JPH0694603B2 - パンテイストッキング - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はパンテイストッキングのストッキング部に，弾
性糸の芯糸に熱可塑性合成繊維からなる被覆糸を螺旋状
に巻付けて構成したカバリング糸を編成用糸条に用い
て，芯糸に被覆する被覆糸に天然繊維の絹を用いた場合
と同様な光沢と肌ざわりを具備させると共に，透明性や
均染性も優れた外観と機能とを有する新規なパンテイス
トッキングに関するものである。

従来の技術 一般に，パンテイストッキングのストッキング部に用い
られる繊維素材は，適度のストレッチ性と高度な透明性
及び染色均一性とが要求され，更にこれらの繊維素材を
高速生産する経済性を求められるところから，通常，ポ
リウレタン等の弾性糸の芯糸に，ポリアミド等の熱可塑
性合成繊維フイラメント糸を被覆用として巻付けたカバ
リング糸を使用し，この場合被覆糸は無撚または20T/m
以下の微少撚りを施された所謂フラットヤーン（各種の
加工を施されない延伸糸）が用いられてきた。また，従
来のパンテイストッキングのストッキング部は，その編
成組織のウエール方向に，カバリング糸と低伸縮糸とが
１コース毎に交互に編成されていた。その理由は，ウエ
ール方向に全てカバリング糸を用いると，消費者に着用
時，過度の締付力を付与するから好ましくなく，一方１
コース毎以外（例えば２コース毎にカバリング糸と低伸
縮糸とを交互に用いた場合）であると適当なフィット性
を欠き着用感を損なうからである。

ところで，近年パンティストッキングの市場は高度なフ
ァッション指向性を帯び，より一層の高級感を有するも
のが求められ，このため弾性糸に被覆する被覆用糸に天
然繊維の絹糸を用いたものが使用されて普及するように
なってきた。

発明が解決しようとする課題 ところが，天然繊維の絹糸を被覆糸として用いたカバリ
ング糸を，パンテイストッキングのストッキング部に使
用した場合，外観的には絹特有のやわらかな自然な光沢
を有すると共に，触感的にもしなやかな肌ざわりを有す
る極めて優れた高級感のあるパンティストッキングが得
られる反面，従来の合成繊維のフラットヤーンを被覆糸
としたカバリング糸を使用したものに比較して，製品全
体として見た場合，透明性が幾分欠ける難点があった。

加えて，従来の場合ストッキング部の編成組織のウエー
ル方向には絹糸を被覆糸として用いられたカバリング糸
と，合成繊維のフラットヤーンからなる低伸縮糸とが交
互に編成して用いられているところから，絹とフラット
ヤーンが混在することが起因して染色均一性も幾分劣
り，その上高価である難点があった。

そこで本発明は上述の難点を解消せんとするもので，そ
の目的とするところは，パンテイストッキング部のスト
ッキング部編成糸条として，弾性糸からなる芯糸に一定
条件のものとで製造された熱可塑性合成繊維を被覆した
カバリング糸を使用すると共に，編成組織のウエール方
向に１コース毎にカバリング糸を交互に編成される低伸
縮糸にも工夫を施し，以て天然繊維の絹を被覆糸として
用いたカバリング糸を使用した場合の風合いと同様な風
合いを有すると共に，絹を使用した場合の欠点である透
明性や均染性を改善したファッション指向の高級感のあ
るパンティストッキングを提供せんとするところにあ
る。

課題を解決する手段 パンティストッキングのストッキング部の編成糸条とし
て，弾性糸の芯糸に熱可塑性合成繊維からなる被覆用糸
を巻付けたカバリング糸と、該カバリング糸より伸度の
小さい熱可塑性合成繊維からなる低伸縮糸とを用いて編
成すると共に，該編成組織のウェール方向に，前記カバ
リング糸と低伸縮糸とを,1コース毎に交互に編成したパ
ンティストッキングにおいて、前記カバリング糸を構成
する弾性糸の芯糸は10D以上40D以下（以後Ｄはデニール
を表す）の繊度より形成する。この芯糸に被覆する被覆
用糸は,5D以上14D以下の極細繊度糸条に の撚数で乾熱処理で撚止めして8T/m以上,200T/m以下の
トルクを有したヒートセット糸を用いる。

一方，編成組織のウエール方向に１コース毎にカバリン
グ糸と交互に編成する低伸縮糸は、前記カバリング糸の
被覆糸と同一条件の乾熱ヒートセット糸を用いることを
特徴とする。

実施態様 本発明を実施するパンティストッキングの一例を図面に
ついて具体的に説明すると，第１図において，パンティ
ストッキング１は，ウエストバンド２を上端に付設した
パンティ部３と，該パンティ部３の下端にガータ部４を
会してストッキング部６が一体化されたものであって,5
はパンティ部３における股下襠部,7はストッキング部６
におけるヒール部,8はトウ部をそれぞれ示している。こ
のようにパンティ部３とストッキング部６とが一体化さ
れたパンティストッキング１において，本発明は前記ス
トッキング部６を編成する糸条として第３図及び第４図
に示すようにカバリング糸10と，該カバリング糸と比較
して低伸縮糸の糸条13とを併用するものである。

ここで，前記カバリング糸10は,10D〜40Dの弾性糸を芯
糸11として，またこの芯糸11の被覆糸12として，熱可塑
合成繊維の5D〜14Dの極細繊度糸条に （Ｄはデニールを表す）の撚数で乾熱処理で撚止めを行
い,8T/m以上200T/m以下のトルクを有したヒートセット
糸を用いて構成する。

即ち，芯糸11はスパンデックス繊維として一般に言われ
ているポリウレタン系弾性糸が好適であるが，他の種類
の繊維であっても良い。ここで芯糸の繊度は10D〜40Dが
必要である。これ以外の場合は消費者が着用時，締付力
が強すぎて好ましくなく，更に透明感も失われるからで
ある。

また，前記弾性糸の芯糸11に被覆する被覆用糸12は，熱
可塑性合成繊維のナイロン６又はナイロン66で代表され
るポリアミド繊維，ポリエチレンテレフタートで代表さ
れるポリエステル繊維をはじめ，特に繊維の種類に限定
されるものではないが，染色特性，弾性回復率，強度，
伸度，耐摩擦特性に優れたナイロン66が好ましい。この
被覆糸12の繊度はストッキング用としては5D〜14Dの極
細繊度糸条が必要である。これ以外では天然繊維の絹特
有の外観を呈するには好ましくないからである。

また，被覆糸12に施される撚数は であって，乾熱処理されてトルク8T/m以上200T/m以下の
範囲であることが必要である。

これは被覆糸12の撚りが の場合，撚りの影響を余り受けず，被覆糸自体の合成繊
維の素材が有する外観に近くなり，被覆糸12がフラット
ヤーンの従来の場合の外観と近くなって好ましくないか
らである。一方，被覆糸12の撚りが， の場合，撚りが起因する乱反射が強すぎて，絹のような
光沢とかけ離れた結果となると共に，凹凸も大きくなり
過ぎて触感的には絹のようなしなやかさは失われて好ま
しくない。最も好ましい加撚数は であった。

また，被覆糸に乾熱処理を施して8T/m以上,200T/m以下
のトルクを有するようにするにのは，先ずトルク8T/m以
下であると，乾熱処理した際，熱固定が必要以上に効き
すぎ風合いが悪くなり，また仕上げ工程での熱セット余
力も失い，商品価値は低下する。一方,200T/m以上であ
るとスナールが起因する節糸状のカバリング糸となりや
すく，パンティストッキングとしての商品価値が低下す
るので，これまた好ましくないからである。

また，被覆糸12は乾熱ヒータで機上ヒートセットが施さ
れることが必要であるが，これは一般的に強撚糸をヒー
トセットするバッチシステムの蒸熱ヒートセットである
と絹に近いやわらかい自然の光沢が得られなく，幾分鈍
い光沢となるからである。尚，ここでいうトルクとは糸
条の回転捩じりを表し，充分熱固定された糸条はトルク
が少なくなる。この測定方法は1mの糸条の中央に0.1g/D
の重錘を下げ両端を中央で合わせた後自由に旋回させて
５分経過後，上下0.125mを除いて中央の0.25mの糸条の
旋回数を測定する。サンプル数10回の平均値をトルクと
して表するものである。

ところで，表面糸12に強撚が施されていて，乾熱ヒート
セットされていると，カバリング糸単糸自体は光沢があ
る反面，その透明性は従来のフラットヤーンを被覆した
カバリング糸に比較して幾分劣る。しかし，被覆糸12に
強撚が施されているため，その外観はフラットヤーンを
用いたものに比較して幾分丸みを帯びているところか
ら，この丸みを帯びた糸条を，編機で編成すると，その
編目は顕微鏡写真によって拡大して撮影した第５図に示
すように，隣接する編目間の空隙が第６図に示す従来の
フラットヤーンの場合に比較して多くなり，この結果，
この空隙率が増すことで，パンティストッキング製品全
体としての透明度が著しく向上する。

一方，第２図に示すように編成組織としてウエール方向
にカバリング糸10を１コース毎に交互に編成する低伸縮
糸13は，前記カバリング糸10の被覆糸12と同一条件の乾
熱ヒートセットしたものを用いて構成する。

このように低伸縮糸13を，カバリング糸10の被覆糸12と
同一条件の乾熱ヒートセット糸を用いるのは，パンティ
ストッキングの製品全体として見た場合の染色の均一性
が得られるからである。同一条件でない場合は，均染性
は勿論として製品全体として眺めた場合の均質性にも影
響を及ぼし，高級感を阻害するからである。

実施例 ・カバリング糸 弾性芯糸：ポリウレタン糸20d3f 被覆糸 ：ナイロン66 繊度 :10D7f 撚数 :1500T/m 乾熱ヒータ熱固定糸温度:150℃ トルク :55T/m ・低伸縮糸 被覆糸と同一条件 ・編機条件 編組織 ：平編 針数 :400本 シリンダ径：3³／₄吋 給糸口数 :4 給糸口No.1,No.3:低伸縮糸， 給糸口No.2 :S撚カバリング糸 給糸口No.4 :Z撚カバリング糸 上記条件のもとで編成した編地を第５図に示し，一方，
第６図に被覆糸及び低伸縮糸が10T/mの撚数であり，ト
ルクが無くまた乾熱処理が施されていない他は第５図の
場合と同一条件のもとで編成した従来例を示して比較す
ると本発明の場合は，極めて優れた絹同様の光沢と肌ざ
わりを有すると共に透明性，均染性にも優れたものが得
られた。

尚，本発明はパンティストッキングについて述べたが，
単なるソックスにも適用でき，またカバリング糸は，シ
ングルカバリング糸の場合について述べてあるが，ダブ
ルカバリング糸にも適用できることは勿論である。

効果 本発明は上述のように，パンティストッキングのストッ
キング部の編成条件として，一定条件のもとで製造され
た熱可塑性合成繊維からなる被覆糸が巻付けけられたカ
バリング糸を使用すると共に，編成組織のウエール方向
に１コース毎にカバリング糸と交互に編成される低伸縮
糸にも一定条件を用いて工夫を施したので，従来のパン
ティストッキングに比較して，天然繊維の絹特有のやわ
らかな自然な光沢としなやかな肌ざわりと同様の外観と
機能を具えたものが得られると共に，透明性や均染性に
も極めて優れたファッション指向の高級感のあるパンテ
ィストッキングが得られ，更に絹を使用した場合に比べ
て比較的安価に提供できる効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示すパンティストッキング
の斜視図，第２図はストッキング部の編成組織の正面
図，第３図はカバリング糸の一例を示す斜視図，第４図
は被覆糸の一例を示す斜視図，第５図は本発明パンティ
ストッキングの網目組織の形状を示す拡大写真で、第６
図は従来のパンティストッキングの網目組織の形状を示
す拡大写真である。 １……パンティストッキング ３……パンティ部 ６……ストッキング部 10……カバリング糸 11……弾性糸の芯糸 12……被覆糸 13……低伸縮糸

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】パンテイ部とストッキング部とを一体化し
   て成るパンテイストッキングであって，前記ストッキン
   グ部の編成糸条として，弾性糸の芯糸に熱可塑性合成繊
   維からなる被覆用糸を巻付けたカバリング糸と，該カバ
   リング糸より伸度の小さい熱可塑性合成繊維からなる低
   伸縮糸とを用いて編成すると共に該編成組織のウェール
   方向に，前記カバリング糸と，低伸縮糸とを１コース毎
   に交互に編成したパンテイストッキングにおいて，前記
   カバリング糸を構成する弾性糸の芯糸は10D以上40D以下
   （以後Ｄはデニールを表す）の繊度よりなると共にこの
   芯糸に被覆する被覆用糸は,5D以上14D以下の極細繊度糸
   条に の撚数で乾熱処理後撚止めして8T/m以上200T/m以下のト
   ルクを有したヒートセット糸を用いる一方，編成組織の
   ウエール方向に１コース毎にカバリング糸と交互に編成
   する低伸縮糸は，前記カバリング糸の被覆糸と同一条件
   の乾熱ヒートセット糸を用いることを特徴とするパンテ
   イストッキング。