JPH07103446B2 - オイルリング用緊張材およびその製造方法 - Google Patents

オイルリング用緊張材およびその製造方法

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JPH07103446B2
JPH07103446B2 JP2953687A JP2953687A JPH07103446B2 JP H07103446 B2 JPH07103446 B2 JP H07103446B2 JP 2953687 A JP2953687 A JP 2953687A JP 2953687 A JP2953687 A JP 2953687A JP H07103446 B2 JPH07103446 B2 JP H07103446B2
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    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D8/00Modifying the physical properties by deformation combined with, or followed by, heat treatment
    • C21D8/005Modifying the physical properties by deformation combined with, or followed by, heat treatment of ferrous alloys

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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は、湯掻きリングや圧力リング等のオイルリング
用緊張材(エキスパンダー,スペーサー)として利用さ
れるオイルリング用緊張材およびその製造方法に関する
ものであり、緊張材の素材として使用されるステンレス
鋼平線に要求される成形性,張力,耐熱へたり性を改善
し、加えて平線加工工程の簡略化を実現することができ
るようにした、オイルリング用緊張材およびその製造方
法に関するものである。
(従来の技術) 一般に、オイルリング用緊張材として使用されるステン
レス鋼平線は、使用環境からいって、耐食性が良好で、
高温強度が高く、低温脆性がなく、さらに緊張材特有の
特性に優れていることが要求される。
緊張材の素材となるステンレス鋼における当該緊張材特
有の特性は、例えば、リックベント用スペーサについて
示すと、 歯切り状の凹凸形状に成形する際に切損およびクラッ
クが発生しないように成形性が良好であること、 成形後の張力が高いこと、 張力のばらつきが少ないこと、 緊張材の耐熱へたり性が良好である(減退率が少な
い)こと、 が要求される。
このような要求特性を満足させるステンレス鋼として、
従来はSUS201あるいはSUS304を採用し、冷間平線加工後
に硬さHv180〜230を得るために、温度900〜1050℃の固
溶化熱処理を施し、その後オイルリング溶緊張材に成形
するようにしていた。
(発明が解決しようとする問題点) しかしながら、このような従来のステンレス鋼を素材と
したオイルリング用緊張材では、張力にばらつきを生じ
やすく、かつまた固溶化熱処理の不完全による成形中の
一部疑マルテンサイト化および耐熱へたり性の不十分な
どによって、成形性・耐熱へたり性に問題を生じる危険
性があった。
そこで、上記問題の改善のため、SUS201あるいはSUS304
のステンレス鋼に対し加工率20%以上の冷間加工を加え
たのちに950〜1050℃で固溶化熱処理を施し、引続いて
再度加工率3〜10%の冷間加工を加えることによって、
上記要求特性を満足させる製造方法が採用されている
が、素材の組織のばらつきによる固溶化熱処理温度の調
整あるいは固溶化熱処理後の加工率の調整を必要とし、
かつ場合によっては固溶化熱処理の不完全のために成形
中に組織の一部がオーステナイト組織から疑マルテンサ
イト組織に変化し、これによって成形性・耐熱へたり性
に悪影響を与える危険性があることに加えて、製造工程
が複雑で割高となる可能性があるという問題点があっ
た。
(発明の目的) 本発明は、上述した従来の問題点に着目してなされたも
ので、成形性が良好であるため成形後に切損やクラック
が発生しがたく、成形後の張力が高く、張力のばらつき
が少なく、耐熱へたり性が良好である(減退率が少な
い)という著しく優れた特性を有するオイルリング用緊
張材およびその製造方法を提供することを目的としてい
るものである。
[発明の構成] (問題点を解決するための手段) 本発明に係るオイルリング用緊張材は、重量%で、C:0.
01〜0.30%、Si:0.1〜2.0%、Mn:1.0〜6.0%、P:0.03%
以下、S:0.03%以下、Ni:8〜16%、Cr:16〜22%、N:0.0
5〜0.35%、Al:0.05%以下、Mg:0.001〜0.05%、Ca:0.0
01〜0.05%、および必要に応じてCu:1.0〜4.0%,Mo:0.5
〜5.0%のうちの1種また2種、同じく必要に応じてV:
0.03〜0.30%,Ti:0.03〜0.30%,Nb+Ta:0.03〜0.30%の
うちの1種または2種以上、残部Feおよび不可避的不純
物からなる組成を有するステンレス鋼を素材としている
ことを特徴としているものである。
また、本発明に係るオイルリング用緊張材の製造方法
は、上記組成を有するステンレス鋼を1000〜1200℃の温
度で熱間圧延したのち、冷間圧延または冷間伸線による
冷間加工を行い、次いで950〜1200℃で固溶化熱処理を
施し、冷間圧延による場合は冷間帯鋼を必要な幅にスリ
ット加工してオイルリング用平線とし、冷間伸線による
場合は必要な冷間加工を加えたのち950〜1200℃で固溶
化熱処理を施してオイルリング用平線とし、このオイル
リング用平線をオイルリング用緊張材に成形するように
したことを特徴としている。
そして、本発明に係るオイルリング用緊張材の製造方法
においては、上記組成を有するステンレス鋼を1000〜12
00℃の温度で熱間圧延し、950〜1150℃で固溶化熱処理
を施したのち、冷間圧延または冷間伸線による冷間加工
を行う場合も含まれ、また、前記オイルリング用平線を
オイルリング用緊張材に成形したのち400〜600℃でセッ
チング処理する場合も含まれる。
次に、本発明に係るオイルリング用緊張材の素材となる
ステンレス鋼の成分範囲(重量%)の限定理由について
説明する。
C:0.01〜0.30% Cは母相に固溶して基地を強化する一方、炭窒化物の形
成元素としても強力に作用する。しかも、オーステナイ
トを安定化し、加工誘起マルテンサイトを抑制する作用
が大きい。そこで、このような作用を得るために0.01%
以上とした。しかし、0.30%を超えると固溶が困難とな
るうえ、冷間加工性,耐食性が著しく劣化するので、そ
の上限を0.30%とした。
Si:0.1〜2.0% Siは製鋼時の脱酸剤として添加され、このような作用を
得るために0.1%以上とした。しかし、2.0%を超えると
フェライトが生成し易くなるので、その上限を2.0%と
した。
Mn:1.0〜6.0% Mnは製鋼時の脱酸および脱硫剤として添加され、かつま
たNの溶解度を大きくすると共に、加工誘起マルテンサ
イトを抑制する効果があるので、このような効果を得る
ために1.0%以上添加した。しかし、6.0%を超えると加
工性が悪くなり、しかも耐食性を劣化させるので、その
上限を6.0%とした。
P:0.03%以下 Pは耐食性を劣化させるので極力少量であることが好ま
しく、その上限を0.03%とした。
S:0.03%以下 Sは熱間加工性を害し、かつ耐食性を劣化させるので極
力少量であることが好ましく、その上限を0.03%とし
た。
Ni:8〜16% Niはオーステナイト安定化元素であり、ステンレス鋼を
オーステナイト相とするための主要な元素であると同時
に、加工誘起マルテンサイトの抑制にも必要な元素であ
る。そして、8%以上含有させればオーステナイト単相
の組織が得られ、含有量が多いほどオーステナイトは安
定となるが、Niは高価であるので経済性を考慮して8〜
16%の範囲とした。
Cr:16〜22% Crは耐食性を向上させるのに寄与する元素であり、この
ような効果を得るために16%以上含有させるが、多量に
添加するとフェライトを生成するので16〜22%の範囲と
した。
N:0.05〜0.35% NはCと同様に基地の強化と加工誘起マルテンサイトの
抑制のために添加する。さらに、耐食性および耐孔食性
の向上にも寄与する。そこで、このような効果を得るた
めに0.05%以上とした。しかし、多すぎると鋼塊溶製時
の気泡生成が多くなると共に、分塊時の加工性が低下す
るため、その上限を0.35%とした。
Al:0.05%以下 Alは通常脱酸剤として使用されるが、多量に含有すると
AlNを形成し、有効なN量を減ずると共に、酸化物系介
在物として残留して熱間加工性を害するので、その上限
を0.05%とした。
Mg:0.001〜0.05% MgはAlを代替えする脱酸剤であるとと共に、有害なSを
固定して熱間加工性を向上させ、N添加による加工性の
劣化を補うのに有効である。しかし、0.001%未満では
このような効果が得られず、0.05%を超えてもその効果
が飽和するので、0.001〜0.05%の範囲とした。
Ca:0.001〜0.05% Caは被削性および熱間加工性の向上のために0.001%以
上添加するが、0.05%を超えると効果が飽和するので、
その上限を0.05%とした。
Cu:1.0〜4.0% Cuは耐食性を向上させ、加工硬化率を低下させると共
に、冷間加工性を向上させるので、高耐食性と良好な冷
間加工性が要求される場合に添加するのが良い。そし
て、このような効果を得るためには1.0%以上添加する
必要があるが、多過ぎると熱間加工性を害する元素であ
るので、その上限を4.0%とした。
Mo:0.5〜5.0% MoはCuと同様に耐食性および耐孔食性を向上させるの
で、耐食性の要求が強い場合に添加するのが良い。そし
て、このような効果を得るためには0.5%以上添加する
必要があるが、多量に添加するとフェライトが生成し易
くなると共に、高価にもなるので、その上限を5.0%と
した。
V:0.03〜0.30% Vは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化して強度の向上
に寄与する。しかし、0.03%未満ではこのような効果が
なく、0.30%を超えるとその効果が飽和すると共に冷間
加工性が劣化するので、添加する場合は0.03〜0.30%の
範囲とする必要がある。
Ti:0.03〜0.30% TiはVと同様に炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化して
基地の強化に寄与する。しかし、0.03%未満ではこのよ
うな効果がなく、0.30%を超えるとその効果が飽和する
と共に冷間加工性が劣化するので、添加する場合は0.03
〜0.30%の範囲とする必要がある。
Nb+Ta:0.03〜0.30% Nb,TaはVと同様に炭窒化物を形成し、結晶粒の微細化
を通じて基地の強化に寄与する。しかし、0.03%未満で
はこのような効果がなく、多量に添加すると窒化物が介
在物として残留し、冷間加工性を害するので、特に強度
が必要な時にNbおよびTaの1種または2種を合計で0.30
%以上添加する。ただし、その上限は冷間加工性を害さ
ない0.30%とする必要がある。
本発明に係るオイルリング用緊張材は、上記の成分組成
を有するステンレス鋼を素材としているものであり、こ
のような組成のステンレス鋼を素材としてオイルリング
用緊張材を製造するに際しては、まず、上記ステンレス
鋼を1000〜1200℃の温度で熱間圧延する。次いで、熱間
圧延のままあるいは必要に応じて950〜1150℃で固溶化
熱処理を施したのち、冷間圧延または冷間伸線による冷
間加工を行う。
この冷間加工として冷間圧延を行う場合には、冷間圧延
によって、例えば、0.35mmt×300mmwの冷間帯鋼を製造
したのち、950〜1200℃で固溶化熱処理を施し、熱処理
後の冷間帯鋼に対して、例えば、2.5mmwにスリット加工
を行ってオイルリング用平線とする。
また、冷間伸線の場合は、上記熱間圧延材または固溶化
熱処理された熱間圧延材を、例えば、1.3mmφ×lの線
材に冷間伸線を行った後、950〜1200℃で固溶化熱処理
を施し、例えば、0.35mmt×2.5mmw×lに加工し、固溶
化温度950〜1200℃で固溶化熱処理を施してオイルリン
グ用平線とする。
このようにして製造されたオイルリング用平線は、オー
ステナイト安定化元素(C,Mn,Ni,Cu,N)をバランス良く
成分調整したステンレス鋼組成を有するので、オイルリ
ング用緊張材に成形している間に受ける強加工によって
も、加工誘起(疑似)マルテンサイトが生成せず、双晶
転位密度の増加のみで安定した非磁性鋼であり、成形性
が極めて良好で、CおよびNの添加で母相に固溶して基
地を強化するので、冷間加工後の固溶化熱処理温度範囲
が950〜1200℃と広く、完全固溶化熱処理を施しても、
鋼種初期硬度はオイルリング用緊張材に要求される硬さ
Hv180〜230を極めて容易にかつばらつきなく達せられ
る。
しかも、N添加で腐食性の環境における耐食性がSUS20
1,SUS304に比較して著しく向上し、かつC,Nの添加で固
溶強化され、オイルリング用緊張材に成形加工した後の
加工硬化率が大きく、さらにより望ましくは成形後のセ
ッチング処理(400〜600℃)により、時効処理効果を併
せ得ることができ、耐力,引張強さ,硬さが更に向上す
るので、張力および耐熱へたり性の向上がSUS201,SUS30
4に対し大巾に改善される。
すなわち、上記成分調整したオイルリング用平線に対し
て、より望ましくは減面率10%以上の冷間加工を加えた
のち、400〜600℃で時効処理を行うことにより、耐力お
よび引張強さをより一層向上させることができる。した
がって、このような時効処理効果を得るため、例えばリ
ックベント用緊張材(スペーサ)として、0.35mmt×2.5
mmwに成形加工した後、400〜600℃のセッチング処理を
施すことにより、時効処理効果を併せ得ることができ
る。
これによって、オイルリング用緊張材に要求される張
力,耐熱へたり性の向上により一層寄与する。
このとき、時効処理温度すなわちセッチング温度が400
℃よりも低いと、時効処理による耐力および引張強さの
向上はさほど大きくなく、また600℃を超えると耐力お
よび引張強さがかえって低下するので好ましくない。
(実施例) 第1表に本発明例と比較例とにおいて用いたオイルリン
グ用緊張材のステンレス鋼組成の一例を示す。
まず、通常の溶製法により製造した第1表に示す組成の
鋼塊を分塊圧延したのち1000〜1200℃の温度で熱間圧延
し、これによって5.5mmφの線材とした。そして、この
熱間圧延の際における熱間加工性を評価したところ、第
2表に示す結果であった。この熱間加工性の評価におい
て、○は良好であったことを示し、×は表面に割れが発
生したことを示している。
次に、前記熱間圧延材に対して中間で固溶化熱処理を1
回施したのち、冷間伸線加工を行って1.3mmφとし、次
いでこの伸線材に対して950〜1200℃の固溶化熱処理を
施した後、冷間平線加工を行って0.35mmt×2.5mmw×l
のオイルリング用平線粗材を製造し、第2表に示すよう
に980〜1150℃の固溶化熱処理を行ってオイルリング用
平線を製造した。
そして、このオイルリング用平線の硬さ,引張強さおよ
び伸びを調べたところ、第2表に示す結果であった。
次いで、前記オイルリング用平線を歯切り状の凹凸形状
に成形してオイルリング用緊張材(エキスパンダー,ス
ペーサー)を製作し、その際の成形性を評価すると共
に、各オイルリング用緊張材の張力,耐熱へたり性およ
び耐食性を評価した。このとき、成形性の評価におい
て、○は良好であったことを示し、△はばらつきが大き
かったことを示し、×は成形後にクラックが入ったこと
を示している。また、張力の評価において、○は良好で
あったことを示し、△はばらつきが大きかったことを示
し、×は規格外れのものであることを示している。さら
に、耐熱へたり性の評価において、○は良好であったこ
とを示し、△はばらつきが大きかったことを示し、×は
規格外れのものであることを示している。さらにまた、
耐食性の評価(JIS Z2371“塩水噴霧試験方法”)にお
いて、○は銹の発生がなかったことを示し、×は銹の発
生があったことを示している。
第1表および第2表に示すように、本発明に係るオイル
リング用緊張材の素材となるステンレス鋼はいずれも熱
間加工性が良好であり、オイルリング用緊張材に成形す
る際の成形性にも優れており、オイルリング用緊張材の
張力,耐熱へたり性および耐食性のすべてが良好である
ことが認められた。
これに対し比較例のオイルリング用緊張材の素材となる
ステンレス鋼組成No.11,12のものは、熱間加工時に表面
割れが発生し、製造性が悪いものであった。これは、N
o.11鋼ではAlが限定範囲を超えて含有されていると共
に、Mg,Caが添加されていないためであり、No.12鋼では
熱間加工性を害するCuが過剰に含まれているためであ
る。また、比較例No.13ではMnが多くかつCrが少ないた
め、耐食性に劣り、塩水噴霧試験に耐え得ないものであ
った。さらに比較例No.14では、成形加工により疑似マ
ルテンサイトが発生し、また成形性にばらつきがみられ
た。
さらに、比較例No.15(SUS201)はMnが多くCrが少ない
ため、耐食性が劣るものであった。
さらにまた、比較例No.16(SUS304)のように、固溶化
熱処理温度の調整で製造したものは、オイルリング用緊
張材の張力および耐熱へたり性にばらつきが大きく、比
較例No.17(SUS304)のように、固溶化熱処理後に加工
率5.3%の冷間加工を施したものでは、本発明鋼と同様
にすべて良好であるが、本発明に係る製造方法では固溶
化熱処理状態で使用可能であるのに対し、比較例No.17
(SUS304)では固溶化熱処理後においてさらに張力を得
るために冷間加工を必要とするので、オイルリング用緊
張材に反りや横曲がりの発生する危険があり、しかも組
成のばらつきによる冷間加工率の調整を必要とするな
ど、製造工程が複雑であり、しかもNが添加されていな
いので成形後の時効処理で炭化物が主に結晶粒界に析出
して張力の向上が期待されず、かえって耐食性が著しく
劣化する。
これに対し、本発明による場合には、成形後の時効処理
(実用上は400〜600℃におけるセッチング処理が必須工
程であるので、特別に時効処理工程を追加しなくとも、
セッチング処理に併せて処理することが可能)により、
含Nステンレス鋼であることから炭窒化物の粒界析出が
起らず、0.2%耐力および引張強さが上昇し、時効処理
が強化法の1つとして有効であり、特に0.2%耐力の上
昇が著しい。
第1図は本発明例No.1のステンレス鋼と比較例No.15のS
US201ステンレス鋼およびNo.17のSUS304ステンレス鋼の
冷間加工加工材(減面率40%)の時効硬化曲線を示すも
のである。
第1図に示すように、Nを含むNo.1のステンレス鋼とN
o.15のSUS201ステンレス鋼では、400〜600℃で顕著な強
度(0.2%耐力および引張強さ)の上昇が認められる。
次に、このような冷間加工後の時効処理を高強度でかつ
低透磁率である発明例No.1の40%線引材に適用した結果
を第3表に示す。
第3表に示すように、時効処理によって大幅な強度上昇
が認められ、時効処理材では0.2%耐力が120kgf/mm2,引
張強さが140kgf/mm2であり、オイルリング用緊張材の張
力上昇に著しく有効である。
[発明の効果] 以上説明してきたように、本発明に係るオイルリング用
緊張材は、重量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.1〜2.0
%、Mn:1.0〜6.0%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:
8〜16%、Cr:16〜22%、N:0.05〜0.35%、Al:0.05%以
下、Mg:0.001〜0.05%、Ca:0.001〜0.05%、および必要
に応じてCu:1.0〜4.0%,Mo:0.5〜5.0%のうちの1種ま
たは2種、同じく必要に応じてV:0.03〜0.30%,Ti:0.03
〜0.30%,Nb+Ta:0.03〜0.30%のうちの1種または2種
以上、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有す
るステンレス鋼を素材としているものであり、本発明に
係るオイルリング用緊張材の製造方法では、上記組成を
有するステンレス鋼を1000〜1200℃の温度で熱間圧延し
たのち、冷間圧延または冷間伸線による冷間加工を行
い、次いで950〜1200℃で固溶化熱処理を施し、冷間圧
延による場合は冷間帯鋼を必要な幅にスリット加工して
オイルリング用平線とし、冷間伸線による場合は必要な
冷間加工を加えたのち950〜1200℃で固溶化熱処理を施
してオイルリング用平線とし、このオイルリング用平線
をオイルリング用緊張材に成形し、場合によっては1000
〜1200℃の温度で熱間圧延して950〜1150℃で固溶化熱
処理を施したのち、冷間圧延または冷間伸線による冷間
加工を行うようにし、同じく場合によっては、オイルリ
ング用平線をオイルリング用緊張材に成形したのち400
〜600℃でセッチング処理して時効処理を兼ねさせるよ
うにしたから、本発明に係るオイルリング用緊張材はバ
ランス良く成分調整されたステンレス鋼組成を有するも
のであり、それゆえ減面率の高い冷間加工を施したとき
でも加工誘起マルテンサイトが生成せず、したがって非
磁性でかつ高張力であって、しかも耐食性,成形性,張
力および耐熱へたり性に優れたものであり、加えて、前
記組成の鋼に対して、より望ましくは減面率10%以上の
冷間加工を施した後400〜600℃でセッチング処理(時効
処理)を行うことによって、耐力および引張強さをさら
に向上させることが可能であり、オイルリング用緊張材
として著しく優れた特性を有するものであるという著大
なる効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
第1図はオーステナイト系ステンレス鋼である本発明例
No.1,SUS201およびSUS304の時効硬化挙動を示すグラフ
である。 材となるステンレス鋼の成分範囲(重量%)の限定理由
について説明する。 C:0.01〜0.30% Cは母相に固溶して基地を強化する一方、炭窒化物の形
成元素としても強力に作用する。しかも、オーステナイ
トを安定化し、加工誘起マルテンサイトを抑制する作用
が大きい。そこで、このような作用を得るために0.01%
以上とした。しかし、0.30%を超えると固溶が困難とな
るうえ、冷間加工性,耐食性が著しく劣化するので、そ
の上限を0.30%とした。 Si:0.1〜2.0% Siは製鋼時の脱酸剤として添加され、このような作用を
得るために0.1%以上とした。しかし、2.0%を超えると
フェライトが生成し易くなるので、その上限を2.0%と
した。 Mn:1.0〜6.0% Mnは製鋼時の脱酸および脱硫剤として添加され、かつま
たNの溶解度を大きくすると共に、加工誘起マルテンサ
イトを抑制する効果があるので、このような効果を得る
ために1.0%以上添加した。しかし、6.0%を超えると加
工性が悪くなり、しかも耐食性を劣化させるので、その
上限を6.0%とした。 P:0.03%以下 Pは耐食性を劣化させるので極力少量であることが好ま
しく、その上限を0.03%とした。 S:0.03%以下 Sは熱間加工性を害し、かつ耐食性を劣化させるので極
力少量であることが好ましく、その上限を0.03%とし
た。 Ni:8〜16% Niはオーステナイト安定化元素であり、ステンレス鋼を
オーステナイト相とするための主要な元素であると同時
に、加工誘起マルテンサイトの抑制にも必要な元素であ
る。そして、8%以上含有させればオーステナイト単相
の組織が得られ、含有量が多いほどオーステナイトは安
定となるが、Niは高価であるので経済性を考慮して8〜
16%の範囲とした。 Cr:16〜22% Crは耐食性を向上させるのに寄与する元素であり、この
ような効果を得るために16%以上含有させるが、多量に
添加するとフェライトを生成するので16〜22%の範囲と
した。 N:0.05〜0.35% NはCと同様に基地の強化と加工誘起マルテンサイトの
抑制のために添加する。さらに、耐食性および耐孔食性
の向上にも寄与する。そこで、このような効果を得るた
めに0.05%以上とした。しかし、多すぎると鋼塊溶製時
の気泡生成が多くなると共に、分塊時の加工性が低下す
るため、その上限を0.35%とした。 Al:0.05%以下 Alは通常脱酸剤として使用されるが、多量に含有すると
AlNを形成し、有効なN量を減ずると共に、酸化物系介
在物として残留して熱間加工性を害するので、その上限
を0.05%とした。 Mg:0.001〜0.05% MgはAlを代替えする脱酸剤であるとと共に、有害なSを
固定して熱間加工性を向上させ、N添加による加工性の
劣化を補うのに有効である。しかし、0.001%未満では
このような効果が得られず、0.05%を超えてもその効果
が飽和するので、0.001〜0.05%の範囲とした。 Ca:0.001〜0.05% Caは被削性および熱間加工性の向上のために0.001%以
上添加するが、0.05%を超えると効果が飽和するので、
その上限を0.05%とした。 Cu:1.0〜4.0% Cuは耐食性を向上させ、加工硬化率を低下させると共
に、冷間加工性を向上させるので、高耐食性と良好な冷
間加工性が要求される場合に添加するのが良い。そし
て、このような効果を得るためには1.0%以上添加する
必要があるが、多過ぎると熱間加工性を害する元素であ
るので、その上限を4.0%とした。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.1〜2.0
    %、Mn:1.0〜6.0%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:
    8〜16%、Cr:16〜22%、N:0.05〜0.35%、Al:0.05%以
    下、Mg:0.001〜0.05%、Ca:0.001〜0.05%、残部Feおよ
    び不可避的不純物からなる組成を有するステンレス鋼を
    素材としていることを特徴とするオイルリング用緊張
    材。
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.1〜2.0
    %、Mn:1.0〜6.0%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:
    8〜16%、Cr:16〜22%、N:0.05〜0.35%、Al:0.05%以
    下、Mg:0.001〜0.05%、Ca:0.001〜0.05%、およびCu:
    1.0〜4.0%,Mo:0.5〜5.0%のうちの1種または2種、残
    部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するステン
    レス鋼を素材としていることを特徴とするオイルリング
    用緊張材。
  3. 【請求項3】重量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.1〜2.0
    %、Mn:1.0〜6.0%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:
    8〜16%、Cr:16〜22%、N:0.05〜0.35%、Al:0.05%以
    下、Mg:0.001〜0.05%、Ca:0.001〜0.05%、およびV:0.
    03〜0.30%,Ti:0.03〜0.30%,Nb+Ta:0.03〜0.30%のう
    ちの1種または2種以上、残部Feおよび不可避的不純物
    からなる組成を有するステンレス鋼を素材としているこ
    とを特徴とするオイルリング用緊張材。
  4. 【請求項4】重量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.1〜2.0
    %、Mn:1.0〜6.0%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:
    8〜16%、Cr:16〜22%、N:0.05〜0.35%、Al:0.05%以
    下、Mg:0.001〜0.05%、Ca:0.001〜0.05%、およびCu:
    1.0〜4.0%,Mo:0.5〜5.0%のうちの1種または2種、さ
    らにV:0.03〜0.30%,Ti:0.03〜0.30%,Nb+Ta:0.03〜0.
    30%のうちの1種または2種以上、残部Feおよび不可避
    的不純物からなる組成を有するステンレス鋼を素材とし
    ていることを特徴とするオイルリング用緊張材。
  5. 【請求項5】重量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.1〜2.0
    %、Mn:1.0〜6.0%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:
    8〜16%、Cr:16〜22%、N:0.05〜0.35%、Al:0.05%以
    下、Mg:0.001〜0.05%、Ca:0.001〜0.05%、残部Feおよ
    び不可避的不純物からなる組成を有するステンレス鋼を
    1000〜1200℃の温度で熱間圧延したのち、冷間圧延また
    は冷間伸線による冷間加工を行い、次いで950〜1200℃
    で固溶化熱処理を施し、冷間圧延による場合は冷間帯鋼
    を必要な幅にスリット加工してオイルリング用平線と
    し、冷間伸線による場合は必要な冷間加工を加えたのち
    950〜1200℃で固溶化熱処理を施してオイルリング用平
    線とし、このオイルリング用平線をオイルリング用緊張
    材に成形することを特徴とするオイルリング用緊張材の
    製造方法。
  6. 【請求項6】重量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.1〜2.0
    %、Mn:1.0〜6.0%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:
    8〜16%、Cr:16〜22%、N:0.05〜0.35%、Al:0.05%以
    下、Mg:0.001〜0.05%、Ca:0.001〜0.05%、およびCu:
    1.0〜4.0%,Mo:0.5〜5.0%のうちの1種または2種、残
    部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するステン
    レス鋼を1000〜1200℃の温度で熱間圧延したのち、冷間
    圧延または冷間伸線による冷間加工を行い、次いで950
    〜1200℃で固溶化熱処理を施し、冷間圧延による場合は
    冷間帯鋼を必要な幅にスリット加工してオイルリング用
    平線とし、冷間伸線による場合は必要な冷間加工を加え
    たのち950〜1200℃で固溶化熱処理を施してオイルリン
    グ用平線とし、このオイルリング用平線をオイルリング
    用緊張材に成形することを特徴とするオイルリング用緊
    張材の製造方法。
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