JPH07246230A - 凍結保存用容器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】内容物を封入した状態で容器内の残存空気を簡
単かつ完全に除去することができ、−１９６℃の極低温
で保存後、解凍しても熱融着部の剥離や破損がなく、培
養液の漏れも起こらない凍結保存用容器を提供する。 【構成】特定の樹脂フィルムを内層１及び外層２とする
積層体から形成された袋状容器６であって、開口部５に
は咬合部４が設けられ、周縁部の少なくとも１ケ所に通
気性フィルター９が設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、医療、培養、食品分野
で用いられる冷凍保存用容器であって、特に動植物もし
くはヒトの組織あるいは細胞等をそのまま約−１９６℃
の極低温で長期間保存できる凍結保存用容器に関する。

【０００２】

【従来の技術】皮膚片、骨、心臓弁、腎臓、神経や血管
などの生体材料は、食品分野で用いられている−８０℃
〜−９０℃の低温では組織を破壊することなく数ケ月以
上の長期にわたって保存することができず、近年、組織
をグリセリンやＤＭＳＯ（Ｄｉｍｅｔｙｌ ｓｕｌｆｏ
ｘｉｄｅ）などの凍結保護液が添加された培養液中に浸
漬し、約−１９６℃で凍結保存する方法が採用されてい
る。

【０００３】凍結保存用容器として、内層が超高分子量
の無延伸ポリエチレンであり、外層が二軸延伸高密度ポ
リエチレンからなる積層材料の内層同士をヒートシール
した極低温耐性容器が開示されている（特公昭６０−４
９４２９号公報）。また、内層が極めて高分子量の無延
伸ポリエチレンであり、外層が二軸延伸高密度ポリエチ
レンテレフタレートである二層シートによって形成され
た超極低温性容器が開示されている（特開平２−１３６
１４０号公報）。

【０００４】しかしながら、上記容器は液状物のための
容器であり、筒状の開口部しか記載されておらず、生体
組織、例えば、皮膚片、骨、心臓弁、腎臓、神経や血管
などをそのままの形状で挿入することができないという
問題点があった。

【０００５】また、凍結保存用容器として、開口部に咬
合部が設けられた咬合具付合成樹脂袋も開示されている
（特公昭４９−１８９６４号公報）。しかしながら、開
口部をヒートシールした後に組織表面に付着している空
気を完全に取り除くことができず、さらに凍結保存用途
には使用できないという問題点があった。

【０００６】さらに、生鮮食料品を、融点−３℃〜−１
０℃の水溶液と共に袋中に密封包装した後、凍結させる
生鮮食料品の凍結保存方法が開示されている（特公平１
−１５２７２号公報）。しかしながら、この方法では、
全周をヒートシールした袋が使用され、生体組織に適用
した場合、ヒートシール後に現れる組織表面に付着して
いた空気を取り除くことができないという問題点があっ
た。このような残存空気があると、急速解凍したきに空
気の膨張により、ヒートシール部に液漏れが発生し、生
体組織の無菌性が維持できなくなるという問題点があっ
た。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
に鑑みてなされたものであり、その目的は、生体組織等
の被保存物を袋に挿入し易く、凍結保存時にかさばるこ
とがなく、被保存物を封入した状態で容器内の残存空気
を簡単かつ完全に除去することができ、さらに、−１９
６℃の極低温で保存後、解凍してもヒートシール部の剥
離や破損がなく、培養液の漏れも起こらない凍結保存用
容器を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の凍結保存用容器
は、特定の樹脂フィルムを内層及び外層とする積層体か
ら形成された袋状容器であって、開口部には咬合部が設
けられ、周縁部の少なくとも１ケ所に通気性フィルター
が設けられている。

【０００９】上記内層としては、無延伸ポリエチレンの
樹脂フィルム又はシートが使用される。内層として延伸
したポリエチレンを使用すると、ヒートシールにより延
伸が戻ったり、ヒートシール部に収縮が生じたりするの
で好ましくない。

【００１０】上記内層に使用される樹脂フィルム又はシ
ートの厚さは、薄くなると所定の強度が得られず、厚く
なると急速凍結が難しくなるので、０．０１５〜０．２
ｍｍが好ましい。

【００１１】上記外層としては、二軸延伸ポリエチレン
テレフタレート、一軸延伸ポリエチレンナフタレート、
無延伸ポリエチレンナフタレート、ポリパラバン酸、パ
ーフロロアルコキシ樹脂、ポリテトラフロロエチレン、
エチレン−テトラフロロエチレン交互共重合体、テトラ
フロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、塩
化三フッ化エチレン樹脂、芳香族ポリイミド又は二軸延
伸高密度ポリエチレンの樹脂フィルム又はシートが使用
される。

【００１２】上記外層に使用される樹脂フィルム又はシ
ートの厚さは、前記内層と同様な理由により、０．０１
２〜０．５ｍｍが好ましい。

【００１３】上記内層と外層とは、例えば、ポリエステ
ル系、ウレタン系又はエポキシ系などの接着剤によるド
ライラミネーションなどによって積層することにより積
層体が得られる。尚、接着力を向上させるために、内層
及び外層に使用される樹脂フィルム又はシートの接着面
に、コロナ放電処理、プラズマ処理、化学処理等が行わ
れてもよい。

【００１４】上記積層体を用いて袋状容器とする場合
は、該積層体の内層同士が相接するように重ね合わせた
後、該積層体の切断部同士が重なり合った三辺の周縁部
のうち、一辺を開口部とし他の二辺をヒートシールす
る。

【００１５】本発明の凍結保存用容器の形状は、上記積
層体を２枚重ね合わせた袋状以外に、ガセット型や船底
型などの平面状の底部を有するような袋状であってもよ
い。

【００１６】上記通気性フィルターは凍結保存用容器内
の残存空気を容器外へ排出するために設けられるもので
あり、該フィルターとしては、空気のみが透過可能な微
小な孔を有するポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデ
ン、テトラフルオロエチレンの樹脂フィルムが好まし
く、その孔径は細菌や凍結保存液を透過しないように
０．２２μｍ以下が好ましい。

【００１７】上記通気性フィルターその取り付け位置
は、該容器の周縁部の少なくとも１ケ所であり、実際に
は後述の咬合部のやや下方が好ましい。通気性フィルタ
ーを取り付けるには、例えば、凍結保存用容器の内層と
外層を貫通する孔を開け、この孔を該容器の外層側から
塞ぐようにして通気性フィルターを載置きし、ヒートシ
ールする方法が挙げられる。

【００１８】また、上記凍結保存用容器を吊り下げて保
存する場合には、周縁部にこの容器を吊り下げるための
孔が設けられいてもよい。

【００１９】上記凍結保存用容器の使用する方法として
は、図１に示すように、まず、開口部５を上にして凍結
保存用容器６を立てて被保存物１１を入れ、続いてＤＭ
ＳＯなどの凍結保存液を咬合部４のやや下まで充填す
る。次いで、咬合部４を閉じ、容器６内の残存空気を咬
合部４の下方に設けられた通気性フィルター９から排出
し容器６の容量を調節する。この容量調節は、必要以上
に容器６の厚みが増えて急速凍結ができなくなるのを防
止するために行われる。

【００２０】この容器６の容量調整を行った後、図２に
示すように、ヒートシール部１０より下方の容器内に空
気が残らないようにヒートシールし、ヒートシール部１
０を二分するように切断して、開口部５、咬合部４及び
通気性フィルター９を容器６から切り離す。次いで、こ
の被保存物１１を収納した容器６をフリーザー等に入れ
て保存する。凍結方法としては、容器６をプログラムフ
リーザーに入れて温度コントロールしながら凍結するの
が好ましい。

【００２１】また、被保存物１１が皮膚などの薄物の場
合は、被保存物を直接容器６に入れず、容器６と同様に
凍結保存に耐えるプラスチックプレート等に張り付け、
プレートごと保存するの好ましい。このとき使用するプ
ラスチックプレートの厚さは、１００〜２，０００μｍ
が好ましい。

【００２２】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説
明する。図１は、凍結保存用容器の全体構成を示す概要
図であり、図２は凍結保存用容器に被保存物が封入され
た状態を示す概要図である。

【００２３】まず、図１に示すように、無延伸の超高密
度ポリエチレンフィルムからなる内層１と二軸延伸ポリ
エチレンテレフタレートフィルムからなる外層２との積
層体を、内層１同士が相接するように重ね合わせた後、
熱融着機（富士インパルス社製「ポリシーラ」）を使用
して、重なり合った一辺３ａの両方の内層１にポリエチ
レン製のリボン状チャック部材（出光石油社製「ポリロ
ック」）をヒートシールして、咬合部４を有する開口部
５を形成した。この開口部５は、被保存物の出し入れを
容易にするために、一辺３ａの全長にわたって設けられ
るのが好ましい。

【００２４】次いで、積層体の切断部同士が重なり合っ
た二辺３ｂ、３ｃをそれぞれ熱融着機により、内層１同
士をヒートシールして袋状容器６を形成した。次に、折
り返した辺３ｄのやや内側をヒートシールすることによ
り非接液部７を設けた。なお、所定のヒートシール強度
を得るために、ヒートシール幅は５ｍｍ程度が好まし
い。

【００２５】上記袋状容器６は、積層体のサイズを適宜
選択することにより、任意の大きさに製作可能であり、
袋状容器６の形状は、取扱い上の利便性から、例えば、
筒状のように自立性を有するものが好ましい。

【００２６】次に、咬合部４のやや下方に小判型の孔
（図示しない）を開け、この孔を塞ぐようにテフロンと
ポリエチレンとをラミネートした通気性フィルター９を
ヒートシールし、非接液部７にも円形の孔８を開けるこ
とにより、凍結保存用容器６を得た。

【００２７】凍結保存用容器の性能評価 動物の屍から切り取った被保存物（体皮膚）１１をその
端部がカールしないように、直ちにプラスチックプレー
ト（図示せず）上にホッチキスで張り付け、培養液（図
示せず）を入れた上記凍結保存用容器にプレートごと挿
入した後、その咬合部４を閉じた。

【００２８】上記凍結保存用容器を通気性フィルター９
が上側となるように置き、適当な振動を与えて皮膚に付
着していた空気の全量を容器６の上部へ移動させ分離し
た。次いで、容器６の咬合部４、通気性フィルター９、
空気全量及び培養液の一部を含む容器６上部と被保存物
１１を含む容器６下部とを二分するように一定の幅でヒ
ートシールし、ヒートシール部１０を切断して二分する
ことにより容器６の上部と下部を分離して、被保存物１
１側に残存空気が全くない凍結保存用容器を得た。

【００２９】その後、被保存物（体皮膚）１１が封入さ
れた凍結保存用容器を、４℃の冷蔵庫で２時間保持し、
プログラムフリーザーでマイナス８０℃まで凍結させた
後、孔８に金属製のフックをかけ直ちに液体窒素中に浸
漬して凍結保存した。２４時間液体窒素中で保存した
後、凍結保存用容器を取り出し、直ちに３７℃の温水中
で解凍したが、ヒートシール部の剥離や破損はなく、培
養液の液漏れも認められなかった。

【００３０】

【発明の効果】本発明の凍結保存用容器の構成は、上述
の通りであり、被保存物を封入した状態で容器内の残存
空気を通気性フィルターより簡単かつ完全に除去するこ
とができるので、−１９６℃の極低温で保存した後、解
凍してもヒートシール部の剥離や破損、培養液の漏れが
起こらず、被保存物を無菌状態で保存可能であり、特
に、動植物もしくはヒトの組織あるいは細胞等の長期保
存に好適である。また、被保存物の封入から凍結に至る
まで培養液のこぼれがないので衛生的である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の凍結保存用容器を示す斜視図である。

【図２】本発明の凍結保存用容器に被保存物が封入され
た状態を示す斜視図である。

【符号の説明】

１ 内層 ２ 外層 ３ｂ，３ｃ，３ｄ 重なり合った一辺 ４ 咬合部 ５ 開口部 ６ 袋状容器 ７ 非接液部 ８ 孔 ９ 通気性フィルター １０ ヒートシール部 １１ 被保存物

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｂ６５Ｄ 33/01 33/25 Ａ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】無延伸ポリエチレンを内層とし、二軸延伸
   ポリエチレンテレフタレート、一軸延伸ポリエチレンナ
   フタレート、無延伸ポリエチレンナフタレート、ポリパ
   ラバン酸、パーフロロアルコキシ樹脂、ポリテトラフロ
   ロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン交互共重
   合体、テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン
   共重合体、塩化三フッ化エチレン樹脂、芳香族ポリイミ
   ド及び二軸延伸高密度ポリエチレンから選ばれたいずれ
   か１種を外層とする積層体から形成された袋状容器であ
   って、開口部には咬合部が設けられ、周縁部の少なくと
   も１ケ所に通気性フィルターが設けられていることを特
   徴とする凍結保存用容器。