JPH0744805U - 自動車の車軸用ハブユニット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 転動体８、８を設けた円筒状空間９に存在す
るグリースが外輪５の端部開口に向けて移動する事を有
効に防止する。 【構成】 外輪５の端部開口を塞ぐハブキャップ１５に
突壁１７を、このハブキャップ１５と一体に設ける。そ
して、この突壁１７の内周縁を内輪３の外周面に近接さ
せ、これら外周面と内周縁との間にラビリンス部を形成
する。使用時に内輪３が回転する為、この外輪３の外周
面近傍に存在するグリースに遠心力が作用し、このグリ
ースが上記ラビリンス部を通過しにくくなる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案に係る自動車の車軸用ハブユニットは、自動車の車軸を、懸架装置に 対して回転自在に支持する為に利用するハブユニット部分の部品点数を減少し、 この部分の製作費の低廉化を図るものである。

【０００２】

【従来の技術】

自動車の車軸は、例えば図４に示す様な構造を有するハブユニットにより、懸 架装置を介し、車体に対して回転自在に支持されている。図４に於いて１は、ホ イールを固定する為のフランジ２を外周面に固設したハブで、このハブ１の外周 面及びこのハブ１に外嵌した内輪３の外周面には、複列の外方軌道４、４を形成 している。５は外輪で、外周面の一部に設けた取付フランジ６により、懸架装置 に支持される。又、この外輪５の内周面には、複列の内方軌道７、７が形成され ている。８、８は転動体で、上記ハブ１及び内輪３の外周面に形成した外方軌道 ４、４と、外輪５の内周面に形成した内方軌道７、７との間に装着され、外輪４ の内側でのハブ１の回転を自在としている。

【０００３】 外輪５の内周面とハブ１の外周面との間に存在する円筒状空間９の一端開口（ 図４の左端開口）は、シール材１４によって塞ぎ、他端開口（図４の右端開口） は、外輪５の他端（図４の右端）開口部に内嵌固定したハブキャップ１０により 塞いで、上記円筒状空間９内への塵芥の進入を防止すると共に、上記円筒状空間 ９内に存在するグリースが外部に漏洩する事の防止を図っている。

【０００４】 ステンレス鋼板等の金属板を絞り成形する事で全体をカップ状に形成されたハ ブキャップ１０の外周面には、外向フランジ状のストッパ１１が形成されている 。そして、上記ハブキャップ１０の先半部（図４の左半部）を、この先半部の外 径を弾性的に縮めつつ、上記ストッパ１１が外輪５の端面に当接する迄、外輪５ の開口端部内側に押し込む事で、ハブキャップ１０を外輪５の他端開口部に固定 し、この他端開口部を塞ぐ事ができる。

【０００５】 更に、前記外輪５の内周面で、他端寄り（図４の右寄り）の内方軌道７と上記 ハブキャップ１０との間部分には、スリンガーと呼ばれる、円輪状の隔壁部材１ ２の外周縁を固定して、転動体８、８装着部分に存在するグリースが、ハブキャ ップ１０側の空間１３に流れ出さない様にしている。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

ところが、上述の様な従来のハブユニットの場合、転動体８、８装着部分に存 在するグリースがハブキャップ１０側の空間１３に流れ出さない様にする為の隔 壁部材１２を、独立して設けていた為、ハブユニットを構成する部品点数が多く なり、部品管理及び組み立て作業が面倒になり、ハブユニットの製作費が嵩む事 が避けられなかった。外輪５の内周面とハブ１の外周面との間に充填するグリー スの量を十分に多くし、グリースが上記空間１３内に充満した場合でも、転動体 ８、８装着部分に十分な量のグリースが存在する様にすれば、前記隔壁部材１２ を省略する事もできるが、代りにグリースの使用量が徒に多くなる為、好ましく ない。

【０００７】 実公昭６１−３９１２６号公報には、回転しないナックルスピンドルの周囲で 回転するホイールハブの開口端部の内径を大きくし、この内径が大きくなった部 分に装着したハブベアリングキャップに形成した折曲部により、転動体設置部分 に充填したグリースが上記ハブベアリングキャップ内に流入するのを防止する構 造が記載されている。ところが、この公報に記載された構造の場合には、使用時 にナックルスピンドルが回転せず、ホイールハブが回転する為、ナックルスピン ドルの外周面近傍に存在するグリースには遠心力が殆ど作用しない。グリースに 遠心力が作用しない事は、このグリースが上記ナックルスピンドルの軸方向に亙 って比較的容易に流動し得る事を意味する。上記折曲部の内周縁と上記ナックル スピンドルに固定された部材の外周面との間には、このナックルスピンドルの軸 方向に通じる隙間が形成されている。従って、上述の様にグリースが上記ナック ルスピンドルの軸方向に亙って比較的容易に流動し得ると、転動体設置部分に充 填したグリースが上記ハブベアリングキャップ内に流入する事を防止する効果が 不十分になる。本考案の自動車の車軸用ハブユニットは、この様な不都合を解消 するものである。

【０００８】

【課題を解決する為の手段】

本考案の自動車の車軸用ハブユニットは、前述した従来の車軸用ハブユニット と同様に、外周面に複列の外方軌道を有し使用時に回転する内輪相当部材と、単 一の部材の内周面に複列の内方軌道を有し使用時に回転しない一体型の外輪相当 部材と、上記外方軌道と内方軌道との間に設けられた複数の転動体と、上記外輪 相当部材の開口端部に固定されて、この開口端部を塞ぐカップ状のハブキャップ とから構成される。

【０００９】 特に、本考案の自動車の車軸用ハブユニットに於いては、上記ハブキャップを 上記開口端部に固定する為、このハブキャップに設けた固定部に、上記外輪相当 部材の端部内周面から全周に亙り直径方向内側に突出して上記内輪相当部材の一 部外周面に近接する突壁を形成し、この突壁により上記転動体装着部に存在する グリースが上記開口端部に向けて移動する事を阻止している。

【００１０】

【作用】

上述の様に構成される本考案の自動車の車軸用ハブユニットに於いて、ハブユ ニットの端部開口を塞いで、ハブユニットの内部に塵芥が進入する事を防止した り、或は外輪相当部材に対して内輪相当部材を回転自在に支承する際の作用自体 は、前述した従来のハブユニットと同様である。

【００１１】 特に、本考案の自動車の車軸用ハブユニットは、前述の様な隔壁部材を設けな くても、ハブキャップと一体に設けた突壁により、転動体装着部に存在するグリ ースが上記開口端部に向けて移動する事が阻止される。又、外輪相当部材として 、単一の部材の内周面に複列の内方軌道を有する一体型のものを使用しているの で、この外輪相当部材を小型且つ軽量に構成できる。

【００１２】 又、本考案の場合には、内輪相当部材が回転する為、この内輪相当部材の外周 面近傍に存在するグリースに遠心力が作用し、このグリースが軸方向に流動しに くくなる。この結果、上記内輪相当部材の外周面と突壁の内周縁とにより構成さ れるラビリンス部をグリースが通過しにくく、グリースを転動体設置部分に封入 しておく効果が優れている。従って、上記グリースの使用量の低減効果が、より 優れたものになる。

【００１３】

【実施例】

図１は本考案の第一実施例を示す断面図である。ホイールを固定する為のフラ ンジ２を外周面に固設した、内輪相当部材であるハブ１の外周面、及びこのハブ １に外嵌した、やはり内輪相当部材である内輪３の外周面には、複列の外方軌道 ４、４を形成している。又、外周面の一部に設けた取付フランジ６により懸架装 置に支持される、外輪相当部材である外輪５の内周面には、複列の内方軌道７、 ７を形成している。この外輪５は、円筒状に形成された単一の部材の内周面に、 上記両内方軌道７、７を形成している。そして、上記ハブ１及び内輪３の外周面 に形成した外方軌道４、４と、外輪５の内周面に形成した内方軌道７、７との間 に複数の転動体８、８を装着して、外輪５の内側でのハブ１の回転を自在として いる。

【００１４】 外輪５の内周面とハブ１の外周面との間に存在する円筒状空間９の一端開口（ 図１の左端開口）は、シール材１４によって塞ぎ、他端開口（図１の右端開口） は、外輪５の他端開口部に内嵌固定したハブキャップ１５により塞いでいる。そ して、これらシール材１４とハブキャップ１５とにより、上記円筒状空間９内へ の塵芥の進入を防止すると共に、上記円筒状空間９内に存在するグリースが外部 に漏洩する事の防止を図っている。

【００１５】 上記ハブキャップ１５は、ステンレス鋼板等の金属板を絞り成形する事により 、全体をカップ状に形成されたもので、その外周面には、外向フランジ状のスト ッパ１１が形成されている。又、上記外輪５の他端面（図１の右端面）の直径方 向内半部には環状凹部２２を形成している。上記ストッパ１１の外径は、この環 状凹部２２の外径よりも小さい。又、このストッパ１１の厚さ（図１の左右方向 に亙る寸法）は、この環状凹部２２の深さ（図１の左右方向に亙る寸法）よりも 小さい。上記ハブキャップ１５は、先半部（図１の左半部）に存在する固定部１ ６を、外径を弾性的に縮めつつ、上記ストッパ１１の片側面（図１の左側面）が 上記環状凹部２２の奥面に当接する迄外輪５の開口端部内側に押し込む事で、外 輪５の他端開口部に固定し、この他端開口部を塞ぐ。そして、この様に、上記ス トッパ１１の片側面を上記環状凹部２２の奥面に当接させた状態で、前記内輪３ に対する、次述する突壁１７の位置決めが図られる。又、この状態で上記ストッ パ１１の他側面（図１の右側面）が上記外輪５の他端面から突出する事がない。

【００１６】 特に、本考案のハブユニットに組み込む、本考案のハブキャップ１５の場合、 先端縁部（図１の左端縁部）の端縁を内方に向け折り曲げる事で、上記内向フラ ンジ状の突壁１７を、全周に亙り形成している。そして、この突壁１７の内周縁 部を、ハブ１に外嵌固定された内輪３の端部外周縁に近接させて、複数の転動体 ８、８を設けた部分と、ハブキャップ１５側の空間１３とを隔てている。

【００１７】 上述の様に構成される本考案の自動車の車軸用ハブユニットにより、ハブユニ ットの端部開口を塞いで、ハブユニットの内部に塵芥が進入する事を防止したり 、或は外輪５に対してハブ１を回転自在に支承する際の作用自体は、前述した従 来のハブユニットと同様である。

【００１８】 特に、本考案の自動車の車軸用ハブユニットに於いては、ハブキャップ１５の 端部に、このハブキャップ１５と一体に設けられた内向フランジ状の突壁１７に より、複数の転動体８、８を装着した部分に存在するグリースが上記開口端部に 向けて移動する事が阻止される。この為、従来の場合の様な隔壁部材１２（図４ ）を設けず、しかもハブユニット内に転動体８、８を潤滑する為に必要とする以 上のグリースを充填しなくても、上記転動体８、８の装着部分に存在するグリー スの量を、長期間に亙って適正値に保つ事ができる。

【００１９】 又、本考案の車軸用ハブユニットの場合には、内輪３が回転する為、この内輪 ３の外周面に近接する部分に存在するグリースに大きな遠心力が作用し、このグ リースが軸方向（図１の左右方向）に移動しにくくなる。即ち、本考案の自動車 の車軸用ハブユニットの場合には、内輪３が回転する為、この内輪３の外周面近 傍に存在するグリースに遠心力が作用し、このグリースが直径方向外方に送られ て、軸方向には流動しにくくなる。この結果、上記内輪３の外周面と突壁１７の 内周縁とにより構成されるラビリンス部をグリースが通過しにくくなり、グリー スを転動体設置部分に封入しておく効果が優れたものになる。

【００２０】 又、外輪５として、単一の部材の内周面に複列の内方軌道７、７を有する一体 型のものを使用しているので、この外輪５を小型且つ軽量に構成できる。更に、 前記ストッパ１１と環状凹部２２の奥面との当接により、上記内輪３に対する突 壁１７の位置決めを図れるので、外輪５に対するハブキャップ１５の装着作業が 容易となる。しかも、ストッパ１１と環状凹部２２の奥面とを当接させた状態で 、このストッパ１１が環状凹部２２から突出しない為、上記外輪５を懸架装置に 装着すべく、前記取付フランジ６を相手面に突き当てる際に、上記ストッパ１１ が邪魔にならない。

【００２１】 次に、図２は本考案の第二実施例を示している。本実施例の場合、ハブキャッ プ１５の固定部１６を、内側円筒部１８と外側円筒部１９とを底壁部２０で連続 させ、上記各部１８、１９、２０で三方を囲まれた部分を、環状の凹溝２１とし た形状としている。本実施例に於いて、ハブキャップ１５を外輪５の開口端部に 内嵌固定する場合、上記外側円筒部１９を外輪５の内側に押し込む。又、本実施 例の場合、上記底壁部２０を突壁として機能させる事で、複数の転動体８、８を 装着した部分に存在するグリースが上記開口端部に向けて移動する事を阻止して いる。位置決め用のストッパ１１ａは、上記外側円筒部１９の端縁を直径方向外 方に向け直角に折り曲げる事で構成している。その他の構成及び作用に就いては 、前述した第一実施例と同様である為、同等部分には同一符号を付して、重複す る説明を省略する。

【００２２】 更に、図３は本考案の第三実施例を示している。本実施例の場合、ハブ１の外 周面に直接外方軌道４、４を形成しない代りに、それぞれの外周面に外方軌道４ 、４を形成した内輪３、３を２個、上記ハブ１の外周面に外嵌固定している。そ の他の構成及び作用は、前記第一実施例と同様である為、同等部分には同一符号 を付して、重複する説明を省略する。

【００２３】

【考案の効果】

本考案の自動車の車軸用ハブユニットは、以上に述べた通り構成され作用する 為、グリースの使用量を徒に増やす事なく、ハブユニット部分の部品点数を減少 させる事で、ハブユニットの製作費の低廉化を図る事ができる。

【００２４】 又、本考案の場合には、突壁の内周縁により構成されるラビリンス部をグリー スが通過しにくく、グリースを転動体設置部分に封入しておく効果が優れている 。従って、上記グリースの使用量の低減効果が、より優れたものになる。

【００２５】 更に、外輪相当部材として、単一の部材の内周面に複列の内方軌道を有する一 体型のものを使用しているので、この外輪相当部材を含む車軸用ハブユニットを 小型且つ軽量に構成できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第一実施例を示す断面図。

【図２】同第二実施例を示す断面図。

【図３】同第三実施例を示す断面図。

【図４】従来構造の１例を示す断面図。

【符号の説明】

１ ハブ ２ フランジ ３ 内輪 ４ 外方軌道 ５ 外輪 ６ 取付フランジ ７ 内方軌道 ８ 転動体 ９ 円筒状空間 １０ ハブキャップ １１、１１ａ ストッパ １２ 隔壁部材 １３ 空間 １４ シール材 １５ ハブキャップ １６ 固定部 １７ 突壁 １８ 内側円筒部 １９ 外側円筒部 ２０ 底壁部 ２１ 凹溝 ２２ 環状凹部

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 外周面に複列の外方軌道を有し使用時に
   回転する内輪相当部材と、単一の部材の内周面に複列の
   内方軌道を有し使用時に回転しない一体型の外輪相当部
   材と、上記外方軌道と内方軌道との間に設けられた複数
   の転動体と、上記外輪相当部材の開口端部に固定され
   て、この開口端部を塞ぐカップ状のハブキャップとから
   成る自動車の車軸用ハブユニットに於いて、上記ハブキ
   ャップを上記開口端部に固定する為、このハブキャップ
   に設けた固定部に、上記外輪相当部材の端部内周面から
   全周に亙り直径方向内側に突出して上記内輪相当部材の
   一部外周面に近接する突壁を形成し、この突壁により上
   記転動体装着部に存在するグリースが上記開口端部に向
   けて移動する事を阻止した事を特徴とする自動車の車軸
   用ハブユニット。
2. 【請求項２】 ハブキャップの外周面に形成された外向
   フランジ状のストッパと、外輪相当部材の端面の直径方
   向内半部に設けられた環状凹部とを備え、この環状凹部
   の奥面に上記ストッパの片側面を当接させた状態で内輪
   相当部材に対する突壁の位置決めが図られ、この状態で
   上記ストッパの他側面が上記外輪相当部材の一端面から
   突出する事がない、請求項１に記載した自動車の車軸用
   ハブユニット。