JPH0780628A - 鋳造方法および装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 複雑な形状の鋳造製品を欠陥なく、しかも高
能率に製造することができる鋳造方法および鋳造装置を
提供する。 【構成】 鋳型１の鋳型空間６内に、当該鋳型空間６の
下方に設けた押湯３の側から溶湯を鋳込んだのち、鋳型
１を鋳型空間６を下側にして反転させることによって湯
溜り２，湯口４および湯道５内の溶湯を排出させ、反転
状態で溶湯の凝固を完了させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えばクランクシャフ
トなどを鋳造するのに利用される鋳造方法および、当該
鋳造方法を、例えば鋳造工場の生産ラインにおいて、能
率的に実施するのに適した鋳造装置に係わるものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、例えばクランクシャフトのよう
に、細長く、しかも複雑な形状を有する製品を鋳造する
に際しては、例えば図５に示すような鋳型を用いて、溶
湯を鋳型の下部に設けた湯道から押し上げるように鋳込
むようにしていた。

【０００３】すなわち、図に示す鋳型１００は、溶湯の
鋳込みによって製品となるべき鋳型空間１０１を縦方向
に備えると共に、内部巣欠陥の最も発生しやすい部位、
つまり鋳型空間１０１の最も容積の大きい部分１０１ａ
が鋳型１００の下方にレイアウトしてあり、当該鋳型空
間１０１の上部に押湯１０２が配置してある。

【０００４】この鋳型１００においては、溶湯が鋳型１
００の上部に設けた湯溜り１０３から、鋳型空間１０１
とほぼ平行に配置した湯口１０４および鋳型１００の下
部に設けた湯道１０５を経て、下方側から押し上げるよ
うに鋳込まれることから、鋳型空間１０１内に溶湯を静
かに満たすことができ、酸化物などの巻き込みを防止す
ることができる。

【０００５】また、図６に示すような鋳型１１０を用
い、当該鋳型１１０を立てた状態において、押湯１１１
に連通する湯溜り１１２から注湯したのち、鋳型１１０
を図中の矢印方向に傾動させることによって鋳型空間１
１３内に溶湯を満たすようにしたいわゆるダービル鋳造
法が実用化されており、このダービル鋳造法において
も、鋳型１１０の傾動速度を遅くすることによって極め
て静かな注湯を行うことができる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図５に
示した鋳造方法においては、鋳型１００の下方側から鋳
型空間１０１に溶湯が注入されるため、注湯完了時点に
おいて、鋳型空間１０１の上部（大容積部分１０１ａ）
よりも下部の溶湯温度の方が高くなっており、鋳型空間
１０１の上方から凝固が進行することから、前記大容積
部分１０１ａにおける内部巣欠陥の発生を防止すること
ができないという問題点がある。

【０００７】また、図６に示したダービル鋳造法におい
ては、押湯１１１の側から溶湯が鋳込まれるので、内部
巣欠陥の発生しやすい大容積部分１１３ａを押湯１１１
の側に配置することによって内部巣欠陥の発生をほぼ防
止することができるものの、溶湯を湯溜り１１２内にい
ったん溜めたのち、徐々に傾動させることによって溶湯
を注入するようにしているので、溶湯温度が下がってし
まうという問題点や湯溜り１１２の取付けなどに工数が
かかるため生産性が著しく劣るという問題点がある。
また、溶湯温度の低下に対応するために、注湯温度を高
めた場合には、溶湯酸化による酸化物増や、ガス量増加
に基づく介在物やピンホール、内部巣などの欠陥が増加
するという問題が生じることになり、これら問題点の解
決がクランクシャフトのような細長く複雑な形状を有す
る製品を鋳造するうえでの課題となっていた。

【０００８】

【発明の目的】本発明は、従来の鋳造方法における上記
課題に着目してなされたものであって、複雑な形状の鋳
造製品を欠陥なく、しかも高能率に製造することができ
る鋳造方法、および当該鋳造方法を生産性よく実施する
ことができる鋳造装置を提供することを目的としてい
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明に係わる鋳造方法
は、鋳型の上部に設けた湯溜りから、当該湯溜りと鋳型
の下部に設けた押湯との間を連結する湯口および湯道を
介して、前記押湯の上方に配設した鋳型空間内に溶湯を
鋳込んだのち、鋳型内の溶湯が凝固を完了するまでの間
に、当該鋳型を前記鋳型空間を下側にして反転させるこ
とによって、前記湯溜り，湯口および湯道内の溶湯を排
出せしめると共に、当該反転状態で凝固を完了せしめる
構成としたことを特徴としており、このような鋳造方法
の構成を前述した従来の課題を解決するための手段とし
ている。 また、本発明に係わる鋳造装置は、上記鋳造
方法を実施するに適したものであって、鋳型を保持する
鋳型クランプ治具と、前記鋳型を保持した鋳型クランプ
治具を回転可能に支持する支持手段と、該支持手段に支
持された前記鋳型クランプ治具を移送する搬送手段と、
該搬送手段による移送路中の第１の所定位置において前
記鋳型クランプ治具に保持された鋳型に溶湯を注ぎ入れ
る注湯手段と、前記移送路中の第１の所定位置において
前記鋳型を注湯姿勢に保持すると共に、当該移送路中の
第２の所定位置において注湯後の鋳型を前記鋳型クラン
プ治具と共に反転させる鋳型姿勢制御手段と、前記鋳型
の反転によって当該鋳型から排出された溶湯を回収する
回収手段を備えた構成としたことを特徴としている。

【００１０】

【発明の作用】本発明に係わる鋳造方法においては、鋳
型上部に設けた湯溜りから注ぎ込まれた溶湯が湯口およ
び湯道を介し、鋳型の下方に配置した押湯を経て、押湯
上方の鋳型空間内に鋳込まれるようになっており、当該
溶湯は、鋳型空間の下方側から静かに押し上げられるよ
うにして注入されるので、酸化物などの巻き込みが発生
せず、溶湯の温度降下も極めて少ないものとなる。 そ
して、注湯完了後に鋳型が反転され、この状態で凝固が
進行することから、最も温度の高い押湯部分が上方に位
置して押湯効果を発揮するので、理想的な指向性凝固と
なって、凝固時の収縮などによる内部巣欠陥の発生が解
消されることとなる。

【００１１】本発明に係わる鋳造装置は、鋳型を保持す
る鋳型クランプ治具、鋳型クランプ治具を回転可能に支
持する支持手段、鋳型クランプ治具を移送する搬送手
段、移送途中でクランプ治具に保持された鋳型内に溶湯
を鋳込む注湯手段、注湯時に鋳型の姿勢を正しく保持す
ると共に注湯後の鋳型をクランプ治具と共に反転させる
鋳型姿勢制御手段、および反転によって鋳型から排出さ
れた溶湯を回収する回収手段を具備するものであるか
ら、本発明に係わる鋳造方法を連続的かつ能率的に実施
するのに適したものとなっている。

【００１２】

【実施例】以下、本発明を図面に基づいて具体的に説明
する。

【００１３】図１ないし図４は、本発明に係わる鋳造方
法の一実施例を説明するためのものであって、図１は当
該鋳造方法に用いる鋳型の形状を示す概略図、図２は当
該鋳造方法を実施するために用いる鋳造装置の全体構造
と鋳造手順を示す説明図である。

【００１４】図１に示す鋳型１は、クランクシャフト鋳
造用のものであって、湯溜り２を当該鋳型１の上部に、
押湯３を下部にそれぞれ設けており、これら湯溜り２と
押湯３の間は湯口４および湯道５により連結され、前記
押湯３の上方にクランクシャフトの形状をなす鋳型空間
６が配設され、当該鋳型空間６は、内部巣欠陥の発生し
やすい大容積部分６ａが下方側、すなわち押湯３の側に
位置するようにレイアウトされている。

【００１５】図２に示す鋳造装置１０は、後述する構造
を有し、ベルトコンベア１１によって搬入された鋳型１
を保持する鋳型クランプ治具１２と、鋳型１を保持した
状態の鋳型クランプ治具１２を回転可能に支持する支持
手段としてのレール１３と、レール１３上に支持された
前記鋳型クランプ治具１２を当該レール１３に沿って移
送する搬送手段としてのチェーンコンベア１４（図３参
照）と、チェーンコンベア１４による移送路中の第１の
所定位置、すなわち図２中に記号Ｂで示す位置から記号
Ｃで示す位置までの間において、鋳型クランプ治具１２
に保持された鋳型１内に溶湯を注ぎ入れる注湯手段とし
ての取鍋１５を備えている。

【００１６】さらに鋳造装置１０は、前記鋳型クランプ
治具１２の移送路、すなわちレール１３に沿って、鋳型
姿勢制御手段であるガイド１６および１７を設けてお
り、前記鋳型クランプ治具１２に備えたピン１２ａおよ
び１２ｂが当該ガイド１６および１７にそれぞれ係合す
ることによって、当該クランプ治具１２がチェーンコン
ベア１４による移動に伴って、あらかじめ定められた所
定の位置において所定の方向を向くように姿勢制御され
るようになっている。 すなわち、鋳型クランプ治具１
２は、図２における記号Ｂ−Ｃ間位置においては注湯位
置、つまり鋳型１の湯溜り２が上方となる位置に保持さ
れ、記号Ｃ−Ｄ間位置において鋳型１の鋳型空間６が下
側となるように、図中反時計回り方向に反転駆動された
のち、記号Ｄ−Ｅ間位置において反転位置、つまり鋳型
１の湯溜り２が下方となり、押湯３が上方となる位置に
保持されるようになっている。

【００１７】前記鋳造装置１０は、さらに善意レール１
３の下方に、鋳型１の反転によって鋳型１の湯溜り３や
湯口４から排出された溶湯を受けるバケットコンベア１
８と該バケットコンベア１８内で溶湯が凝固したスクラ
ップＳを収納するスクラップボックス１９を備えてお
り、これらにより溶湯の回収手段が構成されている。

【００１８】また、当該鋳造装置１０の図中右端、すな
わち搬出側には、型ばらしされた鋳型１と共に、凝固し
て製品となったクランクシャフトＰを次工程に払い出す
ための製品搬送用振動コンベア２０が配設されている。

【００１９】前記鋳型クランプ治具１２は、図３に拡大
して示すように、基板２１上に固定クランプ板２２とシ
リンダ固定板２３とを相対向させて立設すると共に、前
記シリンダ固定板２３にクランプシリンダ２４を取付
け、該クランプシリンダ２４のシリンダロッド２４ａに
可動クランプ板２５を固定した構造のものであって、前
記クランプシリンダ２４の押出し作動によって、固定ク
ランプ板２２と可動クランプ板２５との間に前記鋳型１
を挟持する仕組みとなっている。

【００２０】前記固定クランプ板２２およびシリンダ固
定板２３には、当該鋳型クランプ治具１２のほぼ重心位
置に軸２２ａ，２３ａが固定されると共に、この軸２２
ａ，２３ａにはそれぞれローラ２６，２７が回転自在に
装着され、当該鋳型クランプ治具１２は前記ローラ２
６，２７を介してレール１３に支持されている。 そし
て、チェーンコンベア１４が前記軸２２ａ，２３ａの部
分を押圧することによって、図２中の右方向に当該鋳型
クランプ治具１２を移送させる構造となっている。

【００２１】また、前記軸２３ａの先端側には、両端部
にピン１２ａ，１２ｂを備えたアーム２８が固定されて
おり、当該ピン１２ａ，１２ｂが前記ガイド１６，１７
に係合することによって、当該クランプ治具１２の移送
中における各位置での姿勢がコントロールされるように
なっている。

【００２２】以下に、前記鋳造装置１０および鋳型１を
用いて、クランクシャフトを鋳造する要領について順を
追って説明する。

【００２３】まず、図２中の記号Ａで示す位置におい
て、ベルトコンベア１１によって搬入されてきた鋳型１
を鋳型クランプ治具１２に挿入し、クランプシリンダ２
４の押出し作動によって鋳型１をクランプ板２２および
２５の間にクランプする。 このとき、当該鋳型クラン
プ治具１２の２本のピン１２ａ，１２ｂのうちの上方側
のピン１２ａがガイド１６に係合するようになってい
る。

【００２４】そして鋳型１を挟持したクランプ治具１２
がレール１３に支持されながら、チェーンコンベア１４
により記号Ｂで示す位置に移送されると、前記ピン１２
ａがガイド１６に導かれて上方に移動することにより、
当該クランプ治具１２は鋳型１の湯溜り２が上方となる
位置まで回転し、記号Ｃで示す位置に到達するまでこの
姿勢に保持され、この間に、当該クランプ治具１２と共
に移動する取鍋１５から鋳型１の鋳型空間６内に溶湯が
鋳込まれる。

【００２５】このとき溶湯は、図４（ａ）に示すよう
に、鋳型１の上部に配置された湯溜り２から、鋳型空間
６にほぼ平行に形成された湯口４を通り、鋳型１の下部
に設けた湯道５および押湯３を経て前記鋳型空間６内に
下方側から静かに注入されることになるので、酸化物の
巻き込みなどが発生せず、溶湯の温度降下も最小限のも
のとなる。

【００２６】鋳型１への注湯が完了し、当該クランプ治
具１２が位置Ｃを通過すると、クランプ治具１２のピン
１２ａが前記ガイド１６に導かれて下方に移動すること
から、当該クランプ治具１２は、鋳型１の鋳型空間６を
下側にして図中の反時計回り方向に反転し始める。 そ
して反転過程において、クランプ治具１２の上方側ピン
１２ａがガイド１６から離脱する一方、当該クランプ治
具１２の下方側のピン１２ｂが他方のガイド１７に係合
することにより、当該クランプ治具１２が記号Ｄで示す
位置に到達したときには、完全に１８０°反転し、鋳型
１の押湯３が上方に位置することになる。

【００２７】この反転過程において、図４（ｂ）に示す
ように、鋳型１の湯溜り２，湯口４および湯道５内の未
凝固溶湯が鋳型１から排出され、バケットコンベア１８
によってスクラップボックス１９に回収されるので、型
ばらし後に湯口相当部分を製品から切り離す必要がなく
なって製品処理が容易になると共に、スクラップのかさ
密度が高くなるため再溶解時の溶解効率が向上するとい
う二次的効果をも得ることができるようになる。

【００２８】そして、前記鋳型クランプ治具１２は、記
号Ｅで示す位置に到達するまで前記反転状態に保持さ
れ、この間に凝固が進行することになるので、図４
（ｃ）に示すように、もっとも溶湯温度の高い押湯３の
部分が上方に位置して押湯効果を発揮するため、理想的
な指向性凝固が得られ、内部巣欠陥のない健全な製品ク
ランクシャフトＰを得ることができる。

【００２９】そして、鋳型クランプ治具１２が移送路の
終端、すなわち図２中に記号Ｆで示す位置に到達する
と、当該クランプ治具１２のクランプシリンダ２４の引
込み作動によって、鋳型１のクランプ状態が解除される
ことから、当該鋳型１はシュート２１を経て振動コンベ
ア２０の上に落下し、鋳型１から分離した製品クランク
シャフトＰが次工程に搬出され、次工程において押湯切
断などの仕上げ処理が施される。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係わる鋳
造方法は、上記構成、すなわち鋳型空間の下方に配置し
た押湯の側から押し上げ注湯したのち、鋳型を反転させ
るようにしたものであるから、静かな鋳込みが可能とな
って酸化物などの巻き込みが防止できると共に、鋳型の
反転によって最も温度の高い押湯部分が鋳型空間の上方
に位置することになるので、理想的な指向性凝固となり
凝固収縮による内部巣欠陥が防止できるという極めて優
れた効果をもたらすものである。 また、本発明に係わ
る鋳造装置は、とくに鋳型を保持した鋳型クランプ治具
を回転自在に保持し、移送する支持手段および搬送手段
と共に、移送路中の第１の所定位置において鋳型を注湯
姿勢に保持し、第２の所定位置において注湯後の鋳型を
くランプ治具とともに反転させる鋳型姿勢制御手段を備
えた構成としたものであるから、本発明に係わる鋳造方
法を連続的に、円滑かつ能率的に実施することができる
という極めて優れた効果を発揮するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係わる鋳造方法の一実施例に用いる鋳
型の形状を示す概略説明図である。

【図２】本発明に係わる鋳造方法の一実施例に用いた鋳
造装置および鋳造手順を示す説明図である。

【図３】（ａ）および（ｂ）は図２に示した鋳造装置の
鋳型クランプ治具の構造を示す正面図および側面図であ
る。

【図４】（ａ），（ｂ）および（ｃ）は図２に示した鋳
造手順のポイントを示す工程説明図である。

【図５】従来のクランクシャフトの鋳造方法を示す概略
説明図である。

【図６】ダービル鋳造法による従来のクランクシャフト
の鋳造要領を示す概略説明図である。

【符号の説明】

１ 鋳型 ２ 湯溜り ３ 押湯 ４ 湯口 ５ 湯道 ６ 鋳型空間 １０ 鋳造装置 １２ 鋳型クランプ治具 １３ レール（支持手段） １４ チェーンブロック（搬送手段） １５ 取鍋 １６，１７ ガイド（鋳型姿勢制御手段） １８ バケットコンベア（回収手段） １９ スクラップボックス（回収手段）

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鋳型の上部に設けた湯溜りから、当該湯
   溜りと鋳型の下部に設けた押湯との間を連結する湯口お
   よび湯道を介して、前記押湯の上方に配設した鋳型空間
   内に溶湯を鋳込んだのち、鋳型内の溶湯が凝固を完了す
   るまでの間に、当該鋳型を前記鋳型空間を下側にして反
   転させることによって、前記湯溜り，湯口および湯道内
   の溶湯を排出せしめると共に、当該反転状態で凝固を完
   了せしめることを特徴とする鋳造方法。
2. 【請求項２】 前記鋳型空間の内部巣欠陥が発生しやす
   い部位を押湯側に位置せしめることを特徴とする請求項
   １記載の鋳造方法。
3. 【請求項３】 鋳型を保持する鋳型クランプ治具と、 前記鋳型を保持した鋳型クランプ治具を回転可能に支持
   する支持手段と、 該支持手段に支持された前記鋳型クランプ治具を移送す
   る搬送手段と、 該搬送手段による移送路中の第１の所定位置において前
   記鋳型クランプ治具に保持された鋳型に溶湯を注ぎ入れ
   る注湯手段と、 前記移送路中の第１の所定位置において前記鋳型を注湯
   姿勢に保持すると共に、当該移送路中の第２の所定位置
   において注湯後の鋳型を前記鋳型クランプ治具と共に反
   転させる鋳型姿勢制御手段と、 前記鋳型の反転によって当該鋳型から排出された溶湯を
   回収する回収手段を備えたことを特徴とする鋳造装置。