JPH07139633A - 回転軸シール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 内部リークを確実に阻止して、回転軸に対す
る第二シールエレメントの共廻りを防止できる回転軸シ
ールを提供する。 【構成】 一端縁に内鍔部10を有する円環状の第一保持
金具６の外周面14と、内鍔部10の表面とに、ゴム弾性体
の第一シールエレメント７を、被覆し、内鍔部10の内端
面に被覆されてなる円環状平板部16の端面に、合成樹脂
製第二シールエレメント９の円環平板状外周縁部20の一
端面を、当接させ、第二シールエレメント９の外周縁部
20の他端面を、第二保持金具８で第一シールエレメント
７の平板部16の方向へ押圧して、第二シールエレメント
９を挟着した回転軸シールであって、第一シールエレメ
ント７の平板部16の端面に、環状小凸部17を形成する。
小凸部17の内径側の山裾部に沿って内小凹部18を形成
し、かつ小凸部17の外径側の山裾部に沿って外小凹部19
を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は回転軸シールに関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、カーエアコン用コンプレッサに
おいて、密封流体は冷媒（ガス状、及び油等に溶解した
液状）及び冷凍機油であって、所定圧力に保持される。
従って、回転軸の静止時と回転時に流体漏れを防止する
必要がある。

【０００３】そこで、図４に示すような回転軸シールが
開発された。この回転軸シールは、第一保持金具ａと、
第一保持金具ａに被覆一体化されたゴム弾性体の第一シ
ールエレメントｂと、第二保持金具ｃと、第一保持金具
ａのカシメｄにより第二保持金具ｃと第一シールエレメ
ントｂとの間に挟着される合成樹脂製第二シールエレメ
ントｅと、を備えている。

【０００４】そして、第一シールエレメントｂをハウジ
ングｆの孔に密着させてハウジングｆ側からの流体ｈ漏
れを防止し、かつ第一シールエレメントｂを回転軸ｇの
外周面に接触させて回転軸ｇの静止時における回転軸ｇ
側からの流体ｈ漏れを防止するようになっている。

【０００５】さらに、第二シールエレメントｅを回転軸
ｇの外周面に接触させて回転軸ｇの静止時及び回転時に
おける回転軸ｇ側からの流体ｈ漏れを防止するようにな
っている。

【０００６】また、カシメｄにより、第一シールエレメ
ントｂの平板部ｉと第二シールエレメントｅの円環平板
状外周縁部ｊを所定接触面圧にて密着させて第一シール
エレメントｂと第二シールエレメントｅの間からの流体
ｈ漏れ（図４中に小矢印にて示したいわゆる内部リー
ク）を、防止している。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】ところが、第一シール
エレメントｂの円環状平板部ｉと第二シールエレメント
ｅの円環状外周縁部ｊは、（組立前の自由状態では平坦
面であるから、）組立状態では、平坦面同士の接触とな
る。そのため、接触面圧分布はフラットなものとなる。
従って、カシメｄが不十分で、第一シールエレメントｂ
の円環状平板部ｉと、第二シールエレメントｅの円環状
外周縁部ｊの接触面圧が低下した場合、図４中に小矢印
にて示す如く、内部リークを阻止できず、かつ第二シー
ルエレメントｅが回転軸ｇと共廻りする虞があった。

【０００８】そこで、本発明は、内部リークを防止して
シール性能を安定させ、回転軸に対する第二シールエレ
メントの共廻りを防止できる回転軸シールを提供するこ
とを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明に係る回転軸シールは、一端縁に内鍔部を
有する円環状の第一保持金具の外周面と、該内鍔部の表
面とに、ゴム弾性体の第一シールエレメントを、被覆
し、該内鍔部の内端面に被覆されてなる該第一シールエ
レメントの円環状平板部の端面に、合成樹脂製第二シー
ルエレメントの円環平板状外周縁部の一端面を、当接さ
せると共に、該第二シールエレメントの外周縁部の他端
面を、第二保持金具で上記第一シールエレメントの平板
部の方向へ押圧して、該第二シールエレメントを挟着し
た回転軸シールであって、上記挟着による組立前の状態
に於て、上記第一シールエレメントの平板部の端面に、
環状小凸部を形成すると共に、該小凸部の内径側の山裾
部に沿って内小凹部を形成し、かつ該小凸部の外径側の
山裾部に沿って外小凹部を形成したものである。

【００１０】

【作用】第一保持金具をカシメ等することによって、第
二保持金具を、第一シールエレメントの平板部の方向へ
押圧すれば、第二シールエレメントの外周縁部の一端面
と第一シールエレメントの平板部の端面が所定の接触面
圧で密着して、該平板部の小凸部が圧縮されるので、該
平板部の端面と外周縁部の一端面の接触面圧分布は、小
凸部に対応する接触部位では、小凸部以外の平坦面同士
の接触部位と比べて一段と高くなる。

【００１１】そのため、カシメ等が不十分で、第二シー
ルエレメントの外周縁部の一端面と第一シールエレメン
トの平板部の端面の接触面圧が全体的に低下して、上記
平坦面同士の接触部位の面圧では、第一シールエレメン
トと第二シールエレメントの間からの流体漏れを阻止で
きなくなったとしても、小凸部に対応する接触部位で
は、その流体漏れを封止するに十分な接触面圧が残るの
で、内部リークが防止される。

【００１２】しかも、カシメ等が不十分であっても、上
記小凸部による接触面圧増加によって、第二シールエレ
メントの外周縁部の挟着力の低下が補償され、第二シー
ルエレメントが回転軸と共廻りするのを防止できる。

【００１３】

【実施例】以下、実施例を示す図面に基づいて本発明を
詳説する。

【００１４】図１は本発明に係る回転軸シールを示し、
この回転軸シールは、例えば、コンプレッサのケース等
のハウジング１の孔部２と、回転軸３との間に、嵌着さ
れ、回転する回転軸３の外周面４に摺接して、流体収納
室Ｒ内の流体Ｍを密封する。

【００１５】図例では、ハウジング１の孔部２の内周面
２ａに固着された止め輪５にて、回転軸シールの抜けを
防止している。

【００１６】しかして、回転軸シールは、（流体収納室
Ｒ側の）一端縁に内鍔部10を有する円環状の第一保持金
具６と、第一保持金具６に保持される第一シールエレメ
ント７と、第一保持金具６に内嵌される倒立Ｌ字型断面
の円環状第二保持金具８と、第一保持金具６の（低圧側
Ａの）他端縁のカシメＴにより第二保持金具８と第一シ
ールエレメント７との間に挟着される（四ふっ化エチレ
ン樹脂等のふっ素系樹脂（ＰＴＦＥ）等の）合成樹脂か
らなる第二シールエレメント９と、を備えている。

【００１７】ゴム弾性体からなる第一シールエレメント
７は、第一保持金具６の外周面14と内鍔部10の（外と内
の）表面とに被覆され、両者７，６は密着一体化され
る。

【００１８】図２は第一シールエレメント７の自由状態
を示し、この図２と図１に示すように、円環状の第一シ
ールエレメント７は、回転軸３の外周面４に接触するシ
ールリップ部11と、孔部２の内周面２ａに当接すると共
に第一保持金具６の外周面14を被覆する外周当接片部12
と、外周当接片部12とシールリップ部11とを連結すると
共に内鍔部10の表面を被覆するＵ字型断面の連結片部13
と、からなる。

【００１９】シールリップ部11は、断面形状が略くの字
形で、その先端部は、内径方向及び流体収納室Ｒ方向へ
所定角度で傾斜する。シールリップ部11の先端部には、
内径方向に突出して回転軸３の外周面４に略線接触状に
接触（摺接）する尖鋭状内周突条部11ａが形成され、回
転軸３が静止している状態では、内周突条部11ａが弾発
的に接触して流体Ｍを封止する。なお、シールリップ部
11は、モールド成形のままにて仕上げられる。

【００２０】外周当接片部12の外周面には複数の外周突
条15…が形成されており、この外周突条15…を孔部２の
内周面２ａに密着させて、該内周面２ａ側における流体
収納室Ｒから低圧側Ａへの流体Ｍの漏れを防止してい
る。

【００２１】また、図２と図３に示すように、連結片部
13は、第一保持金具６の内鍔部10の内端面10ａに被覆さ
れてなる円環状平板部16を有し、第二シールエレメント
９と接触する平板部16の端面16ａには、第一保持金具６
の軸心を中心とする円環状の小凸部17が形成される。

【００２２】さらに、小凸部17の内径側の山裾部に沿っ
て内小凹部18が形成されると共に、小凸部17の外径側の
山裾部に沿って外小凹部19が形成される。図例では、小
凸部17及び内外小凹部18，19は、夫々円弧状断面に形成
される。

【００２３】次に、図示省略するが、第二シールエレメ
ント９は、回転軸３を挿入する前の状態───自由状態
───では、円環平板状であり、その内周縁部は自由端
縁として、軸心と直交する平面上に在る。

【００２４】そして、回転軸３に挿入する時に、第二シ
ールエレメント９の内周縁部を流体収納室Ｒ側───高
圧側───へ弯曲させて、回転軸３の外周面４に所定幅
で接触させて図例の如くシールリップ部22を形成する。

【００２５】シールリップ部22の回転軸接触面23には、
自由状態における円環平板状第二シールエレメント９の
軸心を中心とする複数の同心円の傾斜状溝Ｈ…が、旋盤
加工にて切込み形成されている。

【００２６】この溝Ｈは、自由状態では閉状態となって
いるが、図例の如く第二シールエレメント９の内周縁部
を弯曲させることにより、流体収納室Ｒ側から低圧側Ａ
へ向って順次開状となり、開状の溝Ｈにより区画された
溝間の領域に於て、流体収納室Ｒから低圧側Ａへの流体
Ｍの漏れを封止するに十分な接触面圧に、高めることが
できる。

【００２７】ところで、回転軸３が回転している状態で
は、第一シールエレメント７のシールリップ部11がモー
ルド成形のままにて仕上げられるので、シールリップ部
11と回転軸３の外周面４の間から第二シールエレメント
９側へ僅かに流体Ｍが漏れるが、この漏れた流体Ｍは、
シールリップ部11，22の摩耗防止及び発熱防止のための
潤滑作用をなす。

【００２８】なお、溝Ｈとしては、自由状態における円
環平板状第二シールエレメント９の軸心を中心とする螺
旋溝としてもよく、その場合、回転軸３の回転に伴い、
ねじポンプの作用（ポンピング効果）により、流体Ｍが
流体収納室Ｒへ還流されるように、螺旋溝を構成する。

【００２９】この第二シールエレメント９の（弯曲され
ない）円環平板状外周縁部20の一端面20ａを、第一シー
ルエレメント７の平板部16の端面16ａに、当接させると
共に、外周縁部20の他端面20ｂに第二保持金具８の内鍔
部21を当接させ、第一保持金具６のカシメＴ（図１参
照）によって、第二保持金具８を、平板部16の方向へ押
圧して、第二シールエレメント９の外周縁部20を挟着す
る。

【００３０】これにより、第二シールエレメント９の外
周縁部20の一端面20ａと第一シールエレメント７の平板
部16の端面16ａが所定の接触面圧で密着するので、第一
シールエレメント７のシールリップ部11から第二シール
エレメント９側へ漏れた流体Ｍが、第一シールエレメン
ト７と第二シールエレメント９との間を矢印Ｆのように
通って低圧側Ａへ漏れる、いわゆる内部リークを、防止
できる。

【００３１】このように、図３に示す如く、第一シール
エレメント７の平板部16の端面16ａと第二シールエレメ
ント９の外周縁部20の一端面20ａとの円環状の接触部位
の内で、（符号Ｃで示す）平坦面同士の接触部位の面圧
で十分に内部リークを防止できるのであるが、それに加
えて、外周縁部20の一端面20ａにて、平板部16の小凸部
17が圧縮されるので、該端面16ａと一端面20ａの接触面
圧分布は、小凸部17に対応する範囲で急激に高まること
になり、小凸部17と一端面20ａの接触部位で密封性が一
層増大して、内部リークを確実に阻止できる。

【００３２】このとき、カシメＴ（図１参照）が不十分
で、第二シールエレメント９の外周縁部20の一端面20ａ
と第一シールエレメント７の平板部16の端面16ａの接触
面圧が全体的に低下して、上記平坦面同士の接触部位の
面圧が不足し、流体Ｍが矢印Ｆのように第一シールエレ
メント７と第二シールエレメント９の間に浸入しても、
小凸部17と一端面20ａの接触部位では流体Ｍの漏れを封
止するに十分な接触面圧が維持されるので、内部リーク
を防止できる（図３参照）。

【００３３】しかも、カシメＴ（図１参照）が不十分で
あっても、小凸部17による接触面圧増加によって、第二
シールエレメント９の外周縁部20の挟着力の低下が補償
され、第二シールエレメント９が回転軸３と共廻りする
のを防止できる。

【００３４】なお、内小凹部18と外小凹部19の合計の容
積は、小凸部17の体積よりも大きく設定し、第二シール
エレメント９による小凸部17の圧縮変形を、内外小凹部
18，19で十分吸収して逃がすようにするのが望ましい。

【００３５】このようにすれば、逃げ場所を失った小凸
部17に密着を邪魔されて、平板部16の端面16ａと外周縁
部20の一端面20ａの間に間隙が生じて、接触面圧が局部
的に大幅に低下するようなことが無く、密封性を損なわ
ない。

【００３６】なお、本発明は上述の実施例に限定され
ず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更自由であ
る。例えば、小凸部17、内小凹部18及び外小凹部19の本
数を複数本として同心円状に配置しても良く、また、夫
々の位置及び形状の変更は自由である。

【００３７】

【発明の効果】本発明は上述の如く構成されているの
で、次に記載する効果を奏する。

【００３８】本発明の回転軸シールでは、第二シールエ
レメント９の外周縁部20の一端面20ａにて、第一シール
エレメント７の平板部16の小凸部17が圧縮されて、小凸
部17に対応する部位で接触面圧がピークを示すので、第
一シールエレメント７と第二シールエレメント９の間か
ら低圧側Ａへの流体Ｍの漏れを確実に封止できて、内部
リークを阻止できる。

【００３９】第一保持金具６のカシメＴ等が不十分で、
第二シールエレメント９の外周縁部20の一端面20ａと第
一シールエレメント７の平板部16の端面16ａの接触面圧
が全体的に低下しても、小凸部17と一端面20ａの接触部
位にて、流体Ｍ漏れを阻止できるので、内部リークに対
するシール性能が安定すると共に、第二シールエレメン
ト９の回転軸３との共廻りも防止できる。

【００４０】第一シールエレメント７を成型する金型
に、小凸部17、内小凹部18及び外小凹部19に対応する成
型面を加工するだけでよいので、本発明の適用が容易
で、コストアップを防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す断面図である。

【図２】第一シールエレメントの自由状態を示す要部拡
大断面図である。

【図３】要部拡大断面図である。

【図４】従来例を示す断面図である。

【符号の説明】

６ 第一保持金具 ７ 第一シールエレメント ８ 第二保持金具 ９ 第二シールエレメント 10 内鍔部 10ａ 内端面 14 外周面 16 平板部 16ａ 端面 17 小凸部 18 内小凹部 19 外小凹部 20 外周縁部 20ａ 一端面 20ｂ 他端面

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一端縁に内鍔部を有する円環状の第一保
   持金具の外周面と、該内鍔部の表面とに、ゴム弾性体の
   第一シールエレメントを、被覆し、該内鍔部の内端面に
   被覆されてなる該第一シールエレメントの円環状平板部
   の端面に、合成樹脂製第二シールエレメントの円環平板
   状外周縁部の一端面を、当接させると共に、該第二シー
   ルエレメントの外周縁部の他端面を、第二保持金具で上
   記第一シールエレメントの平板部の方向へ押圧して、該
   第二シールエレメントを挟着した回転軸シールであっ
   て、上記挟着による組立前の状態に於て、上記第一シー
   ルエレメントの平板部の端面に、環状小凸部を形成する
   と共に、該小凸部の内径側の山裾部に沿って内小凹部を
   形成し、かつ該小凸部の外径側の山裾部に沿って外小凹
   部を形成したことを特徴とする回転軸シール。