JPH0727064A - スクロール式圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、低振動、低騒音の特性をそのまま生
かし、圧縮比が一定であることの不利を解消して、最初
の設計圧縮比に適応した能力可変をなし、圧縮性能の向
上を図れるスクロール式圧縮機を提供する。 【構成】圧縮空間Ｓで圧縮した被圧縮ガスを、密閉ケー
ス１内へ案内する吐出ポート１３と、このポートと連通
する吐出圧導入孔１７と、この導入孔に一端部を連通
し、他端部は閉塞される切換え用孔１６と、この用孔内
に移動自在に収容され連通溝２１が設けられるスライダ
１９と、切換え用孔と密閉ケース内とを連通するケース
内圧導入孔２２と、この内圧導入孔を介して導かれるケ
ース内圧力と、吐出圧導入孔を介して導かれる吐出圧力
との差により移動するスライダによって、圧縮空間の高
圧部と、低圧部のそれぞれと、切換え用孔とを連通もし
くは遮断される高圧案内孔２３および低圧案内孔２４を
具備した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、たとえば空気調和機の
冷凍サイクルを構成する圧縮機として用いられるスクロ
ール式圧縮機に関する。

【０００２】

【従来の技術】たとえば、空気調和機の冷凍サイクルを
構成する圧縮機においては、通常のロータリ式圧縮機と
比較して、運動騒音が極めて低く、かつ吸込弁や吐出弁
など不要で部品点数が少なくてすみ、しかも圧縮性能の
よいスクロール式圧縮機が多用される傾向にある。

【０００３】この種のスクロール式圧縮機は、密閉ケー
ス内に、回転軸の一端側に電動機部、他端側に圧縮機部
を連結してなる電動圧縮機本体を収容し、上記密閉ケー
スの内底部には潤滑油を集溜する油溜り部が形成されて
いる。

【０００４】上記圧縮機構部は、固定スクロールと旋回
スクロールとからなり、各スクロールの渦巻状の翼部相
互を噛合させ、これら翼部と各スクロールの鏡板部とで
圧縮空間を形成する。

【０００５】上記回転軸の回転にともなって旋回スクロ
ールが旋回運動し、圧縮空間に被圧縮ガスである低圧の
ガス冷媒を吸込み、圧縮空間の容積減少により、圧縮し
て吐出するようになっている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
スクロール式圧縮機の特徴として、その構造上、圧縮比
が固定される点にある。年間の気温の変動が比較的少な
い、気候的に安定した地域では、標準条件を設定し易
く、設計圧縮比をとることに困難がないが、我が国のよ
うに四季があって、年間気温の幅が大きい場合には、デ
メリットに繋がる。

【０００７】すなわち、外気温度の変動は、凝縮圧力お
よび凝縮温度の変動となり、圧縮機の圧縮容量および熱
交換器の熱交換容量の設定に大きな影響を与えている。
たとえば、標準条件の圧縮比で設計した圧縮機は、冬季
（低温）の低負荷時には凝縮温度および凝縮圧力が低く
なるので、過圧縮状態に陥り、損失の発生が顕著とな
る。

【０００８】図３のモリエル線図で示すように、標準条
件においては、ａからｂで圧縮工程、ｂからｃで凝縮工
程、ｃからｄで減圧工程、ｄからａで蒸発工程となる
が、低温時には、ａからｂに一旦圧縮されて、ｂからｆ
に圧力低下があり、エンタルピに差が生じる。このよう
な圧力低下の状態で、ｆからｇに低負荷時の凝縮工程が
なされる。

【０００９】標準条件で設定した圧縮比での圧縮機の仕
事量は、ａからｂに至るエンタルピ量であるｉ₁ である
が、同圧縮機において低負荷時には、ｂからｆに至るエ
ンタルピ量であるΔｉ₁ が損失として計上されることと
なる。

【００１０】本発明は上記事情に着目してなされたもの
であり、その目的とするところは、低振動、低騒音の特
性をそのまま生かして、圧縮比が一定であることの不利
を解消し、最初の設計圧縮比に適応した能力可変をなし
て、圧縮性能の向上を図れるスクロール式圧縮機を提供
しようとするものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的を満足するため
本発明のスクロール式圧縮機は、密閉ケース内に、固定
スクロールと旋回スクロールとからなる圧縮機構部を収
容し、各スクロールの渦巻状の翼部相互を噛合させ、こ
れら翼部と各スクロールの鏡板部とで圧縮空間を形成し
て、被圧縮ガスを吸込み、圧縮空間の容積減少により、
圧縮して吐出するスクロール式圧縮機において、所定圧
まで圧縮した被圧縮ガスを、圧縮空間から密閉ケース内
へ吐出案内する吐出ポートを設け、この吐出ポートと連
通する吐出圧導入孔を設け、この吐出圧導入孔に切換え
用孔の一端部を連通し、他端部は閉塞し、この切換え用
孔内に連通路が設けられるスライダを移動自在に収容
し、切換え用孔と密閉ケース内とをケース内圧導入孔で
連通し、こにケース内圧導入孔を介して導かれるケース
内圧力と、吐出圧導入孔を介して導かれる吐出圧力との
差によりスライダを移動付勢し、圧縮空間の高圧部と、
低圧部のそれぞれと、切換え用孔とを高圧案内孔および
低圧案内孔で連通した。

【００１２】

【作用】このような構成によれば、高圧案内孔および低
圧案内孔は、スライダの位置に応じて、スライダの連通
路を介して連通される。もしくはスライダによって遮断
される。したがって、能力可変を行うことができ、標準
条件の設定に応じて、特に低負荷時の圧力損失を最小限
に抑制する。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の一実施例を、たとえば空気調
和機の冷凍サイクル回路に用いられ、図１に示すよう
な、横置き形のスクロール式圧縮機を適用して説明す
る。図中１は密閉ケースであり、この密閉ケース内の、
図において左側部に支持フレーム２が設けられる。支持
フレーム２は、水平方向に延出される回転軸３の一端部
を回転自在に枢支している。

【００１４】上記回転軸３の他端部は、密閉ケース１に
設けられる副軸受２Ａによって枢支される。上記支持フ
レーム２側には、後述する圧縮機構部４が連結され、他
の位置にはステータ５とロータ６とからなる電動機部７
が設けられる。

【００１５】上記圧縮機構部４は、上記支持フレーム２
にオルダムリング１０を介して旋回自在に支持される旋
回スクロール１１と、この旋回スクロールと噛合する固
定スクロール１２とから構成される。

【００１６】上記オルダムリング１０は、旋回スクロー
ル１１の自転を規制し、旋回運動のみ行わせる。上記旋
回スクロール１１は、上記回転軸３の偏心部３ａに掛合
するボス部１１ｃを備えた鏡板部１１ａと、この鏡板部
１１ａの上面側に一体に突設される渦巻状の翼部１１ｂ
とからなる。

【００１７】上記固定スクロール１２は、鏡板部１２ａ
と、この鏡板部１２ａの下面側に一体に突設され旋回ス
クロール１１の翼部１１ｂと噛合する渦巻状の翼部１２
ｂとからなる。

【００１８】これら旋回，固定スクロール１１，１２の
鏡板部１１ａ，１２ａと翼部１１ｂ，１２ｂとで、一対
の圧縮空間Ｓ，Ｓが形成され、周端部側から被圧縮ガス
である冷媒ガスを取り込んで、中心部側に移動するとと
もにその容積を縮小させ、圧縮作用を行えるようになっ
ている。

【００１９】上記固定スクロール鏡板部１２ａの中央部
には、上記圧縮空間Ｓの渦巻き中心と連通するよう吐出
ポート１３が貫通して設けられる。上記密閉ケース１に
貫通して、吸込管１４が設けられる。この吸込管１４
は、上記固定スクロール鏡板部１２ａも貫通して、その
開口端を上記圧縮空間Ｓの周端部に対向している。外部
に延出される吸込管１４は、ここでは図示しない冷凍サ
イクルの蒸発器に連通する。

【００２０】上記電動機部７側の密閉ケース１部位に
は、吐出管１５が接続されていて、外部に延出され、こ
こでは図示しない冷凍サイクルの凝縮器に連通する。図
２（Ａ），（Ｂ）に拡大して示すように、能力可変機構
Ａが設けられる。

【００２１】すなわち、上記固定スクロール１２の鏡板
部１２ａに、鏡板部軸心である吐出ポート１３を対称と
して、一対の切換え用孔１６，１６が、板厚方向に沿っ
て設けられる。

【００２２】これらの切換え用孔１６は、鏡板部１２ａ
の板厚内に設けられていて、それぞれの一端部は、これ
よりも小孔である吐出圧導入孔１７を介して、上記吐出
ポート１３に連通する。切換え用孔１６の他端部は、鏡
板部１２ａ周面に開口するが、ここには閉塞栓１８が設
けられ、開口端における完全なシールがなされる。

【００２３】さらに、切換え用孔１６内には、スライダ
１９および弾性体である押えばね２０が収容される。上
記スライダ１９の直径は、切換え用孔１６の直径より極
くわずか小さく、スライダは切換え用孔の軸方向に沿っ
て自由に移動自在であるが、これらの間からほとんどガ
スのリークがない状態に組み込まれている。

【００２４】スライダ１９の周面には、この移動方向に
沿って所定長さの連通路である連通溝２１が設けられ
る。上記押えばね２０は、固定の閉塞栓１８と、移動自
在なスライダ１９との間に介設されているところから、
スライダを吐出圧導入孔１７を閉塞する方向に弾性的に
押圧付勢する。

【００２５】上記固定スクロール鏡板部１２ａには、こ
の押えばね２０を収容する切換え用孔１６部位と上記密
閉ケース１内部とを連通するケース圧導入孔２２が設け
られていて、ケースの内部圧力が切換え用孔１６に導か
れるようになっている。

【００２６】一方、上記固定スクロール鏡板部１２ａに
は、圧縮空間Ｓの中心部に近い位置である高圧部と、上
記切換え用孔１６とを連通する高圧案内孔２３が設けら
れる。さらに、圧縮空間Ｓの周端部に近い低圧部と、上
記切換え用孔１６とを連通する低圧案内孔２４が設けら
れる。

【００２７】スライダ１９の端面がケース圧導入孔１７
を閉塞する位置にあるときは、高圧案内孔２３がスライ
ダに設けられる連通溝２１に対向し、かつ連通するが、
低圧案内孔２４はスライダの周面によって閉塞されるよ
う、設定される。

【００２８】また、後述する理由で、スライダ１９が押
えばね２０を押圧して最も収縮させ、スライダ端面がケ
ース圧導入孔１７と離間した位置にあるときは、高圧案
内孔２３および低圧案内孔２４ともに、連通溝２１に連
通するように設定される。

【００２９】しかして、電動機部７に通電して回転軸３
を回転駆動すると、旋回スクロール１１が旋回運動す
る。吸込管１５から直接、各圧縮空間Ｓの周端側に、被
圧縮ガスである低圧のガス冷媒が吸込まれる。

【００３０】旋回スクロール１１の旋回運動にともなっ
て、圧縮空間Ｓが軸心側に移動するとともに容積が減少
し、ここに導かれたガスは圧縮される。所定圧まで高圧
上昇化したところで、吐出ポート１３から密閉ケース１
内に吐出される。

【００３１】高圧化したガスは密閉ケース１内に充満
し、さらに、吐出管１５から外部の冷凍サイクル構成機
器である凝縮器に導出される。特に、夏季の運転を標準
条件として圧縮比が設定されたスクロール圧縮機におい
ては、同時期における運転では、凝縮圧力が高い。（凝
縮圧力は、密閉ケース１内部圧力であるケース内圧に等
しい）したがって、圧縮空間Ｓで圧縮され吐出ポート１
３から吐出されるガス圧は、凝縮圧力であるケース内圧
力よりも低い傾向となる。すなわち、 ケース内圧力＞
吐出圧力 の状態になる。

【００３２】このときは、図２（Ａ）に示すように、ケ
ース圧導入孔２２を介して切換え用孔１６に導かれるケ
ース内ガス圧と、押えばね２０の弾性付勢力の合計が、
吐出ポート１３から吐出圧導入孔１７に導かれる吐出圧
力よりも大になって、スライダ１９は吐出圧導入孔１７
を閉成するようスライド付勢される。

【００３３】圧縮空間Ｓの高圧部と連通する高圧案内孔
２３は、スライダ１９に設けられる連通溝２１に対向す
るが、低圧部と連通する低圧案内孔２４は、スライダ周
面によって閉成される。

【００３４】したがって、圧縮空間Ｓでは低圧部から高
圧部に亘って漸次圧縮圧力が上昇し、最高圧に到達した
ところで吐出ポート１３から吐出される、通常の圧縮作
用がなされる。

【００３５】また、同圧縮機における冬季の運転では、
低負荷となり凝縮温度と凝縮圧力が低下する。したがっ
て、従来のような圧縮機構部で、何らの状態変化もない
場合には、先に説明したように過圧縮になってしまう。

【００３６】しかしながら、本発明の圧縮機構部２で
は、以下に述べるような作用が行われる。すなわち、図
２（Ｂ）に示すように、吐出ポート１３から吐出圧導入
孔１７に導かれる吐出圧力が、ケース圧導入孔２２を介
して導かれるケース内ガス圧と、押えばね２０の弾性付
勢力との合計よりも大になる。

【００３７】スライダ１９は、ケース内ガス圧を受けて
スライド付勢され、吐出圧導入孔１７を開放する。この
とき、圧縮空間Ｓの高圧部と連通する高圧案内孔２３が
スライダ１９に設けられる連通溝２１に対向するととも
に、低圧部と連通する低圧案内孔２４も連通溝に対向す
る。

【００３８】したがって、高圧案内孔２３と低圧案内孔
２４が連通溝２１を介して連通され、圧縮空間Ｓの低圧
部と高圧部とが直接連通する。高圧部のガスが低圧部に
導かれ、吐出ポート１３から吐出される状態では高圧レ
リースをなす。

【００３９】密閉ケース１内に充満するガスは、通常運
転よりも圧力低下した状態で吐出管１５から吐出され、
低負荷運転に適応した能力可変をなす。この状態が継続
され、吐出圧力がケース内圧力に等しくなったとき、ス
ライダ１９の移動が停止する。通常運転に戻り、凝縮圧
力が上昇したところで、先に説明した作用をなす。

【００４０】このように、最初の設計圧縮比（標準条
件）をどのように設定するかによって、低負荷時の高圧
レリースである、能力可変機構Ａの作動開始と終了の条
件を自由に決定できる。

【００４１】なお、上記スクロール式圧縮機は、空気調
和機の冷凍サイクルを構成するものとして説明したが、
これに限定されるものではなく、他の被圧縮ガスを圧縮
する圧縮機として使用できる。また、横置き形のスクロ
ール式圧縮機に限定されず、縦形の同機種であってもよ
い。

【００４２】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、吐
出ポートと連通する吐出圧導入孔、一端部が吐出圧導入
孔に連通され、他端部が閉塞される切換え用孔、この切
換え用孔内に収容されるスライダ、切換え用孔と密閉ケ
ース内とを連通するケース内圧導入孔、上記圧縮空間の
高圧部と、低圧部のそれぞれと、切換え用孔とを連通す
る高圧案内孔および低圧案内孔とからなる能力可変の手
段を備えたから、低振動、低騒音の特性をそのまま生か
して、圧縮比が一定であることの不利を解消し、最初の
設計圧縮比に適応した能力可変をなして、圧縮性能の向
上を図れるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す、横置き型のスクロー
ル式圧縮機の縦断面図。

【図２】（Ａ）は、同実施例の、通常運転状態の能力可
変機構の縦断面図。（Ｂ）は、高圧レリース状態の能力
可変機構の縦断面図。

【図３】標準条件と低負荷時のモリエル線図。

【符号の説明】

１…密閉ケース、１２…固定スクロール、１１…旋回ス
クロール、４…圧縮機構部、Ｓ…圧縮空間、１３…吐出
ポート、１６…切換え用孔、１７…吐出圧導入孔、１９
…スライダ、２１…連通溝、２０…弾性体、１７…ケー
ス圧導入孔、２３…高圧案内孔、２４…低圧案内孔。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】密閉ケース内に、固定スクロールと旋回ス
   クロールとからなる圧縮機構部を収容し、各スクロール
   の渦巻状の翼部相互を噛合させ、これら翼部と各スクロ
   ールの鏡板部とで圧縮空間を形成して、被圧縮ガスを吸
   込み、圧縮空間の容積減少により、圧縮して吐出するス
   クロール式圧縮機において、 上記圧縮空間に連通され、所定圧まで圧縮した被圧縮ガ
   スを密閉ケース内へ吐出案内する吐出ポートと、 この吐出ポートと連通する吐出圧導入孔と、 この吐出圧導入孔に一端部が連通され、他端部が閉塞さ
   れる切換え用孔と、 この切換え用孔内に、移動自在に収容され、その移動方
   向に沿って連通路が設けられるスライダと、 上記切換え用孔と上記密閉ケース内とを連通し、ここを
   介して切換え用孔に導かれるケース内圧力と、上記吐出
   圧導入孔を介して導かれる吐出圧力との差により上記ス
   ライダを移動付勢するケース内圧導入孔と、 上記圧縮空間の高圧部と、低圧部のそれぞれと、上記切
   換え用孔とを連通し、上記スライダの位置に応じて、ス
   ライダの連通路を介して連通され、もしくは遮断される
   高圧案内孔および低圧案内孔とを具備したことを特徴と
   するスクロール式圧縮機。