JPH0735019U - 熱硬化性樹脂用ベント式射出成形機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スクリュー先端部の可塑化中の成形材料から
発生するガスを除去し、プレキュアを簡単に掃除するこ
とのできるようにする。 【構成】 加熱筒１にスクリュー２を回転自在且つ進退
自在に嵌挿し、加熱筒１の先端にノズル９が取付けられ
たシリンダヘッド３を着脱自在に設ける。加熱筒１には
ベント１７が設けられ、スクリュー２は段差部１５を設
けて第１ステージと第２ステージの２段に区分されてい
る。第２ステージ２Ｂのスクリュー溝１１を第１ステー
ジ２Ａのスクリュー溝より深くし、第１ステージと第２
ステージの圧縮比を夫々１：１とした。また、スクリュ
ーの先端にはスミアヘッド１３を設けた。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、熱硬化性樹脂の成形に用いるベント式の射出成形機に関し、さらに 詳しくは、スクリュー先端部の可塑化した成形材料から発生するガスを除去して 射出成形を行うことができる熱硬化性樹脂用射出成形機に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

熱硬化性樹脂の成形は、従来からスクリューを備えた射出成形機により行われ ている。この熱硬化性樹脂を成形するためのスクリューを備えた射出成形機は、 成形材料を加熱して可塑化するための温度調節装置を備えた加熱筒と、この加熱 筒内に回転可能且つ進退動可能に嵌挿された成形材料を前方に送り出すためのス クリューと、成形材料を加熱筒内に供給するための成形材料供給手段と、金型に 当接して可塑化した成形材料をキャビティ内に射出するためのノズルとを備えて なるもので、成形材料を可塑化する際に樹脂に含まれている水分やガス等（以下 単にガスという）を放出させるために、加熱筒にはベントが設けられている。ス クリューは、２段に分けられ、射出方向の後方を第１ステージ、それより前方を 第２ステージとして区分されている。そして、従来のスクリューは、第１ステー ジ及び第２ステージ共に、スクリュー溝の容積が一定で大きいフィードゾーンと 、後方から前方に向かってスクリュー溝の容積が漸減するコンプレッションゾー ンと、スクリュー溝の容積が一定で小さいメータリングゾーンとを、後方から前 方に向かって順次形成したものが用いられていた。また、熱硬化性樹脂は可塑化 時の粘度が高いため逆流が少ないので、熱硬化性樹脂を成形するための射出成形 機のスクリューには逆流防止装置が取付けられていない。

【０００３】 成形材料は、供給手段によって加熱筒内に供給され、スクリューの回転移送作 用によつてスクリュー溝に沿って混練されながら加熱筒の先端部に送られる。こ の過程において、成形材料は、スクリュー溝の容積の減少によって圧縮されると 共に剪断作用を受けて摩擦熱が発生して可塑化し、加熱筒の温度調節装置による 加熱又は冷却によって所定の温度に保持される。熱硬化性樹脂は、可塑化すると きにガスを発生するが、このガスはベントから排出される。可塑化された成形材 料はスクリュー先端に貯留され、スクリューが前進することによって、ノズルか ら金型内に射出される。成形材料を金型に充填した後には、一時的に金型の型締 力を開放し、金型分割面からキャビテイ内のガスを排出している。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、従来のベント式射出成形機では、成形材料は圧縮・混練されな がら前方に送られるため、第１ステージにおいて可塑化した成形材料に発生した ガスはベントによって加熱筒外に放出されるが、第２ステージにおいて成形材料 に発生したガスはベントから放出されず、ガスは、樹脂に混入したまま金型のキ ャビティに射出され、型締力を一時的に開放したときに金型の分割面から排出さ れていた。そのため、内部にボイドがなく緻密で表面につやがあり寸法精度の良 い成形品を得ることが困難であった。また、型締力を一時的に開放してガスを排 出する際に、樹脂がガスと共に金型分割面に入り込み、バリが発生するという問 題があった。

【０００５】 さらに、従来のベント式射出成形機は、成形材料を圧縮・混練しながら前方に 送るために、コンプレッションゾーンにおけるスクリュー溝の容積を後方から前 方に向かって漸減させ、且つ、メータリングゾーンの溝の容積をフィードゾーン の溝の容積よりも小さく形成したものであったので、成形材料が加熱によってプ レキュアを起こした際に、固化した樹脂を取り除くには加熱筒からスクリューを 抜いて掃除する必要があった。

【０００６】 本考案は、熱硬化性樹脂の射出成形において、金型に射出される成形材料のガ スを除去すると共に、加熱筒内に発生したプレキュアを簡単に取り除くことがで きるようにした熱硬化性樹脂用ベント式射出成形機を提供することを目的とする ものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

本考案は、上記課題を解決するためになされたもので、加熱筒内に回転可能且 つ進退動可能に嵌挿されたスクリューを備えた熱硬化性樹脂用ベント式射出成形 機において、第２ステージのスクリュー溝を第１ステージのスクリュー溝よりも 深くすると共に、該第１ステージ及び第２ステージの圧縮比を夫々１：１とした ことを特徴とするものである。スクリューの先端には、絞りヘッドを設けること が望ましい。

【作用】

【０００８】 熱硬化性樹脂の成形材料は、供給手段によって加熱筒内に供給され、第１ステ ージにおいて、スクリューの回転によって混練されながら剪断作用を受けて摩擦 熱を発生して可塑化し、温度調節装置によって所定の温度に保持されて前方に送 られる。

【０００９】 可塑化された成形材料は、第１ステージから第２ステージに送られると、スク リュー溝の容積が拡大するため膨張して成形材料に混入していたガスを放出し、 この放出されたガスはベントから排出される。

【００１０】 第２ステージに送られた成形材料の量は第２ステージのスクリュー溝の容積よ りも小さいので、成形材料は、スクリュー溝の壁面に押されながら前方のスクリ ュー溝の壁面との間に隙間ができた状態で送られ、第２ステージで発生したガス は、この隙間を通ってベントから排出される。

【００１１】 ガスを完全に除去された成形材料は加熱筒の先端に貯留され、この貯留された 成形材料はスクリューが前進することによって金型のキャビティ内に射出される 。スクリューの先端には、シリンダヘッドの内壁との間に所定の間隔を有するス ミアヘッドが設けられているので、樹脂の逆流によるベントアップが防止されて いる。

【００１２】 加熱筒内で成形材料が可塑化する所定の温度以上に加熱されて硬化し、プレキ ュアを発生した場合においても、スクリューの圧縮比を１：１としているので、 プレキュアは加熱筒内で詰ることなくスクリューの前方に送られる。プレキュア を取り除く際は、シリンダヘッドを加熱筒から取り外せば、スクリューの先端に プレキュアが送られているので、簡単に取り除くことができる。

【００１３】

【実施例】

本考案に係る熱硬化性樹脂用ベント式射出成形機の一実施例を図に基づいて説 明する。本考案に係る熱硬化性樹脂用ベント式射出成形機は、概略図１に示すよ うに、加熱筒１内にスクリュー２が嵌挿され、加熱筒１の先端部にはシリンダヘ ッド３が取付けられている。

【００１４】 スクリュー２の後端にはモータ及びラム（図示を省略した）が接続されており 、スクリュー２を回転可能、且つ進退動可能に駆動させる。加熱筒１は、その後 端近傍（図１において右方向）に熱硬化性樹脂の成形材料を供給するための供給 手段としてホッパ５が設けられ、前端にシリンダヘッド３がボルト７によって取 付けられ、必要があるときには、ボルト７を抜いてシリンダヘッド３を加熱筒１ から取り外すことができるようになっている。また、加熱筒１には、成形材料を 所定の温度に保持するために、加熱または冷却を行うことのできる温度調節手段 （図示を省略した）が設けられている。シリンダヘッド３には螺合部３ａが形成 され、ノズル９が螺合されている。なお、本考案における加熱筒１内への成形材 料の供給手段はホッパ７を用いた例で説明するが、これに限定されることなく、 例えば、成形材料の供給手段としてフィードスクリューを設けることもできる。

【００１５】 スクリュー２は、図１に示すように、略全長にわたってスパイラル状のスクリ ュー溝１１が均等なピッチＰで形成されている。このスクリュー溝１１が形成さ れた有効長の中間には段部１５が形成され、スクリュー２を段部１５から射出方 向後方（図１において右方向）の第１ステージ２Ａと、段部１５から射出方向前 方（図１において左方向）の第２ステージ２Ｂとの２段に区分している。第２ス テージ２Ｂのスクリュー溝の深さＨ２は第１ステージ２Ａのスクリュー溝の深さ Ｈ１より大きくなるように形成され、１ピッチ当りの容積は第１ステージに比べ て第２ステージの方が拡大されている。また、スクリュー２の先端には、成形材 料が逆流してベントアップしないように、シリンダヘッド３の内壁と所定間隔を 有する絞りヘッド（スミアヘッド）１３が設けられている。

【００１６】 第１ステージ２Ａのスクリュー溝の深さＨ１は、図２に示すように、ホッパ近 傍の後端Ｈ１ａと段部近傍Ｈ１ｂとが同じに形成され、また、第２ステージのス クリュー溝の深さＨ２は、図３に示すように、段部近傍Ｈ２ａと先端部近傍Ｈ２ ｂとが同じ深さに形成され、同一ステージにおける１ピッチあたりの容積は変化 しておらず、すなわち、第１ステージ２Ａと第２ステージ２Ｂは、共に圧縮比が 1：１に設定されている。なお、この実施例においては、第１ステージ２Ａのス クリュー溝１１の深さＨ１と第２ステージ２Ｂのスクリュー溝１１の深さＨ２の 比、すなわち第１ステージと第２ステージの１ピッチ当りの容積の比は、略１： ２に設定されている。

【００１７】 加熱筒１には、上方に開口するベント１７が設けられ、成形材料の可塑化によ って発生したガスを排出する。このベント１７は、スクリュー２に設けられた段 部１５の前方に対応する位置に配置されている。

【００１８】 以上のように構成された熱硬化性樹脂用射出成形機の作動について説明する。 熱硬化性樹脂の成形材料はホッパ５から加熱筒１内に供給される。成形材料は、 第１ステージ２Ａにおいて、スクリュー２が回転することによってスクリュー２ の剪断作用と混練による摩擦とを受けて熱を発生し、可塑化されると共に、必要 に応じて使用される加熱筒の温度調節手段によって所定の温度に保持されながら 前方に送られる。

【００１９】 可塑化された成形材料は、スクリュー２によってさらに前方に送られ、段部１ ５において急激にスクリュー溝１１の容積が拡大するため、膨張して成形材料に 混入していたガスを放出する。この成形材料から放出されたガスは、段部１５よ りも前方に配置されたベント１７から排出される。

【００２０】 スクリュー２のピッチＰが均等に形成されると共に第２ステージ２Ｂのスクリ ュー溝１１の深さＨ２が第１ステージ２Ｂのスクリュー溝１１の深さＨ１よりも 深く形成されて第２ステージ２Ｂの１ピッチ当りの容積が第１ステージ２Ａの容 積よりも増加し、且つ、スクリュー２が第１ステージ２Ａと第２ステージ２Ｂと において同じ速度で回転されるため、第１ステージ２Ａに供給された成形材料の 量は、第２ステージ２Ｂのスクリュー溝１１の容積よりも少ない。そのため、成 形材料は、第２ステージ２Ｂにおいて、スクリュー溝１１の後方壁面１１ａに押 されながらスクリュー溝１１の前方壁面１１ｂとの間に隙間ができた状態で送ら れることとなる。第２ステージ２Ｂで発生したガスは、図１において矢印で示す ように、この隙間を通ってベント１７から排出される。

【００２１】 ガスが排出された成形材料は、第２ステージ２Ｂにおいて計量蓄積され、シリ ンダヘッド３に設けられたノズル９が金型のスプール（図示を省略した）に当接 した状態でスクリュー２が前進し、金型のキャビティ内に射出される。スミアヘ ッド１３をスクリュー２の先端に設け、このスミアヘッド１３はシリンダヘッド ３の内壁との間に所定の間隔を有しているので、樹脂が逆流せず、ベントアップ を防止することができる。

【００２２】 成形材料が可塑化する所定の温度以上に加熱されてプレキュアを発生した場合 においては、本考案に係るスクリュー２の圧縮比を１：１としたためにスクリュ ー溝の深さが同一ステージにおいては減少しないので、プレキュアは加熱筒１内 で詰まることはなく、スクリュー２の先端に送られる。プレキュアを取り除く場 合には、ボルト７を抜いてシリンダヘッド３を加熱筒１から取り外し、スクリュ ー２の先端に送られたプレキュアを取り除けば良い。

【００２３】 本考案に係るベント式射出成形機は、通常この種の成形機によって成形される 熱硬化性樹脂であれば適用することができ、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹 脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等、及びゴムを含む 熱硬化性樹脂を成形することができる。

【００２４】

【考案の効果】

本考案によれば、熱硬化性樹脂用のベント式射出成形機のスクリューの圧縮比 を１：１とし、且つスクリュ先端にスミアヘッドを設けたことにより、スクリュ ー先端部の可塑化中の材料から発生するガスをスクリューの後部に逃がし、ガス を除去しながら射出成形を行うことができるので、成形品の表面はガスの影響の ない綺麗な艶のあるものができ、また成形品の内部もボイドのない緻密な製品が 得られる。また可塑化した樹脂にプレキュアが発生した場合でも、スクリューを 加熱筒から抜くことなく、シリンダヘッドを取り外すだけで簡単に取り除くこと ができる等の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る熱硬化性樹脂射出成形機の一実施
例を示す断面図である。

【図２】図１の第１ステージを示す拡大断面図である。

【図３】図１の第２ステージを示す拡大断面図である。

【符号の説明】

１ 加熱筒 ２ スクリュー ３ シリンダヘッド ５ ホッパ ９ ノズル １１ スクリュー溝 １３ スミアヘッド １５ 段部 １７ ベント Ｐ ピッチ Ｈ スクリュー溝の深さ

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 加熱筒内に回転可能且つ進退動可能に嵌
   挿されたスクリューを備えた熱硬化性樹脂用ベント式射
   出成形機において、 第２ステージのスクリュー溝を第１ステージのスクリュ
   ー溝よりも深くすると共に、該第１ステージ及び第２ス
   テージの圧縮比を夫々１：１としたことを特徴とする熱
   硬化性樹脂用ベント式射出成形機。
2. 【請求項２】 スクリュー先端に絞りヘッドを設けたこ
   とを特徴とする請求項１記載の熱硬化性樹脂用ベント式
   射出成形機。