JPH0755012A - 電動モータの軸封装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 電動モータの軸封装置として回転静止状態か
ら低速回転状態を経て高速回転状態までの広範囲に渡り
封止機能を発揮し得る軸封装置を得ることを目的とす
る。 【構成】 ステータハウジング１４の端部に静止リム３
２を設け、出力軸２０の軸端領域２０ａに回転リム３４
を設けて両者間にラビリンスを形成し、かつ、回転リム
３４に舌状部３８ｂを有したシール部材３８を回転リム
３４と一体回転可能に設け、所定回転速度まではオイル
シール作用で封止し、所定回転速度以上ではラビリンス
による封止機能を発揮し、かつ、両封止機能を重複的に
作用させる速度域を設ける構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、工作機械等の駆動モー
タとして用いられる電動モータの防水、防塵用の軸封装
置に関し、特に、低速域から高速域までの広い回転領域
に渡って均一な軸封機能を発揮し、モータ機体外に対し
て機体内部を防護する軸封装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】回転軸を有した回転機器において、軸封
装置を設けることは周知であり、特にモータにおいて、
出力軸の軸端領域に軸封装置を設け、機外からの塵埃等
の異物や工作機械現場等における加工液や潤滑油類等の
液体がモータ機体内部の狭域領域や軸受内部に侵入して
モータ機能を劣化させることを防止するようにしている
くことは周知である。

【０００３】従来のモータ、特に、電動機における軸封
装置としては、モータが５，０００ｒ．ｐ．ｍ程度まで
の比較的低速域で回転するモータの場合には、ステータ
ハウジングにおける回転軸受の直近外側にシール保持部
を凹設し、このシール保持部にアクリルゴム、ニトリル
ゴム、フッ素ゴム等の合成ゴム材を金属枠体に焼結、固
定したオイルシールを押込み式に嵌着し、同オイルシー
ルを回転出力軸の表面に接触維持することにより、外部
からの異物、汚染源液体の侵入を防ぐ構造がとられてい
た。

【０００４】他方、モータが所謂、高速回転域で回転す
る場合には、モータロータを中央部に担持した出力軸と
ステータハウジングの回転軸受の直近位置とに夫々、回
転及び非回転の１対の金属ブロック形状体を取着、また
は一体形成で設け、両ブロック形状体により迷路状隙間
から成る周知のラビリンスを形成して非接触状態のま
ま、モータの回転中における外部からの異物、汚染源液
体の侵入を、同ラビリンス域で阻止する構造がとられて
いた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】然しながら、前者のオ
イルシールを用いた軸封装置は、高速回転モータに適用
すると、オイルシールが回転出力軸に接触するリップ部
において摩擦熱による発熱でオイルシールが封止特性が
経時劣化したり、摩耗による封止機能の劣化も発生し、
耐用性が著しく低く、実用性に欠ける問題がある。

【０００６】他方、後者のラビリンスを用いた軸封装置
は、１対のブロック形状体が非接触式に設けられること
から、高速回転時にはラビリンスを通過する侵入物を防
止して良く軸封機能を発揮する反面、モータ静止時や低
速回転域でのモータの回転では封止機能を有しない欠点
を備えている。依って、本発明の目的は、特に、低速回
転域から高速回転域に渡る広い回転領域において、確実
に封止機能を発生することが可能な電動モータの軸封装
置を提供せんとするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、上述の目的に
鑑みて、モータの低速域では、接触式封止手段を形成
し、高速域では非接触式封止手段を形成することによ
り、モータの静止及び低→高速回転域の全般に渡って均
一に封止機能を発揮する単一の封止手段を構成し、これ
を回転出力軸の軸端領域に設けたものである。

【０００８】すなわち、本発明によれば、電動モータの
ステータハウジングと回転出力軸の軸端領域との間に設
けられる軸封装置において、前記出力軸の軸端領域に設
けた回転リムと該回転リムに対向する前記ステータハウ
ジングの端部に設けられた静止リムとから形成されるラ
ビリンス形成手段と、前記ラビリンス形成手段の前記回
転リムと静止リムとの間に形成され、前記出力軸の軸端
領域の周上に配設される環状シール室と、前記環状シー
ル室内に格納され、前記回転リム又は出力軸に一体に止
着された基底部と前記静止リムに静止速度から所定の速
度まで接触して前記ステータハウジング内部を封止する
と共に前記所定速度を越える高速度域で前記静止リムか
ら遠心作用的に離反する舌状シール部とを有して成るシ
ール手段とを具備して構成される電動モータの軸封装置
が提供される。

【０００９】

【作用】上述の構成によれば、モータの低速度領域で
は、シール手段の舌状シール部が低速度域では、ラビリ
ンス形成手段の静止リムに接触してモータの機外からモ
ータの機内への連通を遮断、封止し、また、高速度領域
では、シール手段の舌状部が遠心作用で離反して摩耗、
発熱を防止しつつ、回転リムと静止リムとにより形成さ
れるラビリンスに依ってモータの機外から機内への異物
や汚染源液体の侵入阻止を図ることが可能となる。

【００１０】なお、上述の構成において、上記シール手
段の舌状部に、回転出力軸が所望の速度域に達したとき
遠心作用による静止リムからの離反機能を促進する錘手
段を配設し、該舌状部の離反作用を調節するように構成
しても良い。

【００１１】

【実施例】以下、本発明を添付図面に示す実施例に従っ
て、更に詳細に説明する。図１は、本発明に係る軸封装
置を備えた電動モータの低速回転状態における軸封機能
を図示した部分断面図、図２は、同電動モータの高速回
転状態における軸封機能を図示した部分断面図、図３
は、図１のＡ部分の拡大図、図４は、図２のＢ部分の拡
大図、図５の（イ）、（ロ）は、本発明に係る軸封装置
の他の実施例を示す部分断面図と矢視Ｃ−Ｃによる断面
図、図６は、本発明に係る電動モータ用の軸封装置の特
性を示すグラフ図である。

【００１２】図１及び図２を参照すると、電動モータ１
０の前方の半体部分の断面図が図示されており、同電動
モータ１０は、ステータ巻線１２を収納した円筒形状の
ステータハウジング１４を有し、このステータハウジン
グ１４の端部の軸受保持部１４ａに着座、保持された回
転軸受１６（前後１対の中の前方の軸受）を介してロー
タ１８を中央部に備えた出力軸２０が回転可能に設けら
れている。

【００１３】ここで、本発明によれば、軸封装置３０が
ステータハウジング１４の端部領域における上記軸受保
持部１４ａの外側と、それに対向した出力軸の軸端領域
２０ａに設けられている。

【００１４】ここで、同軸封装置３０は、静止要素であ
るステータハウジング１４の軸受保持部１４ａの領域に
実質的に一体形成で設けた静止リム３２を有し、この静
止リム３２は円板部３２ａと筒状部３２ｂとから成り、
同筒状部３２ｂが出力軸２０の軸端領域２０ａの外周面
と環状微小空隙を介し、また、後述の回転リムの一部と
環状微小空隙を介して対設されている。

【００１５】他方、出力軸２０の軸端領域２０ａには実
質的に一体形成された回転リム３４が設けられ、この回
転リム３４はラジアル円板部３４ａとそのラジアル円板
部３４ａの外周域から軸方向に突出した環状部３４ｂと
を備えてなり、環状部３４ｂの外周面がステータハウジ
ング１４の先端の内周面との間及び静止リム３２の円板
部３２ａとの対向部との間に夫々、環状微小空隙を介し
て対設されている。つまり、上述した静止リム３２と回
転リム３４とによって上記の４つの環状微小空隙がラビ
リンスを形成し、電動モータ１０の出力軸２０の回転速
度が高速度に達するとモータ機体の外部からステータハ
ウジング１４の内部や回転軸受１６に向けて侵入する塵
埃や周囲のモータ使用環境から侵入の危惧がある水分や
油分をシャットアウトし、防塵、防水の両機能を果た
す。

【００１６】また、上記の軸封装置３０の静止リム３２
と回転リム３４とによって包囲された内部室３６には、
従来周知のオイルシール要素と同様な合成ゴム材から成
るシール部材３８が止着されている。このシール部材３
８は、円環状の基部３８ａと舌状部３８ｂとを有し、基
部３８ａによって回転リム３４の環状部３４ｂに定着さ
れて同回転リム３４と一体回転可能に設けられ、舌状部
３８ｂは、基部３８ａの一端から略Ｖ字を形成するよう
に静止リム３２の筒状部３２ｂの外周面に向けて片持ち
梁方式に垂下し、同外周面に接触可能に設けられてい
る。ここで、シール部材３８の舌状部３８ｂは、図１に
示すように、電動モータ１０の低速回転時には、弾性的
に静止リム３２の筒状部３２ｂの外周面に接触して内室
３６内でモータ機外とモータ機内とを隔絶、封止してい
る。

【００１７】そして、図２に示すように、電動モータ１
０の出力軸２０が所定の回転速度を越える高速域に達す
ると、一体となって回転する上記シール部材３８の舌状
部３８ｂに同シール部材38の材料密度に比例した遠心力
が作用し、故に、同舌状部３８ｂが周方向に伸長して、
その結果、舌状部３８ｂのモータ回転軸心に関する半径
が拡大する。この結果、低速回転時にシール部材３８の
舌状部３８ｂが接触していた静止リム３２の筒状部３２
ｂから離反する。従って、同シール部材の舌状部３８ｂ
は、高速回転中には静止リム３２に非接触状態に維持さ
れるため、発熱や摩耗の危惧がない状態に維持されるの
である。

【００１８】このように、電動モータ１０が高速回転域
で回転中には、シール部材３８の封止作用は喪失される
が、静止リム３２と回転リム３４とで形成された上述の
４つの微小環状空隙から成るラビリンスにおいては、高
速回転により充分な封止機能を発揮し、モータ機外から
モータ機内への塵埃や水、油等の侵入が防止される。

【００１９】図３及び図４は、夫々、軸封装置３０のシ
ール部材３８がモータの低速回転域で接触式に封止作用
を状態を拡大して示している。このように、シール部材
３８が静止リム３２の筒状部３２ｂに接触して内部室３
６で確実に電動モータ１０の機体外と機体内とを遮断し
ていることから、モータの回転停止時にも、当然に軸封
がなされ、防塵、防水を行う。

【００２０】また、図４は、高速回転域のおいて、シー
ル部材３８の舌状部３８ｂが静止リム３２から離反して
非接触状態を維持し、他方、その間に、ラビリンスによ
る軸封が達成されることをが理解できる。

【００２１】図５は、本発明に係る軸封装置３０の他の
実施例を示しており、この実施例が前述した図１〜図４
の実施例と異なる点は、軸封装置３０のシール部材３８
における舌状部３８ｂの内部に金属や適宜の樹脂材から
成る質量体４０を埋設し、シール部材３８の材料密度を
積極的に調節、変化させ、高速回転時における舌状部３
８ｂに作用する遠心力効果を調節し、以て、電動モータ
１０の回転における低速回転と高速回転とにおける接触
式軸封と非接触式軸封との境界領域を実用モータの速度
領域を鑑みて適正な速度点に調節し得るようにしたもの
である。

【００２２】この場合において、質量体４０自体の質量
は、予め、上記の接触式軸封から非接触式軸封への切り
換り速度との対応関係において実験的に求め、シール部
材３８を合成ゴム材により成形加工する段階で、シール
部材３８内に埋設封入する。そして、図５に図示のごと
く、成形過程で予めシール部材の舌状部３８ｂの内部に
おいて、円周上に均等間隔で分配、配置すれば、遠心力
作用が周上で均等に作用して、シール部材３８の舌状部
３８ｂの離反作用を設定した回転速度域で生起させるこ
とが可能となる。

【００２３】図６は、横軸に電動モータ１０の単位時間
当たりの回転数をとり、縦軸に遠心力をとり、回転数の
変化に応じた軸封装置３０のシール部材３８が静止リム
３２側から離反する状況を示した曲線である。同図６に
おいて、曲線上の点Ｐ，Ｑ，Ｒにおける点Ｐは、静止リ
ム３２と回転リム３４により形成されるラビリンスが軸
封機能を開始する回転数と、その回転数においてシール
部材３８に作用する遠心力が比較的低レベルにあり、舌
状部３８ｂは依然、接触式封止機能を発揮している状態
を示している。

【００２４】また、点Ｑは、軸封装置３０のシール部材
３８における舌状部３８ｂが回転数の漸増に伴う遠心力
の漸増により、静止リム３２の筒状部３２ｂから離反を
開始し、故に、接触式封止機能が失われる地点を示して
いる。更に、点Ｒは、軸封装置３０のシール部材３８が
静止リム３２の筒状部３２ｂから離反しなかった場合に
封止機能を保持できる限界の許容周速度点を示してい
る。

【００２５】本発明においては、シール部材３８が静止
リム３２との接触状態から逸脱する回転数位置Ｑを、ラ
ビリンス封止の開始速度点Ｐとシール部材３８の許容周
速度点Ｒとの間に設定することにより、電動モータ１０
が回転静止状態から高速度回転域に渡る広い速度域で用
いられた場合にも軸封装置３０のシール部材３８による
接触式封止とラビリンスによる非接触式封止が順次に作
用してモータ機体外に対してモータ機体内の防塵、防水
を達成することができる。図６から明らかなように、接
触式封止と非接触式封止による軸封機能が点ＰとＱとの
間で重複的に作用していることにより、封止機能の中断
時期がなく、依って、信頼性の高い軸封装置を構成し得
るのである。

【００２６】なお、図５に示した実施例では、点Ｑの回
転数位置をモータの実用回転数を考慮して適宜に調節可
能にするものである。また、図示においては、電動モー
タ１０の前方側に設けられた軸封装置を示したが、後端
側にも同じく同様な軸封装置が設けられていることは言
うまでもない。

【００２７】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
による電動モータの軸封装置は、同電動モータが工作機
械の駆動モータ等に用いたとき、回転速度零の静止状態
から、高速回転による機械加工作用時に渡り、常に、オ
イルシール型の接触式封止作用とラビリンス型の非接触
封止作用が順次に、かつ、重複的に機能するので、電動
モータに対する防水、防塵性能を高信頼性の下で発揮す
ることができる。

【００２８】従って、電動モータの寿命を延命化するこ
とが可能であると共に、各電動モータの適用々途を拡張
することも可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る軸封装置を備えた電動モータの低
速回転状態における軸封機能を図示した部分断面図であ
る。

【図２】同電動モータの高速回転状態における軸封機能
を図示した部分断面図である。

【図３】図１のＡ部分の拡大図である。

【図４】図２のＢ部分の拡大図である。

【図５】（イ）は、本発明に係る軸封装置の他の実施例
を示す部分断面図である。（ロ）は、（イ）の矢視Ｃ−
Ｃによる断面図である。

【図６】本発明に係る電動モータ用の軸封装置の特性を
示すグラフ図である。

【符号の説明】

１０…電動モータ １２…ステータ １４…ステータハウジング １６…回転軸受 ２０…出力軸 ３０…軸封装置 ３２…静止リム ３４…回転リム ３６…内部室 ３８…シール部材 ４０…質量体

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 電動モータのステータハウジングと回転
   出力軸の軸端領域との間に設けられる軸封装置におい
   て、 前記出力軸の軸端領域に設けた回転リムと該回転リムに
   対向する前記ステータハウジングの端部に設けられた静
   止リムとから形成されるラビリンス手段と、 前記ラビリンス手段の前記回転リムと静止リムとの間に
   形成され、前記出力軸の軸端領域の周上に配設される環
   状シール室と、 前記環状シール室内に格納され、前記回転リム又は出力
   軸に一体に止着された基底部と前記静止リムに静止速度
   から所定の速度まで接触して前記ステータハウジング内
   部を封止すると共に前記所定速度を越える高速度域で前
   記静止リムから遠心作用的に離反する舌状シール部とを
   有して成るシール手段とを具備して構成されることを特
   徴とする電動モータの軸封装置。