JPH07246212A - 膝部疾患治療バンド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 治療効果の高い膝部疾患の治療のためのバン
ドを提供する。 【構成】 バンド本体２と、バンド本体２の裏面の任意
の位置に取り付けられるパッド３と、バンド本体２を膝
関節部１０に巻き付けて固定するための固定部４ａ，４
ｂとから構成されている。固定部４ａ，４ｂはリング６
ａ，６ｂを通して面状ファスナ５ａ，５ｂ、７ａ，７ｂ
によって任意の長さで固定される。パッドは第１および
第２の２つのパッド３ａ，３ｂからなり、損傷部位を参
照符号２０で示すと、両パッド３ａ，３ｂは膝蓋骨１５
の上部２個所で筋腱移行部９を圧迫できるようにされ
る。なお、パッドは、ゴムやスポンジのように弾性を有
するものが使用される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、膝部の疾患、例えばオ
スグットシュラッテル氏病の治療に好適な装具として治
療バンドに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】膝部の疾患にはいろいろあるが、その１
つに青少年に発生するオスグットシュラッテル氏病と称
されるものがある。このオスグットシュラッテル氏病
は、思春期の脛骨粗面の成長帯をおかす病態で、膝進展
機構のうち脛骨粗面部の骨端が脛骨骨幹と連結する部分
が最も弱い年代、例えば１３才前後に出現する。

【０００３】この病態が生じると、運動したり正座した
ときに脛骨結節に痛みが生じるようになる。これは近
年、小中学校のスポーツ活動が盛んになるにつれて多く
見られるようになっている。

【０００４】すなわち、人体で最も強い伸筋と言われる
大腿四頭筋は、大腿直筋、中間広筋、内側広筋、外側広
筋からなり、これらの４つの筋が合して１本の共通の腱
をつくり、膝蓋骨に停止している。そして、この腱束が
一部膝蓋骨の下方で膝蓋靭帯に続き、脛骨粗面に付着し
ている。その際、表在の腱繊維は膝蓋骨を越えるが、深
部にある腱線維は膝蓋骨の上縁及び両側縁に付着してい
る。

【０００５】一般に成長痛とは、骨格筋の発育パターン
がアンバランスのところへ、過度な運動を強要されたと
き骨端部に生じるもので、オスグットシュラッテル氏病
の場合は、脛骨粗面に加わる膝蓋靭帯の機械的に刺激に
よって、発育途上にある脛骨粗面の靭帯付着部付近の化
骨形成に障害をきたし、疼痛を訴えるようになる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
症状のオスグットシュラッテル氏病を治療する場合に
は、従来は、安静を保ち、膝関節の屈曲運動を制限し、
大腿四頭筋の緊張を和らげ、柔軟性を回復させ、脛骨粗
面に加わるストレスを軽減させていた。

【０００７】しかしながら、運動の激しい子供達にとっ
て、長期の安静を持続することは、非常に難しく、ま
た、１３才前後の生徒を預かる中学校におけるクラブ活
動などにおいて、指導者の理解が乏しく、または、学校
の名誉と称して安静にさせなければならない生徒に対し
て運動を強制する場合があることも否定できるものでは
なく、治療の効果がなかなかあがらないというのが実情
であった。

【０００８】本発明は、このような背景に鑑みてなされ
たもので、その目的は、治療効果の高い膝部疾患の治療
のための装具を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明は、バンド本体と、バンド本体の裏面の任
意の位置に取り付けられるパッドと、バンド本体を脚部
に巻き付けて固定するための固定部とから構成されてい
る。この場合、パッドは第１および第２の２つのパッド
からなり、オスグットシュラッテル氏病の場合、両パッ
ドは膝蓋骨の上部２個所で筋腱移行部を圧迫できるよう
に配置される。なお、パッドは、ゴムやスポンジのよう
に弾性を有するものが好ましい。

【００１０】上記パッドは両面粘着テープを介して上記
バンド本体の任意位置に取り付けられるとよく、また、
上記固定手段は上記バンド本体の一端側において二股状
に形成された一対の固定帯と、それに対応して同バンド
本体の他端側に設けられた受具とを含み、上記各パッド
は上記固定帯と上記受具とを結ぶ線上に配置されること
が好ましい。

【００１１】

【作用】このように構成することにより、患部に装着し
たときに、大腿四頭筋の緊張が直接患部に伝わらないた
め、患部のストレスが緩和でき、患部、例えば脛骨粗面
に加わるストレス（牽引力）が軽減され、疼痛が解消さ
れる。

【００１２】また、固定部を二股状の固定帯とし、それ
に対応する位置に各パッドを配置することにより、各固
定帯の締め具合に応じて各パッドの患部に対する押圧力
を変えることができる。

【００１３】

【実施例】以下、図面を参照しながら、本発明の実施例
について説明する。図１は本発明の一実施例に係るオス
グットシュラッテル氏病治療バンドの斜視図、図２は膝
の部分に装着した状態を示す斜視図、図３はオスグット
シュラッテル氏病治療バンドを装着した状態を示す解剖
学的な断面図である。

【００１４】これらの図において、この治療バンド１
は、本体部２とパッド３とからなり、本体部２の裏面に
パッド３を任意の位置で取り付けられるようになってい
る。本体部２の一方には固定帯４ａ，４ｂが二股状に本
体部２よりも細い幅で延出し、その端部には面状ファス
ナの一方５ａ，５ｂが設けられている。

【００１５】また、本体部２の他方の表側には、上記固
定帯４ａ，４ｂが挿入されて係止する受具としてのリン
グ６ａ，６ｂが設けられている。さらに、上記固定帯４
ａ，４ｂの面状ファスナ５ａ，５ｂに隣接する個所には
リング６ａ，６ｂに通して折り返した面状ファスナ５
ａ，５ｂが接着する他方の面状ファスナ７ａ，７ｂが設
けられている。

【００１６】パッド３は複数、この実施例では２個のパ
ッド３ａ，３ｂからなり、これらのパッド３ａ，３ｂの
一方の面には両面粘着テープ８ａ，８ｂが接着され、本
体部２の任意の位置で接着させて取り付けることができ
るようになっている。これらのパッド３ａ，３ｂは、ス
ポンジやゴムなどの弾性体からなり、筋肉もしくは腱を
所定の弾性力で圧迫できるようになっている。

【００１７】この場合、各パッド３ａ，３ｂを固定帯４
ａ，４ｂとその受具としてのリング６ａ，６ｂの各線上
に位置させることにより、固定帯４ａ，４ｂの締め具合
に応じて各パッド３ａ，３ｂの患部に対する押圧力を変
えることができる。

【００１８】このように構成されたオスグットシュラッ
テル氏病治療バンド１は、図２に示すように損傷部位を
参照符号２０で示すと、その膝蓋骨上部約３ｃｍの筋腱
移行部を圧迫する。すなわち、患者の損傷部位２０に応
じてパッド３ａ，３ｂの取付位置を調整して両面粘着テ
ープ８ａ，８ｂによって最適と思われる位置に接着し、
図３に示すようにして前述の膝蓋骨上部の部分に巻き付
けて筋腱移行部９を圧迫した状態で固定する。

【００１９】図３において、膝関節１０は、大腿骨１
１、その下方に位置する脛骨１２および腓骨１３、大腿
骨１０と脛骨１２との間に挟まれ、脛骨の平らな頂上部
に位置する外側および内側の半月板（図では外側半月板
１４のみが図示されている。）、下部が半月板１４と大
腿骨１１との間に挟まれ、前方が大腿骨１１と膝蓋骨１
５との間に挟まれた膝蓋上包１６からなり、大腿骨１１
と腓骨１３には外側側副靭帯１７が付着し、膝蓋骨１５
と脛骨１２とは膝蓋靭帯１８が付着し、膝蓋骨１５には
大腿骨１１側から延びる大腿四頭筋１９が付着してい
る。

【００２０】そして、このオスグットシュラッテル氏病
治療バンド１は、膝蓋骨１５の上部の大腿四頭筋１９に
いたる筋腱移行部９を２つのパッド３ａ，３ｂで押さ
え、バンド１を締めることによってパッド３ａ，３ｂが
当接する部分を圧迫する。これによって、脛骨粗面膨隆
に大腿四頭筋１９側から加わるストレス（牽引力）を緩
和することができるようになり、顕著な治療効果を得る
ことができるようになった。

【００２１】実際にオスグットシュラッテル氏病を治療
するときには、大腿四頭筋１９および脛骨粗面２１に低
周波通電１０分、脛骨粗面アイシング５分、大腿四頭筋
弛緩のためマッサージ５分施療後、脛骨粗面２１部に冷
湿布包帯を固定し、膝蓋骨１５の上部約３ｃｍ位の筋腱
移行部９を圧迫するようにオスグットシュラッテル氏病
治療バンド１を装着する。このような治療を施した症例
を以下に示す。

【００２２】［症例１］高校２年生、１６才、男子、野
球部捕手 （主訴） １２才の頃より膝部に疼痛を訴え、各種治療
を受けるが、症状の軽減が見られなかった。 （症状） 脛骨訴面に腫脹、圧痛及び膝関節の屈曲不
能、歩行痛あり。 （治療） 低周波通電１０分。アイシング、マッサージ 冷湿布、包帯固定、大腿部膝蓋骨上方約３ｃｍのところ
に前記バンド１を装着し、２週間の運動を禁止させる。 （経過） 初検日治療施行後、バンド装着、膝関節９０
°まで屈曲可能となる。１週目、１週間上記治療を継続
した結果、歩行時の疼痛緩解、バンド装着時１２０°の
屈曲可能。３週目、バンド装着時１４０°屈曲可能とな
り、軽いランニングを許可する。６週目、諸症状が除去
され、バンドを除去しても前屈曲可能となり、治癒とす
る。

【００２３】［症例２］中学生、１２才、男子、少年サ
ッカー選手 （主訴） 歩行痛、屈伸痛、脛骨粗面の腫脹、圧痛あ
り。 （症状） 脛骨粗面に腫脹、圧痛、歩行痛、膝関節屈曲
制限あり、屈曲位２０° （治療） 低周波通電１０分、アイシング、マッサー
ジ、冷湿布包帯固定、バンド装着後歩行痛解禁、２週間
の運動禁止。 （経過） １週目、膝関節屈曲１００度まで可能 ２週目、脛骨粗面の圧痛緩解、膝関節１３０°まで可
能、軽いランニングを許可する。４週目、バンド装着し
ての練習を許可する。５週目、膝関節全屈曲可能とな
り、バンドを除去し、治癒とする。

【００２４】このように、このオスグットシュラッテル
氏病治療バンド１を使用すると、圧迫位置を膝蓋骨上部
約３ｃｍの筋腱移行部９とし、さらに圧迫個所を２個所
とすることで、脛骨粗面膨隆にかかるストレスを２重に
緩和することが可能となり、装着初日から高い有効性が
認められ、バンド１の使用前、使用後の比較においても
バンド使用の有効性は９０％と非常に高い治癒効果が認
められた。

【００２５】また、このバンド１は、装着が簡単で、装
着に違和感が少ないこと、バンド１を装着することによ
って大腿四頭筋１９の緊張が直接患部に伝わらないた
め、患部のストレスが緩和できること、長時間の装着に
も堪えられること、独立したパッド３ａ，３ｂを任意位
置に移動させて取り付けることができ、患部の状況に応
じて調整が可能であること、また、パッド３ａ，３ｂが
移動可能であることから、他の膝部の疾患にも応用でき
ること、見た目がよく、安価に提供できるなどの種々の
優れた効果を有する。なお、上記他の膝部の疾患とは、
例えば側副靭帯損傷、ランナーズニー、ジャンパーズニ
ーおよび鵞足炎などが挙げられる。

【００２６】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、パッドに
よって膝部の任意位置を圧迫できるので、圧迫された筋
肉もしくは腱によって患部に直接ストレスがかかるのを
２重に防止でき、これによって安静時と同等のストレス
状態を現出することが可能となり、これによって、きわ
めて顕著な治癒効果を奏することができる。

【００２７】また、パッドを任意の位置に取り付けるこ
とができるので、ほかの膝部の疾患の状況に応じて最適
な圧迫箇所を選択でき、膝疾患の位置を限定されること
なく、治療に使用でき、きわめて広い疾患に対応でき
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係るオスグットシュラッテ
ル氏病治療バンドの斜視図。

【図２】図１のオスグットシュラッテル氏病治療バンド
を膝部に装着した状態を示す斜視図。

【図３】図２のオスグットシュラッテル氏病治療バンド
を膝部に装着した状態の解剖学的な状態を示す断面図。

【符号の説明】

１ オスグットシュラッテル氏病治療バンド ２ 本体部 ３，３ａ，３ｂ パッド ４ａ，４ｂ 固定部 ５ａ，５ｂ 面状ファスナの一方 ６ａ，６ｂ リング ７ａ，７ｂ 面状ファスナの他方 ８ａ，８ｂ 両面粘着テープ ９ 筋腱移行部 １０ 膝関節 １１ 大腿骨 １２ 脛骨 １３ 腓骨 １４ （外側）半月板 １５ 膝蓋骨 １６ 膝蓋上包 １７ 外側側副靭帯 １８ 膝蓋靭帯 １９ 大腿四頭筋 ２０ 患部 ２１ 脛骨粗面

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 膝の所定の位置に巻き付けて圧迫するこ
   とによって患部に加わるストレスを和らげて膝部の疾患
   を治療する膝部疾患治療バンドにおいて、膝部に巻き付
   けられるバンド本体と、同バンド本体の膝部に対向する
   面の任意位置に取り付けられ、当接位置を圧迫する少な
   くとも２個のパッドと、上記バンド本体を膝部に巻き付
   けた状態で固定する固定手段とを備えていることを特徴
   とする膝部疾患治療バンド。
2. 【請求項２】 上記パッドは両面粘着テープを介して上
   記バンド本体の任意位置に取り付けられることを特徴と
   する請求項１に記載の膝部疾患治療バンド。
3. 【請求項３】 上記固定手段は上記バンド本体の一端側
   において二股状に形成された一対の固定帯と、それに対
   応して同バンド本体の他端側に設けられた受具とを含
   み、上記各パッドは上記固定帯と上記受具とを結ぶ線上
   に配置されることを特徴とする請求項１に記載の膝部疾
   患治療バンド。