JPH0717669Y2 - 自転車用変速装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野及び考案の概要］ 本考案は、自転車用変速装置に関するものであり、変速
切換えが円滑に行なえるようにしたものである。

［従来技術とその問題点］ 変速装置を具備した自転車は、後輪ハブやクランクに大
小の複数のチェーンギヤを組合せて構成した多段チェー
ンギヤ装置が取付けてあり、この前後の多段チェーンギ
ヤ装置相互において一組のチェーンギヤにチェーンが掛
けられている。そして、このチェーンは、シフトレバー
と連動したディレイラーのチェーンガイドによって左右
方向に変位せしめられるようになっており、この左右方
向への移動力によって他のチェーンギヤに掛換えられる
ようになっている。

ところで、従来の変速装置では、小径チェーンギヤから
大径チェーンギヤにチェーンを掛換える場合において
は、チェーンをディレイラーによって大径チェーンギヤ
側に変位させても、チェーンにおけるリンクプレートの
外側面が大径チェーンギヤの歯部内側面と干渉して大径
チェーンギヤで受止められることになり、この結果、前
記チェーンを大径チェーンギヤの歯部外方側へオーバー
シフトして前記大径チェーンギヤの側面に強く押しつけ
ないと、チェーンが大径チェーンギヤの歯に拾われな
い。又、大径チェーンギヤから小径チェーンギヤにチェ
ーンを掛換える場合においては、チェーンのリンクプレ
ートの内側面が、大径チェーンギヤの歯部分の外側面に
強く押付けられ、これによる押圧力のため、チェーンの
大径チェーンギヤの歯からの外れが悪い。従って、従来
の変速装置では、変速切換えが円滑に行なえない。

［課題］ 本考案は、このような『チェーンガイド（20）によって
チェーン（Ｃ）を左右方向に移動せしめ、チェーン
（Ｃ）の走行に伴って、該チェーン（Ｃ）を大小チェー
ンギヤ間で掛換えるようにした自転車用変速装置』に於
いて、変速切換えが円滑に行なえることができるように
することを、その課題とする。

《第１請求項の考案について》 ［技術的手段］ 上記課題を解決する為に講じた本考案の技術的手段は、
『大径チェーンギヤには、歯底から正回転方向前方に向
かって内周側に傾斜するスリット（Ｓ）を開削し、該ス
リット（Ｓ）の後方該の壁面を後方に向って外側に傾斜
する傾斜面（38）とすると共に、スリット（Ｓ）の開削
域を該スリット（Ｓ）の開放端に対して前方側の少なく
とも一枚の歯を含む範囲に設定した』ことである。

［作用］ 上記技術的手段は次のように作用する。

チェーンガイド（20）を小径チェーンギヤ側から大径チ
ェーンギヤ側に移動させると、チェーンガイド（20）の
部分に位置するチェーン（Ｃ）はこれの張力に抗して大
径チェーンギヤの外周側に位置する。そして、小径チェ
ーンギヤからチェーンガイド（20）の間ではチェーン
（Ｃ）は傾斜状態となる。このものでは、前記スリット
（Ｓ）の後方側の側壁面を後方に向って外側に傾斜させ
てあるから、大径チェーンギヤが回転してチェーン
（Ｃ）がスリット（Ｓ）の位置までくると、チェーン
（Ｃ）の外側のリンクプレートがスリット（Ｓ）に侵入
する。そして、この侵入したリンクプレートはスリット
（Ｓ）と引掛ることとなり、チェーン（Ｃ）は歯先側に
引き上げられて、歯と咬み合うこととなる。

このとき、チェーン（Ｃ）は小径チェーンギヤからチェ
ーンガイド（20）までの間では大径チェーンギヤの弦の
方向に走行しているが、このスリット（Ｓ）の開削方向
は前方に傾斜させてあるから、チェーン（Ｃ）の前記走
行部分はこの傾斜したスリット（Ｓ）と広い範囲で係合
可能となり、チェーン（Ｃ）と歯が咬み合い易くなる。

また、スリット（Ｓ）の開削域がこれの開放端に対して
前方側の少なくとも一枚の歯を含む範囲に設定され、し
かも、歯底から正回転方向前方に向かって内周側に傾斜
するから、該スリット（Ｓ）の外周側部分は撓み部とし
て機能しチェーン（Ｃ）が大径チェーンギヤの歯に乗り
換え易い。

逆に、チェーンガイド（20）を大径チェーンギヤから小
径チェーンギヤに移動させると、従来のものと同じ態様
で小径チェーンギヤ側に掛け換わることとなる。この場
合にも、チェーンガイド（20）を小径チェーンギヤ側に
移動させた場合には、スリット開削域の外周側部分は撓
み部として機能し、チェーンの走行に伴って、その先端
部が小径チェーンギヤ側に変位する。従って、チェーン
（Ｃ）の走行方向と大径チェーンギヤの歯の並ぶ方向と
がズレることとなり、チェーン（Ｃ）は大径チェーンギ
ヤから無理なく容易に外れ、小径チェーンギヤと咬み合
うこととなる。

［効果］ 本考案は上記構成であるから次の特有の効果を有する。

小径チェーンギヤから大径チェーンギヤにチェーン
（Ｃ）が掛け換わる場合、リンクプレートがスリット
（Ｓ）に引掛った状態でチェーン（Ｃ）は歯先に引き上
げられることとなるから、既述従来のものと比べて、チ
ェーン（Ｃ）は滑ることなく確実に且無理なく変速切換
えが行なえるものとなる。

特に、前記スリット（Ｓ）の開削方向が、大径チェーン
ギヤへのチェーン掛け換えの際の、チェーンの走行方向
と一致することから、リンクプレートとスリット（Ｓ）
の後部壁面とが引っ掛かり易い。また、スリット（Ｓ）
の外周部が左右に撓み得るから、大小チェーンギヤ相互
間でのチェーンの掛け換えの際のチェーン（Ｃ）の乗り
換えに動作の抵抗が少ない。この点で、上記構成のスリ
ット（Ｓ）を具備しないものに比べて変速切換えが一層
円滑に且確実に行えるものとなる。

《第２請求項の考案について》 第２請求項の考案は、第１請求項の考案におけるスリッ
ト（Ｓ）の壁面形状を特定したもので、その特定した技
術的手段は、『スリット（Ｓ）の前方側の側壁面を後方
側のそれと略平行に形成した』ことである。

チェーンガイド（20）を大径チェーンギヤ側に移動させ
たときの咬み合部におけるチェーン（Ｃ）の走行姿勢と
スリット（Ｓ）の構成壁とが平面図上一致し、チェーン
（Ｃ）の外側のリンクプレートのスリット（Ｓ）への侵
入は容易なものとなって、チェーン（Ｃ）はスリット
（Ｓ）に引掛りやすいものとなる。従って、変速切換え
はさらに円滑に行なえるものとなる。

［実施例］ 以下、本考案の実施例を第１図〜第７図に基づいて説明
する。

この実施例の変速装置は、第１図及び第２図に示すよう
に、フロント側多段チェーンギヤ（FG）を大径チェーン
ギヤ（３）と小径チェーンギヤ（４）から構成し、又、
リヤー側多段チェーンギヤ（RG）は歯数の異なる５枚の
チェーンギヤにより構成し、これら相互間にチェーン
（Ｃ）を掛設したものである。

上記フロント側多段チェーンギヤ（FG）にはフロントデ
ィレイラー（Ｆ）を、リヤー側多段チェーンギヤ（RG）
にはリヤーディレイラー（Ｒ）をそれぞれ対応して装着
してあり、各多段チェーンギヤの組合せにより10段変速
が行なえるようになっている。

上記したフロントディレイラー（Ｆ）はフロント側多段
チェーンギヤ（RG）の軸線方向に移動するチェーンガイ
ド（20）を具備し、このチェーンガイド（20）の軸線方
向（左右方向の移動）への移動により、チェーン（Ｃ）
を大径・小径チェーンギヤ（３），（４）の一つに掛か
えるようにするものであり、又、リヤーディレイラー
（Ｒ）は一対のプーリ（Ｐ），（Ｐ）をもった掛換枠
（Ｙ）を具備し、この掛換枠（Ｙ）の前記リヤー側多段
チェーンギヤにおける軸線方向への移動により、各チェ
ーンギヤの一つにチェーン（Ｃ）を掛換えるようにする
ものである。

以上の如く構成された変速装置に適用する本考案のチェ
ーンギヤについて説明する。

この実施例では、本考案をフロント側多段チェーンギヤ
（FG）の大径チェーンギヤ（３）に採用したものであ
り、第３図及び第５図に示すように、大径チェーンギヤ
（３）における左側クランクアームに対して後方に位置
する部分に、歯底から内周に向って前方に45°傾斜させ
たスリット（Ｓ）を開削すると共に、このスリット
（Ｓ）の後方側の側壁面を、外側を向く傾斜面（38）と
している。

この実施例のものでは、上記したスリット（Ｓ）は、そ
の開削長さを25mm、開削幅を1.5mmに設定してあり、
又、傾斜面（38）の傾斜範囲は前記スリット（Ｓ）から
１つ後方の歯底までに設定してある。

従って、この自転車用変速装置では、車体やハンドル等
に取付けられてあるシフトレバーの操作によってフロン
トディレイラー（Ｆ）のチェーンガイド（20）が外寄り
に移動し、それに伴って、小径チェーンギヤ（４）に掛
けられたチェーン（Ｃ）が外寄りに大径チェーンギヤ
（３）を押圧するが、回転してチェーン（Ｃ）が上記し
たスリット（Ｓ）の位置までくると、第３図及び第４図
に示すように、チェーンリンクがスリット（Ｓ）の底部
近傍に侵入し、チェーン（Ｃ）はスリット（Ｓ）を上方
に沿うようにして大径チェーンギヤ（３）の歯先に押し
上げられる。

従って、スリット（Ｓ）の底部近傍から後方の歯先迄の
チェーン（Ｃ）の流れに沿った長い傾斜面がチェーン
（Ｃ）を引掛けて拾うこととなるので、この箇所におい
て、チェーン（Ｃ）は滑ることなく確実に且無理なく大
径チェーンギヤ（３）の歯先に誘導され、適正位置に収
まる。

尚、このチェーン（Ｃ）の掛け換えは、左側クランクア
ームが最上部より少し回転方向前方に位置し、これより
更に踏み込んでいくときにシフトレバーを操作するよう
にして行なう。

又、上記実施例では、スリット（Ｓ）の開削方向を内周
に向って前方に傾斜させたものとしたが、このスリット
（Ｓ）を、歯底から半径方向に開削し、これと連続して
前方に向って開削して構成されたＬ字状のものとしても
よい。

第６図に示す如くものは、半径方向の開削距離を10mm、
前方に向かう開削距離を30mmに設定して、大径チェーン
ギヤ（３）の周縁部に３つの歯を具備する長さの撓み部
（Ｔ）を形成させたもので、スリット（Ｓ）における半
径方向開削部の後方側の側壁面を後方に向って外側に傾
斜させている。

このものでは、上記した実施例における効果に加えて、
チェーンガイド（20）を左方向に移動させた場合には、
第７図に示す如く、撓み部（Ｔ）の先端部が小径チェー
ンギヤ側に変位して、チェーン（Ｃ）の走行方向と大径
チェーンギヤの歯の並ぶ方向とがズレることとなるか
ら、チェーン（Ｃ）は大径チェーンギヤから無理なく外
れ、小径チェーンギヤとスムーズに咬み合うこととな
る。

又、上記した二つの実施例のものは、スリット（Ｓ）の
後方側の側壁面のみを傾斜させたものとしたが、これを
第２請求項の考案の技術的手段の項に記載した如く、前
方側の側壁面も前記後方側の傾斜面と平行に傾斜させた
ものとしてもよい。この場合、記述した作用により、変
速切換えがより円滑なものとなる。

尚、上記した全ての実施例では、フロント側多段チェー
ンギヤ（FG）を二段のものとしたが、三段以上のものに
本考案を採用してもよく、この場合、一番内側の最小チ
ェーンギヤ以外のそれに本考案を採用すればよい。更
に、後輪に取付けられるリヤー側多段チェーンギヤ（F
G）に本考案を採用してもよい。

又、本考案は楕円形の変形ギヤの場合についても採用で
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は自転車用変速装置の説明図，第３図
〜第７図は大径チェーンギヤに本考案を適用した場合の
実施例の説明図であり、図中、 （Ｃ）……チェーン （Ｓ）……スリット （20）……チェーンガイド

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】チェーンガイド（20）によってチェーン
   （Ｃ）を左右方向に移動せしめ、チェーン（Ｃ）の走行
   に伴って、該チェーン（Ｃ）を大小チェーンギヤ間で掛
   換えるようにした自転車用変速装置に於いて、大径チェ
   ーンギヤには、歯底から正回転方向前方に向かって内周
   側に傾斜するスリット（Ｓ）を開削し、該スリット
   （Ｓ）の後方側の壁面を後方に向って外側に傾斜する傾
   斜面（38）とすると共に、スリット（Ｓ）の開削域を該
   スリット（Ｓ）の開放端に対して前方側の少なくとも一
   枚の歯を含む範囲に設定した自転車用変速装置。
2. 【請求項２】スリット（Ｓ）の前方側の壁面を後方側の
   それと略平行に形成した実用新案登録請求の範囲第１項
   に記載の自転車用変速装置。