JPH07207302A - AlN分散型アルミニウム合金複合材料の製造方法 - Google Patents

AlN分散型アルミニウム合金複合材料の製造方法

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JPH07207302A
JPH07207302A JP6015956A JP1595694A JPH07207302A JP H07207302 A JPH07207302 A JP H07207302A JP 6015956 A JP6015956 A JP 6015956A JP 1595694 A JP1595694 A JP 1595694A JP H07207302 A JPH07207302 A JP H07207302A
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JP
Japan
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aln
powder
alloy
composite material
raw material
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JP6015956A
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English (en)
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Fumio Nonoyama
史男 野々山
Yoshihiro Shimizu
吉広 清水
Mikio Kondo
幹夫 近藤
Hiroyuki Kawaura
宏之 川浦
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Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 軽量で、かつ剛性,強度,耐摩耗性などの特
性に優れたアルミニウム合金複合材料を、Al合金粉末
を用いた素材の製造プロセスにより、簡便に製造する方
法を提供する。 【構成】 Mgを含有するアルミニウム合金粉末を準備
する原料粉末準備工程と、該原料粉末準備工程により得
られた原料粉末を,窒素含有雰囲気中で,しかも600
℃以下とAlの溶融温度以下の低い温度で加熱して該原
料粉末の表面部に窒化物を生成させる窒化物生成工程
と、該窒化物生成工程により得られた粉末を所定の形状
に熱間加工する熱間加工工程と、からなることを特徴と
するAlN分散型アルミニウム合金複合材料の製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、AlN分散型アルミニ
ウム合金複合材料の製造方法に関し、さらに詳しくは、
自動車、航空機などで用いられ、軽量で、かつ高剛性,
高強度,耐摩耗性などの特性に優れた金属材料として好
適なAlN分散型アルミニウム合金複合材料の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム(Al)合金材料は、比重
が小さく、比強度が高いことから、航空機部品などに広
く利用されている。しかし、他方では、鋼に比べれば、
剛性、高温強度、耐摩耗性などに劣るという欠点を有し
ている。Al合金材料のこの欠点を補うために、セラミ
ックスの粒子または短繊維、ウイスカなどを分散させた
Al合金複合材料の開発が盛んに行われている。
【0003】Al合金中にセラミックス粒子を分散させ
た粒子分散型Al合金複合材料の製造方法としては、粉
末法、鋳造法、in−situプロセスなどがある。こ
のうち、粉末法は、Al合金粉末とセラミックス粒子と
を混合して、HIP、熱間押出しなどで成形する方法で
あり、最も多く利用されている(例えば、工業材料36
−11(1988)、53)。また、鋳造法は、Al合
金溶湯にセラミックス粒子を攪拌混合して凝固させる方
法である(例えば、工業材料36−11(1988)、
53)。さらに、in−situプロセスは、Al合金
中に化合物を反応生成させて分散させAl合金複合材料
を製造する方法であるが、まだ研究段階にある(例え
ば、軽金属40−12(1990)、936)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記粉
末法は、工程が複雑で高コストである。すなわち、粉末
法では、Al合金粉末とセラミックス粉末を混合後、真
空または非酸化雰囲気中で高温に保持して、水素や水分
などの表面の吸着物を除去し、その後、熱間押出しや熱
間圧延などの加工を加えて、表面の酸化物を破壊しなが
ら成形し、棒状または板状などの部材を製造する。従っ
て、これらの工程は複雑で長く、またセラミックス粒子
のコストも高価なことから、この方法で製造した粒子分
散Al合金は非常に高価なものになるという問題を有し
ている。また、この方法では、Al合金粉末とセラミッ
クス粉末を混合する工程において、セラミックス粉末の
凝集が起こりやすく、均一に分散させるには混合方法に
ノウハウが必要であり、多大な時間を必要とするという
問題を有している。特に、多量に製造する場合には、品
質の安定性の確保が難しいという問題を有している。
【0005】また、鋳造法は、アルミニウム合金マトリ
ックス中へのセラミックス粒子の分散が難しく、安定し
た品質が得られないという問題を有している。
【0006】さらに、in−situプロセスは、まだ
研究段階であり、反応生成物の分散性や大きさの制御に
課題を残している。
【0007】そこで、本発明者らは、上述の如き従来技
術の問題点を解決すべく鋭意研究し、各種の系統的実験
を重ねた結果、本発明を成すに至ったものである。
【0008】(発明の目的)本発明の目的は、軽量で、
かつ剛性,強度,耐摩耗性などの特性に優れたアルミニ
ウム合金複合材料を簡便に製造する方法を提供するにあ
る。
【0009】本発明者らは、上述の従来技術の問題点に
対して、以下のことに着眼した。すなわち、先ず、セラ
ミックス粒子分散型Al合金複合材料の製造方法とし
て、上記の粉末法、鋳造法、in−situプロセスに
ついて詳細な研究を行った。その結果、粉末法は、上記
問題点を数多く有しているものの、Al合金粉末を用い
た素材は、結晶粒の微細化や晶出物、析出物の微細化が
図れ、鋳造法で製造した複合材料に比べて優れた機械的
性質を発現できることが分かった。そこで、粉末法の特
長を生かしたまま、従来より工程が簡便で耐摩耗性に優
れたAl合金複合材料を提供する方法を開発すべく鋭意
研究を重ねた。
【0010】先ず、Al合金に分散させるセラミックス
粒子として、原料粉末としてのAl合金粉末から生成で
き、AlN合金の剛性、強度、耐摩耗性などの特性向上
に優れた窒化アルミニウム(AlN)に着眼した。しか
し、Al合金からAlNを生成させるためには、Al合
金を800℃以上に加熱し溶融状態で窒素と反応させる
必要があった。そのため、Al合金粉末の表面に溶融温
度以下、例えば600℃以下の温度でAlNを生成させ
ることは不可能と考えられていた。しかも、このような
温度範囲での窒化処理では、Alは溶融状態にあるた
め、Al合金粉末を成形体として窒化させるには、その
形状を維持できない。
【0011】本発明者らは、Alの溶融温度以下、例え
ば600℃以下の温度において、触媒を必要としなくて
もAlNを生成できる方法として、Al合金原料粉末中
に、該温度範囲内で、AlNの生成を阻害する物質を低
減または破壊する物質を共存させること、または、Al
N生成阻害物質が存在してもAlN生成を促進する物質
及び/又はAlN生成の核となる物質を共存させること
に着眼した。そこで、600℃以下の温度範囲内におい
て、AlNの生成を阻害する物質を低減または破壊する
物質としてMgに着目し、Mg含有Al合金粉末を出発
原料とすることにより、Alの溶融温度以下において原
料粉末表面にAlNを容易に生成させることができ、表
面部にAlNを生成した該AlN合金粉末を塑性変形さ
せることにより、剛性、強度、耐摩耗性に優れたアルミ
ニウム合金複合材料が得られることに到達し、本発明を
成すに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明のAlN分散型ア
ルミニウム合金複合材料の製造方法は、Mgを含有する
アルミニウム合金粉末を準備する原料粉末準備工程と、
該原料粉末準備工程により得られた原料粉末を窒素含有
雰囲気中で加熱し,該原料粉末の表面部に窒化物を生成
させる窒化物生成工程と、該窒化物生成工程により得ら
れた粉末を所定の形状に熱間加工する熱間加工工程と、
からなることを特徴とする。
【0013】
【作用】本発明のAlN分散型アルミニウム合金複合材
料の製造方法が、優れた効果を発揮するメカニズムにつ
いては、未だ必ずしも明らかでないが、次のように考え
られる。
【0014】本発明のAlN分散型アルミニウム合金複
合材料の製造方法は、先ず、Mgを含有するアルミニウ
ム合金粉末を準備する(原料粉末準備工程)。
【0015】次に、該原料粉末準備工程により得られた
原料粉末を窒素含有雰囲気中で加熱し、該原料粉末の表
面部に窒化物を生成させる(窒化物生成工程)。これよ
り、本発明ではMgを含むAl合金粉末を用いるので、
窒素雰囲気中で600℃以下のAlの溶融温度以下の低
い温度で加熱するのみで、触媒を必要とせずにAlが窒
化され、粉末表面にAlNを生成することができる。こ
のとき、Al合金粉末表面に存在するMgは、AlNの
生成や内部へのさらなる酸化などの表面反応を阻害する
物質であると考えられる酸化膜を減少または破壊する作
用を奏するものと考えられる。この酸化膜の破壊などに
より、表面のAlが窒化され、AlNを生成すると考え
られる。また、前記600℃以下の温度範囲において、
Al合金は固相または半固相領域にあり、Al合金粉末
を用いる素材の製造プロセスの中でAl合金複合材料、
すなわちAlN分散型Al合金材料を製造することが可
能となる。
【0016】次に、該窒化物生成工程により得られた粉
末を所定の形状に熱間加工する(熱間加工工程)。すな
わち、前記AlNを表面部に生成した粉末に熱間加工を
施す。AlNは、硬いが非常に脆い物質であるため、熱
間加工によってAl合金粉末を塑性変形させると、破壊
して、Al合金中に分散する。このとき、加工度が大き
いほど、AlNは細かく破壊でき、分散性も向上する。
さらに、Al合金粉末間の結合、およびAl合金とAl
Nの結合も強くなる。これより、Al合金マトリックス
中に、AlNが微細に均一に分散した組織になる。した
がって、該Al合金の剛性(ヤング率)、室温および高
温強度、耐摩耗性などの特性を向上させることができ
る。
【0017】従って、通常行われているAl合金粉末の
素材製造プロセスにおいて、雰囲気を窒素雰囲気に代え
て、その温度および時間の管理条件を変更するのみで、
AlN分散型Al合金複合材料を容易に製造することが
可能となる。また、熱間加工工程において、Al合金粉
末間の結合は熱間加工で行うことができるので、通常の
粉末法の場合のように粉末表面の清浄度を特に考慮する
必要がない。さらに、熱間加工工程ではその加工度を大
きくし、Al合金粉末表面に形成されたAlNを破壊・
分散することだけで、AlN分散型Al合金複合材料を
製造することができる。
【0018】以上により、軽量で、かつ剛性、強度、耐
摩耗性などの特性に優れた粒子分散型Al合金複合材料
を、簡便に低コストで製造することができるものと考え
られる。
【0019】なお、従来より、AlN粉末の製造法とし
て、純Al粉末を窒素ガス中で加熱保持して製造する方
法がある。しかし、この方法はAlNの生成に触媒を必
要とするとともに加熱温度を1000℃以上にする必要
がある。したがって、Alは溶融状態にあるため、Al
粉末を成形体とし窒化させる場合にはその形状を維持で
きないという問題点があった。本発明のAlN分散型ア
ルミニウム合金複合材料の製造方法により、これら従来
技術の問題点を解消することができる。
【0020】
【発明の効果】本発明のAlN分散型アルミニウム合金
複合材料の製造方法により、軽量で、かつ剛性、強度、
耐摩耗性などの特性に優れたアルミニウム合金複合材料
を、簡便に製造することができる。
【0021】
【実施例】先ず、本発明のAlN分散型アルミニウム合
金複合材料の製造方法(第一発明とする)について、さ
らに具体的にした発明や限定した発明などの発明(その
他の発明)について説明する。
【0022】〔その他の発明の説明〕
【0023】第二発明の説明 本第二発明のAlN分散型アルミニウム合金複合材料の
製造方法は、Mgを含有するアルミニウム合金粉末を準
備する原料粉末準備工程と、該原料粉末準備工程により
得られた原料粉末を,窒素含有雰囲気中でかつ500℃
〜600℃の温度範囲内に加熱し,該原料粉末の表面部
に窒化物を生成させる窒化物生成工程と、該窒化物生成
工程により得られた粉末を所定の形状に熱間加工する熱
間加工工程と、からなることを特徴とする。以下に、本
発明の作用、効果などについて、前記第一発明のそれら
との相違点を中心に説明する。
【0024】(第二発明の作用)本発明のAlN分散型
アルミニウム合金複合材料の製造方法が、優れた効果を
発揮するメカニズムについては、未だ必ずしも明らかで
ないが、次のように考えられる。すなわち、本発明で
は、先ず、Mgを含有するアルミニウム合金粉末を準備
する(原料粉末準備工程)。
【0025】次に、該原料粉末準備工程により得られた
原料粉末を、窒素含有雰囲気中でかつ500℃〜600
℃の温度範囲内に加熱し、該原料粉末の表面部に窒化物
を生成させる(窒化物生成工程)。本工程において、原
料粉末としてのAl合金粉末を容器に充填または圧粉体
として窒素含有ガス中で加熱保持する場合、該加熱温度
は500〜600℃とする。加熱温度を500〜600
℃の範囲内とすることにより、Al合金粉末の表面にA
lNを生成することができるとともに、該AlNを比較
的短時間で生成することができる。なお、Al合金の種
類によっても異なるが、加熱温度が550〜600℃を
越えると、Al合金粉末が溶融して圧粉体の形状が保持
できないことがあるので諸条件に注意を要する。さら
に、該温度範囲の場合、AlN生成時に成形体の収縮が
急速に起こり、成形体の内部にまで窒素ガスが侵入しな
い虞があり、AlNが成形体全体に均一に生成されにく
くなる場合があるので、諸条件の設定に注意を要する。
従って、加熱温度が、500℃〜550℃の範囲の場
合、これらの問題がなく、十分なAlNを生成できるの
で好ましい。さらに、加熱温度が500℃〜530℃の
場合、本発明の効果をより一層発揮することができ、よ
り好ましい。
【0026】(第二発明の効果)本発明のAlN分散型
アルミニウム合金複合材料の製造方法により、軽量で、
かつ剛性、強度、耐摩耗性などの特性に優れたアルミニ
ウム合金複合材料を、比較的短時間でかつ簡便に製造す
ることができる。
【0027】第三発明の説明 本第三発明のAlN分散型アルミニウム合金複合材料の
製造方法は、Mgを含有するアルミニウム合金粉末を準
備する原料粉末準備工程と、該原料粉末準備工程により
得られた原料粉末を,窒素含有雰囲気中でかつ450℃
以上500℃未満の温度範囲内に加熱し,該原料粉末の
表面部に窒化物を生成させる窒化物生成工程と、該窒化
物生成工程により得られた粉末を所定の形状に熱間加工
する熱間加工工程と、からなることを特徴とする。
【0028】(第三発明の作用)本発明のAlN分散型
アルミニウム合金複合材料の製造方法が、優れた効果を
発揮するメカニズムについては、未だ必ずしも明らかで
ないが、次のように考えられる。すなわち、本発明で
は、先ず、Mgを含有するアルミニウム合金粉末を準備
する(原料粉末準備工程)。
【0029】次に、該原料粉末準備工程により得られた
原料粉末を、窒素含有雰囲気中でかつ450℃以上50
0℃未満の温度範囲内に加熱し、該原料粉末の表面部に
窒化物を生成させる(窒化物生成工程)。本発明では被
処理体としての原料粉末としてMgを含むAl合金粉末
を用いるので、窒素雰囲気中で500℃未満のAlの溶
融温度以下の低い温度で加熱することにより、触媒を必
要とせずにAlが窒化され、粉末表面にAlNを生成す
ることができる。このとき、Al合金粉末中のMgは、
AlNの生成や内部へのさらなる酸化などの表面反応を
阻害する物質であると考えられる酸化膜を,減少または
破壊する作用を奏するものと考えられる。この酸化膜の
破壊などにより、表面のAlが窒化され、AlNを生成
すると考えられる。このとき、被処理体としての原料粉
末は、粉末状であっても、予め成形されたものであって
もどちらでもよい。被処理体として粉末状の原料を用い
る場合には、そのまま窒化処理しても、容器に入れて窒
化処理しても、また同時に成形してもよい。
【0030】なお、本工程における加熱温度範囲は、4
50℃以上500℃未満である。加熱温度範囲を該範囲
とした場合、前記第二発明の加熱温度範囲(500℃〜
600℃)の場合に比べて、加熱時の焼結に伴う被加熱
体の収縮量が少なくなる。また、Alの窒化は発熱反応
であるが、該温度範囲の場合には被加熱体の温度上昇が
抑えられ、この温度上昇による被加熱体の収縮が抑制さ
れる。その結果、長時間にわたって被加熱体内部への窒
素の供給を十分に行うことができ、多量の窒化物を生成
することができる。
【0031】次に、該窒化物生成工程により得られた粉
末を所定の形状に熱間加工する(熱間加工工程)。この
とき、AlNは、硬いが非常に脆い物質であるため、熱
間加工によってAl合金粉末を塑性変形させると、破壊
して、Al合金中に分散する。このとき、加工度が大き
いほど、AlNは細かく破壊でき、分散性も向上する。
さらに、Al合金粉末間の結合、およびAl合金とAl
Nの結合も強くなる。これより、該Al合金にセラミッ
クス粉末を混合したAl合金複合材料と同じように、A
l合金マトリックス中に、AlNが微細に均一に分散し
た組織になる。したがって、該Al合金の剛性(ヤング
率)、室温および高温強度、耐摩耗性などの特性を向上
させることができる。
【0032】従って、通常行われているAl合金粉末の
素材製造プロセスにおいて、雰囲気を窒素雰囲気に代え
て、その温度および時間の管理条件を変更するのみで、
AlN分散型Al合金複合材料を容易に製造することが
できるものと考えられる。また、熱間加工工程におい
て、Al合金粉末間の結合は熱間加工で行うことができ
るので、通常の粉末法の場合のように粉末表面の清浄度
を特に考慮する必要がない。さらに、熱間加工工程では
その加工度を大きくし、Al合金粉末表面に形成された
AlNを破壊・分散することだけで、AlN分散型Al
合金複合材料を製造することができる。本発明の上記工
程は、上記構成として記載した事項以外には特に限定す
るものではないが、このように従来の粉末法の製造プロ
セスにおいて、単に加熱雰囲気を窒素含有雰囲気に代え
て、それ以外は加熱条件や加工条件等を考慮するのみで
簡単に本発明にかかる窒化物分散型Al合金複合材料を
製造することができる。特に、圧粉体を用いる単一の製
造プロセスにおいて、窒素含有雰囲気中での加熱温度と
時間を制御するのみで、AlN分散Al合金複合部材を
製造でき、しかも窒化物の体積率を広い範囲で変化させ
ることが可能である。また、容器に充填したAl合金粉
末を用いることにより、体積率で50%近い、あるいは
それを超える量の窒化物を生成することが可能である。
【0033】以上により、軽量で、かつ剛性、強度、耐
摩耗性などの特性により優れた粒子分散型Al合金複合
材料を、簡便に製造することができるものと考えられ
る。
【0034】(第三発明の効果)本発明のAlN分散型
アルミニウム合金複合材料の製造方法により、軽量で、
かつ剛性、強度、耐摩耗性などの特性により優れたアル
ミニウム合金複合材料を、簡便に製造することができ
る。また、本発明の製造方法により、AlNが多量に分
散したアルミニウム合金複合材料製造することができ
る。
【0035】第四発明の説明 本第四発明のAlN分散型アルミニウム合金複合材料の
製造方法は、Mgを含有するアルミニウム合金粉末を準
備する原料粉末準備工程と、該原料粉末準備工程により
得られた原料粉末を,先ず窒素含有雰囲気中でかつ48
0℃以上の温度範囲内で加熱し(第1加熱処理工程),
次いで窒素含有雰囲気中でかつ450℃以上500℃未
満の前記第1加熱処理工程の加熱温度よりも低い温度範
囲内で加熱し(第2加熱処理工程),前記原料粉末の表
面部に窒化物を生成させる窒化物生成工程と、該窒化物
生成工程により得られた粉末を所定の形状に熱間加工す
る熱間加工工程と、からなることを特徴とする。以下
に、本発明の作用、効果などについて、前記第一発明お
よび第三発明のそれらとの相違点を中心に説明する。
【0036】(第四発明の作用)本発明のAlN分散型
アルミニウム合金複合材料の製造方法が、優れた効果を
発揮するメカニズムについては、未だ必ずしも明らかで
ないが、次のように考えられる。すなわち、本発明で
は、先ず、Mgを含有するアルミニウム合金粉末を準備
する(原料粉末準備工程)。
【0037】次に、該原料粉末準備工程により得られた
原料粉末を、窒素含有雰囲気中でかつ480℃以上の温
度範囲内で加熱し(第1加熱処理工程)、次いで窒素含
有雰囲気中でかつ450℃以上500℃未満の前記第1
加熱処理工程の加熱温度よりも低い温度範囲内で加熱し
(第2加熱処理工程)、前記原料粉末の表面部に窒化物
を生成させる(窒化物生成工程)。これより、前記第三
発明に比べて、短時間で多量のAlNを生成させること
ができる。すなわち、加熱開始時には、480℃以上
(圧粉体の場合は、かつAlの溶融温度以下)の比較的
高い温度範囲内で加熱処理することにより窒化反応開始
までの時間を早め(第1加熱処理工程)、その後加熱温
度を450℃〜500℃未満の範囲に下げることによ
り、発熱を伴う窒化反応を制御し、被処理体の収縮を抑
制し、短時間で多量の窒化物を生成することができる
(第2加熱処理工程)。なお、前記第1加熱処理工程に
おいては、窒化反応開始までに窒素含有雰囲気にすれば
よい(当初、非窒素含有雰囲気とする場合には、AlN
が生成し易い雰囲気であることが好ましい。すなわち、
少なくとも被処理体にAlNの生成を阻害するような物
質が形成されない雰囲気とする。)。なお、前記第1加
熱処理工程において、加熱温度は、被加熱処理体が圧粉
体等の予め成形され所定の形状を有するものの場合に
は、480℃〜600℃であることが好ましい。さら
に、該温度が、480℃〜550℃であることがより好
ましい。該範囲の場合、Al合金粉末の溶融などの不具
合を生ずることなく、本発明の効果をよりよく発揮させ
ることができる。また、被加熱処理体が圧粉体等の所定
の形状を有するものではないもの、例えば、粉末状のも
のの場合、加熱温度は480℃〜800℃であることが
好ましい。前記のものとは異なり、次工程の第2加熱処
理工程において、所定量のAlNを生成できるのであれ
は、Al合金粉末が多少溶融してもよい。さらに、該温
度が、480℃〜600℃であることがより好ましい。
この場合、次工程でより多量のAlNを生成することが
できる。
【0038】次に、該窒化物生成工程により得られた粉
末を所定の形状に熱間加工する(熱間加工工程)。これ
により、Al合金マトリックス中に、AlNが微細に均
一に分散した組織になる。したがって、該Al合金の剛
性(ヤング率)、室温および高温強度、耐摩耗性などの
特性を向上させることができる。本発明の上記工程は、
上記構成として記載した事項以外には特に限定するもの
ではないが、このように従来の粉末法の製造プロセスに
おいて、単に加熱雰囲気を窒素含有雰囲気に代えて、そ
れ以外は加熱条件や加工条件等を考慮するのみで簡単に
本発明にかかるAlN分散型Al合金複合材料を製造す
ることができる。特に、圧粉体を用いる単一の製造プロ
セスにおいて、窒素含有雰囲気中での加熱温度と時間を
制御するのみで、AlN分散Al合金複合部材を製造で
き、しかも窒化物の体積率を広い範囲で変化させること
が可能である。また、容器に充填したAl合金粉末を用
いることにより、体積率で50%近い、あるいはそれを
超える量の窒化物を生成することが可能である。
【0039】以上により、軽量で、かつ剛性、強度、耐
摩耗性などの特性により優れた粒子分散型Al合金複合
材料を、比較的短時間でしかも簡便に製造することがで
きるものと考えられる。
【0040】(第四発明の効果)本発明のAlN分散型
アルミニウム合金複合材料の製造方法により、軽量で、
かつ剛性、強度、耐摩耗性などの特性により優れたアル
ミニウム合金複合材料を、比較的短時間でしかも簡便に
製造することができる。また、本発明の製造方法によ
り、AlNが多量分散したアルミニウム合金複合材料製
造することができる。
【0041】上記第一発明〜第四発明のその他の発明
【0042】(原料粉末準備工程)本発明のAlN分散
型アルミニウム合金複合材料の製造方法において、本工
程で準備するAl合金粉末は、粒径が149μm (10
0メッシュ通過)以下であることが好ましい。該粒径が
149μmを越えると表面積が減少するため、所定量の
窒化物を生成させるのに時間が長くなるとともに、熱間
加工後のAlNの分散が不均一になる虞がある。なお、
該粒径は、20〜50μm の範囲内の場合、熱間加工後
のAlNをより均一に分散させることができるので、よ
り好ましい。また、20μm未満では粉末の取り扱いが
悪くなるので好ましくない。
【0043】また、準備するAl合金粉末に含まれるM
gは、次工程の窒化物生成工程において、Alの溶融温
度以下の温度雰囲気においてAl合金表面でのAlNの
生成を実現する物質である。すなわち、AlNの生成や
内部へのさらなる酸化などの表面反応を阻害する物質で
あると考えられる酸化膜を減少または破壊する作用を奏
するものと考えられる。これより、Al合金粉末を溶融
せずにAl合金粉末の表面にAlNを形成できる。この
Mgは、Al合金粉末中の含有量が、0.2〜5重量%
であることが好ましい。この範囲において、実用上十分
な厚さのAlN層、又は/及び十分な量のAlNを生成
できる。
【0044】次に、Al合金粉末を加圧成形して圧粉体
とする場合、理論密度に対する該圧粉体の密度比は、6
0〜85%が好ましい。該密度比が60%未満では、圧
粉体の形状を保持できず、圧粉体の搬送が困難となる虞
がある。この場合には、Al合金粉末を容器内に充填す
るなど、形状を保持させる手段を採用することが好まし
い。なお、容器内にAl合金粉末を充填する場合、次工
程の窒化物生成工程において容器内のAl合金粉末を均
一に窒化させるには、容器底から窒素含有ガスを供給す
るなど、窒素含有ガスを均一に流動させる手段を採用す
ることが好ましい。また、前記密度比が85%を越える
と、粉体内部にまで窒素ガスが侵入しない虞があり、均
一なAlNが生成されにくい。
【0045】(窒化物生成工程)保持時間は、生成され
るAlNの量に応じて、加熱温度に合わせて制御する。
窒素雰囲気の条件は、特に限定しない。例えば、通常の
工業用に使用されている窒素ガスを流入させる雰囲気炉
であってもよい。したがって、脱ガスのための雰囲気ほ
ど条件管理は厳しくない。また、容器に充填してAlN
を生成する場合には、均一にAlNを形成させるため、
一度処理を行った後、容器の解放部と底部を反転して、
さらに再加熱保持するとよい。
【0046】また、Al合金粉末を容器に充填して窒化
物を生成させる場合も、加熱温度、時間は圧粉体の場合
とほぼ同様である。
【0047】また、AlNの形成には、流動化用のガス
に窒素ガスを用いる流動層炉を用いて、Al合金粉末が
固まらないようにして窒素ガス中で加熱し、表面に均一
なAlN層を形成させたAl合金粉末を製造してもよ
い。このとき、加熱温度範囲は前記と同様であり、加熱
保持時間も前記同様に、生成させるAlNの量に応じ
て、加熱温度に合わせて制御する。このAlN層を生成
させた該AlN合金粉末を圧粉体成形し、加熱して次の
熱間加工を行う。
【0048】このように、Al合金に複合化するAlN
量は、圧粉体の密度、加熱温度、さらに加熱時間を管理
することにより制御することができる。
【0049】(熱間加工工程)次に、熱間加工は、Al
合金粉末全体(粉末、成形体、圧粉体、など種々の形態
を含む)に均一に塑性変形を与えることができれば、特
に限定するものではなく、通常行われている熱間押出し
や熱間圧延あるいは鍛造、スウェージなどの方法を採用
することができる。
【0050】加工温度は400〜500℃の範囲が望ま
しい。熱間加工は、窒素雰囲気中で600℃以下の窒化
物生成温度に加熱したAl合金粉末(またはその成形体
や圧粉体など)を直接熱間加工温度まで冷却するか、一
旦室温まで冷却した後、熱間加工温度まで再加熱してか
ら行うのがよい。好ましくは、真空または非酸化性雰囲
気中で加熱するのがよい。熱間加工は、金型を使用する
場合、金型による加工中の冷却を抑制するため、金型温
度を300〜500℃に加熱するのがよい。好ましく
は、成形体の温度である熱間加工温度と金型温度を等し
くするのがよい。これにより、成形体の延性が最も高い
加工温度、加工速度を選ぶことができる。
【0051】熱間加工を熱間押出しにより行う場合は、
押出し比は10以上が望ましい。10未満では該Al合
金粉末表面に形成したAlNを、細かく破壊して、均一
に分散することができない。押出し比は大きいほどよ
い。押出し比の上限は、押出し温度と押出し速度から決
まるAl合金の変形抵抗と金型強度との関係で決めれば
よい。
【0052】熱間加工を熱間圧延により行う場合は、圧
延条件すなわち加工温度、加工速度、金型温度は、熱間
押出しと同様であり、加工度を表す圧下率は80%以上
が望ましい。
【0053】以下に、本発明の実施例を説明する。
【0054】第1実施例 先ず、原料粉末として、粒径が74μm(200メッシ
ュ通過)以下のAl合金粉末(A2024:Al−4.3
wt% Cu−0.6 wt% Mn−1.5 wt% Mg)を準備した。
次に、該原料粉末を、表1に示す成形処理条件〔ρ(成
形体密度)/ρ 0 (理論密度)〕の圧粉体または容器充
填状態とした。
【0055】
【表1】
【0056】次に、得られた圧粉体(被処理成形体)
に、表1に示す加熱条件で窒化処理を行った。なお、窒
化処理後、被処理成形体の一部を熱間コイニングにより
固化して試料断面の金属組織をEPMAで分析した結
果、何れも、成形体を構成するAl合金粉末の表面に、
AlとNが主成分とする膜が生成されていることが確認
された。また、X線回折法により結晶構造の確認を行っ
た結果、Al合金粉末の表面に形成された膜は、稠密六
方晶のAlNであることが確認された。すなわち、該膜
は、Mgを含む化合物ではない。この結晶化したAlN
は、化学便覧によればモース硬度が9の非常に硬い物質
である。ここで、試料番号1の被処理成形体を窒素雰囲
気中で加熱処理した後の、試料表面の金属組織をEPM
Aで分析した結果を、図1および図2に示す。
【0057】次いで、熱間押出しを行った。熱間押出し
は、加熱温度500℃、金型温度350℃、押出し比1
2で行い、Al合金粉末表面に形成されたAlNを粉砕
した。その後、試料をT6処理(溶体化490℃、時効
180℃×8時間)を行い、本発明にかかる第1実施例
のAlN分散型Al合金複合材料部材を三種作製した
(試料番号:1〜3)。
【0058】(性能評価試験)先ず、得られたAl合金
複合部材のAlN体積率、硬さ、引張り強さ、および伸
びを測定した。その結果を、表2に示す。なお、AlN
体積率は、押出し後の比重を測定し、本実施例のAl合
金およびAlNの比重から計算により求めた。また、硬
さは、ビッカース硬度計を用いて測定した。このとき、
荷重は1kgとした。また、引張り強さは、万能試験機
により測定した。このとき、用いた試験片の直径は5m
m、標点間距離は30mmである。なお、該試験片製作
にあたっては、素材の押出し方向を試験片の引張り方向
とした。また、伸びは破断後の標点間距離を測定して求
めた。
【0059】
【表2】
【0060】次に、得られたAl合金複合部材の断面の
金属組織を光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察した結
果を、試料番号1は図3に、試料番号2は図4に、試料
番号3は図5にそれぞれ示す。何れの場合もAl合金粉
末表面に生成したAlNが粉砕されて、AlNがAl合
金マトリックス中に分散している様子が分かる。
【0061】次に、得られたAl合金複合材料部材につ
いて、ピンオンディスク法による耐摩耗性試験を行っ
た。ピン試験片には、本実施例により得られたAl合金
複合材料部材を試験片に用い、ディスク材(相手材)に
はS55C(Hv300)を用いた。100℃に保持し
たベースオイル(無添加鉱油)中において、面圧50k
gf/cm2 で、ピンをディスクに加圧接触させ、摺動
速度を0.3m/sに設定し、30分間摺動させ、その
後のピンおよびディスクの重量変化を測定して摩耗量を
求めた。得られた結果を、図6に示す。同図において、
横軸は試験片の種類を示し、縦軸はピンおよびディスク
の重量変化を示す。
【0062】比較例1〜比較例3 比較例として、本実施例と同種のAl合金で窒化処理を
行っていない比較用Al合金部材(試料番号:C1)、
本実施例と同様のAl合金粉末(A2024)を用い2
%のSiC粉末(粒径2μm)を公知の粉末混合法によ
り分散させて得た比較用Al合金複合材料部材(試料番
号:C2)、および公知の耐摩耗Al合金(Al−17
%Si合金)部材(試料番号:C3)の3種を準備し
た。なお、試料番号C2の比較用Al合金複合材料部材
は、SiC粉末とAl合金粉末を混合後熱間加工して、
また、試料番号C3の耐摩耗Al合金は、急冷凝固粉末
を熱間加工して、それぞれ作製した。これらはSiなら
びにSiCを分散させたAl合金であり、現在耐摩耗性
材料として使われている。得られた比較用部材につい
て、試料番号C1については、上記本実施例と同様にし
てAlN体積率、硬さ、引張り強さ、および伸びを測定
した。得られた結果を、表2に併せて示す。また、比較
番号C1、C2、C3について、上記実施例と同様の耐
摩耗性試験も行った。得られた結果を、図6に併せて示
す。
【0063】(性能評価試験結果)表2より明らかなよ
うに、本実施例により得られたAl合金複合材料部材
は、AlNの体積率が大きいほど、伸びは低下している
が、硬さ、引張り強さは増加していることがわかる。な
お、これらの測定値は、比較例C1の窒化処理を行って
いない比較用部材(A2024)に比べ、いずれも優れ
た値を示している。
【0064】また、図6より明らかなように、本実施例
により得られたAl合金複合材料部材は、摩耗量が少な
く、また相手材であるディスクもほとんど摩耗していな
いことが分かる。さらに、AlNの生成量が多くなるに
つれ、摩耗量が減少していることが分かる。なお、試料
番号C1およびC3の比較用部材は、何れも摩耗量が多
い。また、試料番号C2のSiC粉末を分散した比較用
複合部材は、摩耗量は殆どみられないものの、材料コス
トが高いという問題がある。
【0065】以上より、本実施例の方法により、簡便に
しかも低コストでAlN分散型Al合金複合材料が得ら
れ、該複合材料は軽量でかつ優れた耐摩耗性を有してい
ることが分かる。なお、本実施例より、AlN分散型A
l合金複合材料のAlNの体積率が10%以上の場合に
は、特に優れた特性を有していることが分かる。
【0066】第2実施例 原料粉末として、Mgの含有量が異なるAl合金粉末を
4種類用意し、Al合金粉末をそれぞれ容器に充填し、
該原料粉末を成形体とした。次に、得られた被処理成形
体に、加熱条件を加熱温度540℃、加熱保持時間1時
間として、窒化物生成処理を行い、各粉末の重量変化率
を求めた(試料番号:4〜7)。得られた結果を、図7
に示す。なお、理論密度(ρ0 )に対する加熱前の成形
体密度(ρ)の比は、約50%である。
【0067】・試料番号4:A2024 (Al−1.5 wt% Mg−4.3 wt% Cu−0.6 wt% Mn) ・試料番号5:A5052 (Al−2.5 wt% Mg−0.25wt% Cr) ・試料番号6:A6061 (Al−1.0 wt% Mg−0.27wt% Cu−0.6 wt% Si−
0.2 wt% Cr) ・試料番号7:A7475 (Al−2.5 wt% Mg−1.6 wt% Cu−5.6 wt% Zn−
0.26wt% Cr)
【0068】窒化物生成処理後の被処理成形体につい
て、前記第1実施例と同様に試料断面の金属組織をEP
MAで分析した結果、何れも、成形体を構成するAl合
金粉末の表面に、AlとNが主成分とする膜が生成され
ていることが確認された。また、X線回折を行った結
果、何れもAlNであることが確認された。
【0069】次いで、これら窒化処理成形体に対し、前
記第1実施例と同様に熱間押出しおよびT6処理を行
い、Al合金複合材料部材を四種作製した。この複合材
料部材は、何れの場合もAl合金粉末表面に生成したA
lNが粉砕されて、AlNが均一に分散しており、軽量
でかつ優れた耐摩耗性を有していることが確認された。
【0070】比較例4〜比較例6 比較のために、Mgを含有しないAl合金粉末を3種類
用意し、前記第2実施例と同様にしてAl合金粉末をそ
れぞれ容器に充填し、加熱温度540℃、加熱保持時間
1時間として、窒化物生成処理を行い、各粉末の重量変
化率を求めた(試料番号:C4〜C6)。得られた結果
を、図7に併せて示す。なお、理論密度(ρ0 )に対す
る加熱前の成形体密度(ρ)の比は、約50%である。
【0071】(試験結果)図7より明らかなように、組
成中にMgを含むAl合金(試料番号4〜試料番号7)
は、重量が増加、すなわちAlNが多量に生成されてい
るが、組成中にMgを含まない比較用Al合金(試料番
号C4〜試料番号C6)は、重量がほとんど変化してい
ない。すなわち、AlNがほとんど生成されていないこ
とが分かる。
【0072】第3実施例 前記第2実施例の試料番号4と同様のAl合金粉末を用
意し、成形体の理論密度(ρ0 )に対する加熱前の成形
体密度(ρ)の比を代えた他は、上記第2実施例と同様
にして窒化物生成処理を行い、各粉末の重量変化率を求
めた(試料番号:8〜12)。得られた結果を、図8に
示す。
【0073】なお、窒化物生成処理後の被処理成形体に
ついて、前記第2実施例と同様に試料断面の金属組織を
EPMAで分析した結果、何れも、成形体を構成するA
l合金粉末の表面に、AlとNが主成分とする膜が生成
されていることが確認された。また、X線回折を行った
結果、何れもAlNであることが確認された。
【0074】次いで、これら窒化処理成形体に対し、前
記第2実施例と同様に熱間押出しおよびT6処理を行
い、Al合金複合材料部材を作製した。この複合材料部
材は、何れの場合もAl合金粉末表面に生成したAlN
が粉砕されて、Al合金マトリックス中にAlNが分散
しており、軽量でかつ耐摩耗性を有していることが確認
された。
【0075】(試験結果)図8より明らかなように、圧
粉体の密度が低い、すなわち粉体間の空隙が多いほど、
AlNが多量に生成していることが分かる。しかし、本
実施例の場合、該密度比が60%未満では、圧粉体の形
状を保持できず、圧粉体の搬送が困難であった。従っ
て、このような場合には、Al合金粉末を容器内に充填
するなど、形状を保持させる手段が必要であることが分
かった。また、85%を越えると粉体内部にまで窒素ガ
スが侵入せず、均一なAlNが生成されにくいことが分
かった。
【0076】第4実施例 原料粉末として、粒径が74μm(200メッシュ通
過)以下のAl合金粉末(A2024:Al−4.3 wt%
Cu−0.6 wt% Mn−1.5 wt% Mg)を準備した。次
に、該該原料粉末を成形して圧粉体とした。次に、得ら
れた圧粉体(被処理成形体)に対し、加熱温度を5段階
に変化させ、加熱保持時間1時間として、窒化物生成処
理を行った(試料番号:13〜17)。なお、理論密度
(ρ0 )に対する加熱前の圧粉体密度(ρ)の比は、約
84%であった。ここで、各試料の重量変化率を求め
た。得られた結果を、図9に示す。
【0077】なお、窒化物生成処理後の被処理成形体に
ついて、前記第3実施例と同様に試料断面の金属組織を
EPMAで分析した結果、何れも、成形体を構成するA
l合金粉末の表面に、AlとNが主成分とする膜が生成
されていることが確認された。また、X線回折を行った
結果、何れもAlNであることが確認された。
【0078】次いで、これら窒化処理成形体に対し、前
記第3実施例と同様に熱間押出しおよびT6処理を行
い、Al合金複合材料部材を作製した。この複合材料部
材は、AlNの含有量に差異はあるが、何れの場合もA
l合金粉末表面に生成したAlNが粉砕されて、Al合
金マトリックス中にAlNが分散していることが確認さ
れた。
【0079】(試験結果)図9より明らかなように、本
実施例では、窒化処理における加熱温度が540℃付近
で重量変化率、すなわちAlNの生成量ピークとなり、
該温度以上では減少していることが分かる。これは、高
温では、圧粉体の表層部は急速に窒化するが、反面それ
に伴う収縮によって、粉末間の空隙が閉じてしまい、内
部への窒素ガスの侵入を妨げ、内部の窒化を抑制するた
めであると考えられる。なお、Al合金粉末を単に容器
に充填して、本実施例と同様にして窒素雰囲気中で加熱
した結果、本実施例と同様の結果が得られていることが
分かった。
【0080】第5実施例 原料粉末として、粒径が149μm以下のAl合金粉末
(A2024:Al−4.3 wt% Cu−0.6 wt% Mn−1.
5 wt% Mg)を準備した。次に、該原料粉末を、成形し
て圧粉体(φ30×23 mm )とした。次に、得られた
圧粉体に対し、加熱温度を465℃(試料番号18)、
490℃(試料番号19)、510℃(試料番号2
0)、530℃(試料番号21)とし、4段階の加熱保
持時間により、窒化物生成処理を行った。なお、理論密
度(ρ0 )に対する加熱前の圧粉体密度(ρ)の比は、
約65%であった。
【0081】窒化物生成処理後の被処理成形体につい
て、前記第1実施例と同様に試料断面の金属組織をEP
MAで分析した結果、何れも、成形体を構成するAl合
金粉末の表面に、AlとNを主成分とする膜が生成され
ていることが確認された。また、X線回折を行った結
果、何れもAlNであることが確認された。
【0082】次いで、これら窒化処理成形体に対し、前
記第1実施例と同様に熱間押出しおよびT6処理を行
い、Al合金複合材料部材を作製した。得られた複合材
料部材のAlN体積率について、前記第1実施例と同様
にして求めた。得られた結果について、各加熱温度にお
ける加熱時間と窒化物の体積率との関係を、図10に示
す。また、この複合材料部材は、何れの場合もAl合金
粉末表面に生成したAlNが粉砕されて、AlNが均一
に分散しており、軽量でかつ優れた耐摩耗性を有してい
ることが確認された。
【0083】(試験結果)図10より明らかなように、
本実施例では、窒化物生成工程における加熱保持時間が
1時間の場合には、加熱保持温度が高いほど、窒化物の
生成量が多くなっている。しかし、加熱保持時間が16
時間の場合には、加熱保持温度が低いほど、窒化物の生
成量が多くなっている。しかも、加熱温度が465℃の
場合には、窒化物の生成量が約30体積%と多量であっ
た。これは、加熱温度が低いほど、加熱時の焼結に伴う
成形体の収縮が抑えられるため、窒化速度が遅く、長時
間の加熱保持を必要とはするが、成形体内部への窒素の
供給を長時間にわたって十分に行うことができるため、
多量の窒化物を生成できるものと考えられる。
【0084】第6実施例 原料粉末として、粒径が149μm以下のAl合金粉末
(A2024:Al−4.3 wt% Cu−0.6 wt% Mn−1.
5 wt% Mg)を準備した。次に、該原料粉末を、成形し
て圧粉体(φ30×23 mm )とした。次に、得られた
圧粉体に、加熱条件を加熱温度490℃で加熱保持し
て、窒化物生成処理を行い、保持時間と圧粉体の温度の
変化との関係を調べた(試料番号:22)。なお、理論
密度(ρ0)に対する加熱前の圧粉体密度(ρ)の比
は、約65%であった。
【0085】図11より明らかなように、Alの窒化反
応は発熱反応であるため、窒化の進行とともに圧粉体の
温度が上昇し、窒化反応が促進される。しかし、成形体
の温度上昇に伴って、成形体の収縮量も大きくなるた
め、成形体内部に窒素ガスが供給されなくなり、その後
窒化反応が抑制される。この発熱現象も、窒化物の生成
を抑制する原因となっている。
【0086】第7実施例 第6実施例と同様の原料粉末を用い、窒化物生成工程に
おける加熱時間を種々変えて窒化物生成処理を行った
後、窒化処理成形体に対して前記第1実施例と同様に熱
間押出しおよびT6処理を行い、Al合金複合材料部材
を作製した。得られた複合材料部材は、何れの場合もA
l合金粉末表面に生成したAlNが粉砕されて、AlN
が均一に分散しており、軽量でかつ優れた耐摩耗性を有
していることが確認された。
【0087】ここで、前記第6実施例の図11における
成形体の温度が上昇し始めるまでの加熱保持時間(潜伏
期間とする:窒化反応開始までの時間)と、加熱保持温
度との関係を、図12に示す。同図より明らかなよう
に、加熱温度が450℃未満では多量の窒化物を生成す
るのに必要な加熱保持時間は数十時間と考えられ、実用
には適さないことが分かる。
【0088】第8実施例 原料粉末として、粒径が149μm以下のAl合金粉末
(A2024:Al−4.3 wt% Cu−0.6 wt% Mn−1.
5 wt% Mg)を準備した。次に、該原料粉末を、成形し
て圧粉体(φ30×23 mm )とした。次に、得られた
圧粉体に対し、先ず、500℃で1時間加熱した後、加
熱温度を480℃に下げて3時間保持し窒化物生成処理
を行った。なお、理論密度(ρ0 )に対する加熱前の圧
粉体密度(ρ)の比は、約65%であった。
【0089】窒化物生成処理後の被処理成形体につい
て、前記第1実施例と同様に試料断面の金属組織をEP
MAで分析した結果、何れも、成形体を構成するAl合
金粉末の表面に、AlとNが主成分とする膜が生成され
ていることが確認された。また、X線回折を行った結
果、何れもAlNであることが確認された。
【0090】次いで、これら窒化処理成形体に対し、前
記第1実施例と同様に熱間押出しおよびT6処理を行
い、Al合金複合材料部材を作製した。得られた複合材
料部材のAlN体積率について、前記第1実施例と同様
にして求めた。その結果、AlNの体積率は約30%で
あった。また、この複合材料部材は、Al合金粉末表面
に生成したAlNが粉砕されて、AlNがより均一に分
散しており、軽量でかつた大変優れた耐摩耗性を有して
いることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例において得られた窒化処理
後の成形体の断面の金属組織をEPMAで分析した結果
を示す図である(Al−Kα線像)。
【図2】本発明の第1実施例において得られた窒化処理
後の成形体の断面の金属組織をEPMAで分析した結果
を示す図である(N−Kα線像)。
【図3】本発明の第1実施例において得られたAl合金
複合部材(試料番号:2)の断面の金属組織を示す光学
顕微鏡写真図(倍率:400倍)である。
【図4】本発明の第1実施例において得られたAl合金
複合部材(試料番号:3)の断面の金属組織を示す光学
顕微鏡写真図(倍率:400倍)である。
【図5】本発明の第1実施例において得られたAl合金
複合部材(試料番号:4)の断面の金属組織を示す光学
顕微鏡写真図(倍率:400倍)である。
【図6】本発明の第1実施例において得られたAl合金
複合部材の耐摩耗性試験結果を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例において得られた窒化処理
後の成形体のAlN生成量を示す図である。
【図8】本発明の第3実施例において得られた窒化処理
後の成形体の、理論密度に対する加熱前の成形体の密度
比と重量変化率(AlN生成量)の関係を示す図であ
る。
【図9】本発明の第4実施例において得られた窒化処理
後の成形体の、加熱温度と重量変化(AlN生成量)の
関係を示す図である。
【図10】本発明の第5実施例において得られたAl合金
複合合金部材の、AlN体積率と加熱温度・加熱時間の
関係を示す図である。
【図11】本発明の第6実施例の窒化物生成工程におい
て、圧粉体を加熱処理したときの加熱保持時間と該圧粉
体温度との関係を示す線図である。
【図12】本発明の第7実施例の窒化物生成工程におい
て、圧粉体を加熱処理したときの窒化反応開始までの時
間を加熱温度に対して示した線図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川浦 宏之 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mgを含有するアルミニウム合金粉末を
    準備する原料粉末準備工程と、 該原料粉末準備工程により得られた原料粉末を窒素含有
    雰囲気中で加熱し、該原料粉末の表面部に窒化物を生成
    させる窒化物生成工程と、 該窒化物生成工程により得られた粉末を所定の形状に熱
    間加工する熱間加工工程と、 からなることを特徴とするAlN分散型アルミニウム合
    金複合材料の製造方法。
  2. 【請求項2】 窒化物生成工程における窒素含有雰囲気
    中での加熱温度が、500℃〜600℃の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1記載のAlN分散型アルミニ
    ウム合金複合材料の製造方法。
  3. 【請求項3】 窒化物生成工程における窒素含有雰囲気
    中での加熱温度が、450℃以上500℃未満の範囲内
    であることを特徴とする請求項1記載のAlN分散型ア
    ルミニウム合金複合材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 窒化物生成工程が、窒素含有雰囲気中で
    かつ480℃以上の温度範囲内で加熱を行う第1加熱処
    理工程と、窒素含有雰囲気中でかつ450℃以上500
    ℃未満の前記第1加熱処理工程での加熱温度よりも低い
    温度範囲内で加熱を行う第2加熱処理工程と、からなる
    ことを特徴とする請求項1記載のAlN分散型アルミニ
    ウム合金複合材料の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104032159A (zh) * 2014-03-26 2014-09-10 南昌大学 一种纳米氮化铝增强铝基复合材料的制备方法
CN104532030A (zh) * 2014-12-24 2015-04-22 南昌大学 一种基于超声处理制备纳米氮化铝颗粒增强铝基复合材料半固态浆料的方法
CN106191755A (zh) * 2016-07-18 2016-12-07 范兴宽 一种氮化铝包覆纳米铝粉的制备工艺研究

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