝達特性測定装置 11 フィルタ係数演算装置 15 立体音響再生装置 16 再生用音源 17 伝達関数補正フィルタ 18L,18R ローパス・フィルタ 19L,19R 遅延回路(遅延手段) 20L,20R 加算器 21L,21R イコライザ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G10K 15/12 H03H 21/00 8842−5J H04S 7/00 E (72)発明者 松澤 智之 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 立体音響再生用の音響情報を出力する再
    生用音源と、前記音響情報が入力される複数のスピーカ
    とを備え、それら再生用音源と複数のスピーカとの間
    に、その複数のスピーカ及び所定の受音位置間のインパ
    ルス応答の所定周波数よりも高周波の成分に基づいて設
    定され且つ音響再生系の伝達関数を補正する伝達関数補
    正フィルタと、ローパス・フィルタとを、並列に介在さ
    せたことを特徴とする立体音響再生装置。
  2. 【請求項2】 前記所定周波数と、前記ローパス・フィ
    ルタのカットオフ周波数とを、一致又は略一致させた請
    求項1記載の立体音響再生装置。
  3. 【請求項3】 前記伝達関数補正フィルタ又は前記ロー
    パス・フィルタと直列に遅延手段を設けるとともに、前
    記伝達関数補正フィルタを介しての前記再生用音源及び
    複数のスピーカ間の音響情報の伝達時間と、前記ローパ
    ス・フィルタを介しての前記再生用音源及び複数のスピ
    ーカ間の音響情報の伝達時間とが一致するように、前記
    遅延手段の遅延時間を設定した請求項1又は請求項2記
    載の立体音響再生装置。
  4. 【請求項4】 前記ローパス・フィルタと直列にイコラ
    イザを設けた請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の
    立体音響再生装置。
  5. 【請求項5】 前記インパルス応答の所定周波数よりも
    高周波の成分を抽出する際の減衰特性及び前記ローパス
    ・フィルタの減衰特性を、緩やかな特性に設定した請求
    項1乃至請求項4のいずれかに記載の立体音響再生装
    置。
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