JPH0732811B2 - 壁面登頂器具 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、消防活動では建物の
外壁を登って上階への進入に利用でき、又、スポーツの
分野では壁面登頂に利用できる壁面登頂器具に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】従来、梯子車が使用できない火災現場で
上階への進入用として一般的に使用しているのは可搬式
梯子等であるが、梯子を掛ける足場がなければ使用でき
ないし、屋内の通路が狭ければ搬送が極めて困難であっ
た。又、一般に耐火建物火災では濃煙と熱気で屋内進入
が困難な場合が多く、屋内から上階への進入路を絶たれ
如何にして建物外側から進入するかが消防活動上の問題
点であった。

【０００３】又、スポーツの分野で壁面登頂では、壁面
に手足を掛ける凹凸や登頂用金具を掛ける壁面の割れ目
が無ければ、登頂不能となることが多かった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は従来の消防用
資器材では昇降が不可能であった建物の外壁を消防隊員
が手足に吸盤（１）を装着して、壁面登頂する自然な動
作で把手（３）又は足掛け（４）を操作して切換弁
（２）を作動させ、吸盤（１）の吸着、解放の切り換え
をして、上階へ進入することを可能にするものである。
又、何の手掛かりもない垂直に近い壁面では登頂が不可
能であったスポーツの壁面登頂も本発明によって可能に
するものである。

【０００５】

【課題を解決する為の手段】本発明は、主真空配管
（７）から分岐する４本の真空配管（８）に、それぞれ
結合する３方向の切換弁（２）が付く４個の吸盤（１）
からなり、又、４個の吸盤（１）は上面に把手（３）が
軸着している手用及び足掛け（４）が軸着している足用
のそれぞれ２個になっている。３方向の切換弁（２）は
取付根元口が吸盤（１）内に通じ、一口が真空配管
（８）を結合する真空吸引側（１４）、他口が大気開放
側（１５）になるもので、その弁棒は手用にあっては把
手（３）と、足用にあっては足掛け（４）と、リンク機
構（６）を介して連結している構成である。本構成の主
真空配管（７）を真空発生装置に結合して使用するもの
である。なお、手用と足用の吸盤（１）の主なる構成は
同じで、相違点は、足用の足掛け（４）にはリターンス
プリング（５）、ペダル及び固定バンド（１２）が付い
た点である。

【０００６】

【作用】 手用の吸盤（１）の操作は、手で吸盤（１）の
把手（３）を握り、吸盤（１）を壁面に押さえ付けなが
ら把手（３）を下方に把手操作角度（１１）の下限まで
動かすと、その角度にリンク機構（６）が連動して切換
弁（２）の切り換え角度（１０）は下限となり、真空吸
引側（１４）になって、真空発生装置に結合した主真空
配管（７）及び真空配管（８）を経て吸盤（１）内の空
気は吸引され、吸盤（１）が壁面に吸着し固定される。
又、この状態で把手（３）を上方に把手操作角度（１
１）の上限まで動かせば、その角度にリンク機構（６）
が連動して切換弁（２）の切り換え角度（１０）は上限
となり、大気開放側（１５）になって、吸盤（１）内に
空気が入り、壁面への吸着が解放される。この操作は人
が壁面を登ろうとする自然な動作と矛盾がない。

【０００７】足用の吸盤（１）の操作は、足を吸盤
（１）の足掛け（４）に固定バンド（１２）で装着し、
吸盤（１）を壁面に押さえ付けながら足掛け（４）を下
方に動かせば、手用の吸盤（１）の操作と同様に吸盤
（１）が壁面に吸着し固定される。又、この状態で足掛
け（４）を上方に動かせば、手用の吸盤（１）の操作と
同様に壁面への吸着が解放される。なお、足用の吸盤
（１）の場合、足を浮かせ体重を足掛け（４）から除い
た状態でリターンスプリング（５）が作用し、切換弁
（２）の切り換え角度（１０）は上限となり強制的に大
気開放側（１５）に切り換えられる。この操作も人が壁
面を登ろうとする自然な動作と矛盾がない。

【０００８】

【実施例】 実施例について図面を参照して説明する。 図
１に示す手用の吸盤（１）に軸着している把手（３）の
操作角度（１１）で切換弁（２）の切り換え角度（１
０）に連動させるリンク機構（６）の作動の状況、及び
図２に示す足用の吸盤（１）に軸着している足掛け
（４）のリターンスプリング（５）の作動の状況は、そ
れぞれ図３及び４に示す通りであり、把手（３）又は足
掛け（４）の小角度の動きで、図５に示すように切換弁
（２）がほぼ直角に切り換えられる。手足用各２個の吸
盤（１）を主真空配管（７）及び真空配管（８）で結合
した全体の構成を図６に示す。又、足掛け（４）に付く
ペダル及び固定バンドの取り付け状況を図７に示す。

【０００９】 なお、切換弁（２）の切り換え角度（１
０）と把手操作角度（１１）との関係については、切り
換え角度（１０）が９０度であるのに対し、把手操作角
度（１１）が把手（３）の長さ約１０ｃｍの場合で２０
度以下となるようなリンク機構（６）とすることが理想
的である。

【００１０】 リターンスプリング（５）が足用の吸盤
（１）にあって手用の吸盤（１）にないのは、足は手ほ
ど器用な動作ができないことと手用は必要により作業を
するため把手（３）から手を放した時リターンスプリン
グあると切換弁（２）が大気開放側（１５）になり吸盤
（１）が落下するからである。これは何回もの試行の中
で得られた結果である。

【００１１】 本発明の機能の大きな役割を果たす吸盤
（１）は、ゴム等弾力性のある材料で吸着面を伏せたお
椀状にしてあり、更に吸着面の外周には非通気性のスポ
ンジを張り付けると、壁面に多少の凹凸があっても漏気
を防ぎ、吸着性が高いものとなる。又、本発明の特徴の
一つとして、多少の漏気があっても、主真空配管（７）
に結合してある継続して真空吸引している真空発生装置
の能力が漏気量を上回るものであれば、吸着性が降下し
ないことが挙げられる。

【００１２】 又、吸盤（１）の把手（３）及び足掛け
（４）に体重が掛かるとモーメントが作用し、吸盤
（１）の下部を支点に吸盤（１）の上端からはがれるよ
うな状態となる。これを防ぐため支持金具（１３）を付
けると、吸盤（１）の吸着状態が極めて安定したものと
なる。更にこの支持金具（１３）は壁面への接地摩擦が
増加する効果もある。

【００１３】 更に安全に対する配慮として、真空配管
（８）にチエックバルブ（９）を設けると、壁面に吸着
している４個の吸盤（１）の内一つの吸盤（１）を操作
中に３方向の切換弁（２）の切り換え角度（１０）が中
間になった時、その吸盤（１）内及びそれに結合した主
真空配管（７）及び真空配管（８）内は大気開放の状態
となる場合があるが、残り３個の吸盤（１）内の真空は
維持され、又、主真空配管（７）の結合が外れるか、あ
るいは真空発生装置の故障により主真空配管（７）内が
大気開放の状態になった場合でも、４個の吸盤（１）内
の真空は維持されるものとなる。

【００１４】仮に、本発明を使用する消防活動現場が梯
子車の届かない高層階で、その直下階から消防隊員が装
着して外壁を昇降するのであれば、通常消防隊員は高所
作業において安全ロープの使用は当然であるから、万
一、４個の吸盤（１）が解放されることがあっても、高
々２階層の落下であり大きな衝撃を受けることなく身体
は保持されるものである。

【００１５】

【発明の効果】これまでの課題とされていた壁面登頂
も、本発明の手用及び足用の吸盤（１）を人が両手足に
それぞれ装着し壁面に吸着させて体重を支え、ひとつず
つ交互に操作して手足の位置を変え体の位置を移せば、
垂直で多少の凹凸のある壁面でも昇降できるものとな
り、可能としたのである。

【００１６】 本発明により、火災建物の壁面に消防隊員
が昇降することができ、上階への進入が可能となり、消
防活動、救助活動が容易となった。

【００１７】 又、本発明の器具の操作は、人が壁面登頂
する自然の動作と矛盾がなく、安全性も配慮されている
ので、スポーツの壁面登頂としても活用できるものであ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】手用の吸盤の構造と外形図である。

【図２】足用の吸盤の構造と外形図である。

【図３】リンク機構の構造と作動状況の説明図である。

【図４】リターンスプリングの作動状況の説明図であ
る。

【図５】切換弁の真空吸引側及び大気開放側の切り換え
作動状況の説明図である。

【図６】４個の吸盤と主真空配管、真空配管を結合した
全体の構成図である。

【図７】足掛けのペダル及び固定バンド取付図である。

【符号の説明】

１ 吸盤 ２ 切換弁 ３ 把手 ４ 足掛け ６ リンク機構 ７ 主真空配管 ８ 真空配管

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 主真空配管（７）から分岐した４本の真
   空配管（８）に結合した３方向の切換弁（２）が付く手
   足用各２個の吸盤（１）からなり、各吸盤（１）内を真
   空吸引又は大気開放状態に切り換える切換弁（２）の弁
   棒が各吸盤（１）に軸着している手用の把手（３）又は
   足用の足掛け（４）とリンク機構（６）を介して連結し
   ている壁面登頂器具。