JPH0664490A - 袋織エアバッグ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 初期突出を抑制する抑制部材の固定が容易に
行うことができる袋織エアバッグの提供 【構成】 抑制部材２１ａ，２１ｂを乗員側パネル１７
に固定する位置が、膨張前の乗員側パネル１７と車体側
パネル１６を重ね合せた時に車体側パネル１６のインフ
レーター取付け口３に対応する乗員側パネルの区域内に
設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動車の衝突時、乗員
の身体を保護するためのエアバッグに関する。より詳し
くは、衝突と同時に展張したエアバッグが拡大し、初期
の突出により乗員に損傷を与えることのない抑制部材を
具備したエアバッグに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、エアバッグは全面がゴム系膜材で
被覆された袋状構造体に、衝突時のバック内圧の急増を
防ぐため排気孔を設け、ガス発生装置、すなわちインフ
レーターから熱ガスにより瞬時に展張される。しかし、
乗員の座席位置や衝突状況などによってはエアバッグが
完全に展張する前に、乗員がエアバッグに接触する場合
があった。即ち、インフレーターから発生するガスによ
り、エアバッグを収納してあるケース、ふたなどを突き
破って瞬間的に突き出して来て乗員の身体とぶつかり、
逆に乗員が衝撃を受けることもあった。

【０００３】この為、例えば、実開昭６３−１１２９５
２号公報には、中央に打ち抜き穴を有する当て布を用い
て、突出しを防止する帯状体とバッグ本体を縫合する方
法が提案されており、また、特開平３−１３６９４７号
公報にも吊り紐つきのエアバッグが開示されている。こ
のように、バッグの初期突出抑制と、早期形状安定を目
的としてエアバッグの膨張を抑制する複数本の抑制部材
を設けることが一般的に行なわれている。しかし、この
抑制部材取り付け工程は、部品点数が多く煩雑で立体的
な形状で縫製する必要があり、コスト高の要因になって
いる。すなわち図１に示す運転席用の縫製型エアバッグ
では、不通気加工布１ａ，１ｂを円形に裁断し、その一
方の不通気加工布１ｂに円形のインフレーター取付け口
３、及び排気孔４ａ，４ｂを開け、それぞれに補強布５
ａ，５ｂ，６ａ，６ｂを縫製又は、接着等で固定する。
次に他方の不通気加工布１ａと抑制部材固定布７を縫い
付けるが、その縫目の大きさ、すなわち縫目の形成する
円の直径はインフレーター取付け口の直径よりも大き
い。次いで不通気加工部ｌａ，ｌｂの外周２を縫い付け
る。抑制部材８ａ，８ｂの一端は不通気加工布１ａ側の
固定布７と９ａ，９ｂの位置で、抑制部材８ａ，８ｂの
他端は不通気加工布１ｂ側の補強布５ａ，５ｂと１０
ａ，１０ｂの位置でそれぞれ縫い付けられる。１０ａ，
１０ｂの位置での縫着はこのままの形状では難しい為、
通常は抑制部材縫製用の特殊カセットを使用し立体的な
形にして縫着する必要があった。図１はこの縫製方法で
出来上がったエアバッグをインフレーター取付け口３か
ら裏返したものである。一方、図２（Ａ），（Ｂ）に示
すように二重袋織組織による袋織地を用いる袋織エアバ
ッグに於ては、織機によって織上がった状態が既に袋状
であるため、固定布、吊り紐の取り付けは従来型の縫製
バッグに比較して更に難しく製造コスト高にもなり、膨
張を抑制する抑制部材装着の袋織エアバッグは今まで実
用化されていないのが現状である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、二重袋織組
織による袋織地を用いる袋織エアバッグに於ても、容易
に複数本の抑制部材を取り付ける事が出来る構造を有す
る袋織エアバッグを提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の目的は、周辺部
が接結一重組織帯で接合されている乗員側パネルと車体
側パネルから成り、該車体側パネルにはインフレーター
取付け口が設けられており、且つ前記乗員側パネルと車
体側パネルで形成される中空部内に膨張時に発生する両
パネルの離間を抑制する複数の抑制部材が設けられてい
る袋織エアバッグにおいて、前記複数の抑制部材を乗員
側パネルに固定する位置が、膨張前の乗員側パネルと車
体側パネルを重ね合せた時に車体側パネルのインフレー
ター取付け口に対応する乗員側パネルの区域内に設けら
れていることを特徴とする袋織エアバッグによって達成
される。

【０００６】本発明の袋織バッグの１例を示す添付図面
を参照して本発明を以下説明する。図２に本発明の袋織
バッグの製造に用いられる袋織エアバッグ基布１１の一
例を示し、図２（Ａ）は平面図、図２（Ｂ）は断面図で
ある。たゞし図２（Ｂ）の断面図では袋織部をふくらま
した状態で示してある。

【０００７】図２（Ａ）に示すように、袋織エアバッグ
基布１１は中央に袋織エアバッグの中空部を形成する実
質的に円形の袋織部１３ａの周囲を接結一重組織帯１２
で織成することによって得られる。図中１４は接結一重
組織帯で織成された織耳部であり、１３ｂは接結一重組
織帯１２と織耳部１４との間の袋織部である。１５はイ
ンフレーター取付け口の予定位置を示す。模式的に示す
図２（Ｂ）の断面図において１６はエアバッグ使用時に
車体側になる織布片（以下車体側パネルという）であ
り、１７はエアバッグ使用時に乗員側になる織布片（以
下乗員側パネルという）である。

【０００８】図３に示す本発明の袋織エアバッグでは、
袋織エアバッグ基布１１の接結一重組織帯１２を裁断
し、車体側パネル１６にインフレーター取付け口３、お
よび排気孔１８ａ，１８ｂを開け、それぞれに補強布１
９ａ，１９ｂ，２０ａ，２０ｂを縫製又は接着で固定す
る。膨張抑制用抑制部材２１ａ，２１ｂの固定は、車体
側パネル側１６とは補強布２０ａ，２０ｂの一部と位置
２３ａ，２３ｂで、乗員側パネル１７とは、位置２２
ａ，２２ｂでそれぞれ縫製又は接着で固定される。位置
２２ａ，２２ｂで示される固定区域は、車体側パネル１
６のインフレーター取付け口面積よりも狭い区域である
ので、袋織バッグを立体的に広げなくても、インフレー
ター取付け口３の内で、位置２２ａ，２２ｂでの縫製が
可能であり、従来困難とされている抑制部材付きの袋織
エアバッグを容易に作ることが出来る。

【０００９】抑制部材２１ａ，２１ｂの固定は乗員側パ
ネル１７と車体側パネル１６の何れを先に行ってもよ
い。なお図３の例において抑制部材２１ａ，２１ｂを補
強布１９ａ，１９ｂと一体に形成してもよい。このよう
にすれば位置２３ａ，２３ｂでの固定作業を省略するこ
とができるので、抑制部材付き袋織バッグをさらに安価
に提供することができる。抑制部材の本数は従来用いら
れている本数、例えば１本〜６本の中から選定すればよ
い。

【００１０】本発明による拘束部材は、エアバッグの展
開挙動に支障なく、且つ確実にエアバッグの膨張を所定
範囲に抑制できるものであれば良く、例えば、テープ状
物、ネット状物、ロープ状物、糸状物又はこれらの混合
物を用いることができ、それらは織物、編物、不織布、
フィルム等で構成される。

【００１１】具体的な固定法は、縫製の場合は、ポリエ
ステル、ポリアミド、アラミド、ビニロン、綿等のミシ
ン糸を用いて、平型、筒型、ポスト型等のミシンで縫製
すれば良く、接着の場合は、例えば、エポキシ系、ポリ
ウレタン系、ポリアミド系、イソシアネート系、酢酸ビ
ニル系、アクリル系、シリコーン系、クロロプレン系、
シアノアクリレート系などの樹脂又はゴムを単独又は、
併用した溶液状物、流動状物、固型状物のものを用い、
塗布後、乾燥接着、感熱接着、又は感圧接着すれば良
い。ただし、これらは特に限定するものではない。

【００１２】本発明による吊り紐は、エアバッグの展張
挙動に支障のないものであれば良く、例えば、テープ状
織物、ロープ、組み紐、織物又は編物の裁断布、これら
の混合物などを用いれば良い。エアバッグの形状も特に
特定するものではなく、円形、球形、楕円球形、方形、
円柱形、その他用途に応じて選定すれば良く、運転席
用、助手席用、後部座席、サイドドア用、などいづれで
も良い。また、エアバッグの排気方式も、排気孔型、基
布排気型、部分的な基布排気型、またはこれらの併用型
いづれでも良い。

【００１３】袋織エアバッグ基布、抑制部材及び補強布
に使用する繊維材料は、インフレーターから噴出する高
温ガスや飛散物の衝撃に耐え得るものであれば良く、特
に限定するものではないが、例えば、ナイロン６，６
６，４６などのポリアミド繊維；パラフェニレンテレフ
タイルアミド及び芳香族エーテルとの共重合体などに代
表されるアラミド繊維；ポリアルキレンテレフタレート
に代表されるポリエステル繊維；全芳香族ポリエステル
繊維；ビニロン繊維；超高分子量ポリエチレンなどのポ
リオレフィン繊維；ポリオキシメチレン繊維；パラフェ
ニレンサルフォン、ポリエーテルサルフォンなどのサル
フォン系繊維；ポリエーテルエーテルケトン繊維；ポリ
イミド繊維；ポリエーテルイミド繊維；炭素繊維；ガラ
ス繊維；セラミックス繊維；金属繊維などの無機繊維；
綿、レーヨンなどのセルロース繊維、絹、羊毛などの蛋
白質系繊維などを単独又は混合併用して得られる長繊
維、短繊維又は混合繊維から作成される織物、編組物、
不織布、メッシュ状布帛、紙、シートなどの一種、又は
二種、更にはこれらの複合積層材などいずれでも良い。
また、力学的等方性を付与する為、多軸（三軸、四軸）
の布帛を単独又は他の布帛と併用しても良い。

【００１４】又、必要に応じて、エアバッグ、抑制部材
などに不通気性加工を施す場合は、通常エアバッグに使
用されているクロロプレンゴムなどを、コーティング、
浸漬、プリント、スプレー、ラミネートなどにより付与
すれば良いが、処理剤としてはクロロプレンゴム以外に
も、例えばシリコーン系、ウレタン系、ポリアミド系、
ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリオレフィン系、
含ハロゲンポリオレフィン系、フッ素系、クロロスルフ
ォン化ポリエチレン系、エチレン／プロピレン共重合
系、などのエラストマー類から適宜選んで使用しても良
い。

【００１５】本発明は袋織エアバッグに係るものである
が、必要に応じて、従来の縫製型エアバッグに本発明の
抑制部材に係る構成を適用することができる。

【００１６】

【実施例】以下本発明を実施例によって詳述する。本実
施例中ではエアバッグの性能を展張試験によって行っ
た。８５℃で４時間予熱したモジュール（インフレータ
ーはＭＯＲＴＯＮ ＴＹＰＥ−ＩＶ、使用）について展
張試験を行ない、バッグの初期突出高さ、バッグ本体の
損傷性、Ｐ〜Ｔ特性（バッグ内圧と展張時間の関係）を
評価した。後述の表１中のＰ−Ｔ特性において、Ｐ₂ は
バッグ展張時の最大バッグ内圧を示す。

【００１７】実施例１ 経糸及び緯糸にナイロン６６、４２０ｄ／７０ｆをそれ
ぞれ用い、袋織部密度４６本／吋×４６本／吋、袋織部
の内径７１０mmであって図２に示す組織の袋織エアバッ
グ基布１１を、ジャガード織機で製織した。この袋織バ
ッグ基布１１を精練、セット後シリコーン系ゴム塗布量
５０ｇ／m²でコーティング加工を施した。袋織エアバッ
グ基布の車体側パネル１６の中央部にインフレーター取
付け口３をインフレーターの大きさに合わせ直径１００
mmの大きさで裁断した。図３に示す抑制部材２１ａ，２
１ｂとしては、経糸及び緯糸にナイロン６６、４２０ｄ
／７０ｆで製織した平織基布をシリコーン系ゴム塗布量
５０ｇ／m²でコーティング加工を行い、長さ３２０mm、
幅７０mmに裁断して得た吊り紐を４本使用した。この吊
り紐２１の４本の一端を袋織エアバッグの乗員側パネル
１７に、ナイロン６６の５番手の縫糸を用いてミシン縫
製で取り付けた。その位置はインフレーター取付け口に
対応する区域内にした。吊り紐の他端は、車体側パネル
１６のインフレーター取付け口３に縫い付けた補強布２
０の一端にミシン縫製で取り付けた。取付け口の左右２
ケ所に直径３５mmの排気孔を開け補強布を用いてミシン
縫製した。取付け口及び排気孔に用いた補強布は、吊り
紐と同じコート布を使用した。次にインフレーター取付
け口３から裏返して本発明の抑制部材付き袋織エアバッ
グを製造した。

【００１８】この袋織エアバッグをインフレーター取り
付けケースに収納して、前記条件にて展張試験を行なっ
た。得られた結果は表１に示す。表１から明らかなよう
に本袋織エアバッグは、初期の突出も少なく、バッグ本
体の損傷もなく、展張になんら問題はなく、従来型の抑
制部材付き縫製型エアバッグと比較してもバッグ性能は
全く遜色なかった。なお、この抑制部材付き袋織エアバ
ッグの製造コストは、抑制部材付き縫製型エアバッグよ
り安価である。

【００１９】比較例１ 実施例１に準じ、袋織の代りに実施例１で用いた吊り紐
と同じ平織コート布を使用して図１に示す袋織バッグを
作成した。図１に示す抑制部材付き縫製型エアバッグ
は、性能は良好であるが、抑制部材取り付けの製造工程
が煩雑で工数がかかり製造コストが高いという問題点を
有する。

【００２０】 表１ バッグの バッグ内圧 吊り紐端部 吊り紐 ＊ 初期突出 Ｐ₂ の 状態 製造コスト 高さ(mm) (kgf／mm²) 固定状態 ─────────────────────────────────── 実施例１ ３３５ ０．４２ 損傷なし 損傷なし ９２ 比較例１ ３１５ ０．４１ 損傷なし 損傷なし １００ ＊製造コスト：〔比較例１〕を１００とした時の指数で表示した。

【００２１】

【発明の効果】本発明による袋織エアバッグでは抑制部
材を乗員側パネルに固定する位置が膨張前の乗員側パネ
ルと車体側パネルとを重ね合せた時に車体側パネルのイ
ンフレーター取付け口に対応する乗員側パネルの区域内
に設けてあるので、膨張を適切に抑制する複数本の抑制
部材の取付け固定を容易に行うことができる。その結
果、従来からの抑制部材付き縫製型エアバッグと同等の
性能を有し、且つ製造コスト面に於てはより安価な抑制
部材付き袋織エアバッグを提供出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来公知の固定方法で取付けられた抑制部材を
具備した縫製型エアバッグの略示断面図である。

【図２】袋織エアバッグ用基布を示す図面であって
（Ａ）は平面図、（Ｂ）は断面図である。

【図３】本発明の抑制部材を具備した袋織エアバッグの
略示断面図である。

【符号の説明】 １ａ，１７…エアバッグの乗員側パネル １ｂ，１６…エアバッグの車体側パネル ２…エアバッグ外周部の縫合部 ３…インフレーター取付け口 ４ａ，４ｂ，１８ａ，１８ｂ…排気孔 ５ａ，５ｂ，１９ａ，１９ｂ，２０ａ，２０ｂ…インフ
レーター取付け口の補強布 ６ａ，６ｂ…排気孔補強布 ７…抑制部材の固定布 ８ａ，８ｂ，２１ａ，２１ｂ…抑制部材 ９ａ，９ｂ，１０ａ，１０ｂ，２２ａ，２２ｂ，２３
ａ，２３ｂ…抑制部材端部の固定位置 １１…袋織エアバッグ基布 １２…接結一重組織帯 １３ａ，１３ｂ…袋織部 １４…袋織エアバッグ基布の耳部 １５…インフレーター取付け口用の切断円

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 周辺部が接結一重組織帯で接合されてい
   る乗員側パネルと車体側パネルから成り、該車体側パネ
   ルにはインフレーター取付け口が設けられており、且つ
   前記乗員側パネルと車体側パネルで形成される中空部内
   に膨張時に発生する両パネルの離間を抑制する複数の抑
   制部材が設けられている袋織エアバッグにおいて、前記
   複数の抑制部材を乗員側パネルに固定する位置が、膨張
   前の乗員側パネルと車体側パネルを重ね合せた時に車体
   側パネルのインフレーター取付け口に対応する乗員側パ
   ネルの区域内に設けられていることを特徴とする袋織エ
   アバッグ。