JPH07197101A - 粉末冶金用鉄−燐系鋼粉、及び焼結部品の製造方法 - Google Patents
粉末冶金用鉄−燐系鋼粉、及び焼結部品の製造方法Info
- Publication number
- JPH07197101A JPH07197101A JP5350316A JP35031693A JPH07197101A JP H07197101 A JPH07197101 A JP H07197101A JP 5350316 A JP5350316 A JP 5350316A JP 35031693 A JP35031693 A JP 35031693A JP H07197101 A JPH07197101 A JP H07197101A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- powder
- iron
- phosphorus
- metallurgy
- alloy powder
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Powder Metallurgy (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【構成】 燐含有量が17〜28重量%で平均粒径が6
3μm以下の鉄−燐合金粉末を、バインダーによって粉
末冶金用鉄粉表面に付着させたものである粉末冶金用鉄
−燐系鋼粉である。又上記鉄−燐合金粉末、上記バイン
ダー、上記粉末冶金用鉄粉、潤滑材を混合して焼結する
様にして焼結部品を製造する。 【効果】 鋼粉の偏析が押えられる。見掛密度と流動性
が改善される。金型損耗が抑制される。優れた寸法精度
を示す。
3μm以下の鉄−燐合金粉末を、バインダーによって粉
末冶金用鉄粉表面に付着させたものである粉末冶金用鉄
−燐系鋼粉である。又上記鉄−燐合金粉末、上記バイン
ダー、上記粉末冶金用鉄粉、潤滑材を混合して焼結する
様にして焼結部品を製造する。 【効果】 鋼粉の偏析が押えられる。見掛密度と流動性
が改善される。金型損耗が抑制される。優れた寸法精度
を示す。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、寸法精度に優れた焼結
部品を与える粉末冶金用鉄−燐系鋼粉、及び該鋼粉を用
いた焼結部品の製造方法に関するものであり、本発明は
例えば焼結軟質磁性部品や焼結機械部品の製造に有効に
活用することができる。
部品を与える粉末冶金用鉄−燐系鋼粉、及び該鋼粉を用
いた焼結部品の製造方法に関するものであり、本発明は
例えば焼結軟質磁性部品や焼結機械部品の製造に有効に
活用することができる。
【0002】
【従来の技術】粉末冶金法とは、物理的あるいは化学的
に微粉化された原料粉を金型に入れて圧縮成形した後に
焼結を行なって製品を得る方法であり、特に複雑な形状
の部品の成形に広く活用されている。こうした粉末冶金
法の特徴を充分に生かすには、焼結ままで高い寸法精度
が得られることが必要であるが、現実には必ずしも十分
な寸法精度が得られるとは限らず、焼結後に寸法調整の
為のサイジング、コインイング、あるいは機械加工等を
要することが少なくない。
に微粉化された原料粉を金型に入れて圧縮成形した後に
焼結を行なって製品を得る方法であり、特に複雑な形状
の部品の成形に広く活用されている。こうした粉末冶金
法の特徴を充分に生かすには、焼結ままで高い寸法精度
が得られることが必要であるが、現実には必ずしも十分
な寸法精度が得られるとは限らず、焼結後に寸法調整の
為のサイジング、コインイング、あるいは機械加工等を
要することが少なくない。
【0003】ところで鉄−燐系鋼粉は、良好な軟質磁気
特性を発現する燒結部品材料として有用なものであり、
あるいはこれに炭素(C)や銅(Cu)等を添加するこ
とにより、機械構造部品用材料としても多用されてい
る。
特性を発現する燒結部品材料として有用なものであり、
あるいはこれに炭素(C)や銅(Cu)等を添加するこ
とにより、機械構造部品用材料としても多用されてい
る。
【0004】このような鉄−燐系焼結部品を製造するた
めの鉄−燐(Fe−P)系原料粉としては、燐(P)を
溶解した溶湯をアトマイズ法によって粉末化したいわゆ
るプレアロイ粉と、純鉄粉に鉄−燐合金、燐酸あるいは
燐酸鉄等の燐供給源となる粉末を配合したプレミックス
粉がある。このうちプレアロイ粉は、非常に硬質である
ため、金型を用いた圧縮成形では高密度化が達成されに
くく、満足のいく磁気特性や機械強度が得られないとい
う性能上の問題に加えて、激しい金型損耗を招くという
問題を有している。一方、プレミックス粉では、圧縮性
は良好であるため高密度化は達成され易いという利点は
有しているものの、配合した燐が偏析を起こし易く、得
られる製品の寸法精度や磁気特性、或は機械的特性にば
らつきを生じ易いという問題がある。
めの鉄−燐(Fe−P)系原料粉としては、燐(P)を
溶解した溶湯をアトマイズ法によって粉末化したいわゆ
るプレアロイ粉と、純鉄粉に鉄−燐合金、燐酸あるいは
燐酸鉄等の燐供給源となる粉末を配合したプレミックス
粉がある。このうちプレアロイ粉は、非常に硬質である
ため、金型を用いた圧縮成形では高密度化が達成されに
くく、満足のいく磁気特性や機械強度が得られないとい
う性能上の問題に加えて、激しい金型損耗を招くという
問題を有している。一方、プレミックス粉では、圧縮性
は良好であるため高密度化は達成され易いという利点は
有しているものの、配合した燐が偏析を起こし易く、得
られる製品の寸法精度や磁気特性、或は機械的特性にば
らつきを生じ易いという問題がある。
【0005】上記問題点を解決するものとして、例えば
特公昭54−21803号公報には、純鉄粉と12〜1
7重量%の燐を含む鉄−燐合金粉末(平均粒径45μm
以下)を、微量の鉱油と共に混合し、比較的低温で穏や
かに焼結した後に粉砕することによって、圧縮性に優
れ、かつ燐の偏析のない鉄粉を得る方法が開示されてい
る。
特公昭54−21803号公報には、純鉄粉と12〜1
7重量%の燐を含む鉄−燐合金粉末(平均粒径45μm
以下)を、微量の鉱油と共に混合し、比較的低温で穏や
かに焼結した後に粉砕することによって、圧縮性に優
れ、かつ燐の偏析のない鉄粉を得る方法が開示されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
特公昭54−21803号公報に開示された方法(部分
拡散型鉄粉の製造方法)は、従来のプレミッス粉に比べ
て燐の偏析防止には効果があるが、燐の供給源として燐
含有量の少ない(12〜17重量%)鉄−燐合金粉末を
使用しているので、希望する燐含量の鋼粉を得るには、
上記鉄−燐合金粉末を多量に添加しなければならず、こ
の鉄−燐合金粉末がかなり硬質であるため、やはり金型
の損耗が激しい。
特公昭54−21803号公報に開示された方法(部分
拡散型鉄粉の製造方法)は、従来のプレミッス粉に比べ
て燐の偏析防止には効果があるが、燐の供給源として燐
含有量の少ない(12〜17重量%)鉄−燐合金粉末を
使用しているので、希望する燐含量の鋼粉を得るには、
上記鉄−燐合金粉末を多量に添加しなければならず、こ
の鉄−燐合金粉末がかなり硬質であるため、やはり金型
の損耗が激しい。
【0007】また上記技術では、原料鋼粉が硬質となる
ため圧縮成形時の密度が十分に上がり難い。しかも鉄−
燐合金粉末を純鉄粉との混合系で穏やかに焼結させてい
るので、鉄−燐合金粉末と純鉄粉の界面付近における燐
濃度は、燐=10.5重量%の共晶点(図4:鉄−燐2
元状態図参照)に近づいており、一般的な鋼粉系粉末冶
金の焼結温度である1100〜1250℃では上記燐含
量の鉄−燐合金が溶融し、焼結の特に初期段階(焼結ネ
ックが充分に形成される前)で多量の液相が生じるた
め、プレミックス粉に比べて寸法収縮が著しく、寸法精
度の確保が困難になるという問題もある。更に、ロット
間の寸法変化のバラツキを小さくすることも困難であ
る。加えてこの部分拡散型鋼粉を製造する際には、水素
ガス雰囲気下での加熱(800℃以下)を必要とするた
め、防爆構造の特殊な炉が必要となるという問題も指摘
される。
ため圧縮成形時の密度が十分に上がり難い。しかも鉄−
燐合金粉末を純鉄粉との混合系で穏やかに焼結させてい
るので、鉄−燐合金粉末と純鉄粉の界面付近における燐
濃度は、燐=10.5重量%の共晶点(図4:鉄−燐2
元状態図参照)に近づいており、一般的な鋼粉系粉末冶
金の焼結温度である1100〜1250℃では上記燐含
量の鉄−燐合金が溶融し、焼結の特に初期段階(焼結ネ
ックが充分に形成される前)で多量の液相が生じるた
め、プレミックス粉に比べて寸法収縮が著しく、寸法精
度の確保が困難になるという問題もある。更に、ロット
間の寸法変化のバラツキを小さくすることも困難であ
る。加えてこの部分拡散型鋼粉を製造する際には、水素
ガス雰囲気下での加熱(800℃以下)を必要とするた
め、防爆構造の特殊な炉が必要となるという問題も指摘
される。
【0008】また鋼粉中の酸素量が焼結時の寸法精度に
影響を及ぼすことも一般的に知られているが、粉末冶金
用鋼粉は比表面積が大きいため、製造後の流通、保存時
に酸化され易いという問題があり、特にPを多く含む鋼
粉末では、この傾向が著しい。そのため、従来はステア
リン酸亜鉛等の混合による発錆防止、あるいは特殊な除
湿を施した倉庫での保管、更に特殊な防湿袋への封入
(開平3−29779号)等が利用されている。しかし
ながら、上記のうちステアリン酸亜鉛の混合による方法
だけでは、発錆防止効果が十分でなく、また除湿を施し
た倉庫や特殊な防湿袋を利用する方法は、経済的性に問
題がある。
影響を及ぼすことも一般的に知られているが、粉末冶金
用鋼粉は比表面積が大きいため、製造後の流通、保存時
に酸化され易いという問題があり、特にPを多く含む鋼
粉末では、この傾向が著しい。そのため、従来はステア
リン酸亜鉛等の混合による発錆防止、あるいは特殊な除
湿を施した倉庫での保管、更に特殊な防湿袋への封入
(開平3−29779号)等が利用されている。しかし
ながら、上記のうちステアリン酸亜鉛の混合による方法
だけでは、発錆防止効果が十分でなく、また除湿を施し
た倉庫や特殊な防湿袋を利用する方法は、経済的性に問
題がある。
【0009】本発明は以上の様な問題を解決するために
なされたものであり、プレス成形時の圧縮成形性が良好
で高密度の圧粉成形体が得られ易く、しかも保管時等に
おける酸素の吸収も抑えられて、焼結時の寸法変化が少
なくて高い寸法精度の確保が容易であり、またPの偏析
が少なくて、良好な磁気特性や機械的強度を有する焼結
部品を得ることのできる粉末冶金用鉄−燐系鉄粉、およ
び該粉末冶金用鉄−燐系鋼粉を用いた焼結部品の製造方
法を提供することを目的とする。
なされたものであり、プレス成形時の圧縮成形性が良好
で高密度の圧粉成形体が得られ易く、しかも保管時等に
おける酸素の吸収も抑えられて、焼結時の寸法変化が少
なくて高い寸法精度の確保が容易であり、またPの偏析
が少なくて、良好な磁気特性や機械的強度を有する焼結
部品を得ることのできる粉末冶金用鉄−燐系鉄粉、およ
び該粉末冶金用鉄−燐系鋼粉を用いた焼結部品の製造方
法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係る粉末冶金用
鉄−燐系鋼粉は、燐含有量が17〜28重量%で平均粒
径が63μm以下の鉄−燐合金粉末、あるいは該粉末と
炭素粉末及び/又は銅粉末を、バインダーによって粉末
冶金用鉄粉表面に付着させたものであることを要旨とす
る。
鉄−燐系鋼粉は、燐含有量が17〜28重量%で平均粒
径が63μm以下の鉄−燐合金粉末、あるいは該粉末と
炭素粉末及び/又は銅粉末を、バインダーによって粉末
冶金用鉄粉表面に付着させたものであることを要旨とす
る。
【0011】本発明に係る焼結部品の製造方法は、上記
鉄−燐合金粉末と、バインダー、あるいはこれらと炭素
粉末及び/又は銅粉末を、粉末冶金用鉄粉および潤滑材
と共に混合して成形し、焼結するところに要旨が存在す
る。
鉄−燐合金粉末と、バインダー、あるいはこれらと炭素
粉末及び/又は銅粉末を、粉末冶金用鉄粉および潤滑材
と共に混合して成形し、焼結するところに要旨が存在す
る。
【0012】
【作用及び実施例】本発明で用いるバインダーは、鉄−
燐(Fe−P)合金粉末あるいは炭素(C)粉末、銅
(Cu)粉末を、純鉄粉表面に均一に付着させる作用を
有している。従って、このようにして鉄−燐(Fe−
P)合金粉末等を純鉄粉表面に付着し造粒した本発明の
鋼粉は、流動性が良好で優れた圧縮成形性を有してお
り、たとえ薄肉・複雑形状部品の金型成形であっても設
計通りの形状を有する高密度の圧粉成形体を得ることが
できる。また硬質のFe−P合金粉末粒子はバインダー
で包み込まれる様に造粒されているので、従来の鋼粉で
問題とされていた金型の損耗も抑制される。更に、鋼粉
に含有される酸素量は寸法変化率に影響を与えるが、上
述の様にバインダーがFe−P合金粉末を包み込み、大
気と接触するのを防止することになるので、製造後の酸
素量の経時変化が小さく、酸素吸収による寸法変化率の
変動が小さくなる。
燐(Fe−P)合金粉末あるいは炭素(C)粉末、銅
(Cu)粉末を、純鉄粉表面に均一に付着させる作用を
有している。従って、このようにして鉄−燐(Fe−
P)合金粉末等を純鉄粉表面に付着し造粒した本発明の
鋼粉は、流動性が良好で優れた圧縮成形性を有してお
り、たとえ薄肉・複雑形状部品の金型成形であっても設
計通りの形状を有する高密度の圧粉成形体を得ることが
できる。また硬質のFe−P合金粉末粒子はバインダー
で包み込まれる様に造粒されているので、従来の鋼粉で
問題とされていた金型の損耗も抑制される。更に、鋼粉
に含有される酸素量は寸法変化率に影響を与えるが、上
述の様にバインダーがFe−P合金粉末を包み込み、大
気と接触するのを防止することになるので、製造後の酸
素量の経時変化が小さく、酸素吸収による寸法変化率の
変動が小さくなる。
【0013】しかも従来では、鋼粉の輸送、原料ホッパ
ーへの充填、成形用金型への充填等の工程の際に、Fe
−P合金粉末やC粉末、Cu粉末及び潤滑材の偏析が起
こっていたが、本発明の粉末冶金用鉄−燐系鋼粉は、母
材である鉄粉表面に上記Fe−P合金粉末等がバインダ
ーにより付着されているので、上記の様な鋼粉の輸送や
取扱い時におけるP等の偏析も防止される。
ーへの充填、成形用金型への充填等の工程の際に、Fe
−P合金粉末やC粉末、Cu粉末及び潤滑材の偏析が起
こっていたが、本発明の粉末冶金用鉄−燐系鋼粉は、母
材である鉄粉表面に上記Fe−P合金粉末等がバインダ
ーにより付着されているので、上記の様な鋼粉の輸送や
取扱い時におけるP等の偏析も防止される。
【0014】ことに本発明の粉末冶金用鉄−燐系鋼粉
は、圧縮成形が良好であるので圧縮成形により高密度の
圧縮成形体を得ることができ、保管時等における酸素吸
収量の低減とも相まってその後の焼結工程での寸法収縮
が最小限に抑えられるので、焼結製品としての寸法精度
を著しく高めることができ、焼結後の寸法調整の為の機
械加工等を最小限に抑えることができ、場合によっては
その様な寸法調整等が全く不要となる。しかも圧縮成形
時における金型の損耗が少なく、またP成分等の偏析も
起こらないので物性の均質な焼結製品を得ることができ
るといった様な利点がある。
は、圧縮成形が良好であるので圧縮成形により高密度の
圧縮成形体を得ることができ、保管時等における酸素吸
収量の低減とも相まってその後の焼結工程での寸法収縮
が最小限に抑えられるので、焼結製品としての寸法精度
を著しく高めることができ、焼結後の寸法調整の為の機
械加工等を最小限に抑えることができ、場合によっては
その様な寸法調整等が全く不要となる。しかも圧縮成形
時における金型の損耗が少なく、またP成分等の偏析も
起こらないので物性の均質な焼結製品を得ることができ
るといった様な利点がある。
【0015】鋼粉中に含まれる燐(P)の総量は、特に
限定されるものではないが、軟質磁性材料として用いる
場合は、焼結の際の一般的温度1100〜1250℃に
保持されている間にマトリックスを完全にα相化させる
という観点から、0.2重量%以上のP添加が望まし
い。しかしPによる磁気特性改善の効果は、およそ1.
2重量%で飽和するから、添加するP分の上限は1.2
重量%とするのが望ましい。
限定されるものではないが、軟質磁性材料として用いる
場合は、焼結の際の一般的温度1100〜1250℃に
保持されている間にマトリックスを完全にα相化させる
という観点から、0.2重量%以上のP添加が望まし
い。しかしPによる磁気特性改善の効果は、およそ1.
2重量%で飽和するから、添加するP分の上限は1.2
重量%とするのが望ましい。
【0016】P分はFe−P合金粉末として添加される
が、Fe−P合金粉末中のP量が少ない場合、上記鋼粉
末中のP分を所望量にするのに、硬質のFe−P合金粉
末を多量添加しなければならなくなり、圧縮成形時に高
い圧粉体密度が得られ難くなる。反対にP含量の多いF
e−P合金粉末を使用すると、添加重量(体積比)が少
なくなるために、純鉄粉とFe−P合金粉末の接触点の
数が少なくなり、Pの均質な拡散及び寸法精度の確保が
困難となる。
が、Fe−P合金粉末中のP量が少ない場合、上記鋼粉
末中のP分を所望量にするのに、硬質のFe−P合金粉
末を多量添加しなければならなくなり、圧縮成形時に高
い圧粉体密度が得られ難くなる。反対にP含量の多いF
e−P合金粉末を使用すると、添加重量(体積比)が少
なくなるために、純鉄粉とFe−P合金粉末の接触点の
数が少なくなり、Pの均質な拡散及び寸法精度の確保が
困難となる。
【0017】そこで本願発明者は、Fe−P合金粉末の
P含有量と平均粒径について検討した。その結果、寸法
精度を充分に確保するには、Fe−P合金に含有される
P濃度を17〜28重量%の範囲とし、かつ平均粒径を
63μm以下とするのが良いとの結論を得た。上記の様
に規定することによって、寸法変化率の絶対値を調整す
ることができ、かつ寸法変化挙動に対する焼結温度への
鈍感さや成形体密度への鈍感さの度合いを任意に付与す
ることができ、結果として寸法精度に優れた焼結部品を
容易に得ることができたのである。
P含有量と平均粒径について検討した。その結果、寸法
精度を充分に確保するには、Fe−P合金に含有される
P濃度を17〜28重量%の範囲とし、かつ平均粒径を
63μm以下とするのが良いとの結論を得た。上記の様
に規定することによって、寸法変化率の絶対値を調整す
ることができ、かつ寸法変化挙動に対する焼結温度への
鈍感さや成形体密度への鈍感さの度合いを任意に付与す
ることができ、結果として寸法精度に優れた焼結部品を
容易に得ることができたのである。
【0018】本発明の鋼粉を機械部品用に用いる場合の
CやCuの添加量は、所望する機械的性質に応じて適宜
組み合わせれば良いが、一般的にC:0.1〜1.0重
量%、Cu:0.5〜3.0重量%とするのが望まし
い。なお母材となる粉末冶金用鉄粉としては、アトマイ
ズ鉄粉、還元鉄粉、カーボニル鉄粉のいずれも採用する
ことができる。
CやCuの添加量は、所望する機械的性質に応じて適宜
組み合わせれば良いが、一般的にC:0.1〜1.0重
量%、Cu:0.5〜3.0重量%とするのが望まし
い。なお母材となる粉末冶金用鉄粉としては、アトマイ
ズ鉄粉、還元鉄粉、カーボニル鉄粉のいずれも採用する
ことができる。
【0019】以下、実験例を挙げて本発明の構成および
作用効果をより具体的に説明する。 〈実験1〉 Fe−P合金粉末のP含有量について Pの供給源として、P含有量が10.5〜29重量%の
Fe−P合金粉末について調べた。本発明における焼結
部品の製造方法としては、アトマイズ法により得られた
平均粒径100μmの粉末冶金用鉄粉に、平均粒径63
μmのFe−P合金粉末をP分が0.6重量%になる様
に配合し、更にバインダーとしてスチレン−ブタジエン
系溶液合成ゴムを2重量%と、潤滑剤としてステアリン
酸亜鉛0.75重量%を混合し、乾燥させて混合粉を得
た。該混合粉を金型プレス形成で外径64mm、内径2
4mm、厚さ10mm、成形体密度6.9g/cm3 の
リング状に成形した。その後メッシュベルト式焼結炉に
よりアンモニア分解ガス雰囲気中、1180℃で60分
間の焼結を行なった。製造された焼結部品について、寸
法変化率、焼結体密度、外径寸法変化ばらつきR等を調
べた。図1に、寸法変化率(%)とFe−P合金粉末中
のP濃度(重量%)の関係を示す。なお比較として、市
販の部分拡散型鋼粉から得られた焼結部品についての寸
法変化についても調べた。該市販の部分拡散型鋼粉と
は、Fe3 P組成のFe−P合金粉末を微弱な熱処理に
よって純鉄粉表面に拡散接合させたものである。
作用効果をより具体的に説明する。 〈実験1〉 Fe−P合金粉末のP含有量について Pの供給源として、P含有量が10.5〜29重量%の
Fe−P合金粉末について調べた。本発明における焼結
部品の製造方法としては、アトマイズ法により得られた
平均粒径100μmの粉末冶金用鉄粉に、平均粒径63
μmのFe−P合金粉末をP分が0.6重量%になる様
に配合し、更にバインダーとしてスチレン−ブタジエン
系溶液合成ゴムを2重量%と、潤滑剤としてステアリン
酸亜鉛0.75重量%を混合し、乾燥させて混合粉を得
た。該混合粉を金型プレス形成で外径64mm、内径2
4mm、厚さ10mm、成形体密度6.9g/cm3 の
リング状に成形した。その後メッシュベルト式焼結炉に
よりアンモニア分解ガス雰囲気中、1180℃で60分
間の焼結を行なった。製造された焼結部品について、寸
法変化率、焼結体密度、外径寸法変化ばらつきR等を調
べた。図1に、寸法変化率(%)とFe−P合金粉末中
のP濃度(重量%)の関係を示す。なお比較として、市
販の部分拡散型鋼粉から得られた焼結部品についての寸
法変化についても調べた。該市販の部分拡散型鋼粉と
は、Fe3 P組成のFe−P合金粉末を微弱な熱処理に
よって純鉄粉表面に拡散接合させたものである。
【0020】図1から分かる様に、Fe−P合金粉末中
のP濃度が共晶組成であるP=10.5重量%又はP=
27重量%(図4参照)に近づくほど、寸法収縮量が大
きくなっている。これは焼結の初期段階において液相が
多量に生成するためと思われる。一方、市販の部分拡散
型鋼粉では特に著しい寸法収縮が見られる。これは市販
の部分拡散型では微弱な熱処理を行なうことによって共
晶組成のP濃度に近い部分拡散相が生じ、プレミックス
粉あるいはバインダーにより付着させたものよりも、よ
り早い段階で液相を生成するためと考えられる。
のP濃度が共晶組成であるP=10.5重量%又はP=
27重量%(図4参照)に近づくほど、寸法収縮量が大
きくなっている。これは焼結の初期段階において液相が
多量に生成するためと思われる。一方、市販の部分拡散
型鋼粉では特に著しい寸法収縮が見られる。これは市販
の部分拡散型では微弱な熱処理を行なうことによって共
晶組成のP濃度に近い部分拡散相が生じ、プレミックス
粉あるいはバインダーにより付着させたものよりも、よ
り早い段階で液相を生成するためと考えられる。
【0021】寸法精度を高めるには、焼結時における寸
法変化率の絶対値がなるべく小さい方が良い。しかし寸
法変化率の絶対値が小さい場合は、焼結時における密度
の向上が期待できないため、密度の充分な焼結部品を得
るには、金型プレス成形工程で密度を充分に上げておく
必要がある。
法変化率の絶対値がなるべく小さい方が良い。しかし寸
法変化率の絶対値が小さい場合は、焼結時における密度
の向上が期待できないため、密度の充分な焼結部品を得
るには、金型プレス成形工程で密度を充分に上げておく
必要がある。
【0022】図2は、Fe−P合金粉末中のP濃度(重
量%)と圧縮性(成形体密度(g/cm3 )の関係を示
したグラフである。図2に見られる様に、Fe−P合金
粉末中のP濃度が低い場合は、圧縮性が低下している。
これはP濃度が低いと、添加するFe−P合金粉末の重
量(体積比)が大きくなるからであると考えられる。良
好な磁気特性を得るためには、高密度のものを得る必要
があるので、できるだけ高濃度のFe−P合金粉末を使
うことが望ましい。
量%)と圧縮性(成形体密度(g/cm3 )の関係を示
したグラフである。図2に見られる様に、Fe−P合金
粉末中のP濃度が低い場合は、圧縮性が低下している。
これはP濃度が低いと、添加するFe−P合金粉末の重
量(体積比)が大きくなるからであると考えられる。良
好な磁気特性を得るためには、高密度のものを得る必要
があるので、できるだけ高濃度のFe−P合金粉末を使
うことが望ましい。
【0023】図3は、Fe−P合金粉末中のP濃度(重
量%)と寸法精度(外径寸法変化ばらつきR(mm))
の関係を示したグラフである。グラフ縦軸の外径寸法の
変化のばらつきRとは、自動成形プレスで1000個の
リング状試験片を成形・焼結した後の、外径寸法の最大
値と最小値の差である。図3から分かる様に、P含有量
が低い場合及び28重量%以上の場合、外径寸法変化の
ばらつきRは大きくなる。
量%)と寸法精度(外径寸法変化ばらつきR(mm))
の関係を示したグラフである。グラフ縦軸の外径寸法の
変化のばらつきRとは、自動成形プレスで1000個の
リング状試験片を成形・焼結した後の、外径寸法の最大
値と最小値の差である。図3から分かる様に、P含有量
が低い場合及び28重量%以上の場合、外径寸法変化の
ばらつきRは大きくなる。
【0024】上述の様に高密度のものを得るには、Pが
高濃度のFe−P合金粉末を用いるのがよいが、このよ
うな合金粉末を使用した場合、外径寸法変化のばらつき
Rが大きくなって不適当となる。これはPが高濃度のF
e−P合金粉末を使った場合、P分の分散が不十分とな
るからである。
高濃度のFe−P合金粉末を用いるのがよいが、このよ
うな合金粉末を使用した場合、外径寸法変化のばらつき
Rが大きくなって不適当となる。これはPが高濃度のF
e−P合金粉末を使った場合、P分の分散が不十分とな
るからである。
【0025】以上の検討から、焼結時の寸法変化率の絶
対値が小さく、成形時に十分高い成形体密度が得られ、
かつ寸法変化ばらつきを小さくできるもの、即ち寸法精
度を確保し且つ最終的に高密度焼結体を得ることのでき
るFe−P合金粉末は、P含有量が17重量%〜28重
量%の範囲であるとの知見を得た。
対値が小さく、成形時に十分高い成形体密度が得られ、
かつ寸法変化ばらつきを小さくできるもの、即ち寸法精
度を確保し且つ最終的に高密度焼結体を得ることのでき
るFe−P合金粉末は、P含有量が17重量%〜28重
量%の範囲であるとの知見を得た。
【0026】〈実験2〉 Fe−P合金粉末の平均粒度
について Pを26.9重量%含有するFe−P合金を用い、粉砕
或はふるい条件を変化させることによって10〜150
μmの夫々の平均粒度を持つFe−P合金粉末を得、実
験に使用した。焼結部品の製造方法としては、上記実験
1と同様に、P含有量が0.6重量%になる様にFe−
P合金粉末を粉末冶金用純鉄粉に添加し、バインダーと
してスチレン−ブタジエン系溶液合成ゴム、及び潤滑材
としてステアリン酸亜鉛を混合し乾燥させて混合粉を
得、該混合粉を金型プレス成形でリング状に成形した
後、焼結を行なった。得られた焼結部品について、外径
寸法変化ばらつき、外径寸法変化率及び成形体密度を調
べた。
について Pを26.9重量%含有するFe−P合金を用い、粉砕
或はふるい条件を変化させることによって10〜150
μmの夫々の平均粒度を持つFe−P合金粉末を得、実
験に使用した。焼結部品の製造方法としては、上記実験
1と同様に、P含有量が0.6重量%になる様にFe−
P合金粉末を粉末冶金用純鉄粉に添加し、バインダーと
してスチレン−ブタジエン系溶液合成ゴム、及び潤滑材
としてステアリン酸亜鉛を混合し乾燥させて混合粉を
得、該混合粉を金型プレス成形でリング状に成形した
後、焼結を行なった。得られた焼結部品について、外径
寸法変化ばらつき、外径寸法変化率及び成形体密度を調
べた。
【0027】図5は、Fe−P合金粉末粒度(μm)と
寸法精度(外径寸法変化ばらつきR(mm))の関係を
示すグラフである。図5から分かる様に、Fe−P合金
粉末粒度が63μm以上になると、寸法精度の確保が困
難になっている。これはPの分散が不十分になるからで
ある。
寸法精度(外径寸法変化ばらつきR(mm))の関係を
示すグラフである。図5から分かる様に、Fe−P合金
粉末粒度が63μm以上になると、寸法精度の確保が困
難になっている。これはPの分散が不十分になるからで
ある。
【0028】図6は、Fe−P合金粉末粒度(μm)と
外径寸法変化率(%)及び成形体密度(g/cm3 )の
関係を示すグラフである。尚Fe−P合金粉末粒度は、
比較例1:107μm、比較例2:75μm、実施例
1:63μm、実施例2:45μm、実施例3:30μ
mである。図6から分かる様に、Fe−P合金粉末の粒
度が微細になるほど寸法変化率の密度依存性は弱く且つ
絶対値が小さくなる。従って、微細なFe−P合金粉末
を使用すれば、実際の焼結部品製造において、成形体の
密度のばらつきに起因する寸法不良を小さくすることが
できる。特に63μm以下の微細なFe−P合金粉末
(例えば実施例1〜3)では、粒度の差が寸法変化率に
及ぼす影響が非常に小さくなるから、混合粉製造過程に
おいて不可避である粉末の破砕現象を無視でき、混合粉
のロット間における寸法変化率を安定させることが容易
となる。
外径寸法変化率(%)及び成形体密度(g/cm3 )の
関係を示すグラフである。尚Fe−P合金粉末粒度は、
比較例1:107μm、比較例2:75μm、実施例
1:63μm、実施例2:45μm、実施例3:30μ
mである。図6から分かる様に、Fe−P合金粉末の粒
度が微細になるほど寸法変化率の密度依存性は弱く且つ
絶対値が小さくなる。従って、微細なFe−P合金粉末
を使用すれば、実際の焼結部品製造において、成形体の
密度のばらつきに起因する寸法不良を小さくすることが
できる。特に63μm以下の微細なFe−P合金粉末
(例えば実施例1〜3)では、粒度の差が寸法変化率に
及ぼす影響が非常に小さくなるから、混合粉製造過程に
おいて不可避である粉末の破砕現象を無視でき、混合粉
のロット間における寸法変化率を安定させることが容易
となる。
【0029】〈実験3〉 焼結炉中の温度分布及び成形
体内部の温度勾配について 実際の焼結部品製造工程においては、原料粉におけるP
の偏析と共に焼結炉中の温度分布及び成形体内部の温度
勾配が、寸法精度不良の原因となっている。そこで本発
明者は焼結温度の寸法変化率に及ぼす影響を検討した。
実験には、P含量が17〜28重量%のFe−P合金粉
末(平均粒径45μm)を用い、P分が1重量%になる
よう粉末冶金用純鉄粉に配合し、スチレン−ブタジエン
系溶液合成ゴム(バインダー)にて付着させ、これにつ
いて焼結温度に対する寸法変化率を調べた。また比較例
として、Fe−P合金粉末を粉末冶金用純鉄粉の表面に
バインダーにより拡散付着させたものについても調べ
た。各実施例及び比較例のP含量、焼結温度条件を下記
表1に示す。
体内部の温度勾配について 実際の焼結部品製造工程においては、原料粉におけるP
の偏析と共に焼結炉中の温度分布及び成形体内部の温度
勾配が、寸法精度不良の原因となっている。そこで本発
明者は焼結温度の寸法変化率に及ぼす影響を検討した。
実験には、P含量が17〜28重量%のFe−P合金粉
末(平均粒径45μm)を用い、P分が1重量%になる
よう粉末冶金用純鉄粉に配合し、スチレン−ブタジエン
系溶液合成ゴム(バインダー)にて付着させ、これにつ
いて焼結温度に対する寸法変化率を調べた。また比較例
として、Fe−P合金粉末を粉末冶金用純鉄粉の表面に
バインダーにより拡散付着させたものについても調べ
た。各実施例及び比較例のP含量、焼結温度条件を下記
表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】図7は、Fe−P合金粉末中のP濃度と外
径寸法変化率(%)及び成形体密度(g/cm3 )の関
係を表すグラフであり、Fe−P合金粉末中のP含有量
が17重量%〜21.7重量%(Fe2 P組成,図4の
状態図参照)の範囲における特性を示すものとしてP=
18.3%のもの(実施例4,6)、同様に21.7重
量%〜28重量%の範囲における特性を示すものとして
P=26.9%のもの(実施例5,7)をプロットして
いる。尚グラフ中の比較例3,4はFe−P合金粉末中
のP含有量が16.5重量%のものを鉄粉表面に部分拡
散付着させたものである。
径寸法変化率(%)及び成形体密度(g/cm3 )の関
係を表すグラフであり、Fe−P合金粉末中のP含有量
が17重量%〜21.7重量%(Fe2 P組成,図4の
状態図参照)の範囲における特性を示すものとしてP=
18.3%のもの(実施例4,6)、同様に21.7重
量%〜28重量%の範囲における特性を示すものとして
P=26.9%のもの(実施例5,7)をプロットして
いる。尚グラフ中の比較例3,4はFe−P合金粉末中
のP含有量が16.5重量%のものを鉄粉表面に部分拡
散付着させたものである。
【0032】本実験3より、Fe−P合金粉末中のP含
有量が17重量%〜21.7重量%(Fe2 P組成)の
ものをP供給源として使用した場合は、焼結温度の変動
による寸法変化率の変化がきわめて小さくなることが分
かる。一方、P含有量が21.7〜28重量%のFe−
P合金粉末を使用した場合には、寸法変化率の成形体密
度依存性が小さくなるとの知見を得た。この現象は図4
に示すFe−P2元系状態図においてFe2 P組成(P
=21.7重量%)で液相線が変曲点を持つ、すなわち
ポテンシャルエネルギーの変化(しきい)があること
が、焼結時の寸法変化挙動に特徴的な差として現れたも
のである。
有量が17重量%〜21.7重量%(Fe2 P組成)の
ものをP供給源として使用した場合は、焼結温度の変動
による寸法変化率の変化がきわめて小さくなることが分
かる。一方、P含有量が21.7〜28重量%のFe−
P合金粉末を使用した場合には、寸法変化率の成形体密
度依存性が小さくなるとの知見を得た。この現象は図4
に示すFe−P2元系状態図においてFe2 P組成(P
=21.7重量%)で液相線が変曲点を持つ、すなわち
ポテンシャルエネルギーの変化(しきい)があること
が、焼結時の寸法変化挙動に特徴的な差として現れたも
のである。
【0033】従って、焼結温度の変化に鈍感な鋼粉を得
るためには、P含有量が17〜21.7重量%のFe−
P合金粉末を使用すれば良く、成形体密度に鈍感な鋼粉
を得るためにはP含有量が21.7〜28重量%のFe
−P合金粉末を使用すれば良い。また2種以上のP含有
量の異なるFe−P合金を組み合わせて使用すること
で、所望の寸法変化挙動に応じたものとすることもでき
る。あるいは成形体部位ごとにP含有量の異なるFe−
P合金を使用した鋼粉を使い、数値制御式プレスを用い
て寸法精度の改善を行なうことや、同一組成材料で寸法
変化率の差を利用した焼結接合を行なうこともできる。
るためには、P含有量が17〜21.7重量%のFe−
P合金粉末を使用すれば良く、成形体密度に鈍感な鋼粉
を得るためにはP含有量が21.7〜28重量%のFe
−P合金粉末を使用すれば良い。また2種以上のP含有
量の異なるFe−P合金を組み合わせて使用すること
で、所望の寸法変化挙動に応じたものとすることもでき
る。あるいは成形体部位ごとにP含有量の異なるFe−
P合金を使用した鋼粉を使い、数値制御式プレスを用い
て寸法精度の改善を行なうことや、同一組成材料で寸法
変化率の差を利用した焼結接合を行なうこともできる。
【0034】Fe−P合金粉末中のP濃度が寸法変化挙
動に影響を及ぼす原因としては、Pの純Fe中への拡
散とそれに伴う液相生成のタイミングの差、図4の状
態図に示されるようにFe2 P組成(21.7重量%
P)で活性化エネルギーが最大となること、またFe
−P合金粉末と純鉄粉の接触点数(Pの分散状態)の差
が考えられ、これは局所に生成する液相量の多少に影響
しているからであると推察される。
動に影響を及ぼす原因としては、Pの純Fe中への拡
散とそれに伴う液相生成のタイミングの差、図4の状
態図に示されるようにFe2 P組成(21.7重量%
P)で活性化エネルギーが最大となること、またFe
−P合金粉末と純鉄粉の接触点数(Pの分散状態)の差
が考えられ、これは局所に生成する液相量の多少に影響
しているからであると推察される。
【0035】〈実験4〉 鋼粉の見掛密度、流動度、金
型損耗について 薄肉・複雑形状部品に供せられる鋼粉には、高い見掛密
度と良好な流れ性(流動度)が必要である。また、焼結
部品の製造においてコストに大きく影響する金型の損耗
が少ないこと、即ち金型攻撃性の少ないことも必要とさ
れる。
型損耗について 薄肉・複雑形状部品に供せられる鋼粉には、高い見掛密
度と良好な流れ性(流動度)が必要である。また、焼結
部品の製造においてコストに大きく影響する金型の損耗
が少ないこと、即ち金型攻撃性の少ないことも必要とさ
れる。
【0036】そこで本実験4ではバインダーを添加して
得た実施例8〜12の鋼粉、及び比較例5〜9のプレミ
ックスの鋼粉(前記従来法による)、比較例10の部分
拡散型の鋼(前記従来法による)についての見掛密度、
流動度、金型損耗を調べた。尚、本発明の実施例8〜1
2の鋼粉を得る方法は、下記表2に示す夫々のP含有量
のFe−P合金粉末を用いて、P分が1.2重量%とな
る様に粉末冶金用純鉄粉に配合し、バインダーのスチレ
ン−ブタジエン系溶液合成ゴムを用いて付着させること
により得た。表2に夫々実施例、比較例の混合粉の粉体
特性の結果を示す。
得た実施例8〜12の鋼粉、及び比較例5〜9のプレミ
ックスの鋼粉(前記従来法による)、比較例10の部分
拡散型の鋼(前記従来法による)についての見掛密度、
流動度、金型損耗を調べた。尚、本発明の実施例8〜1
2の鋼粉を得る方法は、下記表2に示す夫々のP含有量
のFe−P合金粉末を用いて、P分が1.2重量%とな
る様に粉末冶金用純鉄粉に配合し、バインダーのスチレ
ン−ブタジエン系溶液合成ゴムを用いて付着させること
により得た。表2に夫々実施例、比較例の混合粉の粉体
特性の結果を示す。
【0037】
【表2】
【0038】表2から分かる様に、比較例5〜10と異
なり、実施例8〜12では見掛密度、流動度、金型損耗
において良好である。これは、実施例8〜12では硬質
のFe−P合金粉末がバインダーによりコーティングさ
れており、また純鉄粉表面に付着・造粒されているから
であり、従って見掛密度が高く、流動性及び金型損耗が
改善されるのである。
なり、実施例8〜12では見掛密度、流動度、金型損耗
において良好である。これは、実施例8〜12では硬質
のFe−P合金粉末がバインダーによりコーティングさ
れており、また純鉄粉表面に付着・造粒されているから
であり、従って見掛密度が高く、流動性及び金型損耗が
改善されるのである。
【0039】図8は、成形体密度と抜出圧力の関係を示
したグラフであり、金型への負荷を評価する尺度とな
る。図8から分かる様に、本発明の鋼粉では同一成形体
密度を得るのに要する抜出圧力が約30kg/cm2 改
善され、金型損耗の防止に効果的である。
したグラフであり、金型への負荷を評価する尺度とな
る。図8から分かる様に、本発明の鋼粉では同一成形体
密度を得るのに要する抜出圧力が約30kg/cm2 改
善され、金型損耗の防止に効果的である。
【0040】〈実験5〉焼結時の寸法変化率に鋼粉の酸
素量が影響するから、鋼粉中の酸素の経時変化を調べ
た。図9は、製造後日数と酸素増加量の関係を示すグラ
フである。本発明に係る鋼粉(実施例15)は、粉末冶
金用純鉄粉にFe−P合金粉末をP分が1重量%になる
ように添加し、スチレン−ブタジエン系溶液合成ゴムの
バインダーとともに混合する方法により得た。比較例1
2の鋼粉としては、P分1重量%を粉末冶金用純鉄粉表
面に拡散付着された鋼粉とステアリン亜鉛0.75重量
%との混合粉を用いた。図9から分かる様に、発明例1
5の120日後の酸素増加量は、ステアリン酸亜鉛を混
合した比較例12の1/10である。
素量が影響するから、鋼粉中の酸素の経時変化を調べ
た。図9は、製造後日数と酸素増加量の関係を示すグラ
フである。本発明に係る鋼粉(実施例15)は、粉末冶
金用純鉄粉にFe−P合金粉末をP分が1重量%になる
ように添加し、スチレン−ブタジエン系溶液合成ゴムの
バインダーとともに混合する方法により得た。比較例1
2の鋼粉としては、P分1重量%を粉末冶金用純鉄粉表
面に拡散付着された鋼粉とステアリン亜鉛0.75重量
%との混合粉を用いた。図9から分かる様に、発明例1
5の120日後の酸素増加量は、ステアリン酸亜鉛を混
合した比較例12の1/10である。
【0041】本発明に係る鋼粉は易酸化性のFe−P合
金粉末がバインダーによりコーティングされるため、大
気と遮断されて酸素量の経時変化が非常に少なくなり、
発錆を抑えられる。この効果は粉末冶金法で一般的に用
いられるCu、Ni、Mo、Cr、Mn、Siの粉末及
びこれらの元素とFeとの合金粉末の場合にも同様であ
る。
金粉末がバインダーによりコーティングされるため、大
気と遮断されて酸素量の経時変化が非常に少なくなり、
発錆を抑えられる。この効果は粉末冶金法で一般的に用
いられるCu、Ni、Mo、Cr、Mn、Siの粉末及
びこれらの元素とFeとの合金粉末の場合にも同様であ
る。
【0042】〈実験6〉実験6では焼結温度の寸法変化
率に及ぼす影響を検討した。本発明の鋼粉としては、P
含有量が17〜28重量%のFe−P合金粉末(平均粒
径45μm)を、P分を1重量%になるよう粉末冶金用
純鉄粉に配合し、Cu粉末1.5重量%、C粉末0.4
重量%とともに、スチレン−ブタジエン系溶液合成ゴム
のバインダーで粉末冶金用純鉄粉表面に付着させて得
た。比較例の鋼粉としては、Fe−P合金粉末を粉末冶
金用純鉄粉の表面に拡散付着されたものを用いた。尚下
記表3に実施例、比較例についてのFe−P合金粉末の
P含有量、及び焼結温度の条件を示す。
率に及ぼす影響を検討した。本発明の鋼粉としては、P
含有量が17〜28重量%のFe−P合金粉末(平均粒
径45μm)を、P分を1重量%になるよう粉末冶金用
純鉄粉に配合し、Cu粉末1.5重量%、C粉末0.4
重量%とともに、スチレン−ブタジエン系溶液合成ゴム
のバインダーで粉末冶金用純鉄粉表面に付着させて得
た。比較例の鋼粉としては、Fe−P合金粉末を粉末冶
金用純鉄粉の表面に拡散付着されたものを用いた。尚下
記表3に実施例、比較例についてのFe−P合金粉末の
P含有量、及び焼結温度の条件を示す。
【0043】
【表3】
【0044】図10から分かる様に、実施例16〜19
の鋼粉は寸法変化率の密度依存性が比較例13、14に
比べて小さく、P含有量が17〜21.7重量%のFe
−P合金粉末では特に焼結温度の変化に対して鈍感であ
った。
の鋼粉は寸法変化率の密度依存性が比較例13、14に
比べて小さく、P含有量が17〜21.7重量%のFe
−P合金粉末では特に焼結温度の変化に対して鈍感であ
った。
【0045】
【発明の効果】以上の様に本発明に係る粉末冶金用鉄−
燐糸鋼粉は、鋼粉の輸送の際等の偏析を抑制することが
でき、又鋼粉の見掛密度と流動性が改善されて、たとえ
薄肉・複雑形状部品の金型成形においても、P成分等の
偏析のない高密度の圧縮成形体を得ることができ、その
後の焼結工程での寸法収縮が抑えられて寸法精度の高い
焼結製品を与える。更に金型の損耗も抑制される。従っ
て本発明の鋼粉を用いた焼結部品は、寸法精度の確保が
容易で良好な磁気特性や機械的強度を発現できる。
燐糸鋼粉は、鋼粉の輸送の際等の偏析を抑制することが
でき、又鋼粉の見掛密度と流動性が改善されて、たとえ
薄肉・複雑形状部品の金型成形においても、P成分等の
偏析のない高密度の圧縮成形体を得ることができ、その
後の焼結工程での寸法収縮が抑えられて寸法精度の高い
焼結製品を与える。更に金型の損耗も抑制される。従っ
て本発明の鋼粉を用いた焼結部品は、寸法精度の確保が
容易で良好な磁気特性や機械的強度を発現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Fe−P合金粉末中のP濃度と寸法変化率の関
係を示すグラフ。
係を示すグラフ。
【図2】Fe−P合金粉末中のP濃度と圧縮性の関係を
示すグラフ。
示すグラフ。
【図3】Fe−P合金粉末中のP濃度と寸法精度の関係
を示すグラフ。
を示すグラフ。
【図4】Fe−Pの2元状態図。
【図5】Fe−P合金粉末の粒度と寸法精度の関係を示
すグラフ。
すグラフ。
【図6】Fe−P合金粉末の粒度と寸法変化率の関係を
示すグラフ。
示すグラフ。
【図7】Fe−P合金粉末中のP濃度と寸法変化率の関
係を示すグラフ。
係を示すグラフ。
【図8】成形体密度と抜出圧力の関係を示すグラフ。
【図9】混合粉中の酸素の経時変化を示すグラフ。
【図10】Fe−P合金粉中のP濃度と寸法変化率の関
係を示すグラフ。
係を示すグラフ。
Claims (4)
- 【請求項1】 燐含有量が17〜28重量%で平均粒径
が63μm以下の鉄−燐合金粉末を、バインダーによっ
て粉末冶金用鉄粉表面に付着させたものであることを特
徴とする粉末冶金用鉄−燐系鋼粉。 - 【請求項2】 燐含有量が17〜28重量%で平均粒径
63μm以下の鉄−燐合金粉末と、炭素粉末及び/又は
銅粉末とを、バインダーによって粉末冶金用鉄粉表面に
付着させたものであることを特徴とする粉末冶金用鉄−
燐系鋼粉。 - 【請求項3】 燐含有量が17〜28重量%で平均粒径
が63μm以下の鉄−燐合金粉末と、バインダーと、粉
末冶金用鉄粉とを、潤滑材と共に混合して成形し、焼結
することを特徴とする焼結部品の製造方法。 - 【請求項4】 燐含有量が17〜28重量%で平均粒径
が63μm以下の鉄−燐合金粉末と、炭素粉末及び/ま
たは銅粉末と、バインダーと、粉末冶金用鉄粉とを、潤
滑材と共に混合して成形し、焼結することを特徴とする
焼結部品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5350316A JPH07197101A (ja) | 1993-12-29 | 1993-12-29 | 粉末冶金用鉄−燐系鋼粉、及び焼結部品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5350316A JPH07197101A (ja) | 1993-12-29 | 1993-12-29 | 粉末冶金用鉄−燐系鋼粉、及び焼結部品の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07197101A true JPH07197101A (ja) | 1995-08-01 |
Family
ID=18409666
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5350316A Pending JPH07197101A (ja) | 1993-12-29 | 1993-12-29 | 粉末冶金用鉄−燐系鋼粉、及び焼結部品の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07197101A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102649156A (zh) * | 2012-03-09 | 2012-08-29 | 成都邦普合金材料有限公司 | 硬质合金混合料石蜡成型剂的一种加入方法 |
CN102921943A (zh) * | 2012-10-30 | 2013-02-13 | 南通金巨霸机械有限公司 | 粉末冶金机械零件生产工艺 |
CN104550910A (zh) * | 2014-12-25 | 2015-04-29 | 铜陵市经纬流体科技有限公司 | 一种易散热阀门用粉末冶金材料及其制备方法 |
-
1993
- 1993-12-29 JP JP5350316A patent/JPH07197101A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102649156A (zh) * | 2012-03-09 | 2012-08-29 | 成都邦普合金材料有限公司 | 硬质合金混合料石蜡成型剂的一种加入方法 |
CN102921943A (zh) * | 2012-10-30 | 2013-02-13 | 南通金巨霸机械有限公司 | 粉末冶金机械零件生产工艺 |
CN104550910A (zh) * | 2014-12-25 | 2015-04-29 | 铜陵市经纬流体科技有限公司 | 一种易散热阀门用粉末冶金材料及其制备方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5504278B2 (ja) | 拡散合金化された鉄又は鉄基粉末を製造する方法、拡散合金化粉末、該拡散合金化粉末を含む組成物、及び該組成物から製造した成形され、焼結された部品 | |
CA2823267C (en) | Iron based powders for powder injection molding | |
JP2016188432A (ja) | 粉末冶金ワークピースの製造方法及びそのワークピース | |
JP2002146403A (ja) | 粉末冶金用合金鋼粉 | |
JPH05117703A (ja) | 粉末冶金用鉄基粉末組成物およびその製造方法ならびに鉄系焼結材料の製造方法 | |
JP5535576B2 (ja) | 鉄基焼結合金およびその製造方法並びに鉄基焼結合金部材 | |
CN105263653A (zh) | 粉末冶金用合金钢粉以及铁基烧结体的制造方法 | |
JP2002504188A (ja) | 高密度の高炭素焼結金属粉末鋼部品の製造法 | |
JPH10504353A (ja) | クロム、モリブデンおよびマンガンを含む鉄基粉末 | |
JP4371003B2 (ja) | 粉末冶金用合金鋼粉 | |
JPH07197101A (ja) | 粉末冶金用鉄−燐系鋼粉、及び焼結部品の製造方法 | |
JP4060092B2 (ja) | 粉末冶金用合金鋼粉およびその焼結体 | |
CN1777485A (zh) | 钴基金属粉末及制造其零件的方法 | |
JPWO2019111834A1 (ja) | 部分拡散合金鋼粉 | |
JP2007169736A (ja) | 粉末冶金用合金鋼粉 | |
JP4715358B2 (ja) | 粉末冶金用合金鋼粉 | |
KR20070112875A (ko) | Fe계 소결합금 | |
JP4770667B2 (ja) | 温間金型潤滑成形用鉄基粉末混合物 | |
KR20050059285A (ko) | 고압 성형에 의한 철계 부품의 제조 방법 | |
JP2007100115A (ja) | 粉末冶金用合金鋼粉 | |
JP2019151910A (ja) | 複合焼結部材の製造方法及び複合焼結部材 | |
JP3694968B2 (ja) | 粉末冶金用混合粉 | |
JP4158015B2 (ja) | 焼結体の製造方法及び焼結体 | |
JP2002289418A (ja) | 高密度焼結体用造粒粉末、それを用いた焼結体 | |
JPS5950154A (ja) | 高密度鉄系焼結部材の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20030520 |