JPH07108349A - 鋳造用金型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】エア抜き孔に残存するバリを容易に除去するこ
とを可能とし、高圧鋳造等に好適に用いることのできる
エア抜き構造を有する鋳造用金型を提供する。 【構成】可動型１に設けられたキャビティ空間６と型外
とを連通する貫通孔１ａ内にベントピン３が摺動可能に
嵌挿されている。ベントピン３は、可動型１の壁面とで
画定されて注湯時にキャビティ空間６と型外とを連通す
るエア抜き孔Ｈを有し、注湯時にキャビティ空間６内の
エアはエア抜き孔Ｈから型外へ排出される。可動型１と
ベントピン３とは油圧シリンダ４により相対変位可能と
され、可動型１にはベントピン３との相対変位により上
記エア抜き孔Ｈ内に挿脱可能な挿通部材としての凸部５
が設けられている。鋳造品を離型する際、油圧シリンダ
４の作動によりベントピン３を後退させ、凸部５をエア
抜き孔Ｈ内に挿通させることにより、エア抜き孔Ｈ内の
バリを除去する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はエア抜き構造を有する鋳
造用金型に関し、とくに高圧鋳造やダイカスト鋳造に好
適に用いることのできる鋳造用金型に関する。

【０００２】

【従来の技術】アルミニウム合金やマグネシウム合金の
溶湯から鋳造成形により鋳造品を製造するに際し、湯廻
り不良やバリスター不良等の成形不良を防止するため
に、鋳型のキャビティ空間内の空気やガス（以下、エア
という）を速やかに型外に排出する必要がある。キャビ
ティ空間内のエアは、一般には型の合わせ面から逃げて
型外に排出されるが、ボスやリブ等の袋部に存在するエ
アは逃げられず排出されない。

【０００３】そこで、図４に示すように、キャビティ空
間８０の袋部８０ａに相当する鋳型８１に穿設した貫通
孔８２にベント８３を挿嵌し、このベント８３にはキャ
ビティ空間８０と型外とを連通する複数の溝又は孔をそ
の外周面又は内部に設けた鋳造用金型が用いられてい
る。この鋳造用金型では、溶湯の注湯時にキャビティ空
間内のエアはベント８３に設けられた溝又は孔を介して
型外に排出される。

【０００４】また、実開平５−１８７３９号公報には、
図５に示すように、鋳込み品９０と接する鋳型９１の表
面にＶ字又はＵ字状の複数のエア排出溝９２を放射状に
刻設し、型外と通じる貫通孔９３内に所定の摺動隙間を
残して摺動可能に押出しピン９４を支持し、かつ、この
押出しピン９４とポート中子９５の先端部９６との間に
上記エア排出溝９２及び上記摺動隙間と連通するエア排
出路９７を設けた鋳造用金型が開示されている。この鋳
造用金型では、溶湯の注入時にキャビティ空間９８内の
エアは鋳込み品９０の周縁部分からエア排出溝９２を通
ってエア排出路９７内に流入し、この後押出しピン９４
の摺動隙間を通って型外に排出される。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記したよう
なエア抜き構造を好適に採用できるのは、重力鋳造や低
圧鋳造のように溶湯にかかる圧力が低い（通常、１０^-1
ＭＰａ程度以下）場合に限られる。つまり、上記ベント
８３に設けられる溝又は孔や、上記エア排出溝９２など
において、溝の深さや孔径は、エア抜き効果を良好に維
持しつつ、溶湯圧力により溶湯が溝や孔内に侵入しない
ように設定する必要があり、通常０．２〜０．５ｍｍ程
度とされる。ここで、溝の深さや孔径を約０．５ｍｍ以
上とすると、溶湯圧力が１０^-1ＭＰａ程度以下の低圧で
あっても溶湯が溝や孔内に侵入してしまうので、離型し
た後もバリとして溝や孔内に残存し、次ショットでのエ
ア抜き機能を阻害する。

【０００６】このため、上記したような従来のエア抜き
構造を高圧鋳造やダイカスト鋳造に用いると、たとえ溝
や孔の深さをエア抜き効果を維持できる範囲内で最小に
設定したとしても、溶湯の圧力が高い（通常、数ＭＰａ
以上）ために溶湯が溝や孔内に侵入し、バリとして残存
する。このようなバリを１ショット毎に除去するのは非
常に面倒であり、生産性の観点から実際には上記従来の
エア抜き構造を高圧鋳造等に適用することは不可能であ
った。

【０００７】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので
あり、エア抜き孔に残存するバリを容易に除去すること
を可能とし、高圧鋳造等に好適に用いることのできるエ
ア抜き構造を有する鋳造用金型を提供することを解決す
べき技術課題とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の鋳造用金型は、キャビティ空間と型外とを連通する
貫通孔を有する金型本体と、該金型本体の貫通孔内に摺
動可能に挿嵌され、該金型本体の壁面とで画定されて注
湯時に上記キャビティ空間と型外とを連通するエア抜き
孔を有するベントピンと、該ベントピンと上記金型本体
との相対変位を可能とする可動手段と、上記金型本体に
固定され、上記ベントピンと金型本体との相対変位によ
り上記エア抜き孔内に挿脱可能な挿通部材とを備えてい
ることを特徴とするものである。

【０００９】上記エア抜き孔の孔径や長さは、溶湯の圧
力に応じて、エア抜きの効果が十分に発揮でき、かつ、
溶湯がエア抜き孔を介して型外に吹き出ることのない範
囲内で種々設定することができる。例えば、本発明の鋳
造用金型を５０〜１００ＭＰａ程度の高圧鋳造に用いる
場合は、エア抜き孔の孔径を０．１〜０．３ｍｍ程度
に、エア抜き孔の長さを１０ｍｍ程度以上に設定するこ
とが好ましい。エア抜き孔の孔径が０．１ｍｍより小さ
いとエア抜きの効果が十分でなく、０．３ｍｍより大き
いと溶湯がエア抜き孔を介して型外に吹き出るおそれが
ある。また、エア抜き孔の孔径が０．３ｍｍ以下であっ
ても、エア抜き孔の長さが１０ｍｍよりも短いと、溶湯
がエア抜き孔を介して型外に吹き出るおそれがある。

【００１０】

【作用】本発明の鋳造用金型を高圧鋳造（５０〜１００
ＭＰａ程度）に利用する場合の作用について、以下説明
する。金型本体の貫通孔内に挿嵌されたベントピンを、
そのエア抜き孔がキャビティ空間と型外とを連通するよ
うに該貫通孔内に位置させた状態で、該キャビティ空間
に溶湯を注入する。この溶湯の注入時にキャビティ空間
内のエアはベントピンのエア抜き孔を介して型外に排出
される。その後、溶湯がキャビティ空間内に充填して、
凝固する。この際、溶湯圧力により、エア抜き孔内にも
溶湯が侵入しバリとして凝固する。

【００１１】そして、キャビティ空間内の溶湯が凝固し
た後、鋳造品の離型をするとともに、可動手段によりベ
ントピンと金型本体とを相対変位させて挿通部材をエア
抜き孔内に挿通させる。これにより、エア抜き孔内に残
存するバリをエア抜き孔の外に排出することができる。
このように本発明の鋳造用金型では、鋳造品の離型の際
に、ベントピンと金型本体とを相対変位させるという極
めて簡単な操作により、エア抜き孔内のバリを除去する
ことができる。

【００１２】

【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。本実施例の鋳造用金型は、アルミニウム合金やマグ
ネシウム合金を高圧鋳造（５０〜１００ＭＰａ程度）す
る際に用いるものであり、図１に示すように、可動型１
と、固定型２と、ベントピン３と、ベントピン３に連結
された可動手段としての油圧シリンダ４と、可動型１に
一体的に設けられた挿通部材としての凸部５とから主に
構成されている。

【００１３】可動型１には、可動型１と固定型２とで画
定されるキャビティ空間６の袋部６ａに対応する位置
に、キャビティ空間６と型外とを連通する長さ：４０ｍ
ｍ、直径：８ｍｍの貫通孔１ａが穿設されている。この
貫通孔１ａ内のキャビティ空間６側には、連接棒７を介
して油圧シリンダ４に連接された長さ：１５ｍｍ、直
径：８ｍｍの円柱状のベントピン３が摺動可能に嵌挿さ
れている。ベントピン３の外周面には、図２の部分拡大
断面図に示すように、円周方向に等間隔に配設され、ベ
ントピン３の軸方向全長に延びるＵ字状の横断面形状を
もつ六個の溝３ａが刻設されている。なお、溝３ａは、
深さ：０．１５ｍｍ、最大幅：０．３ｍｍであり、可動
型１の貫通孔１ａの壁面とベントピン３の溝３ａの壁面
とで本発明のエア抜き孔Ｈを画定する（以下、可動型１
の貫通孔１ａの壁面とベントピン３の溝３ａの壁面とで
画定される空間をエア抜き孔Ｈという）。また、ベント
ピン３の先端面３ｂは、溶湯注入時に、キャビティ空間
６を画定する。

【００１４】そして、可動型１の貫通孔１ａの壁面に
は、図３の部分拡大断面図に示すように、型外側でベン
トピン３の各溝３ａと対応する位置に、円周方向に等間
隔に配設され、貫通孔１ａの軸と平行に延びるＵ字状の
横断面形状をもつ６個の凸部５が一体的に設けられてい
る。なお、凸部５は、高さ：０．１５ｍｍ、最大幅０．
３ｍｍ、長さ：１５ｍｍであり、ベントピン３の後退
（図１の上方への移動、以下同様）によりベントピン３
の溝３ａ内を挿通可能とされている。また、ベントピン
３が貫通孔１ａ内を前進（図１の下方への移動、以下同
様）し、ベントピン３の先端面３ｂがキャビティ空間６
を画定する可動型１の壁面と面一状態になった時、ベン
トピン３と上記凸部５との間には１０ｍｍの隙間が形成
されるようになっている。

【００１５】本実施例の鋳造用金型を用いて、アルミニ
ウム合金を高圧鋳造する場合について、以下説明する。
油圧シリンダ４の作動により、ベントピン３を可動型１
の貫通孔１ａ内で前進させてベントピン３の先端面３ｂ
がキャビティ空間６を画定する可動型１の壁面と面一状
態に維持する。このとき、ベントピン３のエア抜き孔Ｈ
は、キャビティ空間６と型外とを連通している。この状
態で、キャビティ空間６に溶湯を８０ＭＰａの圧力で注
入する。この溶湯の注入時にキャビティ空間６内のエア
はベントピン３のエア抜き孔Ｈを介して型外に排出され
る。その後、溶湯がキャビティ空間６内に充填して、凝
固する。この際、溶湯圧力により、エア抜き孔Ｈ内にも
溶湯が侵入しバリとして凝固する。

【００１６】そして、キャビティ空間６内の溶湯が凝固
した後、可動型１を固定型２から後退させ、図示しない
押出しピンにより鋳造品の離型をするとともに、油圧シ
リンダ４の作動によりベントピン３を３０ｍｍ程度後退
させ、各凸部５を各エア抜き孔Ｈ内に挿通させる。これ
により、エア抜き孔Ｈ内に残存するバリを排出すること
ができる。なお、この時、エア抜き孔Ｈ内のバリは、固
定型２の上に排出される。その後、次のショットに備え
て、油圧シリンダ４の作動によりそのままベントピン３
を元の位置にセットする。

【００１７】なお、キャビティ空間６内の溶湯が凝固し
た後、ベントピン３を後退させて各凸部５によりエア抜
き孔Ｈ内のバリを排出してから、可動型１を固定型２か
ら後退させて鋳造品を離型することも可能である。次に
ショットでは、エアーブローにより固定型２の表面にあ
るバリや可動型１及び固定型２の表面にあるその他のゴ
ミを取り除いた後、可動型１及び固定型２に離型剤を吹
き付ける。そして、可動型１を前進させて図１の状態に
セットし、溶湯を注湯する。

【００１８】以上のような工程を繰り返すことにより、
ショット前には、エア抜き孔Ｈ内にバリが残存すること
なく常に開放されており、各ショットにおけるエア抜き
機能を良好に維持することができる。したがって、本実
施例の鋳造用金型によれば、ショット後にエア抜き孔Ｈ
内のバリを極めて容易に除去することができ、高圧鋳造
する際においても湯廻り不良やブリスター不良のない良
好な鋳造品を生産性良く得ることができる。

【００１９】なお、上記実施例において、ベントピン３
を押出しピンとして併用することも可能である。また、
上記実施例では、挿通部材としての凸部５を移動型１と
一体的に設けた例について説明したが、挿通部材として
の凸部５を移動型１と別ピース構造とし、この凸部５を
移動型１に接着又はボルト等で固定させることもでき
る。

【００２０】さらに、上記実施例では、ベントピン３に
油圧シリンダ４を連接して、移動型１に対してベントピ
ン３を前進、後退させる例について示したが、油圧シリ
ンダ４を移動型１に連接する構成とし、可動型１を固定
型２から後退させて鋳造品を離型してからベントピン３
に対して移動型１を移動させるようにすることもでき
る。

【００２１】

【発明の効果】以上詳述したように本発明の鋳造用金型
は、注湯時にキャビティ空間と型外とを連通するエア抜
き孔を有するベントピンを金型本体の貫通孔内に摺動可
能に嵌挿させ、可動手段によりベントピンと金型本体と
を相対変位させることにより該エア抜き孔内を挿脱可能
な挿通部材を備えたものであるから、注湯時にキャビテ
ィ空間内のエアをベントピンのエア抜き孔を介して型外
に排出することができ、しかも鋳造品の離型の際に可動
手段によりベントピンと金型本体とを相対変位させると
いう極めて簡単な操作により、エア抜き孔内に残存する
バリを排出することができる。

【００２２】したがって、本発明の鋳造用金型によれ
ば、高圧鋳造する際においても湯廻り不良やブリスター
不良のない良好な鋳造品を生産性良く得ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に係る鋳造用金型の全体構成を
示す部分断面図である。

【図２】上記鋳造用金型に係り、ベントピンの横断面形
状を示す図１のＡ−Ａ線断面図である。

【図３】上記鋳造用金型に係り、挿通部材（凸部）の横
断面形状を示す図１のＢ−Ｂ線断面図である。

【図４】従来の鋳造用金型を示す断面図である。

【図５】他の従来の鋳造用金型を示す断面図である。

【符号の説明】

１は可動型、２は固定型、３はベントピン、３ａは溝、
４は可動手段としての油圧シリンダ、５は挿通部材とし
ての凸部、６はキャビティ空間、Ｈはエア抜き孔であ
る。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 キャビティ空間と型外とを連通する貫通
   孔を有する金型本体と、 該金型本体の貫通孔内に摺動可能に挿嵌され、該金型本
   体の壁面とで画定されて注湯時に上記キャビティ空間と
   型外とを連通するエア抜き孔を有するベントピンと、 該ベントピンと上記金型本体との相対変位を可能とする
   可動手段と、 上記金型本体に固定され、上記ベントピンと金型本体と
   の相対変位により上記エア抜き孔内に挿脱可能な挿通部
   材とを備えていることを特徴とする鋳造用金型。