JPH0784796B2 - 鉄筋コンクリート構築物の水平切断解体装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ビル、橋梁、基礎、大
型プラント、地下鉄、原子力発電所その他の鉄筋コンク
リート構築物の水平切断解体工法に関する。

【０００２】

【従来の技術】鉄筋コンクリート構築物の解体装置とし
ては、従来より、爆薬や化学薬品の膨張圧力やガス圧力
を利用して破壊する装置、またスチールボール、振動ハ
ンマー、油圧により破砕する装置、さらに円板状ブレー
ドや水圧を利用したウォータージェットにより切断する
装置などが知られている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
爆薬等により破壊する工法やスチールボール等により破
砕する装置は、何れも対象の構築物を完全に解体するた
めに適するものであり、従って、構築物の部分解体には
殆ど使用できない。また、これらの解体装置では、周辺
の環境に及ぼす爆風、振動、衝撃音、騒音、塵芥等の影
響が大きいため、使用場所や使用条件が厳しく制限され
る。

【０００４】一方、円板状ブレードの回転により切断す
る装置は、構築物の部分解体に適するものであり、構築
物の老化に伴う補強、増改築等の工事に広く使用されて
いる。しかし、そのブレード式切断機は、ブレード製造
上の都合や取扱い上の都合で小型軽量化されているため
切断能力に劣り、切断断面積は狭い範囲に制限され、ま
た、切断可能厚さも３０〜４０ｃｍ程度が最大である。
また、このような円板状ブレードの回転による部分切断
の場合は、切断不要個所にもオーバーカットを要するな
どの問題があり、さらに被切断壁面に取り付けたガイド
レールに沿ってブレード式切断機を走行駆動させる従来
の工法は、安全性や作業性にも問題があった。

【０００５】また、水圧を利用したウォータージェット
により切断する装置も構築物の部分解体に使用すること
ができるが、切断能力が著しく劣る上に大きな機械設備
を要し、また切断面が放射状に広がるなどの実用上の難
点があった。

【０００６】しかして、本発明の目的は、鉄筋コンクリ
ート構築物の所要個所を内部の鉄筋も含めて、その切断
断面積、切断厚さや切断高さ、位置に制限されることな
く、きわめて早い切断速度で、正確に、作業性よく安全
に、しかも振動、騒音、塵芥等、外部環境への影響がき
わめて小さい状態において水平に切断解体することので
きる解体装置を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明に係る鉄筋コンク
リート構築物の水平切断解体装置は、サポートに対し軸
線回りの回転角度を調節しうるよう固定したラック、該
ラックに嵌合する自走台、該自走台に固定されかつワイ
ヤーに超硬質ビーズを適宜のピッチで付設してなる無端
状切断用ケーブルを鉄筋コンクリート構築物に張設する
駆動輪、該駆動輪を駆動する駆動装置、自走台に支持さ
れ前記ラックに噛み合うピニオンをワイヤーソーの張力
に応じて駆動して自走台を移動する自走台移動装置とか
らなることを特徴としている。

【０００８】

【作用】上記において切断用ケーブルの走行駆動は、油
圧モーターや電動モーターその他の原動機で回転駆動さ
れる駆動輪により行われ、またその駆動輪と鉄筋コンク
リート構築物との間における切断用ケーブルの配設や切
断用ケーブルの走行の方向転換などは、駆動輪の回転面
の角度調節や各曲がり個所におけるプーリーの架設によ
り自在に行われる。また、ラックをサポトに対し軸線回
りに回転することにより、駆動輪を任意の角度に向け、
更に走行する切断用ケーブルのは、所要張力に常時保持
されるように所要方向に付勢され、その張力の維持や調
節は、例えば上記駆動輪をその付属機器等と共に、切断
解体の進行に伴って後方へ漸次移動させることにより行
うことができる。

【０００９】

【実施例】以下、本発明を図面に基づいて具体的に説明
する。図１は本発明に係る鉄筋コンクリート構築物の切
断解体装置の一例を説明する自走台の斜視図であり、同
図において、柱状の鉄筋コンクリート構築物１の前面の
路面上に、高さの調節が可能な２基のサポ−ト２，２ａ
がアンカ−等（図示を省略する）によって不動状態に仮
設され、それらのサポート２，２ａにギヤ付きの円柱状
ラック３が、その軸線を中心とする回転角の調節が可能
なように固定状態で軸架され、そのラック３に、ワイヤ
ーソー駆動装置である自走台４が軸線方向に移動自在に
嵌め込まれている。

【００１０】その自走台４には、駆動輪5及びそれを回
転駆動するための油圧モータ、無段変速機などからなる
駆動輪回転機構６、並びに上記ラック３と噛合されるピ
ニオン７及びそれを回転駆動するための油圧モータなど
からなるピニオン回転機構８が搭載され、さらにそれら
の駆動輪回転機構６及びピニオン回転機構８には、可撓
性の油圧ホース９を介して油圧制御ボックス１０が接続
されている。さらに、鉄筋コンクリート構築物１表面の
切断開始予定部と駆動輪５との間には切断用ケーブル１
１が無端状に掛けられている。

【００１１】その切断用ケーブル１１は、その拡大横断
面図である図２に例示するように、直径５ｍｍのスチ−
ルワイヤ１２に、ダイヤモンド粒表面層を有する外形１
０ｍｍ、長さ１０ｍｍの円筒状ビ−ズ１３が２０〜３０
ｍｍピッチで遊嵌され、かつ隣接する各円筒ビーズ１
３，１３間にコイルスプリング１４が同様に遊嵌され、
最小直径１００ｍｍで屈曲可能とされている。なお、そ
のビ−ズ１３は、鉄筋を含むコンクリ−ト層、コンクリ
−トブロック、レンガ等を切断することができる超硬質
のものであればよく、ダイヤモンド以外のセラミックス
を使用したものでもよく、スチ−ルワイヤに固定しても
よい。また、スチールワイヤ１２には、適当数のビーズ
１３及びコイルスプリング１４の繰り返しからなる各ブ
ロックごとに、それらのブロック間の自由な移動を制限
するためのクリップ１８を付設して固定する。また、コ
イルスプリング１４は屈曲可能なスペーサとして有用で
あるが、場合によっては、スチールワイヤ１２の屈曲性
を阻害しない範囲で円筒状スリーブと代替させてもよ
く、また、この円筒状スリーブをワイヤーに適宜固定
し、あるいはビーズ１３のみをスチールワイヤ１２に所
要のピッチで交換可能に固定したものでもよい。

【００１２】上記の構成において、切断用ケーブル１１
を、駆動輪回転機構６の作動による駆動輪５の回転駆動
によって、例えば１５〜４０ｍ／ｓｅｃの速度で循環す
るように走行させ、同時にそれをピニオン回転機構８の
作動によるピニオン７の回転駆動及びそれに伴う自走台
４のラック３に沿う移動によって後方に常時付勢し、例
えば５０〜２００ｋｇの張力で後方に引張ると、鉄筋コ
ンクリート構築物１は、内部の鉄筋も含めて完全に切断
解体される。なお、上記の切断解体作業に際しては、通
常の場合、冷却、潤滑、洗浄等のために切断個所に常時
注水することが必要である。

【００１３】上記のように、自走台４をラック３に沿っ
て移動させる装置では、鉄筋コンクリート構築物１の切
断解体直後や切断用ケーブル１１の突然の破断などに際
しても、自走台４が暴走したり、切断用ケーブル１１が
飛び跳ねたりする危険性がないので安全である。

【００１４】なお、上記において駆動輪５の回転面は略
水平に調節されているが、この駆動輪５は、サポート
２，２ａに対するラック３の軸線回りに、回転角を公知
の手段で所要の方向に自在に調節でき、また、サポ−ト
２，２ａの各高さの調節を、同様に公知の手段で所要の
高さに調節することができる。例えば、ラック３を図１
に示す状態から軸線回りに、何れかの方向に９０度回転
させてサポート２，２ａに固定すると、駆動輪５の回転
面は垂直となり、また図１において、サポート２をサポ
ート２ａよりも高い位置に調節すると、駆動輪５の回転
面は、鉄筋コンクリート構築物１の方向に上向き状態で
傾斜する。

【００１５】また、鉄筋コンクリ−ト構築物１と駆動輪
５との間に単数又は複数のプ−リを所要の角度で配置す
ることにより、駆動輪５に対する切断用ケ−ブル１１の
巻き掛け角度を調節したり、切断用ケ−ブル１１を自由
な長さで自在に屈曲させて配設したり、また切断用ケ−
ブル１１を鉄筋コンクリ−ト構築物１の所要位置に自在
に掛けたり、さらに鉄筋コンクリ−ト構築物１と駆動輪
５との間の相対的配置関係も自由に選択することが可能
となる。なお、上記においてピニオン回転機構の作動に
よるピニオンの回転駆動及びそれに伴う自走台のラック
に沿う移動に代えて自走台をチェン駆動することも可能
である。

【００１６】しかして、上記のように、必要に応じて駆
動輪５の高さ及び傾斜角度を調節したり、各所にプ−リ
を配置することなどにより、切断用ケ−ブル１１を自在
に配設して走行駆動することができるので、鉄筋コンク
リ−ト構築物１の上記水平切断のみならず、所要高さに
おける傾斜切断や垂直切断、その他変則的な切断が、切
断厚さや切断断面積の大小にかかわらず可能であり、ま
た例えば切断装置の搬入が困難な狭い場所、ビルの屋上
のように高い危険な場所、或いは鉄道線路沿いの危険な
場所等における鉄筋コンクリ−ト構築物1の切断解体に
際しても、切断用ケ−ブル１１を走行可能に屈曲配設す
るのみで足りる。また、このように鉄筋コンクリ−ト構
築物１と駆動輪５との間に切断用ケ−ブル１１を配設し
た後は、解体作業者は、切断個所から離れた場所、或い
は安全な場所で油圧制御ボックス１０を遠隔操作するこ
とができ、場合によっては、長時間の無人運転も可能で
ある。

【００１７】このような鉄筋コンクリ−ト構築物1の切
断解体装置は、廃棄のための切断解体のみならず、例え
ば橋桁、公衆便所、住宅、碑、機械基礎、柱等の下部切
断による上部本体の移動、保存等にも有用である。

【００１８】このような切断解体装置により、煙突及び
柱状の鉄筋コンクリ−ト構築物１を上部から下部に至る
まで安全かつ確実に切断解体することが可能である。な
お、煙突の撤去作業は、従来、煙突の回り全体に足場を
組み、その上部から、ブレ−ド式切断機により手作業で
順次切断したり、重機等の先端に油圧破砕機を取付けて
順次破壊する解体工法が広く知られていたが、手作業で
は、切断速度が遅い上に解体作業者が切断個所に常時接
近している必要があるので危険であり、また油圧破砕機
による場合は騒音、振動が激しい上に鉄筋コンクリ−ト
のガラが飛散、落下するので、これも安全面に問題があ
ったものである。

【００１９】図３は、本発明に係る鉄筋コンクリ−ト構
築物の切断解体装置の別の例を説明する斜視図であり、
同図において、壁状の鉄筋コンクリ−ト構築物１０１に
予め切断端部孔Ｐ，Ｑ，Ｒ，Ｓが穿設され、先ず、切断
端部孔Ｐ，Ｑ間に切断用ケ−ブル１１が通され、駆動輪
５に無端状に掛けられている。しかして、その走行駆動
により、鉄筋コンクリ−ト構築物１０１の切断端部孔Ｐ
と切断端部孔Ｑとの間は完全に切断され、円板状ブレ−
ドの回転による部分切断の場合のようなオ−バ−カット
は全く不要でおる。続いて、同様の操作により、必要に
応じて駆動輪５の高さや傾斜角度を調節し、或いはまた
図３に示すような縦、横プ−リや傾斜プ−リ、その他種
々のプ−リを介して、切断端部孔Ｐ，Ｑ間、切断端部孔
Ｒ，Ｓ間、及び切断端部孔Ｓ，Ｐ間についても切断する
ことにより、鉄筋コンクリ−ト構築物１０１に四角形の
開口部を穿設することができる。このような切断解体工
法の場合、切断用ケ−ブル１１の通る切断端部孔さえ穿
設することができれば足りるので、従来のブレ−ド式切
断機では到底切断不可能な厚さの鉄筋コンクリ−ト構築
物101も容易に切断解体したり、開口することができ
る。

【００２０】なお切断用ケ−ブル１１の走行駆動手段や
張力調節手段は図１に示すものと同様であるので、詳細
な説明及び図示を省略する。

【００２１】

【発明の効果】以上のように、本発明に係る鉄筋コンク
リ−ト構築物の切断解体装置では、超硬質ビ−ズを付設
してなる切断用ケ−ブルを走行駆動させて鉄筋コンクリ
−ト構築物を切断解体するので、駆動輪からの回転駆動
力及び引張力を切断用ケ−ブルの長さや屈曲の態様に関
係なく、ベルト伝動やロ−プ伝動のように自在に切断用
ケ−ブルに伝達することができる。

【００２２】従って、この切断解体装置では、例えば煙
突やビルの屋上のように高い危険な場所や鉄道線路沿い
の危険な場所、或いは密集地や狭い場所等における種々
の鉄筋コンクリ−ト構築物の切断解体、或いは他の部分
を破壊することなしに所要個所のみを選択的に切断解体
する鉄筋コンクリ−ト構築物の部分切断解体等に際し
て、内部の鉄筋も含めて、その切断断面積や切断厚さに
制限されることなく、きわめて早い切断速度で、作業性
よく安全に、しかも振動、騒音、塵芥等、外部環境への
影響がきわめて小さい状態において切断解体を施工する
ことができる。

【００２３】更に、ラックが軸線回りに回転角を調節で
きるので、ラックに嵌合する自走台の駆動輪により駆動
される駆動輪に対する切断用ケーブルの巻き掛け角度を
調節したり、切断用ケーブルを鉄筋コンクリート構築物
の所要位置に自在に掛けたりすることが可能となる。

【００２４】また、本発明においては、駆動輪を搭載し
た自走台が嵌めこまれているラックは、鉄筋コンクリ−
ト構築物の切断にともなう自走台の後退に関与するとと
もに、軸線回りに回転角を調節することによる自走台及
び回転する駆動輪の傾斜角度の調節にも関与している一
人二役の作用をすることができる。しかも、上記のよう
なラックをしようすることにより、駆動輪及び自走台を
移動させる装置は、上下方向及び横幅方向においてコン
パクトな設計が可能となり、狭い工事現場等において使
用する場合きわめて好都合となる。

【００２５】上記のように、必要に応じて傾斜角度を調
節することができるので、鉄筋コンクリート構築物の上
記水平切断のみならず、所要高さにおける傾斜切断や垂
直切断、その他変則的な切断が、切断厚さや切断断面積
の大小にかかわらず可能である。

【００２６】また、サポートの高さが調節できるので、
地上面に凹凸があってもガタツキを調節して切断解体装
置を水平に設置することができる。

【００２７】更に、この切断解体装置によれば、鉄筋コ
ンクリート壁に多角形状の開口部をオーバーカットなし
に穿設することもできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る鉄筋コンクリート構築物の水平切
断解体装置の一例を説明する斜視図である。

【図２】切断用ケーブルの一例の拡大横断面図である。

【図３】本発明に係る鉄筋コンクリート構築物の切断解
体装置の他の実施例を説明する斜視図である。

【符号の説明】

１ 鉄筋コンクリート構築物 ２ サポート ２ａ サポート ３ ラック ４ 自走台 ５ 駆動輪 ６ 駆動輪回転機構 ７ ピニオン １０ 油圧制御ボックス １１ 切断用ケーブル １２ スチールワイヤ １３ ビ−ズ １４ コイルスプリング

フロントページの続き (56)参考文献 ＤＥ ＢＥＥＲＳ ＩＮＤＵＳＴＲＩＡ Ｌ ＤＩＡＭＯＮＤ ＤＩＶＩＳＩＯＩＮ ＰＴＹ ＬＩＭＩＴＥＤ 1981年発行 「ＩＤＲ５／83 ＶＯＬＵＭＥ 43 ＮＵ ＭＢＥＲ 498」232頁乃至236頁 ＩＬ ＧＩＯＲＮＡＬＥ ＤＥＬＬ’ ＩＮＧＥＧＮＥＲＥ Ｎ．５−１ ＭＡＲ ＺＯ 1984 「ＣＨＩＲＵＲＧＩＡ ＤＥ Ｌ ＣＥＭＥＮＴＯ ＡＲＭＡＴＯ」

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】サポートに対し軸線回りの回転角度を調節
   しうるよう固定したラック、該ラックに嵌合する自走
   台、該自走台に固定されかつワイヤーに超硬質ビーズを
   適宜のピッチで付設してなる無端状切断用ケーブルを鉄
   筋コンクリート構築物に張設する駆動輪、該駆動輪を駆
   動する駆動装置、自走台に支持され前記ラックに噛み合
   うピニオンを切断用ケーブルの張力に応じて駆動して自
   走台を移動する自走台移動装置とからなることを特徴と
   する鉄筋コンクリ−ト構築物の水平切断解体装置。
2. 【請求項２】高さの調節が可能であるサポートを備えた
   ことを特徴とする請求項１記載の鉄筋コンクリ−ト構築
   物の水平切断解体装置。