JPH0657310A - 粉末冶金焼結方法及びそれに用いる雰囲気ガス製造装置 - Google Patents

粉末冶金焼結方法及びそれに用いる雰囲気ガス製造装置

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JPH0657310A
JPH0657310A JP23763492A JP23763492A JPH0657310A JP H0657310 A JPH0657310 A JP H0657310A JP 23763492 A JP23763492 A JP 23763492A JP 23763492 A JP23763492 A JP 23763492A JP H0657310 A JPH0657310 A JP H0657310A
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gas
reaction
sintering
zone
furnace
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JP23763492A
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Tetsuya Iguro
徹弥 井黒
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BEUERU KK
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BEUERU KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 焼結炉内における脱炭反応そのものを抑制す
ることにより、炭素濃度管理の行き届いた粉末冶金焼結
方法及び同方法に用いるガス製造装置を提供する。 【構成】 水性ガス反応支配域の条件下において製造さ
れた吸熱反応型変性ガス(endothermic g
as,以下エンドガスと略称)を含むガスを焼結炉内雰
囲気として用いる焼結方法であって、該エンドガス中の
CO2 濃度を0.2〜0.5vol.%に調節し、該エンド
ガスを水性ガス反応支配域内の温度に保ったまま、か
つ、該焼結炉雰囲気のCO濃度を8vol %以上となるよ
うに調節して焼結炉内に供給する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、焼結炉内雰囲気の温度
や成分をコントロールすることによって、焼結中の焼結
体表面脱炭を抑制した粉末冶金焼結方法及びその方法に
用いる雰囲気ガス製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、鉄系等の粉末冶金製品の焼結
炉では、炉内雰囲気として、エンドガスや、窒素ガスに
水素ガス又は炭化水素系ガスを混ぜた混合ガスが多用さ
れている。これらのガスのいずれを使用した場合におい
ても、雰囲気ガスと焼結体の間や焼結体の各成分の間で
炭素の移動を伴う反応が進行し、概して焼結体表面の脱
炭が起りやすい。
【0003】この脱炭反応は、従来は、本質的に恣意的
な抑制が不可能なものと考えられてきた。この問題に対
処するため、運転条件毎に各現場で経験的に脱炭状況を
把握し、その対応策が講じられてきた。対応策の代表的
なものは、脱炭を見込で、その分だけ炭素含有量の多い
成型体を作るというものである。
【0004】脱炭対策として他に行われるのは、焼結炉
中に設けられた徐冷ゾーンを用いて、脱炭を回復させよ
うとするものである。徐冷ゾーン内のある温度域のゾー
ン(復炭ゾーン)においては、エンドガス中で2CO→
CO2 +C(発生炉ガス反応)という反応が起きて、焼
結体表面に炭素が供給される。復炭ゾーンは、通常は、
連続式焼結炉の焼結ゾーン下流に設けられる徐冷ゾーン
内の一部が用いられる。
【0005】ここで、上述の復炭反応のメカニズムにつ
いて説明する。エンドガスは、変成炉を用いて、炭化水
素ガス(メタン等)を空気と反応熱分解させることによ
り製造される。反応温度は1050℃近辺である。この
温度は、反応触媒(アルミナ担体Ni系等)の焼結現象
が顕著でない温度であって、かつ高い反応速度の得られ
る高温、という点から選択されている。
【0006】得られたエンドガスは、ついで、急冷され
る。急冷するのは、ガス製造温度(1050℃)におけ
るエンドガス組成を常温まで凍結するためである。も
し、この組成凍結がうまく行われないと、焼結炉内にエ
ンドガスが供給される手前で(配管内等)2CO→CO
2 +Cという反応が進行していまい、配管内等に炭素が
析出するとともに、焼結体脱炭を引き起こす原因となる
CO2 を焼結炉内に入れてしまうこととなる。ガス組成
凍結のポイントは、発生炉ガス反応の反応速度が速い温
度域(900〜450℃)で、エンドガスを急冷するこ
とである。
【0007】急冷されたエンドガスは、ついで、徐冷ゾ
ーンに供給される。ここで、エンドガスは、焼結体の残
熱を吸収して、温度が上がる。その過程で、上記の発生
炉ガス反応が活発な温度域(450〜900℃)にエン
ドガス温度が達すると、1050℃近辺の平衡組成で凍
結されていたエンドガスの組成凍結が解除されることに
なる。そうなると、エンドガス中では、1050℃の平
衡組成から450〜900℃内のある温度における平衡
組成となるよう、発生炉ガス反応が2CO→CO2
C、つまり炭素析出方向に進む。これが、連続焼結炉の
徐冷ゾーンにおける復炭現象のメカニズムである。
【0008】しかし、復炭によって脱炭を補償する策に
は次のような問題がある。すなわち、復炭反応によって
生ずるCO2 が、徐冷ゾーンから加熱ゾーンに入って来
ると、温度上昇に伴う平衡組成のズレ(CO安定、CO
2 不安定の方向へ行く、図3参照)に起因して、CO2
+C→2COという反応を起すため、脱炭を助長する原
因となることである。
【0009】脱炭と復炭がうまく吊り合えばよいが、ど
ちらかというと、脱炭が勝つことになる場合が多い。な
ぜなら、焼結体から出た炭素は、復炭ゾーン内のあらゆ
る物の表面(炉壁、ベルト表面)にデポジットするから
である。焼結体表面にデポジットする炭素は、析出した
炭素の一部に過ぎない。また、脱炭後の復炭という現象
により、焼結体の断面方向に炭素濃度の勾配ができてし
まう。
【0010】従来の脱炭対策は、上述のように、経験的
な対症療法に過ぎないと言える。そのため、製造条件に
予期しえない変化が生じると、焼結体内に著しい炭素濃
度勾配が発生して、製品品質基準はずれ(不良品)とな
る問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、焼結
炉内における脱炭反応そのものを抑制することにより、
炭素濃度管理の行き届いた粉末冶金焼結方法及び同方法
に用いるガス製造装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
達成するため、エンドガス雰囲気の焼結炉内における脱
炭反応について深く考察した。この反応にかかわる反応
式は以下の3式である。式中、アンダーラインを付けた
元素は焼結体の固相中に存在するものを示す。
【0013】(1) CO2→2CO (2) CO+H2 O→CO2 +H2 (3) →CO
【0014】(1)は、発生炉ガス反応と言われる反応
である。上記の方向の反応は、焼結体から炭素を奪う反
応であり、ガス温度が上がる場合に起る反応である。
【0015】(2)は、水性ガス反応と言われる反応で
あり、一般的組成のエンドガスにおいては900℃以上
で活発に起る反応である。この反応が活発に起ると、左
辺のCO2 がエンドガス中で豊富に供給される。しか
し、この温度域でCO2 は不安定でCOに転換しようと
するため、(1)の発生炉ガス反応を促進し、脱炭を加
速する。
【0016】(3)は、焼結体中の固溶酸素と固溶炭素
とが反応してCOガスとなる反応である。この反応を抑
制するためには、雰囲気ガス中のCO濃度を高くしてお
けばよい。
【0017】脱炭に関する上述の化学反応に関する知見
に基き、本発明者は考察を重ねた結果、脱炭防止のポイ
ントは次の2点にあることに思い至った。 発生炉ガス反応が活発に起る温度域(450〜900
℃)にある焼結炉内ゾーンはエンドガス雰囲気にしな
い。 焼結炉内高温ゾーン(例えば1000℃以上)の雰囲
気のCO濃度はある一定値以上とする。
【0018】本発明は、上記3ポイントを具体的に実現
する方法について種々検討・実験した結果、本発明を開
発するに至った。すなわち、本発明は、水性ガス反応支
配域の条件下において製造された吸熱反応型変性ガス
(endothermic gas 、以下エンドガスと略称)を含むガ
スを焼結炉内雰囲気として用いる焼結方法であって、該
エンドガス中のCO2 濃度を0.2〜0.5vol.%に調
節し、該エンドガスを水性ガス反応支配域内の温度に保
ったまま、かつ、該焼結炉雰囲気のCO濃度を8vol %
以上となるように調節して焼結炉内に供給することを特
徴とする脱炭反応を抑制した粉末冶金焼結方法である。
【0019】ここで、水性ガス反応支配域とは、水性ガ
ス反応((2)式)の反応速度が発生炉ガス反応の反応
速度よりも数段優っている領域である。一般的エンドガ
スの大気圧条件下では、温度が900〜950℃以上の
領域である。この保温によって、エンドガス製造時にお
ける平衡ガス組成を概略保ちながら焼結炉へ供給するこ
とができる。
【0020】エンドガス中のCO2 濃度を0.2〜0.
5vol.%(以下単に%と表示)に調整する理由は、該濃
度が0.2%未満となると、ガス製造装置内のスス発生
が問題となるからであり、0.5%を越えると、焼結体
脱炭上好ましくないからである。特に好ましいのはCO
2 濃度が0.2〜0.25%の範囲である。
【0021】製造されたエンドガスを水性ガス反応支配
域内の温度に保つ方法としては、ガス配管を保温又は加
熱したりする方法であってよい。又は、ガス配管を極力
短くして、ガス製造装置から焼結炉までの間でガスが冷
えないようにしてもよい。
【0022】焼結炉内雰囲気のCO濃度を8%以上とな
るように調節するのは、上述の固溶炭素と酸素の反応に
起因する脱炭を防止するためである。この反応が不活発
な温度条件の部分については、たとえ焼結炉内であって
も、CO濃度は8%未満であっても構わない。
【0023】本発明の焼結方法か適用できる材料には特
に制限はない。代表的には、例えば、炭素鋼(JPMA
SMF3030等)、Ni含有鋼(同SMF5030
等)、Mo含有鋼があげられる。
【0024】本発明の好ましい一実施態様は、上記焼結
炉が、実質的に水性ガス反応支配域内の温度にある焼結
ゾーン、及び、該焼結ゾーンで焼結された焼結体を冷却
する冷却ゾーンを有しており、エンドガスを、焼結ゾー
ンの冷却ゾーン寄りから主として焼結ゾーン方向に流れ
るように供給する、とともに冷却ゾーンを窒素ガス雰囲
気とする粉末冶金焼結方法である。
【0025】焼結ゾーンが実質的に水性ガス反応支配域
内の温度にあるとは、炉の入口部分などの特別に温度が
低い部分を除き焼結ゾーンが上記温度にあるという意味
である。
【0026】エンドガスを焼結ゾーンの冷却ゾーン寄り
から主として焼結ゾーン方向に流れるように供給する理
由は、エンドガスを冷却ゾーンに流すと、冷却ゾーンで
炭素が析出して焼結体の浸炭や汚れが起るからである。
“主として”とは、そのような現象が問題とならない程
度においては、エンドガスが冷却ゾーン方向等に流れて
も構わないという意味である。
【0027】冷却ゾーンを窒素ガス雰囲気にする意味
は、同ゾーンでの焼結体の酸化を防止する意味である。
適当な不活性ガスであれば窒素ガスに替えて用いること
ができる。この用途に用いる窒素ガスは、好ましくは純
度99.999%以上のものがよい。
【0028】本発明の粉末冶金焼結用雰囲気ガス製造装
置は、ガス反応管及び該反応管加熱用ヒータを持つエン
ドガス発生反応炉と、該反応炉で得られたガスを保温及
び/又は加熱するガス保温装置と、該得られたガスのC
2 濃度分析を行うカーボンセンサと、を有する粉末冶
金焼結用雰囲気ガス製造装置である。その詳細について
後の実施例についての説明を述べる。
【0029】
【実施例】以下、本発明の一実施例に係る図や実験結果
を説明する。図1は、本発明の一実施例に係る粉末冶金
焼結方法に使用する焼結炉の概要を示す。
【0030】焼結炉1は連続式の焼結炉であり、焼結ゾ
ーン3と冷却ゾーン5を有する。この焼結炉1には、入
側2から粉末成形体が供給され、該成形体は図の右方向
へベルトコンベア等で搬送される。焼結体はまず焼結ゾ
ーン3に入り、ここで加熱、焼結される。焼結ゾーンの
温度は、焼結材料によって異なる。例えば、鉄系では1
140℃前後が代表的な温度である。焼結体は、焼結ゾ
ーン3で焼結された後、右へ移動して冷却ゾーン5に入
って冷却される。冷却後に炉の出側7から取り出され
る。
【0031】焼結ゾーン3には、ガス製造装置10から
エンドガス4が供給される。エンドガス4は、ガス反応
炉11で約1050℃の温度下で製造され、保温装置1
5によって950℃以上に保温されたまま焼結ゾーン3
に入る。従来のガス製造装置では、保温装置15のある
部分に急冷装置が設けられていた。エンドガス4は、焼
結ゾーン内で入側2方向に流れる。ガスバリア8aは、
エンドガス4が冷却ゾーン方向に流れないようにするた
めのものである。ガスバリア8は、セラミックス等の耐
熱繊維で作られており、必要により複数列設けてもよ
い。
【0032】冷却ゾーン5には、窒素ガス9が供給され
る。本実施例では、窒素ガスは2手に別れて(9a、9
b)冷却ゾーンに入り、その間をガスバリア8bで仕切
っている。そうしてある理由は、冷却ゾーン5内のN2
ガス純度を保つためである。
【0033】図2は、図1に示すガス製造装置10の詳
細を表す一部断面図である。ガス反応炉11はガス反応
管33とそれを加熱するヒータ37を有する。反応管3
3の内部には、触媒35(Ni合金粒等)入っている。
炭化水素ガス(メタン、プロパン等)と空気の混合ガス
である原料ガス31は、反応管33内で分解してエンド
ガス47になる。
【0034】エンドガス導管41の周囲には、保温ヒー
タ45が設けられており、エンドガス47を950℃以
上に保温している。温度測定は熱伝対43で行い、温度
制御する。
【0035】エンドガス47中のCO2 濃度はカーボン
センサ13で測定される。このカーボンセンサにとして
特に好ましいのは、酸素分圧法の原理に基づくジルコニ
ア製酸素センサーである。
【0036】本発明の一実施例に係る方法によって、図
1に示す設備を用い実生産規模の運転を行った。以下そ
れについて述べる。 形式:メッシュベルト連続式マッフル型焼結炉 生産量:約7kg/Hr 焼結ゾーン温度:1140℃ 雰囲気ガス:焼結ゾーンはエンドガス+窒素ガス、冷
却ゾーンは窒素ガス エンドガスCO2 濃度:0.25%(at1040
℃) エンドガス保温温度:1000℃ エンドガス原料組成:C410(ブタン)+空気(混
合比0.318) エンドガス組成:CO2 0.25%、CO23.53
%、H2 O0.54%、H2 29.19%、N4 46.
49%
【0037】冷却ゾーンに供給する窒素ガスの流量と焼
結ゾーンに供給するエンドガスの流量の割合を1:0.
3以上に設定することによって加熱ゾーン内のCOガス
濃度を8%以上に保つことができた。実運転において
は、この比を1:1(4Nm3:4Nm3)とした。この
際、焼結炉の出側から外に流れ出る雰囲気ガス中のCO
の濃度は平均0.8%であった。したがって、同時に排
出される水素ガス濃度も2%以下と推定された。炉出側
の雰囲気ガス流出部では、常時パイロットバーナが燃や
されていたが、流出ガスの燃える火炎は観察されなかっ
た。
【0038】焼結に供した材料は、1.0C−bal.Fe
(試料1)と0.7C−3Cu−bal.Fe(試料2)の
2種類を用いた。成形体の平均肉厚は4mmであった。焼
結後の炭素濃度は、試料1が1.01W.%、試料2が
0.67W.%であった。この結果から、この焼結方法で
は脱炭がほとんど生じていないことが確認された。な
お、焼結体の炭素濃度測定は埼玉県鋳物機械工業試験場
で行った。
【0039】図5は、焼結後の試料の金属組織を示す写
真である。写真−1は試料1(配合粉C量1.0W.%、
焼結体C量1.01W.%)、写真−2は試料2(配合粉
C量0.7W.%、焼結体C量0.67W.%)を示す。両
者とも、表面から約0.5mm深さのわずかな炭素濃度勾
配が見られる。しかし、従来の方法の場合と比較してそ
の程度は著しく低い。
【0040】つぎに、一部重複することとはなるが、本
実施例の結果を踏まえつつ、粉末冶金焼結における脱炭
と復炭についてさらに詳細に熱力学的な考察を加える。
【0041】焼結炉内で進行する脱炭、あるいは浸炭に
関わる反応には、よく知られるように下記の3つの反応
式が上げられる。 (1)CO2 +H2 =H2 O+CO (2)2CO=CO2 (3)→CO
【0042】反応式(1)は水性ガス反応、及び反応式
(2)は発生炉ガス反応と称されるものである。両反応
はエンドガス雰囲気の場合に、ガスの構成成分間で進行
して成分比率の変化を来す反応であるが、熱間において
ガス温度のみが関数となって、平衡論的にそれぞれの物
質の占める比率が確定される。概略、発生炉ガス反応
は、450℃以上で、及び水性ガス反応は900℃以上
の温度域で実際的な速度で進行され、相互関係を概括す
ると900℃以上の温度域では水性ガス反応が支配的に
なり、両反応が同時に実際的な速度で進行する温度域は
事実上存在しない。つまりエンドガスの温度変化に伴
い、連続的に反応(1)から(2)へ、あるいは(2)
から(1)へ移行する、いわば一体の反応と見做すこと
ができる。発生炉ガス、及び水性ガス反応の、COとC
2 の平衡組成比[Pco/Pco2 ]の温度依存性を図3
に示すが、発生炉ガス反応域の平衡組成におけるCO2
濃度は、水性ガス反応域の場合と比較すると極めて高
い。したがって、通常1000℃を超える温度域で製造
され、かつ製造温度レベルでの平衡組成が保たれたエン
ドガスを発生炉ガス反応温度域に置くと、必ずCOがC
2 に転換されてカーボンを析出する。
【0043】エンドガスが使用される焼結プロセス上の
現象に事例を採って、発生炉ガス、及び水性ガス反応に
ついて述べると、通常連続式焼結炉では、雰囲気ガスは
焼結ゾーン下流に設けられた徐冷ゾーンから供給され
る。供給ガスの温度上昇過程で、900℃以下の温度域
において発生炉ガス反応が進行し、エンドガスから遊離
カーボンが析出される。このカーボンを成型体が吸収す
ることが復炭反応であるが、該反応は概ね徐冷ゾーン内
で進行される。復炭反応に伴って生成されるCO2
を、復炭量を基準に化学量論的に概算すると、焼結ゾー
ン内へ流入する時点でのエンドガス中のCO2 濃度は、
例外なく数パーセントにまで増加していることが判明す
る。徐冷ゾーンから、次いで焼結ゾーン内へ流入された
ガスが900℃以上の温度域に達すると、水性ガス反応
の平衡組成に収斂する方向へ反応が進行されるために、
生成された多量のCO2 が化学的安定性を喪失して、選
択的に成型体中のカーボンと反応して再びCOに転換さ
れ、焼結ゾーン内のエンドガス組成は、製造時点とほぼ
同一のCO濃度へ回帰する。焼結ゾーン内の反応過程で
は、部分的にCO2 がH2 と反応してH2 Oも生成され
るが、反応生成量から想定される炉内露点レベルでは、
2 Oによる脱炭反応が早い速度で進行されることはな
く、基本的に脱炭反応に直接関与する物質はCO2 であ
ると見做せる。これが成型体の配合カーボンを脱炭させ
るメカニズムであるが、もし復炭(徐冷)ゾーンで析出
されたカーボンの全量が成型体に吸収されるならば、当
然合計収支的な意味で脱炭は起こり得ない。しかし、焼
結ゾーン内でCOに再転換されるCO2 は、カーボンが
存在する限りこれと反応するために、両者間の量的アン
バランスが脱炭量として顕現化されることになる。
【0044】炉内供給されたエンドガスが、発生炉ガス
反応温度域である450〜900℃の間に滞在する時間
は、僅か3〜5秒程度と推定される。しかし、供給され
るエンドガス組成は水性ガス反応温度域の平衡状態にあ
るために、これを発生炉ガス反応温度域に置くと図3に
示すように、供給時点でのガス組成に対するCO2 の平
衡量が数十倍となるので、発生炉ガス反応は極めて早い
速度で進行されることとなる。しかし、発生炉ガス反応
域におけるCO2 の平衡濃度も高温になる程、低下傾向
を示すので、ガスの温度上昇過程の瞬間、瞬間で、連続
的に反応が平衡に到達することはない。何故なら、もし
刻々に発生炉ガス反応が平衡に到達しているならば、比
較的低温の一瞬でのみカーボンが析出されて、なおガス
温度が発生炉ガス反応域に在っても、その瞬間以降では
逆方向に反応が進行するからである。したがって、徐冷
ゾーンにおけるカーボン析出量、つまりCO2 の生成量
は、エンドガスの温度上昇速度のみによって決定され、
ガスの温度上昇速度が小である程、カーボン析出量が増
加する傾向を示す筈で、成型体の単位重量に対する雰囲
気ガスの供給量がカーボン析出量(CO2 生成量)を決
定する主要な因子であると考えられる。
【0045】本発明は以上の現象に着目して、950℃
以上の高温エンドガスを炉内へ供給することによって、
炉内において進行する発生炉ガス反応(復炭反応)を阻
止し、焼結ゾーン内へ多量のCO2 が流入することを、
つまり脱炭を実質的に回避しようとするものである。
「実質的に回避する」とする意味は、図3に示されるよ
うに、エンドガスの製造温度と焼結ゾーンの制御温度と
の間には、通常100℃程度の温度差が存在し、焼結ゾ
ーンの制御温度の方が高い。このために、高温状態のエ
ンドガスを供給しても、なお焼結ゾーン内におけるガス
組成の平衡条件は、僅かながらCO2 をCOに転換する
方向へ反応を進行させ、量の如何を問わず脱炭反応が進
行されるからである。したがって、もしエンドガス変成
炉の消耗度アップが許容されるなら、変成炉と焼結ゾー
ン間の運転温度の差をもっと小に設定することで、より
以上に完全な意味での脱炭回避を可能にする。
【0046】この傾向は顕微鏡組織に現れており、試料
1、及び2は配合量と焼結後のカーボン量が全く一致し
ているにも拘わらず、試料表面から約0.5mm深さの濃
度勾配が見られる。しかし1%カーボンに調合された試
料1の組織は、ほぼ全面パーライトである。
【0047】エンドガスの場合の脱炭反応と、式(3)
に因る脱炭反応は全く異なったメカニズムのもので、式
(3)は鉄系合金金属粉等の還元プロセスにも利用され
ている、いわゆるカーボン還元反応である。エレメント
は配合カーボン、及びは原料金属元素との化合物、
又は固溶された酸素を示す。つまり、式(3)は固相元
素間での反応である。この反応の生成物の殆ど全量がC
Oであるために、雰囲気中のCO濃度が反応速度に対し
律速となる。つまり、雰囲気中のCO濃度が増大するに
従って反応の進行は制御されて、概略8vol.%に達する
と実質的に反応は進行しなくなる。故に、式(3)の還
元(脱炭)反応は、20vol.%以上のCOを含むエンド
ガス雰囲気下では全く進行されない。しかし、原料金属
粉は概して0.2〜0.3%の酸素を含有するために、
COを含まい窒素、または水素性ガス雰囲気、あるいは
真空雰囲気下においては、式(3)の反応が進行して、
酸素と配合カーボンとの反応による脱炭を来す結果とな
る。
【0048】以上に述べたように、エンドガスを高温状
態で炉内へ供給することによって、従来の焼結プロセス
に見られる発生炉ガス反応から水性ガスへの移行に起因
する脱炭と、併せて、現状の窒素性雰囲気の場合に見ら
れる、カーボン還元反応による脱炭を実際的に回避で
き、配合カーボンを安定的に焼結することが可能にな
る。ただし、炉内雰囲気が高温のエンドガスのみで構成
されると、ガスが冷却装置内で温度低下される過程で発
生炉ガス反応が進行するために、運転時間の経過に伴っ
て冷却装置内に析出カーボンが堆積し、製品や装置も及
び作業環境を汚染すると予測される。これを避ける目的
で、本発明ではエンドガスと窒素ガスとを併用し、供給
エンドガスは主として挿入側へ、及び窒素ガスは抽出側
へ、それぞれ流れるように制御した。この概念を図1に
示す。カーボンを配合状態のまま安定的に焼結が可能で
あれば、現状の生産方式では別々に行われている「焼
結」と「焼入れ」を、連続的に一本化することも可能と
なる。
【0049】図4は文献等を通じて広く知られている。
いわゆるエンドガスのカーボンポテンシャルを示すチャ
ートである。生産現場における傾向として、平衡論的な
観点からのみカーボンコントロールが論じられる傾向が
あり、図4に類するデータは広く用いられている。しか
し実際の運転結果として、絶対的に図4に示される通り
の結果は得られない。図4はエンドガスと試料のカーボ
ン濃度間の、化学熱力学的平衡関係を示すデータである
ので実測に基いて作成されたことと推測するが、データ
が計測された運転条件も併せて発表された事例を知らな
い。したがってデータを利用するに当たって、下記の類
の疑問を事前に解消する必要があると考えられる。
【0050】1)チャートに表記されたガス組成は、実
験炉内から計測された実組成か、あるいは供給エンドガ
スの組成か。カーボンポテンシャル、つまり雰囲気と試
料間でカーボンの移動を伴う反応の平衡関係が計測され
たのであるから、必ず炉内雰囲気ガス中のCO濃度の変
化を伴う。 2)試料の単位重量に対する、エンドガス供給量は如何
程であったか。雰囲気ガス単位供給量は、「質量の恆存
則」に従って、ガスと試料間で移動されるカーボン量の
多寡を決定する。 3)エンドガスの昇温過程で、量の大小に拘わらず発生
炉ガス反応が進行し、カーボンが析出されることは避け
得ない。そして発生炉ガス反応の進行量はエンドガスの
昇温速度にのみ支配される。つまり厳密に言うならば、
ガス供給量のみならず、計測に用いられた実験炉の構造
もまた、計測結果に対して影響を来す筈である。 4)試料の加熱・冷却サイクルはどのようなものであっ
たか。
【0051】上記のように幾つかの不明点が存在するデ
ータを用いて、平衡論的に製品・カーボン量のコントロ
ールを意図しても、データが作成された実験運転条件と
実生産の運転条件とが一致されない限り、また結果も一
致しない筈である。また、炉内へ供給されたエンドガス
の発生炉ガス反応の進行量(ガスの昇温速度)を制御す
ることが不可能で有る限り、生産現場で一般に行われて
いる、エンドガスのCO2 量を高精度な分析計を用いて
微小レベルで制御することにも、意義の重要性を認め難
い。
【0052】本発明の効果確認運転では、異なった配合
カーボン量の試料1と2を同時に、つまり同一雰囲気下
での焼結を試みたが、両者とも配合カーボンを全く安定
的に焼結できた。これが意味するものは、雰囲気ガス組
成と成型体のカーボン量の間の平衡関係、つまり焼結プ
ロセスにおけるエンドガスの、「カーボンポテンシャ
ル」と呼ばれる平衡関係の存在を否定するものである。
確かに成型体中のカーボン濃度、および絶対量は、発生
炉ガス、あるいは水性ガス反応の進行速度と到達平衡組
成の両者に影響を与えるが、焼結炉内でのエンドガスの
温度変化に伴う反応は、単純に平衡ガス組成に収斂する
方向へ進行されて、カーボンは単にその影響を受けてい
るに過ぎないのではないかと見受けられる。
【0053】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明は
以下の効果を発揮する。 (1)脱炭を抑制することにより、配合粉末と変わらな
い炭素濃度の焼結体を製造できる。
【0054】(2)上記(1)が達成されたことによ
り、焼結後の再浸炭処理を行うことなく、焼結後、直ち
に焼入れ処理を行うことが可能となる。 (3)焼入れ処理を施すハイカーボン高強度焼結品にお
いて、肉厚方向に均一な炭素濃度が得られるため、肉厚
方向に均一な強度を有しかつ熱処理歪の少い焼結体が得
られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る粉末冶金焼結
方法に使用する焼結炉の概要を示す。
【図2】図2は、図1に示すガス製造装置10の詳細を
表す一部断面図である。
【図3】ブタンガスを1020℃で熱分解させCO2
度0.25%に調整して得られたエンドガスにおいて、
co/Pco2 平衡組成比の温度依存度を示すグラフであ
る。
【図4】エンドガス中のCO2 濃度とカーボンポテンシ
ャルとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1: 焼結炉 2: 入側 3: 焼結ゾーン 4: エンドガス 5: 冷却ゾーン 7: 出側 8: ガスバリア 9: 窒素ガス 10: ガス製造装置 11: ガス反応炉 13: カーボンセンサ 15: ガス保温装置 21: 窒素ガス供給源 31: 原料ガス 33: ガス反応管 35: 触媒 37: 反応管加熱ヒータ 41: ガス導管 43: 熱伝対 45: 保温ヒータ 47: エンドガス
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年3月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図5
【補正方法】追加
【補正内容】
【図5】焼結後の試料の金属組織を示す写真である。写
真−1は試料1を、写真−2は試料2を示す。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水性ガス反応支配域の条件下において製
    造された吸熱反応型変性ガス(endothermic
    gas,以下エンドガスと略称)を含むガスを焼結炉
    内雰囲気として用いる焼結方法であって、 該エンドガス中のCO2 濃度を0.2〜0.5vol.%に
    調節し、 該エンドガスを水性ガス反応支配域内の温度に保ったま
    ま、かつ、該焼結炉雰囲気のCO濃度を8vol.%以上と
    なるように調節して焼結炉内に供給することを特徴とす
    る脱炭反応を抑制した粉末冶金焼結方法。
  2. 【請求項2】 上記エンドガスを水性ガス反応支配域内
    に保つ温度が950℃以上である請求項1記載の粉末冶
    金焼結方法。
  3. 【請求項3】 上記焼結炉が、実質的に水性ガス反応支
    配域内の温度にある焼結ゾーン、及び、該焼結ゾーンで
    焼結された焼結体を冷却する冷却ゾーンを有しており、 エンドガスを、焼結ゾーンの冷却ゾーン寄りから主とし
    て焼結ゾーン方向に流れるように供給する、とともに冷
    却ゾーンを窒素ガス雰囲気とする請求項1記載の粉末冶
    金焼結方法。
  4. 【請求項4】 ガス反応管及び該反応管加熱用ヒータを
    持つエンドガス発生反応炉と、 該反応炉で得られたガスを保温及び/又は加熱するガス
    保温装置と、 該得られたガスのCO2 濃度分析を行うカーボンセンサ
    と、 を有する粉末冶金焼結用雰囲気ガス製造装置。
JP23763492A 1992-08-14 1992-08-14 粉末冶金焼結方法及びそれに用いる雰囲気ガス製造装置 Pending JPH0657310A (ja)

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