JPH07188908A - 金属元素の真空蒸発方法 - Google Patents

金属元素の真空蒸発方法

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JPH07188908A
JPH07188908A JP33172793A JP33172793A JPH07188908A JP H07188908 A JPH07188908 A JP H07188908A JP 33172793 A JP33172793 A JP 33172793A JP 33172793 A JP33172793 A JP 33172793A JP H07188908 A JPH07188908 A JP H07188908A
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plating
molten
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JP33172793A
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Masatoshi Iwai
正敏 岩井
Jiyunji Kawafuku
純司 川福
Koji Irie
広司 入江
Haruhiro Ayabe
東太 綾部
Atsushi Kato
淳 加藤
Kuniyasu Araga
邦康 荒賀
Makoto Terada
誠 寺田
Atsushi Kihara
敦史 木原
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 Al,Ti,Cr等の金属元素を蒸発させる
に当たり、黒鉛系蒸発槽と溶融金属浴との反応を低減せ
しめることによって、蒸発槽の耐侵食性を飛躍的に改善
し、蒸発槽の耐久性を可及的に延長して交換頻度を少な
くし、且つ金属元素の蒸発速度を高めて連続生産性の向
上を図ることのできる真空蒸発方法を提供する。 【構成】 溶融金属浴と直接接触する部分を黒鉛を主成
分とする物質で構成した蒸発槽を用い、真空または希薄
ガス雰囲気下で、蒸発槽中の金属元素を加熱蒸発するに
当たり、前記蒸発槽内に、ZrおよびMoの含有量が5
〜50重量%である溶融Al浴を形成すると共に、該溶
融Al浴の温度を2000℃以下とし、且つAlを加熱
蒸発する手段として、電子線加熱方式を用いて溶融Al
合金中のAlを蒸発させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、被処理材表面の全面ま
たは一部に真空蒸着めっき処理を行なう際に、蒸着めっ
き層を構成する金属元素を含む溶融浴から該金属元素を
効果的に蒸発するための有用な方法に関するものであ
り、特に前記金属元素の十分な蒸発速度を確保し、且つ
従来の蒸発槽の耐久性を飛躍的に向上させることに成功
した真空蒸発方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】真空または希薄ガス雰囲気下で、蒸発原
料を加熱蒸発させて、被処理材表面に蒸着めっき層を形
成する所謂真空蒸着めっき法が、電子部品、各種フィル
ム製品、表面処理鋼板等の幅広い分野で適用・実施され
ている。こうした真空蒸着めっき法において、蒸発原料
を加熱蒸発するために加熱源としては、抵抗加熱法、高
周波加熱法、電子線加熱法、イオンビーム加熱法、レー
ザービーム加熱法、アーク放電法等があり、蒸発原料の
種類、成膜速度、成膜方法の相違によって適宜最適な加
熱源が採用されている。これらの加熱源のうち、例えば
Alを加熱蒸発する加熱源としては、高周波加熱法と電
子線加熱法が一般的である。
【0003】上記高周波加熱法は、蒸発層の外側に配置
されたコイルに高周波電流を流して、蒸発原料を加熱蒸
発させる方法である。例えばAlの蒸気圧は、一般的に
金属元素の中で大きい部類に属するので、該加熱方式で
も十分な蒸発速度(成膜速度)が得ることが可能である
が、間接加熱方式であるので実際に蒸発させたいAl浴
の最表面温度を高温に保持するためには、蒸発槽内のA
l浴全体を高温に加熱する必要があり、加熱源のエネル
ギー効率は悪いという欠点がある。
【0004】一方、電子線加熱方式は、電子銃から発生
した電子線を、蒸発原料としての溶融金属浴表面に直接
照射・走査してこれを加熱・蒸発させる方法であり、電
子線は高エネルギー密度を有しているので、蒸発原料表
面を直接照射することによって、実際に蒸発が生じる溶
融金属浴の最表面温度を最も高温にすることが可能であ
り、溶融金属浴表面の加熱・蒸発効率を高め、金属元素
の蒸発速度を大きくすることが容易に達成できる。この
様に、電子線加熱方式による真空蒸着めっき法は、蒸発
速度の増大や電子線の操作性が容易である等の多くの利
点があるので、AlやTi等のめっき層を施した各種蒸
着めっき製品の工業的生産に最も適した方法として汎用
されている。
【0005】電子線加熱方式による真空蒸着めっき法に
よって、AlやTi等の金属元素を各種被処理材に蒸着
させて、各種めっき処理を実施する場合、蒸発原料であ
るAlやTiの溶融金属浴を形成するための蒸発槽が必
要になる。現在、工業的に汎用されている蒸発槽として
は、セラミックス系蒸発槽、水冷式銅製蒸発槽、黒鉛系
蒸発槽等が代表的な蒸発槽として知られており、蒸発原
料の種類、加熱蒸発方法、および得られる蒸発めっき製
品の用途や仕様等によって適宜使い分けられているが、
これらの蒸発槽には、それぞれ短所および長所がある。
【0006】水冷式銅製蒸発槽は、蒸発原料であるAl
やTiとの反応が皆無であるので、蒸発槽の劣化がな
く、半恒久的に使用可能である。また上記反応がないの
で、高純度の蒸発原料さえ用いれば、高純度の蒸着Al
めっき層や蒸着Tiめっき層を形成することができ、特
に用途によっては、得られるめっき層の極微量の不純物
がめっき層の特性に影響を与える場合があるので、この
様な場合には水冷式銅製蒸発槽が使用されることにな
る。しかしながら、水冷式銅製蒸発槽は水冷方式を採用
しているので、高エネルギー加熱源である電子線を蒸発
原料である溶融金属浴の表面に照射しても、その加熱エ
ネルギーの大半が蒸発槽壁面を通じて冷却水によって奪
われてしまい、実際に加熱・蒸発に利用されるエネルギ
ーの効率は極めて悪いという欠点がある。
【0007】セラミックス系の蒸発槽では、一般的に使
用可能な蒸発原料の種類に若干の制限を受け、且つ蒸発
原料との反応を皆無にすることは実質的に不可能である
等の点では、耐久性の面で前記水冷式銅製蒸発槽に比べ
ても欠点がある。しかしながらこの蒸発槽は、優れた断
熱効果によって、電子線照射により加熱された蒸発原料
の温度を高温に維持することが容易であり、電子線から
のエネルギーが蒸発原料の加熱・蒸発に利用される効率
が高く、蒸発速度(成膜速度)の増大による高付着量め
っき処理や高速めっき処理が可能となって、生産性の点
で非常に有利な蒸発槽であるといえる。従って、例えば
Alを蒸発原料とする場合においては、各種セラミック
ス系蒸発槽が使用されている。またアルミナ系セラミッ
クス製蒸発槽を用いて、電子線加熱によって溶融Alめ
っき浴からAlを蒸発させる方法では、容易にAl浴表
面温度を高温に維持でき、成膜速度の増大、即ち優れた
生産性を達成できる。しかしながら、アルミナ等のセラ
ミックス系蒸発槽は、高温Al溶融浴との反応による割
れ・亀裂および侵食等の損傷が生じ、蒸発槽自体に寿命
がある。
【0008】割れ・亀裂によるセラミックス系蒸発槽の
損傷は、蒸発原料であるAlの加熱昇温時、および真空
中での冷却時の過程で一般に生じ、延性の乏しいセラミ
ックス系蒸発槽の熱膨張−収縮時に与えられる歪(応
力)に起因するものである。従って、頻繁な加熱−冷却
サイクルが繰り返されると、上記応力による蒸発槽の寿
命は非常に短いものとなる。
【0009】侵食によるセラミックス系蒸発槽の損傷
は、高温Al浴との反応に起因するものである。電子線
照射により蒸発槽内の溶融Al浴表面温度は、1500
℃以上に容易に達し、Al浴が蒸発槽で対流することに
より、高温のAl浴が蒸発槽の内壁面と接触し、アルミ
ナ等の酸化物系セラミックスとAl浴との間で反応を生
じて、蒸発槽が次第に減肉していく。特に連続的に蒸着
めっき処理を行なう場合には、蒸発槽が長期に亙って高
温定常状態に維持されるために、前述した蒸発槽の加熱
−冷却サイクルに起因する割れや亀裂による損傷は生じ
にくいが、高温Al浴による侵食の進行は避け難くな
る。従って、Al蒸発用の蒸発槽材質としてアルミナ等
のセラミックス系材質を使用することは、蒸発槽の耐久
性の点で未だ十分解決されていないのが実情である。
【0010】またアルミナ,カルシヤ,イットリア,マ
グネシア等のセラミックス系蒸発槽では、高温Ti溶融
浴との酸化還元反応が生じ、蒸発槽の侵食が激しく生じ
て、蒸発槽の耐久性に問題が生じる。更に、高温Ti溶
融浴中に蒸発槽材質が不純物として混入し、浴粘度の上
昇によるスプラッシュ(浴の飛散現象)の多発や、得ら
れる蒸着Tiめっき層中への不純物混入による性能劣化
が生じるという欠点がある。従って、Tiを蒸発原料と
する場合の蒸発槽としてセラミックス系蒸発槽を用いる
ことは、蒸発槽の耐久性および得られるめっき製品の性
能の両面から、実質的に適用不可能であると言える。ま
た、W,Mo,Ta等の高融点金属からなる蒸発槽につ
いては、高温Ti浴を形成すると、次第にTi浴と反応
して浴中に高融点金属が溶解され、蒸発槽の侵食が生じ
易いという問題もある。
【0011】一方、黒鉛系材料からなる蒸発槽は、従来
からAlおよびAl合金の溶解容器として汎用されてお
り、特に高周波溶解炉によるAl溶解用容器として利用
されている。一般に、Al溶解炉の場合には、Al浴温
度が700℃程度であり、黒鉛製容器とAl浴との反応
も無視し得る。そこで黒鉛系材料をAl浴用蒸発槽に適
用する試みが最近なされている。しかしながら、黒鉛系
材料をAlの蒸発槽として用いる場合には、十分な蒸発
速度を得る為に、浴温度を融点よりも遥かに高い温度ま
でに昇温させる必要があり、具体的にはAl浴温度は1
300℃を超える。この様な高温下では、超流動現象に
よってAl浴が蒸発槽材質の黒鉛に存在する気孔に容易
に浸透し、黒鉛と反応してAlカーバイト(炭化物)を
形成する。該炭化物の成長速度は大きく、これによって
黒鉛系蒸発槽は侵食および割れ・亀裂を生じ、最終的に
は蒸発槽の破壊に至ることになる。特にAl浴温度が1
500℃以上の高温条件下では、この反応速度は非常に
大きく蒸発槽の寿命は極めて短いものとなる。
【0012】黒鉛系蒸発槽は、水冷式銅製蒸発槽を使用
した場合に比べ、遥かに高い蒸発速度でTiを蒸発させ
ることが可能であるので、Tiを蒸発させる場合の蒸発
槽として有用であると期待できる。また形成するTi浴
との反応によって、黒鉛系蒸発槽内面とTi浴との接す
る界面にTiC層が形成され、該TiC層がTi浴の黒
鉛中への拡散障壁バリアー層となって、Ti浴と黒鉛系
蒸発槽との急激な反応や侵食を抑制する効果がある。
【0013】しかしながら、TiはAl等に比べてもと
もと蒸気圧が小さい金属であるため、成膜速度が低くな
り、生産性は劣る。そのためにTiの蒸発速度を大きく
して、Tiめっきの成膜速度を高め、生産性向上を図る
為には、必然的に各種加熱源を用いて、形成されたTi
溶融浴の表面温度をできるだけ高温にしてやらなければ
ならないが、これによって溶融Ti浴と黒鉛系蒸発槽と
の反応、即ち両者界面でのTiCの生成速度はますます
大きくなり、結果として黒鉛系蒸発槽の侵食および加熱
昇温−冷却時の加熱膨張−収縮による割れや亀裂が進行
し、蒸発槽の寿命が極端に短くなるという問題がある。
一般的に連続生産の場合は蒸着めっき中において蒸発槽
が高温定常状態に維持される時間が長いので、上述の加
熱、冷却過程における熱膨張・収縮による割れや亀裂に
よる損傷は生じにくいが、侵食についてはTi浴温度が
高温であるほど、その速度は大きくなり、短時間で蒸発
槽の破壊が生じてしまう。
【0014】蒸発槽が破壊されてAl浴やTi浴が外部
に漏洩すると、これらの浴は非常に高温であるので、真
空蒸着めっき処理室に具備された各種設備、機器、架
台、フランジ等を損傷する危険性が高く、連続生産を停
止しなければならないばかりか、その補修のために多大
な時間と費用を要することになる。従って、破壊される
前に蒸発槽をを予め交換する必要があるが、黒鉛系蒸発
槽は一般的に工業的な大型サイズになる程価格も高額に
なるので、頻繁な交換は製造上のコストアップに繋がる
ばかりでなく、交換のために一旦真空蒸着めっき処理室
の真空状態を破壊して大気圧まで戻し、新しい蒸発槽を
セットしてから再び真空排気を行った後に、蒸発原料の
加熱溶解を再開するので、連続生産を頻繁に中断させな
ければならず、生産効率の点で非常に不利である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】これまで黒鉛系蒸発槽
と溶融金属浴の反応を抑制し、蒸発槽の耐久性を向上さ
せるための手段も様々提案されている。例えば、特開平
4−124260号や特開平4−272170号等に
は、黒鉛材質に存在する気孔径を小さくして、Al浴の
浸透を抑制しようとする技術が提案されている。しかし
ながら、1500℃程度の高温Al浴下では、単に気孔
径を小さくするだけでは、基本的にAl浴界面での炭化
物の生成反応を抑制することはできず、抜本的な解決に
はならない。また特開昭61−76663号には、上記
気孔にアルミナや炭素等を充填した封孔処理材が提案さ
れているが、封孔処理層が薄いので長期間の使用でその
効果が消失してしまい、高温Al浴では大きな改善には
なり得ない。更に、特開平3−249172号や特開平
3−249173号では、黒鉛系蒸発槽の内壁面に、T
iCやZrC等の炭化物を予め付与しておき、Al浴と
の反応を抑制するAl蒸発用るつぼ(蒸発槽)が提案さ
れている。しかしながら、ピンホールやマイクロクラッ
ク等の欠陥のない上記炭化物を蒸発槽内壁面の全面に亙
って均一な膜厚で付与することは非常に困難であり、特
に工業的に使用する大型蒸発槽では、このような皮膜処
理は製造面で一層の技術的困難を伴う。またこの様な皮
膜による効果を向上させるべく、皮膜厚さを増大させる
と、蒸発槽本体の黒鉛との熱膨張率の差によって、皮膜
が剥離する場合があり、期待する程の効果は得られな
い。また特開平1−275749号や特開平3−153
862号には、蒸発槽内のAl浴中にTiやZr等を所
定量含有させたAl合金浴を形成し、浴中に添加したT
iやZrと黒鉛系蒸発槽との優先的な反応で蒸発槽内壁
面に形成されるTiやZr等の炭化物皮膜の効果によっ
て、Al浴と黒鉛の反応を抑制しようとする技術が提案
されている。しかしながら、Al合金浴中のTiやZr
等の含有量が高いと、浴表面での実質的はAlの有効蒸
発面積も低下し、浴温を更に上昇させるか、蒸発槽を更
に大きくして蒸発総面積を増大させないと所望の蒸発速
度が達成されないという欠点がある。またAl合金浴温
度が1500℃以上になると、炭化物層の成長速度も増
大してしまい、蒸発槽の侵食も無視できなくなってしま
う。
【0016】上述した様に、AlやTiの真空蒸着方法
において、黒鉛系蒸発槽を用いることは、一般的に多用
されている水冷式銅製蒸発槽と比較して大きな成膜速度
を得ることができ、生産性に優れるという有利な面を有
している反面、蒸発槽の耐用時間には限界があり、且つ
蒸発槽が破壊すれば他の装置や設備に多大な損傷を与え
るという非常に不利な面をもっている。
【0017】ところで昇華性金属材料であるCrを金属
板材や合成樹脂フィルム等の被処理材に蒸着させる場
合、Crが昇華性であるので電子線で加熱しても蒸発槽
内で溶融浴を形成しないことが知られている。即ち、固
体Cr表面に電子線を照射すると、加熱された部分のみ
が直接蒸発するのである。このためCrの表面形状は経
時的に変化し、この形状の変化に伴って蒸気流分布に偏
りが生じるため、被処理材の長手方向や幅方向に対して
均一なめっき付着量を得ることが困難である。また表面
の経時変化に伴い、電子線の入射角度も変化することか
ら、加熱効率に変化を生じ、めっき付着量が安定しな
い。そこで上記のCr蒸発量を安定化させるために、合
金浴からのCr等の昇華性金属の選択的蒸発法が提案さ
れている(例えば、特開昭62−20865号)。この
技術は、低蒸気圧金属をCrと混合し、溶融化すること
で浴表面からCrのみを蒸発させようとする試みであ
る。この様に溶融浴を形成せしめて、液相状態に維持す
ることで、蒸発面が常に平坦に保たれ、電子線の加熱効
率が経時変化せず、長期間に亙り安定してCrを蒸発さ
せることが可能である。またこのときCrと混合する金
属としては、低蒸気圧金属を用いるのは、Crのみを選
択的に蒸発させるためである。低蒸気圧金属の中でも特
にTaやZrを用いたCr合金浴は、共晶点を示す温度
がCrの融点よりも低温であり、加熱効率の面からも最
も安定化蒸発に適しているとされている。
【0018】しかしながら、Zr−Cr合金浴を形成さ
せる場合、Zrは非常に活性な金属であるため、該合金
浴を収容するための蒸発槽の耐久性が問題となる。この
様な活性金属または合金の溶解・蒸発には、一般的に水
冷銅蒸発槽が用いられている。この水冷銅蒸発槽を該合
金浴に適用した場合、該蒸発槽の侵食は全く見られない
が、溶解・蒸発に必要な加熱エネルギーの大半を冷却水
に奪われ、上述した如くエネルギー効率が非常に低く生
産性に劣るという欠点がある。
【0019】そこで、本発明者らは該合金浴を収容する
蒸発槽として黒鉛を主成分とする物質を使用し、浴組成
および浴温度を調整することで、蒸発槽の長寿命化を図
る方法を提案している(特願平4−270416号)。
この技術は、水冷式銅製蒸発槽を使用した場合よりも、
Crの蒸発速度を大きくすることが可能で、且つ蒸発槽
の寿命を可及的に延ばして蒸発槽の交換頻度を少なくす
ることができ、蒸着めっき製品のコスト低減に優れた結
果をもたらした。しかしながら、合金浴中のCrの組成
を50%以下としなければ蒸発槽の耐久性改善効果は得
られなっかたため、全浴表面積に占めるCrの割合が減
少することにより、固体Crの状態から蒸発させる場合
に比較して、Crの蒸発速度が小さいという欠点があっ
た。即ち、生産性向上のためCrの蒸発速度を大きくす
るためには、浴温度を上昇することが必要であるが、浴
温度を上昇させると黒鉛系蒸発槽と合金浴の界面で炭化
物の生成反応が活発に起こり、短時間で蒸発槽の破壊が
生じてしまい、前述した様な不都合を生じる。
【0020】以上の様に、真空蒸着めっきにおけるCr
の蒸発方法においても、従来の黒鉛系蒸発槽を用いてZ
r−Cr合金浴からCrを選択蒸発せしめる方法では、
蒸発速度を大きくする為に合金浴温度を上昇させると、
蒸発槽の耐久性が著しく低下し、且つ蒸発槽の破壊によ
る他の装置、設備に与える損傷が大きいという問題を有
している。
【0021】本発明は、こうした状況の下になされたも
のであって、その目的は、真空中でAl,Ti,Cr等
の金属元素を蒸発させるに当たり、黒鉛系蒸発槽と溶融
金属浴との反応を低減せしめることによって蒸発槽の耐
侵食性を飛躍的に改善し、蒸発槽の耐久性を可及的に延
長して交換頻度を少なくし、且つ金属元素の蒸発速度を
高めて連続生産性の向上を図ることのできる真空蒸発方
法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成した本発
明とは、溶融金属浴と直接接触する部分を黒鉛を主成分
とする物質で構成した蒸発槽を用い、真空または希薄ガ
ス雰囲気下で、蒸発槽中の金属元素を加熱蒸発するに当
たり、前記蒸発槽内に、ZrおよびMoの含有量が合計
で5〜50重量%である溶融Al合金浴を形成すると共
に、該溶融Al合金浴の温度を2000℃以下とし、且
つ加熱蒸発する手段として、電子線加熱方式を用いて溶
融Al合金浴中のAlを蒸発させる点に要旨を有する金
属元素の真空蒸発方法である。
【0023】また本発明は、蒸発槽内に、Zrおよび/
またはMoの含有量が5〜30重量%である溶融Ti合
金浴を形成すると共に、該溶融Ti合金浴の温度を20
00℃以下とし、且つ加熱蒸発する手段として、電子線
加熱方式を用いて溶融Ti合金浴中のTiを蒸発する点
にも要旨を有する金属元素の真空蒸発方法である。更に
本発明は、蒸発槽内に、ZrおよびMoの含有量が合計
で5〜90重量%である溶融Cr合金浴を形成すると共
に、該溶融Cr合金浴の温度を2000℃以下とし、且
つ加熱蒸発する手段として、電子線加熱方式を用いて溶
融Cr合金浴中のCrを加熱蒸発する点にも要旨を有す
る金属元素の真空蒸発方法である。
【0024】
【作用】本発明が完成された経緯を説明しつつ、本発明
の作用について説明する。まず本発明者らは、蒸発槽と
して黒鉛系蒸発槽を用い、加熱蒸発源として電子線加熱
方式を採用して、Al浴表面温度を測定しながらAlの
真空蒸発を行なった。その結果、Al蒸発速度を増大さ
せるべく溶融Al浴表面に照射する電子線の出力を増加
させて、浴表面温度を1500℃以上に上昇させると、
溶融Al浴と黒鉛系蒸発槽との炭化物形成反応が非常に
顕著になって蒸発槽の侵食および割れが生じて、蒸発槽
の寿命が極端に短くなることがわかった。また本発明者
らは、使用後の蒸発槽を解体し、凝固したAl浴と蒸発
槽内壁面との界面を調査したところ、Al浴の最表面近
傍と蒸発槽内壁面との界面では、特に侵食が大きく、反
応層(Al43 炭化物層)も大きく成長していること
がわかった。
【0025】これは、蒸発原料の加熱法として、浴表面
に電子線を直接照射する加熱方式を採用しているため
に、Al浴の深さ方向に温度分布が生じ、浴最表面温度
が最も高温となるため、蒸発槽である黒鉛との反応が、
浴表面近傍との界面で最も進行しやすいことに起因する
ものと考えられた。特にこの様な浴表面近傍でのAl浴
と黒鉛との反応は、Alの蒸発速度を増大させて生産性
を向上させるために、電線の照射出力を増大させ、浴表
面の温度を1600℃ないし1700℃を超える様な高
温にした場合には、いっそう顕著となる。
【0026】そこで本発明者らは、黒鉛系蒸発槽と高温
溶融Al浴、特に浴表面近傍での反応を抑制して侵食速
度を低減し、且つ工業的に十分高いAlの蒸発速度を得
ることができないものかと、更に検討を重ねた。その結
果、溶融Al浴中に、ZrとMoの両者を所定量含有さ
せてAl−Zr−Mo系合金とし、且つ該合金浴の浴温
度の上限値を規定することにより、蒸発槽の耐久性を格
段に向上させると共に、工業的に問題の無い十分なAl
の蒸発速度を同時に満足することが可能となることを見
出した。
【0027】溶融Al合金浴中に添加する元素として
は、ZrとMoの両者を複合添加することが必要であ
る。溶融Al合金浴中に添加したZrおよびMoは、黒
鉛系蒸発槽の内壁面と接する界面で、ZrとMoを含有
する混合炭化物層または複合炭化物層をAl43 層よ
りも優先的に形成させる。これは高温下におけるZrお
よびMoの炭化物の標準生成自由エネルギーがAlの炭
化物よりも小さいことに起因するものと推定される。そ
して形成された該炭化物層は、それ自身高温下で非常に
安定な炭化物であるために、該混合炭化物層または複合
炭化物層が、溶融Alと還元反応を生じて新たにAl4
3 に変化しないため、Al43 層の成長を防止する
働きをするものと考えられる。また該炭化物層は黒鉛系
蒸発槽の内壁面に非常に緻密に形成されており、且つ黒
鉛材質に存在する気孔内に形成されれば封孔作用を有
し、その結果として、溶融Alの黒鉛内部への拡散障壁
となるバリアー層になるものと考えられる。Al浴温度
が比較的低温域(約1500〜1600℃以下)では、
ZrとMoによって形成される該混合炭化物層または複
合炭化物層は、Zr含有量が比較的高い混合炭化物層ま
たは複合炭化物層が形成されるが、この炭化物層が安定
なバリアー層となって、蒸発槽の侵食を抑制する。更
に、Alの蒸発速度を増大させるために、浴温度をそれ
以上に高温にした場合には、Mo含有量が比較的高い混
合炭化物層または複合炭化物層が形成され、高温域にお
いても安定で緻密なバリアー層となって、蒸発槽の侵食
を抑制すると考えられる。尚、溶融Al合金浴中に添加
されたZrとMoの両者は、Alに比べて高温度におけ
る蒸気圧が極端に小さいために、スプラッシュ(浴の飛
散現象)が生じない限り、得られる蒸着めっき皮膜中に
不純物として混入することはなく、所望のめっき性能、
品質に何等悪影響を及ぼすものではない。
【0028】従って、溶融Al合金浴の温度域に関係な
く、溶融Al浴中にZrとMoを共存させることによ
り、ZrとMoからなる緻密な混合炭化物層または複合
炭化物層は、溶融Al合金浴と黒鉛の反応を抑制するた
めの有効なバリアー層として働くが、この様な効果はZ
r単独またはMo単独でAl浴中に添加しても得られる
ものではない。また該炭化物層は、使用時間、使用回数
と共に次第に厚く成長していくが、Al43 層の様に
高温で急激に厚みが増大する現象は認められず、該炭化
物層の生成による蒸発槽の急激な侵食や割れ等の損傷を
生じることはない。
【0029】この様に溶融Al合金浴中に共存するZr
とMoの役割は、黒鉛系蒸発槽の内面に安定な且つ緻密
なZr−Mo系混合炭化物または複合炭化物皮膜を形成
し、該炭化物皮膜が、バリアー層となってAl43
の成長を防止するとともに、該皮膜自身の成長速度もA
43 層よりも小さいために、結果として蒸発槽のの
侵食、割れを抑制することが可能となったものと考えら
れる。この様な優れた効果は、ZrとMoが溶融Al浴
中に共存する場合にのみ顕著に発揮され、Zr単独また
はMo単独添加したAl合金浴に比べて、蒸発槽の耐久
性改善効果が更に大きくなる。
【0030】上記で示したZrとMoの複合添加効果を
十分に発揮せしめるためには、溶融Al合金浴中にZr
とMoの合計で5重量%以上添加することが必要であ
る。この含有量が5重量%未満の場合には、黒鉛系蒸発
槽との界面に欠陥の無い緻密なZr−Mo系混合炭化物
層または複合炭化物層が形成されにくくなり、溶融Al
浴の黒鉛へ浸透に対して拡散障壁のためのバリアー層と
しての十分な効果が得られない。即ち、ZrとMoの複
合添加によるAl43 層の成長抑制効果が顕著に認め
られず、黒鉛系蒸発槽の耐久性改善効果が不十分とな
る。
【0031】溶解Al合金浴中のZrとMoの合計含有
量を順次増大させていくと、バリアー層による蒸発槽の
耐久性改善効果はより顕著に認められる様になるもの
の、必要以上の含有量は却って以下に示す不都合が生じ
る。まずZrとMoの合計含有量を増大させていくと、
Al合金浴の融点が上昇し、場合によっては、電子線が
直接照射されない表面部分では、未溶解のまま凝固域と
して残存する。凝固域が存在した状態での溶融浴の浴組
成は非常に不安定なものとなり、一定出力の電子線を照
射した場合でも、Alの蒸発速度、即ち成膜速度が不安
定となり、経時的変動が大きくなって、得られる蒸着め
っき製品の品質のばらつきを生じることになる。また凝
固域は、一般的に蒸発槽内壁面近傍で生じるため、蒸発
槽と溶融浴との反応という観点からみれば、却って蒸発
槽の侵食が生じずに有利であるとも考えられるが、連続
生産の場合には、合金浴組成が変動しないように、溶融
浴中に蒸発したAl量に相当するAl原料を、Alワイ
ヤー等で連続的に補給してやることが必要で、そのため
には蒸発槽内で凝固域が存在すると、Alワイヤー等の
補給原料が浴中にうまく供給されずに、凝固域の上面に
堆積されてしまったりして、安定に供給することができ
なくなる。更に、ZrとMoの合計含有量を増大させて
いくと、Al合金浴中のAlの比率が自ずと減少し、そ
の結果としてAl合金浴の全浴表面積に占めるAlの有
効蒸発面積の割合が減少することになるために、Alの
蒸発量が実質的に減少することになる。そのために、合
金浴表面温度が一定でも、ZrやMoの添加量を増大さ
せることにより、Alの蒸発速度、即ち成膜速度は次第
に低下することになり、本来の目的である水冷式銅製蒸
発槽以外の蒸発槽を用いたAl蒸発速度の増大による生
産性の向上が達成できなくなる。従って、Al合金浴中
への必要以上のZrとMoの複合添加は、新たな弊害を
生じるため好ましくないという観点から、両添加元素の
Al合金浴中への合計含有量の上限は50重量%にすべ
きである。
【0032】電子線加熱方式により得られる溶融Al合
金浴温度については、2000℃以下にすべきである。
Alの蒸発速度は、Al合金浴の表面温度の上昇と共に
増大するので、蒸発速度を大きくして生産性を向上させ
るためには、浴表面温度は高いほど好ましいと考えられ
るが、浴表面温度を高くするために、照射する電子線出
力を増大させ、高エネルギー密度で浴表面を照射する
と、電子線照射部の浴表面からスプラッシュが生じて、
該スプラッシュ粒が被処理材表面に付着すると、得られ
るめっき製品の外観不良の原因となったり、該スプラッ
シュ粒中に含まれるZrやMoが、めっき層中に微量混
入して、用途によっては特定の性能を損なう場合も出て
くる。尚Al浴中に添加されたZrおよびMoによっ
て、実質のAlの蒸発表面積が低下し、浴温度が同一に
した純Al浴に比べて、蒸発速度は低下する。この現象
は、両元素の浴中への添加量の増大と共に顕著となる。
しかしながら、浴表面積、電子線の照射面積を適宜考慮
すれば、浴中への両元素の添加量が50%近くになって
も、2000℃以下の浴温度で、工業的に十分なAlの
蒸発速度が得らるので、一般的には2000℃を超える
様な高温の浴温度にする必要は全くないと考えられる。
更に、2000℃を超える浴温度では、Al浴中のZr
およびMoと黒鉛系蒸発槽との反応速度も増大する傾向
にあり、Zr−Mo系混合炭化物層または複合炭化物層
の成長速度が増大して蒸発槽の耐久性が低下する場合も
ある。
【0033】従って、本発明で規定するAl合金浴の浴
温度を、使用するAl−Zr−Mo系合金浴組成によっ
て定まる融点によりも高温にして均一な合金浴を蒸発槽
内で形成すべきであることは言うまでもなく、且つZr
とMoの添加量の増大により減少するAlの蒸発速度を
補うために浴温度を更に高めてやることは望ましいが、
その上限値としては、2000℃以下に管理すべきであ
る。
【0034】次に本発明者は、溶融Ti浴を形成するた
めの蒸発槽として、水冷式銅製蒸発槽、酸化物系セラミ
ックス製蒸発槽、黒鉛系蒸発槽をそれぞれ検討した。こ
のとき加熱蒸発源として電子線加熱法を用いた。その結
果、前述した様に、水冷式銅製蒸発槽を用いた場合に
は、溶融Ti浴を形成するものの、電子線による加熱蒸
発効率は非常に劣悪であり、後述する酸化物系セラミッ
ク製蒸発槽を用いた場合のTiの蒸発速度(成膜速度)
と比較すると、約1/3〜1/10しか得られず、生産
性に劣る。但し、水冷式銅製蒸発槽の損傷は全く認めら
れなかった。
【0035】酸化物系セラミック製蒸発槽については、
まず具体的な酸化物の種類の選定を検討した。即ち、溶
融Ti浴によって還元されにくいと考えられる安定な酸
化物の選定を目的として、各種酸化物の標準生成自由エ
ネルギーを参考に、Tiの酸化物よりも該自由エネルギ
ーの小さい酸化物として、アルミナ(Al23 )、カ
ルシア(CaO)、イットリア(Y23 )の3種類を
選定し、おのおのの蒸発槽にて溶融Ti浴を形成せしめ
た。
【0036】まずアルミナ製蒸発槽については、高温溶
融Ti浴との反応が予想以上に大きく、アルミナ内部へ
のTi浴の浸透による蒸発槽の侵食、割れおよび溶融T
i浴の酸化が早期に発生し、適用困難であることが判明
した。またカルシア製蒸発槽については、上記アミルナ
製蒸発槽の際に認められた急激な蒸発槽の溶融Ti浴に
よる損傷は認められず、侵食速度は比較的小さかった。
しかし、原因は不明であるが溶融Ti浴表面からのスプ
ラッシュが頻繁に生じ、得られためっき層表面にスプラ
ッシュ粒が付着して製品不良が生じた。またTi浴の超
流動現象が生じて、蒸発槽の外へ溶融Ti浴が流出する
現象が生じた。更に、溶融Ti浴中へのカルシウムの溶
け込み量は少なかったが、得られためっき層中にはカル
シルムが不純物として多量に含有されてしまい、所望の
性能が得られないという問題が生じた。
【0037】以上の様に、Tiの蒸発速度(成膜速度)
は、水冷式銅製蒸発槽に比べてかなり増加するものの、
カルシア製蒸発槽は、スプラッシュ発生、Ti浴流出、
成膜中へのカルシウム混入等の製造面および性能面での
不都合が生じるため、実質適用不可能であることが判明
した。
【0038】一方イットリア製蒸発槽については、溶融
Ti浴による侵食は軽微であったが、加熱−冷却サイク
ルによる割れが生じ易く、耐スポーリング性が劣る結果
となった。そのため、気孔率を大きくしたイットリア製
蒸発槽を再度作製し、溶融Ti浴を形成させたところ、
耐スポーリング性は改善されたものの、Ti浴による侵
食速度の増大が認められ、結果としてTi浴中に%オー
ダーのイットリウムと酸素が混入され、浴粘性が上昇し
た。
【0039】イットリア製蒸発槽によるTiの蒸発速度
は、水冷式銅製蒸発槽に比べてはるかに大きく、その結
果として成膜速度の改善が認められるものの、上述の様
なTi浴中へのイットリウムおよび酸素の混入により、
Tiの蒸発速度は変動し易くなると共に、浴中のイット
リウムがTiと共に蒸発してめっき層中に不純物として
混入する危険性が高い。従って、イットリア製蒸発槽も
溶融Ti浴用蒸発槽としては、問題が残り適用には更な
る改善が必要であるとの結論を得た。
【0040】以上の様に、各種酸化物系セラミックス製
蒸発槽では、水冷式銅製蒸発水槽に比べて加熱効率が高
く、数倍のTiの蒸発速度が得られるものの、種々の問
題が生じて、工業的に適用困難であることが判明した。
【0041】そこで本発明者らは、黒鉛系蒸発槽のTi
浴への適用可否を検討した。黒鉛系蒸発槽は、セラミッ
クス系蒸発槽と同様に、水冷式銅製蒸発槽に比べて蒸発
槽自身の断熱効果により、加熱蒸発効率が優れることが
期待される。実際に黒鉛系蒸発槽にて溶融Ti浴を形成
せしめ、Ti蒸発を行なったところ、水冷式銅製蒸発槽
に比べて、5〜10倍以上の蒸発を得ることが判明し、
成膜速度、即ち生産性向上が可能であることがわかっ
た。しかしながら、Tiの蒸発速度を増加させるべく溶
融Ti浴表面に照射する電子線の出力を増加させて、浴
表面温度を更に上昇させると、溶融Ti浴による黒鉛系
蒸発槽の侵食が顕著となり、蒸発槽の寿命が短くなるこ
とが判明した。
【0042】本発明者らは、使用後の蒸発槽を解体し、
凝固したTi浴と蒸発槽内壁面との界面を調査したとこ
ろ、両者の界面は明らかに反応が厚く成長しており、該
反応層は主成分がTiCなるTiの炭化物であることが
わかった。本発明者らは、当初、該TiC反応層が緻密
に形成されてその後の溶融Ti浴と黒鉛系蒸発槽の反応
を抑制する拡散障壁バリアーとして働くものと考えてい
たが、Tiの蒸発速度を増加させるために浴温度をかな
り高温に保持した条件下では、TiC反応層自身の成長
速度もかなり増加し、期待していたバリアー効果が得ら
れず、黒鉛の侵食が顕著に進行することが明らかになっ
た。よって、黒鉛系蒸発槽を使用した場合でも、高い蒸
発速度を得るためTi浴温度を上昇させると、蒸発槽と
Ti浴の反応を無視することができなくなり、蒸発槽の
耐久性に問題が生じる結果となった。
【0043】そこで本発明者らは、黒鉛系蒸発槽の溶融
Ti浴による侵食速度を低減し且つできる限り高いTi
の蒸発速度を得ることができないものかと、更に検討を
重ねた。その結果、溶融Ti浴中に、Zrまたは/およ
びMoを含有させて合金浴とし、且つ該合金浴の浴温度
の上限値を規定することにより、蒸発槽の耐久性を格段
に向上させると共に、工業的に問題の無い十分なTiの
蒸発速度を同時に満足することが可能となることを見出
した。
【0044】溶融Ti合金浴中に添加する元素として
は、Zrおよび/またはMoであることが必要である。
溶融Ti合金浴中に添加したZrおよび/またはMo
は、黒鉛系蒸発槽の内壁面と接する界面で、ZrCやM
oCなる炭化物層をTiC層よりも優先的に形成させ
る。形成されたZrC層やMoC層は、それ自身高温下
で非常に安定な炭化物であるために、これらの炭化物が
溶融Tiと反応して新たにTiCに変化しにくいため、
TiC層の成長を抑制する働きをするものと考えられ
る。またこれらの炭化物層は非常に緻密に形成されて拡
散障壁バリアー層となって、該炭化物層を通しての新た
なZrC,MoCの急激な成長は起こらず、TiC層の
様に急激に層の厚みが増大する現象は認められなかっ
た。従って、Ti浴中に添加するZrやMoの役割は、
黒鉛系蒸発槽の内面に安定な且つ緻密なZrCやMoC
なる炭化物層を形成し、該炭化物層がバリアー層となっ
てTiCの形成を抑制すると共に、該皮膜自身の成長も
抑制する働きを有し、その結果として、蒸発槽の侵食を
抑制することが可能となったものと考えられる。尚溶融
Ti合金浴中に添加されたZrおよび/またはMoは、
Tiに比べて高温度における蒸気圧が極端に小さいため
に、Alの場合と同様に、得られる蒸着めっき皮膜中
に、不純物として混入することはなく、所望のめっき性
能、品質に何等悪影響を及ぼすものではない。
【0045】上記で示したZrやMoの添加効果を十分
に発揮せしめるためには、溶融Ti合金浴中にZrまた
は/およびMoを5重量%以上添加することが必要であ
る。この含有量が5重量%未満の場合には、黒鉛系蒸発
槽との界面に欠陥のない緻密なZrCやMoCの炭化物
層が形成されにくくなり、溶融Ti浴の黒鉛への浸透に
対して拡散障壁バリアー層としての十分な効果が得られ
ない。即ち、ZrやMoの添加によるTiC層の成長抑
制効果が顕著に認められず、黒鉛系蒸発槽の耐久性改善
効果が不十分となる。
【0046】溶融Ti合金浴中のZrまたは/およびM
oの含有量を順次増大させていくと、バリアー層による
蒸発槽の耐久性改善効果はより顕著に認められる様にな
るものの、一方で全浴表面積に占めるTiの有効蒸発面
積の割合が減少することになるために、Tiの蒸発量が
実質的に減少することになる。そのために、浴表面温度
が一定でも、ZrやMoの添加量を増大させることによ
り、Tiの蒸発速度、即ち成膜速度は次第に低下するこ
とにより、本来の目的である水冷式銅製蒸発槽以外の蒸
発槽を用いることによるTiの蒸発速度の増大による生
産性の向上が達成できなくなる。従って、必要以上のZ
rまたは/およびMoの添加は好ましくなく、本発明者
らは、Tiの蒸発速度の観点から、両添加元素の浴中含
有量の上限を30重量%にすべきであることを見出し
た。以上の点から、溶融Ti合金浴中のZrおよび/ま
たはMoの含有量は5〜30重量%にすべきである。
【0047】本発明で規定するZrやMoを所定量含有
する溶融Ti合金浴からTiを蒸発させるための、加熱
手段としては、電子線加熱方式とすべきである。即ち、
前述した様に、加熱源の種類としては、まず、抵抗加熱
法、高周波加熱法があるが、両者の加熱方式では、蒸発
槽外周から加熱する方式であり、加熱エネルギーも大き
くないために、Tiを蒸発させるだけの浴温度まで加熱
することは不可能であり、実質的に適用できない。電子
線加熱方式では、蒸発させたいTi浴表面に直接電子線
を照射する方式であるために、全浴体積の中で蒸発表面
の温度を最も高くすることが可能となり、加熱効率が非
常に高く、結果として工業的に十分な蒸発速度を容易に
得ることができる。また、電子銃から発生する電子線
は、電子銃内部に内蔵された偏向磁場コイルと蒸発槽近
傍の空間に形成された磁場を用いて、Ti浴表面での照
射位置、照射幅、照射長さ等を任意に調整することが容
易にできるため、目的に応じて、種々の照射条件を得る
ことができる。
【0048】この様に、電子線加熱方式は、加熱効率が
高く、照射条件も容易に調整でき、工業的に使用するた
めの大出力の電子銃も容易に入手可能であることから、
加熱手段として最も適していると考えられる。また、こ
の様に電子線加熱方式により得られるTi合金浴の浴表
面積(蒸発面積)については、特に本発明で規定される
ものでなく、工業的に十分なTiの蒸発速度が得られる
様に適宜設定すればよい。
【0049】但し、蒸発速度を増大させるために、電子
線照射によって必要以上に浴表面温度を高くすると、浴
表面からのスプラッシュ(飛散現象)が生じて、得られ
るめっき外観不良の原因となったり、浴中に添加したZ
rまたはMoが、めっき層中に極微量混入する場合があ
る。これらの混入により、特に要求性能が全く変化しな
かったり、逆に改善されたりする場合もあるが、用途に
よっては特定の性能を損なう場合も出てくる。
【0050】Tiは、浴表面積を適宜選定すれば200
0℃以下の浴温度で、工業的には十分な蒸発速度が得ら
れるので、一般的には2000℃を超える様な高温の浴
温度にする必要性はないと考えられる。また2000℃
を超える浴温度では、Ti浴中のZrやMoと黒鉛系蒸
発槽との反応速度も増大する傾向にあり、ZrC、Mo
Cの炭化物層の成長速度が増大して蒸発槽の侵食を助長
する場合もある。従って、本発明においては溶融Ti合
金浴の浴温度は、2000℃以下に管理すべきである。
【0051】更に本発明者らは、Crを安定して蒸発さ
せるための手段として、Zrを50〜90重量%含む合
金浴を形成せしめ、溶融浴状態からCrの真空蒸発につ
いても検討した。このとき蒸発槽として黒鉛系蒸発槽を
用い、加熱蒸発源として電子線加熱方式を採用した。ま
たCrと混合する金属としてZrを選定したのは、Zr
はCrに比較して蒸気圧が非常に小さいため、合金浴か
らの蒸気成分中にZrが含まれることはなく、得られる
蒸着めっき皮膜中に不純物として混入することがないと
考えたためである。しかしながら、該合金浴からのCr
の蒸発速度を増加させるために、電子線出力を増加せし
め合金浴温度を1700℃以上に上昇させると、黒鉛系
蒸発槽の耐久性が著しく低下することが判明した。これ
は、合金浴と黒鉛系蒸発槽の界面にて、Zrの炭化物の
生成が連続して起こることにより、該蒸発槽が侵食され
たためと考えられた。また冷却過程において厚く成長し
た炭化物層に、黒鉛との熱膨張係数の差による微小な亀
裂が入り、次回溶解時に、該亀裂を起点として新たな侵
食が起こり、部分的に極度の侵食が進行し短期間での蒸
発槽の割れ発生に至ることもわかった。
【0052】そこで本発明者らは、黒鉛系蒸発槽と高温
Cr合金浴の反応を抑制して、該蒸発槽の耐久性を維持
しつつ、Crの高蒸発速度を達成できないものかと更に
検討を重ねた。その結果、Crと混合して溶融合金浴を
形成する金属として、ZrとMoを所定量添加し、Cr
−Zr−Mo系合金浴とし、且つ該合金浴の浴温度の上
限値を規定することにより、黒鉛系蒸発槽の耐久性を格
段に向上させると共に、Crの高蒸発速度を得ることが
可能となることを見出した。
【0053】Cr−Zr−Mo系合金浴を黒鉛系蒸発槽
内に装入した場合、該合金浴と黒鉛系蒸発槽の界面にて
炭化物の生成反応が起こる。ここで、Zr、Moおよび
Crの各種炭化物の標準生成自由エネルギーの大小関係
は、下記の様になる。 (1)約1700℃以下: Cr炭化物>>Mo炭化
物>Zr炭化物 (2)約1700℃以上: Cr炭化物>>Zr炭化
物>Mo炭化物
【0054】Crの蒸発速度が比較的小さい1700℃
以下では、Cr炭化物よりも生成自由エネルギーの小さ
い、MoおよびZr炭化物の生成反応が起こり、黒鉛系
蒸発槽内面に、炭化物層を形成する。該炭化物層はZr
およびMoの複合炭化物、あるいは混合炭化物で形成さ
れているものと考えられる。
【0055】蒸発槽内面に形成された該炭化物層中に存
在する、MoもしくはMo炭化物は、Moよりも更に反
応し易い(炭化物になり易い)Zrとの活量を低下さ
せ、Zr炭化物の過剰な生成反応を抑制するものと考え
られる。また該炭化物層は非常に緻密に生成しており、
且つ黒鉛材質に存在する気孔内にも形成されて封孔作用
を有し、結果として該炭化物層を通しての新たな炭化物
の生成反応を抑制する。更に、一旦生成した該炭化物層
はそれ自身が高温で非常に安定であるため、合金浴中の
Zr,MoおよびCr等によって再び還元されることは
なく、常に蒸発槽内面との合金浴の界面に存在し蒸発槽
の侵食を防止するものと考えられる。
【0056】一方、Cr蒸発速度が大きい1700℃以
上の合金浴温度では、合金浴のMoの炭化物生成が速や
かに進行する。しかし、同時にZr炭化物の生成反応も
生じるため、該炭化物層中のMoの活量を低下させ過剰
なMo炭化物の生成反応を抑制するものと考えられる。
また前述したように、該炭化物層は非常に安定で且つ緻
密に生成しているため、それ自身がバリアー層となり、
新たな炭化物層の生成を抑制する。
【0057】上記で示したZrとMoの複合添加効果を
十分に発揮せしめるためには、溶融Cr合金中にZrと
Moを合計で50重量%以上添加することが必要であ
る。この含有率が50重量%未満の場合には、黒鉛系蒸
発槽と合金浴の界面に欠陥のない緻密な炭化物層の形成
が困難になり、バリアー層としての効果を発揮すること
ができない。また昇華性金属材料であるCrの含有量が
多くなると、全浴表面積に占めるCrの昇華が生じ、本
来の目的である安定したCrの蒸発を達成できなくな
る。
【0058】溶融Cr合金浴中のZrとMoの合計含有
量を順次増加させていくと、バリアー層による蒸発槽の
耐久性改善効果はより顕著に現れるものの、一方で全浴
表面に占めるCrの有効蒸発面積の割合が減少すること
になるために、Crの蒸発量が実質的に減少することに
なる。そのために、高成膜速度が得られなくなり、生産
性の低下を招くことになる。またZrおよびMoは高融
点金属であるため、含有量の増加と共に合金浴の融点が
上昇し、溶融浴を形成するために必要な加熱エネルギー
が大きくなると共に、均一な合金浴を得ることが困難に
なる。具体的には、電子線が直接照射されていない部位
では凝固域が残存し、浴組成が不安定になり、蒸発速度
の経時変化が大きくなることで、得られるめっき製品の
品質にばらつきが生じる様になる。従って、Cr合金浴
中への必要以上の添加は上記の理由により好ましくな
く、本発明者らは、両添加元素の浴中含有量の上限を9
0重量%にするべきことを見出した。
【0059】またZrおよびMoは、Crに比較して蒸
気圧が非常に小さいため、AlやTiと同様に、得られ
る蒸着めっき皮膜中に不純物として混入することがな
い。しかしながら、合金浴温度を上昇させていくと、如
何に蒸気圧が小さいZr,Moといえども得られる蒸着
めっき皮膜中に微量のZrおよびMoが混入することに
なる。めっきは改善される場合もあるが、逆に特定の性
能が悪くなる場合もあるため、好ましくない現象である
と言える。上記問題点より、Cr合金浴温度についても
2000℃に以下に管理されるべきである。
【0060】尚Cr合金浴からのCrの蒸発のために用
いる加熱方法としては、該合金浴の融点が高温なこと、
および生産性向上のため、高蒸発速度が必要なことか
ら、高エネルギー密度を有し、合金浴の蒸発面を直接加
熱することが可能である電子線加熱方式が最も適してい
る。
【0061】本発明は、Al,Ti,Cr等の蒸着めっ
きを行うためのみならず、複数の蒸発原料を加熱蒸発せ
しめ、少なくともAl,Ti,Crをめっき層構成元素
として含有するような各種合金めっき、多層めっきを行
なう際にも適用できる。また各種プラズマガスとAlや
Tiの蒸気と反応させて、AlNやTiN等の各種炭化
物や、炭化物等のAl系セラミックス層やTi系セラミ
ックス層を形成する場合にも適用できるものである。一
方、真空蒸発方法については、蒸発原料の加熱蒸発源と
して電子線を用いる限り特に限定されるものではなく、
真空蒸着法や、各種イオンプレーティング法に適用可能
である。また被処理体は、金属、セラミックス、プラス
チック、有機フィルム等、何等制限を受けるものではな
い。
【0062】本発明で使用する黒鉛系蒸発槽の成分は、
黒鉛を主成分とする限り時に限定されるものではなく、
黒鉛以外の成分として、B,Mg,Al,Si,P,
S,Ni,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Cu等不可避
の成分として含んでいても良い。またその製法(例え
ば、アイソスタティック法、押出成形法等)、物性等に
ついても特に規定するものではないが、溶融金属浴の黒
鉛内部への浸透による両者の反応を抑制するために、黒
鉛製蒸発槽の平均気孔径を制御することは、本発明の主
旨から考えては望ましいことであり、具体的には平均気
孔径1μm以下の出来る限り小さいものにする方が耐久
性を更に向上させるためには望ましい。必要に応じて、
封孔処理等を行ない、蒸発槽内壁面の欠陥を低減させた
り、蒸発槽自身の強度を向上させたりすることも、本発
明の主旨から考えて好ましい手段である。更に、この蒸
発槽は、溶融金属浴と接する部分が黒鉛系材質であるこ
とのみが規定されるものであり、例えば該黒鉛系蒸発槽
の外周囲を各種酸化物系セラミックスで覆うことによっ
て、蒸発槽自身の断熱効果をより一層高め、結果とし
て、金属元素の蒸発速度の増大や電子線出力の加熱効率
の向上を図ることは、本発明の主旨を何等逸脱するもの
ではない。また、蒸発槽の具体的な形状、寸法、内容積
等は、何等本発明で制約されるものではない。
【0063】本発明を実施するに当たっては、必要に応
じて被処理材表面を脱脂、酸沈等により清浄化した後、
バッチ法によって金属元素を蒸発する方法も採用できる
が、例えば図1に示す様な連続蒸着設備に本発明方法を
適用して被処理材表面上に蒸着めっき層を形成すること
が大量生産という観点からして有利である。尚、図1
中、1は被処理材、2は電子銃、3は電子線、4は黒鉛
系蒸発槽、5は溶融金属浴、6は補給用金属ワイヤー、
12は真空蒸着室、17はテーブルロール、18は接続
チャンバー、19aは入側真空シール装置、19bは出
側真空シール装置、20はシールロール、21はデフレ
クタロールを夫々示す。
【0064】ところで近年では、表面光沢度が高く、光
反射性に優れた蒸着めっき金属材料が各種照明器具の反
射板、建築壁材料等に利用されている。表面光沢度の優
劣は、得られた蒸着めっき製品の表面粗度に大きく依存
し、表面粗度が小さいほど、高い光沢度が得られること
が知られている。また、光(特に可視光)の反射率の大
小は、蒸着めっき金属の種類によってほぼ決まる固有の
値であり、特にAgやAl等の金属の蒸着めっき膜が、
高い光反射率を有することが知られている。この様な理
由から、従来の製造方法としては、まずポリエステル等
の各種プラスチックフィルムの表面に、真空蒸着めっき
法にてAgやAlの薄膜めっき層をサブミクロンから数
ミクロンの膜厚で付与したフィルム材料を作製し、この
蒸着めっきフィルムを所望の各種金属板の表面に貼り付
ける方法、いわゆるラミネート法が採用されてきた。各
種フィルム上への連続蒸着めっき処理方法については、
既に工業的に技術確立されており、リール状に巻かれた
長尺の各種プラスチックフィルム帯を巻き出し、バック
アップローラに巻き付けながら、真空中で金属蒸気をフ
ィルム表面に凝着させる方法が採用されている。尚一般
的には、リール状フィルム帯を巻き出したり、蒸着めっ
き後のフィルムを再び巻き取るためのリール室とAg、
Al等のめっき原料を加熱蒸発させる蒸着室とは、各々
分離された真空室からなり、各々独立した真空排気シス
テムにより所望の真空度まで排気される。この様にして
製造された蒸着めっきフィルム自身は、フィルム基材の
表面粗度が非常に小さいために、蒸着めっき処理後にお
いて、高光沢度、高反射率を有するフィルム製品となり
得る。
【0065】従って、該蒸着めっきフィルムを各種金属
板表面に貼り付ける(ラミネートする)ことにより、高
光沢度、高反射率を有する表面処理金属板が製造され
る。但し、使用する被処理金属板の表面粗度が、蒸着め
っきフィルム自身の表面粗度に比べて非常に大きい場合
には、ラミネート後の製品の表面粗度が使用金属原板の
粗度の影響を大きく受けて、得られた製品の光沢度が大
幅に低下してしまう。そのため蒸着めっきフィルムをラ
ミネートする金属板は、表面粗度を出来る限り小さくす
ることが必要であり、一般にはブライト圧延処理した各
種金属板が使用されている。上記ラミネート法により得
られた蒸着めっき金属板は、未加工(平板まま)または
軽度の曲げ加工等に対しては特に問題ないが、強度な曲
げ加工や複雑な絞り加工を施した場合には、ラミネート
されたフィルムが金属原板との界面で部分剥離やシワが
生じたり、場合によっては亀裂が生じたりすることがあ
る。また金属板の加工に追従できなくなって、金属板の
端面部分とフィルムの端面部分がずれてしまう場合もあ
る。この様な加工によるラミネートされたフィルムの部
分剥離やシワ発生、部分亀裂、端面部のずれ等の問題
は、金属板にフィルムを貼り付けた方法にて製造された
蒸着めっき製品の特有の問題であり、完全に回避するこ
とは困難である。またこの様にして製造された蒸着めっ
きフィルムラミネート金属板は、製造工程が複雑となる
ため、製品コストが高いものとなる。
【0066】本発明者らは、本発明の蒸発法を応用すべ
く、表面光沢度の高い、且つ光反射性に優れる蒸着めっ
き金属板製品を開発するに当たり、従来の方法とは異な
る新たな製造方法についても検討した。即ち、プラスチ
ックフィルム帯の表面に各種金属の蒸着めっき膜を付与
した蒸着めっきフィルムを、金属帯表面にラミネートす
る方法ではなく、予め、各種金属帯の表面に各種有機系
塗膜を付与した、いわゆる塗装金属板を製造し、該塗装
金属帯を真空中に連続的に導入して、その表面に所望の
蒸着めっきを施す方法を検討した。この様な塗装金属帯
への連続蒸着めっき処理方法は、従来に例がなく、全く
新しい製造方法である。
【0067】塗装金属板は一般に表面粗度が非常に小さ
いものであるため、その表面に蒸着めっき処理すること
により、高い光沢度を有する製品が得られる。また、ラ
ミネート法で得られた蒸着めっき製品に比べて、曲げ加
工や絞り加工に対して良好な加工性を有するものが容易
に得られる。しかしながら、この様な製造方法および得
られた製品の品質についても問題点が有ることがわかっ
た。即ち、塗装金属帯を連続的に真空中に導入して、そ
の表面に蒸着めっき処理を施すと、蒸着めっき時の金属
蒸気による凝縮熱および蒸発原料浴表面からの輻射熱に
より、塗装金属帯の塗膜温度が上昇し、塗膜内部から各
種ガス成分が真空中に放出される。これによって、真空
蒸着めっき処理室の真空度が大幅に悪化し、蒸発原料の
加熱蒸発源として電子線を使用している場合には、電子
線が収束しきれずに散乱を生じ、蒸発原料の加熱効率に
低下または変動が生じて、目標のめっき膜厚より少なく
なったり、膜厚が変動したりするために、めっき膜厚の
管理が困難となる。また真空度が悪化すると、得られた
めっき膜中には、塗膜から放出されたガス成分と金属蒸
気が反応して形成された酸化物が多量に混入して存在
し、めっき膜自身が脆弱になって、めっき膜自身の塑性
加工性が大幅に劣化し、めっき膜の加工性が低下する。
更にめっき膜の光沢度が低下したり、色調が変化して、
本来要求されるべき光反射性も大きく損なうという製品
上の問題点も生じた。
【0068】この様な、有機系塗膜からの真空中でのガ
ス成分の放出に関する問題は、各種プラスチックフィル
ム帯に蒸着めっき処理する場合と類似の問題であり、こ
のための対策として、フィルム帯に蒸着めっき処理する
際には、一般的に蒸着めっき原料を加熱蒸発させてフィ
ルム表面に蒸着させる処理室とフィルム帯を真空中で巻
き出したり、巻き取ったりするための各種リールやロー
ルが内蔵された室とは、真空排気系を独立させており、
蒸着処理室の真空度が悪化しないように工夫されてい
る。また蒸着めっき処理時に、被処理帯のフィルム帯の
温度が上昇しないように、水冷されたバックアップロー
ルにフィルムを巻き付けて、フィルム帯を冷却させつつ
蒸着めっき処理する方法が採用されている。
【0069】しかしながら、本発明者らが実施している
塗装金属帯への蒸着めっき処理の場合には、金属帯の板
厚がフィルムに比べて厚いために、たとえ水冷式のバッ
クアップロールに巻き付けながら蒸着めっき処理したと
しても、塗膜の表面までを十分に冷却させる効果は得ら
れず、蒸着めっき時にも塗膜表面の温度上昇は避け難
い。また塗膜からのガス成分の放出速度に見合う以上の
排気能力を有する真空ポンプを蒸着めっき処理室に付帯
させることにより、蒸着めっき処理室内の真空度の悪化
を防止する方法が理論的には好ましいと考えられるが、
実質的には、ガス成分の放出のない一般の金属帯に蒸着
めっき処理する際に必要とする真空ポンプの排気能力の
10倍以上の能力を有する真空ポンプが必要となり、設
備コストおよびランニングコストの点から考えれば、決
して現実的な対策ではない。
【0070】本発明者らは、図2に示す蒸着めっき設備
を用いて、塗装鋼帯(被処理材1)表面に連続的に蒸着
Alめっき処理を行うことを試みた。尚図2において、
7は前処理室、8はヒータ、10は水洗−乾燥帯を示す
が、前記図1と対応する部分については同一の参照符号
を付して重複説明を回避する。
【0071】その結果、蒸着めっき処理を行う前の蒸着
室12内の真空度がおよそ10-2Paであったのに対
し、蒸着室内のシャッターをオープンにしてAlめっき
を連続的に行っていくに従って、徐々に蒸着室内の真空
度が悪化して、最終的には10 0 Pa台に至った。
【0072】この様な真空度での蒸着めっき処理は、加
熱蒸発源として電子線3を使用した場合、電子銃2から
発生させた電子線3が溶融金属浴5である溶融Al浴表
面に到達するまでの間に散乱してしまい、蒸発原料の加
熱効率が低下して、所望のめっき膜厚が得られなくなる
ばかりでなく、溶融Al浴を収納している黒鉛系蒸発槽
14の壁面にも散乱した電子線3の一部が照射されてし
まい、黒鉛系蒸発槽4の損傷が生じる結果となった。ま
た電子線3の散乱による加熱効率の低下を改善するため
に、電子線3の出力を増加させてAlの蒸発速度を増加
させようとすると、Alめっき膜厚は所望の膜厚に近づ
くものの、黒鉛系蒸発槽4全体からの輻射熱量も増大
し、その結果として塗膜の温度上昇が更に増大して、真
空度はますます悪化する傾向が認められた。更に、この
様な低真空度の状態から得られたAlめっき膜を分析し
たところ、Alめっき膜がかなり酸化されたものとなっ
ており、めっき密着性、めっき膜加工性が低下するだけ
でなく、Alめっき本来の金属光沢が低下して色調が変
化したものとなり、目標の製品価値が得られない結果と
なった。
【0073】そこで、本発明者らは塗装鋼板の塗膜から
放出されるガス成分を、蒸着室12に導入する前にでき
る限り取り除く方法を検討した。即ち、蒸着室12に塗
装鋼板を導入して蒸着めっき処理する前に、塗膜の各種
脱ガス方法について調査した。
【0074】まず前記図2で示した蒸着めっき設備にお
いて、前処理室7にて塗装鋼板を真空中でヒーター8に
よる赤外線加熱によって低温加熱処理し、塗膜から脱ガ
ス処理する方法について検討した。その結果、上記低温
加熱処理によって、塗膜からガス成分が放出され、前処
理室7の真空度は10-2Paから100 Pa台まで低下
し、脱ガスが効果的に行われることが明らかとなった
が、一方で前処理室7の真空度悪化が、蒸着室12の真
空度にまで悪影響を及ぼし、蒸着室12でめっき処理す
る前の状態でも、既に蒸着室内の真空度が10-1Pa近
くまで悪化してしまった。そのために、蒸着めっき処理
時は、蒸着室内真空度が10-1〜100 Paの範囲とな
り、10-2Pa台を維持することができなかった。
【0075】この様に、蒸着室12でめっき処理する前
に、予め真空中で塗装鋼板を低温加熱処理し、脱ガス処
理を行うことは、塗膜中のガス成分を効果的に放出させ
ると言う点で非常に有利である。こうしたことから、事
前の脱ガス処理を行うための前処理室12内の真空度悪
化が蒸着室内真空度にまで影響したため、この影響を回
避するためには、前処理室7の真空排気ポンプの能力を
大幅に増強させるか、あるいはそれに加えて前処理室7
と蒸着室12の接続チャンバー18を十分に長くし、両
室間のコンダクタンスを小さくして、前処理室7の真空
度の悪化が蒸着室内12内の真空度に与える影響を小さ
くする必要があることがわかった。しかしながら、これ
らの設備的対策は、膨大な改造を必要とし、現実的とは
言えない。
【0076】そこで本発明者らは、塗装鋼板の新たな脱
ガス処理として、真空中に導入する前に脱ガス処理を
し、それ後に、真空雰囲気に塗装鋼板を導入して、蒸着
めっき処理する方法を検討した。具体的には、図3に示
す様な蒸着めっき設備により、塗装鋼板を雰囲気を調整
した加熱炉14にて脱ガス処理する方法を試みた。図3
において、まず塗装後の被処理材1は、水洗−乾燥帯1
0にて表面を清浄化され、加熱帯14に導入される。加
熱帯14の内部の雰囲気は、極低酸素、極低露点の不活
性ガス雰囲気下に保持されており、大気圧よりわずかに
高め(+数10mmAq)に圧力調整されており、加熱
帯14の入口側から炉内に大気が混入しないようにして
いる。この加熱帯14の温度は、150〜300℃程度
の範囲で設定することが望ましく、塗装鋼帯の通板速度
や塗膜種類により設定温度を適宜調整すべきである。こ
の加熱帯14を通過する間に、塗装鋼帯は低温加熱処理
され、塗膜中に含有する水分等の揮発性ガス成分が蒸発
する。尚塗膜中の脱ガス処理は、加熱帯14の設定温度
が高いほど、また通板速度が小さい(炉内滞在時間が長
い)ほど、効果的に行われるが、塗膜自身の加熱による
熱変性が生じる場合があるので、塗膜種類等に応じて、
塗膜の脱ガス処理温度、処理時間は適宜調整する必要が
ある。また加熱帯14の不活性ガス雰囲気は、特に露点
と酸素濃度を管理しなければならないことが明らかとな
った。露点即ち水分濃度が高いと、塗膜からの低温脱ガ
ス処理において、塗膜内部からの水分除去が効果的に行
われず、また一方で低温加熱処理時に塗膜が炉内ガス中
の水分と反応して変質する場合もある。従って、このと
きの不活性ガスの露点については、できる限り低いこと
が好ましく、少なくとも−30℃以下、望ましくは−5
0℃以下がよい。更に、不活性ガス雰囲気中の酸素濃度
が高いと、塗膜の低温加熱処理時に塗膜と酸素ガス反応
して、塗膜が酸化、変質する場合があるので、酸素濃度
もできる限り低い方が好ましく、具体的には、20pp
m以下、望ましくは50ppm以下がよい。尚このとき
用いる不活性ガスの種類については、特に限定されるも
のではないが、一般的には、コスト面を考慮すると窒素
ガスやアルゴンガス等が推奨される。
【0077】この様にして、加熱帯14にて脱ガス処理
された塗装鋼帯は、引き続き同様の極低酸素、極低露点
の不活性ガス雰囲気下に保持された冷却帯15にて常温
まで冷却される。その後塗装鋼帯は、極低酸素、極低露
点の不活性ガスの希薄雰囲気下にある入側真空シール装
置19aおよび入側接続チャンバー18を経由して、蒸
着室12に導入される。この際、入側真空シール装置1
9aおよび入側接続チャンバー18を通過時に塗装鋼帯
は、最終的な真空脱ガスが行われる。
【0078】この様に、塗装鋼帯を予め低露点、低酸素
濃度の不活性ガス雰囲気下にて低温加熱処理して塗膜の
脱ガス処理を十分に行なった後に、入側真空シール装置
19aを経由して蒸着室12にて、各種蒸着めっき処理
を行う方法を採用することにより、蒸着室12内でのめ
っき処理時に、塗装鋼板の塗膜内部からのガス放出が著
しく低減され、蒸着室12内の真空度をほとんど悪化さ
せずに、美麗な表面および加工性に優れた蒸着めっき塗
装鋼帯を連続的に製造することが可能となる。
【0079】この様な方法を採用すれば、各種塗装鋼帯
表面に前記した、Al,Ti,Crは、勿論のこと、A
gやCu等の各種金属めっき、各種合金めっき、セラミ
ックスめっき等を行なうことが可能である。特に、Al
やAgの蒸着めっき処理を行った製品は、表面光沢度、
光反射性に優れ、各種光照明反射材料に適用することが
可能である。また、Cu、Ti、Ni、SiOx等の蒸
着めっき処理により、各種意匠性材料への適用が可能で
ある。また、上記蒸着めっき処理された塗装金属帯の表
面に、更に有機系クリアー塗膜を付与する様にしても良
い。蒸着めっき処理後の塗装金属帯表面は、非常に平滑
であるため、ハンドリング時、後加工時等に蒸着めっき
表面にアブレージョン、スティッキング等の微細な疵が
発生しやすくなり、金属光沢を有する美麗なめっき外観
を損ねる要因となる。従って、そのための対策として、
蒸着めっき処理後に、めっき表面に有機系クリアー塗膜
を施し、めっき外観を維持することが望まれる。該有機
系クリアー膜の樹脂種類や膜厚については特に制限され
るものではないが、一般的にはロールコータ方式やスプ
レー方式により、1μm以上のクリアー塗膜を形成する
方法が推奨される。
【0080】尚本特許に記載の塗装金属帯の塗膜の種
類、塗膜厚さ等については、一切制限を受けるものでは
なく、ポリイミド系、ポリアクリル系、ポリウレタン
系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリエステル
系等の各種塗膜、およびこれらの積層塗膜が挙げられ
る。また素地金属帯と塗膜の密着性確保のための、脱脂
処理、酸洗処理、クロメート処理、りん酸塩処理等の前
処理についても、制限されるものではない。
【0081】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0082】
【実施例】
実施例1 図1に示した連続蒸着設備によって、連続的に各種Al
めっき鋼板を製造した。このとき、真空蒸着室内に黒鉛
系蒸着槽を配置し、該蒸着槽の中に各種組成のAl系合
金浴(純Al浴も含む)を形成させ、電子線加熱方式に
よってAlの蒸発を行ない蒸発槽の損傷状況等を調査し
た。また黒鉛系蒸着槽は、アイソスタテックプレス成形
後にカーボンによる封孔処理を施したものを使用した。
また蒸発槽全体の断熱効果を高める目的で、使用中に蒸
発槽が割れた場合でも溶融Al浴を外部に漏洩させない
目的で、黒鉛系蒸発槽を非磁性ステンレス鋼製の大型ケ
ースに収容し、蒸発槽の外周および底部と該ステンレス
鋼ケースの間の空間に高純度電解アルミナ系のドライス
タンプ粉末材を充填したものを、蒸発槽として使用し
た。
【0083】真空蒸槽内は、真空ポンプによって1×1
-2Pa以下の真空度に保持し、蒸着室に付帯するピア
ス型電子銃から発生する電子線を磁場によって変更させ
つつ、蒸発槽内に装入された各種Al系合金浴(純Al
も含む)の表面に走査・照射して、Alの加熱蒸発を行
なった。
【0084】このときAlの成膜速度の大小を比較する
ために、浴表面に照射する電子線の出力および照射面積
は、全蒸発実験において一定とし、浴表面への平均電子
線照射密度が0.5kW/cm2 となる様に調整した。
また浴温度は全ての蒸発実験において、2000℃以下
とした。
【0085】蒸発槽の耐久性は次の様にして評価した。
即ち、上記電子線照射条件下で、Al系合金浴を昇温
し、一定電子線出力にて5時間保持して、Alの蒸発を
連続的に行なった。尚Alの蒸発に伴い合金浴組成が変
化することによる浴組成の変動およびそれに伴うAlの
蒸発速度(成膜速度)が経時的変化するのを防止するた
めに、図1の補修用金属ワイヤー6として示した様に、
Alの蒸発量見合うだけのAl原料を、純Alワイヤー
(純度Al050相当以上、8mmφ)によって適宜A
l合金浴の端部に供給し続けた。
【0086】上記一定時間のAl蒸発を行なった後、電
子線照射を停止し、真空中で翌日まで蒸発槽全体を冷却
し、翌日に真空蒸着室を大気に開放して蒸発槽の割れや
侵食等の損傷状況を目視にて観察した。損傷状況の観察
後、再び蒸着室を真空ポンプにて排気し、蒸発槽内で凝
固したAl合金原料を電子線照射による加熱・蒸発させ
る様な加熱蒸発試験を繰り返し、蒸発槽の耐久性を調査
した。尚蒸発槽の耐久性は、目視観察により連続使用不
可能または困難と判断するまでの使用回数の大小にて評
価した。その結果を、比較例と併せて表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】表1から、次の様に考察できる。まずAl
浴中に本発明で規定するZrとMoを混合添加した場合
(No.3〜11)では、Alめっきの成膜速度は、純Al浴
の場合よりもやや低下するものの、黒鉛系蒸発槽の耐久
性は十分改善されていることがわかる。これに対し黒鉛
系蒸発槽を用いて、純Al浴からAl蒸発を行う場合
(No.1)では、最も成膜速度が大きく、生産性が高い
が、Al43 層の成長により蒸発槽に亀裂が発生し、
寿命はわずか1回と非常に短い。またAl浴中にZrと
Moを合計5%未満で添加した場合(No.2)では、成膜
速度の低下は無いが、蒸発槽の寿命改善が認められず、
1回で蒸発槽が使用不可能となった。
【0089】また、ZrとMoの浴中の合計含有量が本
発明で規定する上限値を超える場合(No.12 〜13)に
は、Alの蒸発速度の低下が顕著に認められると共に、
浴融点の上昇により均一な合金浴が蒸発槽内で形成困難
となり、また未溶融の凝固域が生じて、蒸発速度が不安
定になると共に、蒸発槽内に純Alワイヤーの補給を安
定して行うことが出来なくなり、蒸発速度の経時的低下
が生じやすくなる結果となった。更に No.14〜16は、各
々Zr、Mo、Tiを単独で添加した比較例の結果であ
るが、蒸発槽の寿命は純Al浴に比べて改善されるもの
の、その効果が十分でない。純Alを用いて、蒸発槽に
黒鉛製以外のものを使用した例が No.17〜18であるが、
水冷式銅製蒸発槽使用の場合(No.17)は、蒸発槽自身の
損傷は全く認められないものの、電子線によるAlの加
熱効率が劣悪で、蒸発速度は非常に小さい。また、アル
ミナ系セラミックス製蒸発槽使用の場合(No.18) は、A
lの蒸発速度は非常に大きいものが得られるが、加熱昇
温−冷却サイクルの過程で熱膨張収縮に起因する蒸発槽
の割れ・亀裂が多数発生し、耐久性改善を要する。
【0090】実施例2 真空蒸着室の中に、黒鉛系蒸発槽、各種酸化物製蒸発槽
および水冷式銅製蒸発槽の3通りを各々配置し、各蒸発
槽の中に、各種成分のTi系合金浴を形成させて、Ti
蒸発による成膜速度および蒸発槽の損傷状況等を調査し
た。真空蒸着室内は、1×10-2Pa以下の真空度に保
持され、蒸着室に付帯するピアス型電子銃から発生する
電子線を各蒸発槽内に装入されたTi系合金浴の表面に
走査・照射して、Tiの加熱蒸発を行った。このとき各
蒸発槽におけるTiの成膜速度の大小を比較するため
に、浴表面に照射する電子線の出力及び照射面積は、全
蒸発実験において一定にし、電子線照射密度が1KW/
cm2 になる様に調整した。また浴温度は全ての蒸発実
験において、2000℃以下とした。
【0091】蒸発槽の耐久性を調査するために、以下に
示す加熱サイクル試験を行った。即ち、上記電子線照射
条件下で、Ti系合金浴を昇温し、一定電子線出力にて
100分間保持して、Tiの蒸発を行なった。尚Tiの
蒸発に伴い浴組成が変動することによるTiの蒸発速度
(成膜速度)が変動するのを防止するために、実施例1
と同様にして、Tiの蒸発量に見合うだけのTi原料
を、Tiワイヤーにより適宜Ti合金浴中に補給し続け
た。その後、電子線照射を停止し、真空中で蒸発槽を1
00℃以下まで冷却させ、真空蒸着室を大気開放して、
蒸発槽の割れ、侵食等の損傷状況を目視にて観察した。
その後、再び蒸着室を真空ポンプにて排気し、蒸発槽内
のTi合金原料を再加熱・蒸発させるサイクル加熱蒸発
試験を繰り返し行い、蒸発槽の耐久性を調査した。な
お、蒸発槽の耐久性は、目視観察により継続使用不可能
または困難と判断するまでの使用回数の大小にて評価し
た。得られた結果を比較例と併せて、表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】表2から次の様に考察できる。まず、Ti
浴中に本発明で規定するZrまたはMoを単独または混
合添加した場合(No.4〜16)では、Tiめっきの成膜速
度は、純Ti浴の場合よりもやや低下するものの、後述
する水冷式銅製蒸発槽を用いた場合の成膜速度に比べて
はるかに大きく、且つ黒鉛製蒸発槽の耐久性も改善され
ていることがわかる。これに対し、黒鉛系蒸発槽を用い
て、純Ti浴からTi蒸発を行う場合(No.1)では、最
も成膜速度が大きく、生産性が高いが、TiC層の成長
により蒸発槽の寿命が短い。またTi浴中にZrまたは
Moを5%未満で添加した場合(No.2〜3 )では、成膜
速度の低下は無いが、蒸発槽の寿命改善が認められな
い。またZrまたはMoの浴中合計含有量が本発明で規
定する上限値を超える場合(No.17 〜20)には、蒸発槽
の寿命改善効果は認められるものの、浴粘度、浴融点の
上昇により蒸発槽内で電子線が直接照射されない領域が
浴状態にならずに、凝固域として残存し、均一な溶融浴
を形成することが困難となる場合がある。また実蒸発表
面積の低下により、Tiの成膜速度は、純Ti浴からの
場合に比べて、大幅に低下する。更に No.21〜24は、黒
鉛系蒸発槽以外の蒸発槽を用いて、純Ti浴からのTi
蒸発を実施した結果であるが、水冷式銅製蒸発槽を用い
た場合(No.21 )では、蒸発槽自身の損傷は全く認めら
れないものの、電子線による加熱効率が劣悪であり、成
膜速度はかなり小さい。また、各種酸化物系セラミック
ス製蒸発槽を用いた場合(No.22 〜24)では、Ti浴と
蒸発槽材質との反応が早期に生じ、蒸発槽の寿命が黒鉛
製蒸発槽に比べて、極めて劣悪である。更に、成膜層中
に蒸発槽材質の成分が、不純物として混入していること
が判明した。
【0094】実施例3 黒鉛を主成分とする蒸発槽内に装入するCr系合金浴と
して下記表3に示した組成の各種Cr合金浴を真空蒸着
室内に配置し、電子線加熱方式にてCrを蒸発せしめ、
黒鉛系蒸発槽の侵食および割れの発生状況と共に、Cr
の蒸発速度の調査を行った。このとき黒鉛系蒸発槽に
は、黒鉛を99%以上含有する材料を、アイソスタティ
ックプレス成形し、所定の蒸発槽形状に削り出したもの
を使用した。従って、該蒸発槽は一体成形品となってい
る。該蒸発槽中に形成されたCr合金浴は10-2Pa台
の真空中で電子線を照射し実験に供した。また、電子線
の出力は徐々に上昇させ、所定の電子線出力になった時
点から、さらに50分間同出力で保持した後、電子線照
射を停止し、そのまま真空中で室温まで冷却した。尚各
種Cr合金浴からのCr蒸発速度を比較するために、該
合金浴表面に照射する電子線出力は全ての場合同一条件
とした。また浴温度は全ての蒸発実験において、200
0℃以下とした。
【0095】室温まで冷却された該蒸発槽を、真空蒸着
室から取り出し、目視により蒸発槽の侵食および割れ等
の損傷状況を観察した。損傷状況観察後、溶湯漏れ等の
問題のない場合については、重量減少分のCrを該合金
浴に追加後、再び該蒸発槽を真空蒸着室内に設置し、前
述の条件にて蒸発実験を行った。この一連の作業を1サ
イクルとし20サイクルの電子線照射試験を行った後、
蒸発槽を合金浴ごと半分に切断し、蒸発槽側面の合金浴
最表面付近の最も侵食の激しい部分の厚さを測定し、試
験前の蒸発槽側面厚さと比較することで耐久性の評価を
行った。ただし、サイクル試験途中で、蒸発槽の侵食が
激しく継続試験が困難であると判断されたもの、あるい
は使用不可能な程の割れが発生した場合は、その時点で
試験を中止した。また比較例としてZrおよびMoが本
発明の上限値および下限値を超える範囲、および水冷銅
蒸発槽を用いた場合について、同条件で評価を行った。
その結果を表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】No.1,2の比較例に示す水冷式銅製蒸発槽を
用いた場合では、蒸発槽自身の損傷は全く見られなかっ
たが、成膜速度(蒸発速度)が非常に小さく、生産性の
向上は望めない。黒鉛系蒸発槽を用いた場合について
も、ZrとMoの合計含有率が本発明の下限値より低い
比較例(No.3〜5 )は、Crの成膜速度は大きいもの
の、サイクル試験後の蒸発槽侵食が大きく、ひどい場合
には試験途中での割れ発生に至った。またZrもしくは
Moの内一方の元素のみを添加した比較例(No.16〜1
7)では、十分なバリアー皮膜が形成されず、蒸発槽の
侵食が見られると共に、Moのみを大量に添加した場
合、合金浴の融点が上昇し、電子線が照射された部位の
みしか溶解せず、蒸発量が非常に不安定となった。更に
ZrとMoの合計含有量が本発明の上限値を超える比較
例(No.14,15)についても、同様に均一に溶解せず蒸発
量に大きな変動が見られた。これに対し、ZrとMoの
合計含有量が本発明の範囲にある場合、黒鉛系蒸発槽の
損傷は、著しく抑制され、且つ水冷銅蒸発槽に比べ高蒸
発速度を得ることが可能である。
【0098】実施例4 図3に示した連続蒸着めっき設備を用いて、下記の製造
条件で各種蒸着めっき塗装鋼板の製造を行い、得られた
製品の性能を調べた。このとき参考例としてCuめっき
についても行なった。 (製造条件) 被処理帯 : プレコート鋼板 塗膜種類:アクリル変性ポリエステル系樹脂 塗膜厚さ:20μm 塗装原板:EG(20g/m2 ) 前処理 : 水洗・乾燥後に、加熱炉に導入 炉内温度 : 常温〜250℃ 炉内雰囲気ガス : 表4に記載 真空シール装置及びガス冷却帯の雰囲気ガス :低露点
(-50℃)、低酸素濃度(20ppm) の窒素ガス 蒸着室入側被処理帯温度 : 常温 めっき種類 : Alめっき、Cuめっき 蒸発浴 : Alめっき;Al−3%Zr−
3%Mo合金浴 Cuめっき;純Cu浴 加熱蒸発源 : ピアス型電子銃 蒸発槽 : 黒鉛系(CIP法により製造) 蒸発原料補給 : ワイヤー状(9φmm)原料を
ワイヤーフィーダにより浴中に補給
【0099】得られた結果を比較材とともにまとめて表
4に示す。なお、表4中の記号の内容は、以下の通りで
ある。 <蒸着室真空度>電離真空計にて、蒸着室内の真空度を
モニターした。 ○:10-2Pa台を保持し、真空度の悪化がほとんど認
められない △:10-1Pa台まで真空度が悪化 ×:100 Pa台まで真空度が悪化し、蒸着めっき処理
の継続不可能 <めっき外観>めっき外観を目視にて評価した。 ○:めっき表面の変色、ムラが認められず、金属光沢を
有する △:めっき表面の部分的に発生 ×:めっき表面が完全に変色 <めっき密着性>インパクト試験により、セロテープに
付着しためっき膜により評価した。 ○:めっき膜の剥離が全くなく、めっき密着性優 △:部分的なめっき剥離が認められ、めっき密着性劣 ×:インパクトせずに、平板部のままでも、セロテープ
にめっき膜が剥離して付着し、めっき密着性劣悪
【0100】
【表4】
【0101】表4から明らかなように、本発明の製造方
法を採用することにより、めっき種類に関わらず蒸着室
内の大幅な真空度の悪化を生じずに、めっき外観および
めっき密着性の良好な蒸着めっき塗装鋼板を、迅速に且
つ製造することが可能であった(No.1〜5 )。一方、加
熱帯にて脱ガス前処理を実施しなかった場合、および低
露点、低酸素濃度なる不活性ガス雰囲気下以外の雰囲気
にて加熱処理した場合には、蒸着室の大幅な真空度の低
下が認められ、得られた蒸着めっき膜のめっき外観も変
色しており、良好なめっき密着性が得られなかった(N
o.6〜9 、No.15,16)。
【0102】尚図2に示した蒸着めっき設備にて、塗装
鋼板への蒸着Alめっきおよび蒸着Cuめっきを行った
場合には、図3に示す加熱帯にて脱ガス処理を実施しな
かった場合と同様に、蒸着めっき処理時に蒸着室内真空
度が大幅に悪化し、得られたAlめっきおよびCuめっ
きのめっき表面外観に変色が生じると共に、めっき膜の
塗装鋼板に対する密着性にも劣っていた。このことから
も、被処理帯である塗装鋼板を蒸着めっき処理前に、予
め低露点、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気下による加熱
脱ガス処理が、非常に有効であることがわかる。
【0103】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、蒸
発槽の耐久性を可及的に延長して交換頻度を少なくし、
且つ金属元素の蒸発速度を高めて連続生産性の向上を図
ることのできる真空蒸発方法が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するための連続蒸着設備の一構成
例を示す概略説明図である。
【図2】実験で用いた連続蒸着設備の構成例を示す概略
説明図である。
【図3】本発明を実施するための連続蒸着設備の他の構
成例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1 被処理材 2 電子銃 3 電子線 4 黒鉛系蒸発槽 5 溶融金属浴 12 真空蒸着室 17 テーブルロール 18 接続チャンバー 19a 入側真空シール装置 19b 出側真空シール装置 20 シールロール 21 デフレクタロール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 入江 広司 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内 (72)発明者 綾部 東太 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内 (72)発明者 加藤 淳 兵庫県加古川市尾上町池田字池田開拓2222 番地1 株式会社神戸製鋼所加古川研究地 区内 (72)発明者 荒賀 邦康 兵庫県加古川市尾上町池田字池田開拓2222 番地1 株式会社神戸製鋼所加古川研究地 区内 (72)発明者 寺田 誠 兵庫県加古川市尾上町池田字池田開拓2222 番地1 株式会社神戸製鋼所加古川研究地 区内 (72)発明者 木原 敦史 兵庫県加古川市尾上町池田字池田開拓2222 番地1 株式会社神戸製鋼所加古川研究地 区内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶融金属浴と直接接触する部分を黒鉛を
    主成分とする物質で構成した蒸発槽を用い、真空または
    希薄ガス雰囲気下で、蒸発槽中の金属元素を加熱蒸発す
    るに当たり、前記蒸発槽内に、ZrおよびMoの含有量
    が合計で5〜50重量%である溶融Al合金浴を形成す
    ると共に、該溶融Al合金浴の温度を2000℃以下と
    し、且つ加熱蒸発する手段として、電子線加熱方式を用
    いて溶融Al合金浴中のAlを蒸発させることを特徴と
    する金属元素の真空蒸発方法。
  2. 【請求項2】 溶融金属浴と直接接触する部分を黒鉛を
    主成分とする物質で構成した蒸発槽を用い、真空または
    希薄ガス雰囲気下で、蒸発槽中の金属元素を加熱蒸発す
    るに当たり、前記蒸発槽内に、Zrおよび/またはMo
    の含有量が5〜30重量%である溶融Ti合金浴を形成
    すると共に、該溶融Ti合金浴の温度を2000℃以下
    とし、且つ加熱蒸発する手段として、電子線加熱方式を
    用いて溶融Ti合金浴中のTiを蒸発させることを特徴
    とする金属元素の真空蒸発方法。
  3. 【請求項3】 溶融金属浴と直接接触する部分を黒鉛を
    主成分とする物質で構成した蒸発槽を用い、真空または
    希薄ガス雰囲気下で、蒸発槽中の金属元素を加熱蒸発す
    るに当たり、前記蒸発槽内に、ZrおよびMoの含有量
    が合計で50〜90重量%である溶融Cr合金浴を形成
    すると共に、該溶融Cr合金浴の温度を2000℃以下
    とし、且つ加熱蒸発する手段として、電子線加熱方式を
    用いて溶融Cr合金浴中のCrを蒸発させることを特徴
    とする金属元素の真空蒸発方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011021846A (ja) * 2009-07-17 2011-02-03 Kyoshin Engineering:Kk 高精密部品の加圧冷却処理方法

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