JPH06344842A - 車両のエアバッグ構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】エアバッグ本体が車室形成部におけるフロント
側上方部分に収縮状態をもって配置されるもとにおいて
も、そのエアバッグ本体をフロント側シートに着座する
乗員を確実に保護する膨張状態を迅速かつ的確にとるも
のとなす。 【構成】車室形成部におけるフロント側上方部分に設け
られたエアバッグ格納部（２０）に、収縮状態とされる
とともにインフレータ（２２）を伴って格納され、イン
フレータ（２２）の作動により収縮状態から車室（１）
内に膨張する状態へと移行せしめられるエアバッグ本体
（２１）と、車室形成部におけるフロント側上方部分に
配され、インフレータ（２２）が作動状態とされると
き、エアバッグ本体（２１）の膨張を車室（１）内に設
置された運転席用シート（１０）に向けて行わせるバッ
グ膨張方向制御板（３０）とを備える。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、車両の車体に比較的大
なる衝撃が加えられたとき、車体における車室形成部に
設けられた格納部に収縮状態をもって格納された状態か
ら車室内に膨張する状態をとるものとされて、車室内の
乗員を保護するエアバッグの構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】車両においては、平常時には車体におけ
る車室形成部に設けられた格納部に収縮状態をもって格
納されているものとされるエアバッグを装備し、車体に
その外部から比較的大なる衝撃が加えられたとき、収縮
状態におかれたエアバッグに格納部から車室内へと急遽
膨張する状態をとらせ、その膨張状態とされたエアバッ
グにより衝撃力を吸収するとともに車室内の乗員を拘束
するようにして、乗員に及ぼされる衝撃を緩和し、乗員
の保護を図るようになすことが提案されている。

【０００３】斯かる車両に装備されるエアバッグは、車
室内におけるフロント側の位置に配される運転席用シー
ト及び助手席用シートに着座する乗員の保護を図るもの
とされることが多く、一般に、例えば、特開平2-303952
号公報にも示される如くに、運転席用シートに着座する
乗員の保護を目的とするものにあっては、ステアリング
ホイールの中央部に設けられた格納部に収縮状態とされ
て格納され、また、助手席用シートに着座する乗員の保
護を目的とするものにあっては、ダッシュボード部（特
開平2-303952号公報においてはインスツルメントパネル
部と称されている）における助手席用シートの前方とな
る部分に設けられた格納部に収縮状態とされて格納され
る。

【０００４】そして、ステアリングホイールの中央部あ
るいはダッシュボード部における助手席用シートの前方
となる部分に設けられた格納部に収縮状態とされて格納
されたエアバッグは、それに伴って格納部に配されたイ
ンフレータ（バッグ膨張装置）の作動により車室内に膨
張せしめられる。このようなステアリングホイールの中
央部あるいはダッシュボード部に設けられた格納部に格
納されるエアバッグにあっては、それが膨張状態におか
れるとき、車両フロント側に倒れ込むことになることが
多い乗員の頭部を含む上体の保護を確実に行うものとさ
れるべく、その乗員の喉元部分に当接するように膨張す
ることが望まれる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上述の如くの、車両に
装備されるエアバッグのうち、例えば、運転席用シート
に着座する乗員の保護をその役割としてステアリングホ
イールの中央部に設けられた格納部に格納されるものに
あっては、運転席用シートに着座する乗員についての基
準の位置が想定され、膨張状態におかれるときには想定
された基準の位置から車両フロント側に倒れ込む乗員の
喉元部分に当接するように、その膨張方向が設定され
る。しかしながら、運転席用シートに実際に着座する乗
員は必ずしも想定された基準の位置から車両フロント側
に倒れ込むとは限らず、しかも、ステアリングホイール
の中央部に設けられた格納部に格納されたるエアバッグ
の膨張時における乗員保護作用上の融通性は位置的制約
を受けて比較的小なるものとされるので、ステアリング
ホイールの中央部に設けられた格納部に格納されたエア
バッグの場合、車体にその外部から比較的大なる衝撃が
加えられたとき、車両フロント側に倒れ込む乗員の位置
の態様によっては、膨張する際に乗員の喉元部分に的確
に当接しないことになるという事態が生じる虞がある。

【０００６】さらに、エアバッグが格納される格納部が
中央部に設けられたステアリングホイールは、全体重量
の増加がまねかれることになり、そのことが操作性に好
ましからぬ影響を及ぼすことになるものとされるという
問題もある。

【０００７】そこで、このような不都合に対処すべく、
車室形成部のフロント側上方部分を成すフロントヘッダ
ー部における運転席用シートに対向する部位に設けられ
た格納部に収縮状態をもって格納され、膨張せしめられ
る際には、収縮された状態から、運転席用シートに着座
する乗員とステアリングホイールとの間にその斜め上方
側から到来して介在せしめられる膨張状態に移行するも
のとされるエアバッグが提案されている。

【０００８】このように運転席用シートに着座する乗員
とステアリングホイールとの間にその斜め上方側から到
来して介在せしめられる膨張状態をとるエアバッグは、
その膨張が開始される際における運転席用シートに着座
する乗員の位置にかかわらず、膨張状態におかれると
き、車両フロント側に倒れ込む乗員の喉元部分に当接し
て乗員の頭部を含む上体の保護を行えるものとされ得る
ことになるが、その膨張の際には、運転席用シートに着
座する乗員とステアリングホイールとの間の空間みなら
ず、ステアリングホイールとその前方に位置するフロン
ト・ウインドシールドとの間の空間にも広がるものとさ
れるので、膨張容積が比較的大となってしまい、運転席
用シートに着座する乗員とステアリングホイールとの間
に十分な容積をもって介在せしめられる膨張状態が迅速
に得られないことになってしまう虞がある。

【０００９】斯かる点に鑑み、本発明は、車両の車室形
成部におけるフロント側上方部分に設けられた格納部に
収縮状態をもって格納されるものとされるもとにおいて
も、車室内に設置されたフロント側シートに着座する乗
員を保護すべく、格納部から車室内に膨張せしめられる
に際し、その乗員を確実に保護する膨張状態を迅速かつ
的確にとることができるエアバッグが得られることにな
る、車両のエアバッグ構造を提供することを目的とす
る。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成すべ
く、本発明に係る車両のエアバッグ構造は、車両の車室
形成部におけるフロント側上方部分に設けられた格納部
に、収縮状態とされるとともにバッグ膨張手段を伴って
格納され、バッグ膨張手段の作動により収縮状態から車
室内に膨張する状態へと移行せしめられるエアバッグ本
体と、車室形成部におけるフロント側上方部分に配され
た膨張方向制御部材とを備え、膨張方向制御部材が、バ
ッグ膨張手段が作動状態とされるとき、エアバッグ本体
の膨張を車室内に設置されたフロント側シートに向けて
行わせるものとされて、構成される。

【００１１】

【作用】上述の如くに構成される本発明に係る車両のエ
アバッグ構造においては、フロント側シートに対してそ
の斜め上方側となる位置に収縮状態をもって配置された
エアバッグ本体が膨張せしめられるとき、膨張方向制御
部材により、例えば、フロント・ウインドシールド側へ
の膨張が規制されるもとで、フロント側シートに向けて
の膨張を行うものとされる。それにより、エアバッグ本
体は、その収縮状態からフロント側シートに着座する乗
員の上体の直前に広がることになる膨張状態への移行
が、フロント・ウインドシールド側に広がってフロント
・ウインドシールドに当接することになる膨張を伴うこ
となく行われて、膨張容積の増大が抑制されたものとさ
れるので、その膨張時に、フロント側シートに着座した
乗員を確実に保護する膨張状態を迅速かつ的確にとるこ
とができるものとされる。

【００１２】

【実施例】図１は、本発明に係る車両のエアバッグ構造
の一例をそれが適用されたエアバッグ装置を備えた車両
の車室の部分と共に示す。

【００１３】図１に示される車室１を形成するものとさ
れた車両の車体における車室形成部は、フロアー部３，
ルーフ部４，ルーフ部４における前端部分に設けられた
フロントヘッダー部４Ａ，フロント・ウインドシールド
５、及び、ダッシュパネル６に取り付けられたインスツ
ルメントパネル部７等を含むものとされており、インス
ツルメントパネル部７が車室１の前端部を区画してい
る。そして、インスツルメントパネル部７には、メータ
クラスタ部８が設けられ、さらに、メータクラスタ部８
の下部からステアリングホイール９が突出している。ま
た、車室１内には、インスツルメントパネル部７から所
定の距離だけ離隔するものされた運転席用シート１０が
設置されている。

【００１４】フロントヘッダー部４Ａは、ルーフ部４を
構成するルーフパネル１１及びルーフトリム１２の夫々
における前端部分をもって形成されて車室形成部におけ
るフロント側上方部分を成すものとされ、その斜め下方
に設置された運転席用シート１０に対向する部位には、
エアバッグ格納部２０が設けられている。エアバッグ格
納部２０には、折り畳まれることにより収縮状態とされ
たエアバッグ本体２１とエアバッグ本体２１の後方に位
置するインフレータ２２とが格納されており、インフレ
ータ２２はエアバッグ本体２１の一端に連結されてい
る。

【００１５】フロントヘッダー部４Ａにおけるエアバッ
グ本体２１の前方側に位置する部分には、ルーフパネル
１１におけるフロントヘッダー部４Ａを形成する前端部
からリア側に向けて突出するヘッダートリム１３に支持
されたリッド２４が配されている。リッド２４は、その
一端部に設けられたヒンジ部２５を介してヘッダートリ
ム１３の一端部に取り付けられており、その他端部は、
ルーフトリム１２におけるフロントヘッダー部４Ａを形
成する前端部に連結部２６を介して連結されている。連
結部２６は比較的小なる引張力により破断され得る薄肉
部とされており、リッド２４は、連結部２６が破断され
ると、その一端部に設けられたヒンジ部２５を支点とし
て回動し得るものとされている。

【００１６】ヘッダートリム１３の他端部におけるリッ
ド２４に対向する部分には、サンバイザとしての役割も
果たすバッグ膨張方向制御板３０の一端部及びストッパ
部材３１の一端部が取り付けられている。ストッパ部材
３１はバッグ膨張方向制御板３０よりフロント側に配さ
れ、フロント・ウインドシールド５の上端部から所定の
距離離隔した位置から、他端部が一端部よりフロント・
ウインドシールド５からの離隔距離が大となる方向をも
って、車室内に突出せしめられたものとされている。バ
ッグ膨張方向制御板３０は、その一端部がヘッダートリ
ム１３により支持されて、図１において実線により示さ
れる如くの、その他端部がルーフトリム１２の前端部に
当接して、全体のフロント・ウインドシールド５からの
離隔距離が比較的大とされる第１の位置と、図１におい
て一点鎖線により示される如くの、その一端部がストッ
パ部材３１に当接するとともにその他端部がルーフトリ
ム１２の前端部から離隔して、全体のフロント・ウイン
ドシールド５からの離隔距離が第１の位置におけるもの
より小とされる、第２の位置との間を回動し得るものと
されている。そして、バッグ膨張方向制御板３０は、第
２の位置をとるときには、ストッパ部材３１により、他
端部が一端部よりフロント・ウインドシールド５からの
離隔距離が大となる方向をもって車室１内に突出する状
態におかれる。また、バッグ膨張方向制御板３０には、
第２の位置におかれたとき他端部から運転席用シート１
０に向けて突出する状態をとるものとされた突出部３０
Ａが設けられている。

【００１７】エアバッグ格納部２０に格納されたインフ
レータ２２は、着火式のガス発生剤等を内蔵しており、
車室１が設けられた車体にその外部から比較的大なる衝
撃が加えられたとき、ガス発生剤が着火せしめられて比
較的多量の不活性ガスを迅速に発生し、そのガスをエア
バッグ本体２１の内部に供給する動作を行うものとされ
ている。それにより車体にその外部から比較的大なる衝
撃が加えられたときには、エアバッグ格納部２０に格納
されたエアバッグ本体２１が、収縮状態から膨張状態に
急遽移行せしめられ、図２に示される如くに、エアバッ
グ格納部２０から車室１内に急激に膨張せしめられる。
その際、膨張過程にあるエアバッグ本体２１は、リッド
２４とルーフトリム１２との連結部２６を内側から破断
し、さらに、リッド２４をその一端部に設けられたヒン
ジ部２５を支点として外方に回動し、リッド２４にヘッ
ダートリム１３に当接する位置をとらせる。また、斯か
る際において、バッグ膨張方向制御板３０が第２の位置
以外の位置にあるとき、膨張過程にあるエアバッグ本体
２１及びエアバッグ本体２１により外方に回動する過程
にあるリッド２４は、バッグ膨張方向制御板３０をスト
ッパ部材３１に向けて回動させ、バッグ膨張方向制御板
３０に第２の位置をとらせる。

【００１８】このようにエアバッグ本体２１が膨張する
状態をとるとき、バッグ膨張方向制御板３０がフロント
・ウインドシールド５から所定の距離離隔した第２の位
置におかれ、しかも、第２の位置におかれたバッグ膨張
方向制御板３０は、それが当接するストッパ部材３１に
よって、他端部が一端部よりフロント・ウインドシール
ド５からの離隔距離が大とされる状態にされるととも
に、他端部に設けられた突出部３０Ａが運転席用シート
１０に向けて突出する状態とされる。それにより、エア
バッグ本体２１は、その収縮状態から膨張状態への移行
が、バッグ膨張方向制御板３０による膨張方向の規制を
受け、図２において一点鎖線により示される如くのフロ
ント・ウインドシールド５側に広がってフロント・ウイ
ンドシールド５に当接することになる膨張を伴うことな
く、運転席用シート１０に向かって膨張するようにして
行われるものとされる。それにより、エアバッグ本体２
１は、図２において実線により示される如くに、車両フ
ロント側に倒れ込む運転席用シート１０に着座する乗員
Ｐとステアリングホイール９との間に十分な膨張容積を
もって介在せしめられる状態を迅速にとるものとされ、
従って、運転席用シート１０に着座した乗員Ｐの頭部を
含む上体を確実に保護する膨張状態を迅速かつ的確にと
ることができるものとされる。

【００１９】さらに、エアバッグ本体２１は、収縮され
た状態から膨張状態への移行時に、運転席用シート１０
に着座する乗員Ｐとステアリングホイール９との間にそ
の斜め上方側から到来して介在せしめられるものとされ
るので、運転席用シート１０に着座した乗員Ｐのステア
リングホイール９に対する位置及び運転姿勢の如何にか
かわりなく、膨張状態におかれたとき、車両フロント側
に倒れ込む乗員Ｐの喉元部分に的確に当接することにな
る。それゆえ、エアバッグ本体２１が膨張せしめられる
もとでの、運転席用シート１０に着座した乗員Ｐの頭部
を含む上体の保護が、確実かつ効果的に行われることに
なる。

【００２０】

【発明の効果】以上の説明から明らかな如く、本発明に
係る車両のエアバッグ構造によれば、エアバック本体
が、バッグ膨張手段を伴って、フロント側シートに対し
てその斜め上方側となる位置に収縮状態をもって配置さ
れ、そのエアバッグ本体が、バッグ膨張手段の作動によ
り膨張せしめられるときには、膨張方向制御部材によ
り、例えば、フロント・ウインドシールド側への膨張が
規制されるもとで、フロント側シートに向けての膨張を
行うものとされるので、エアバッグ本体は、その収縮状
態からフロント側シートに着座する乗員の上体の直前に
広がることになる膨張状態への移行が、フロント・ウイ
ンドシールド側に広がってフロント・ウインドシールド
に当接することになる膨張を伴うことなく行われ、従っ
て、膨張容積の増大が抑制されて、その膨張時に、フロ
ント側シートに着座した乗員を確実に保護する膨張状態
を迅速かつ的確にとることができるものとされる。

【００２１】しかも、フロント側シートが運転席用シー
トであるもとでは、エアバッグ本体は、収縮された状態
から膨張状態への移行時に、運転席用シートに着座する
乗員とステアリングホイールとの間にその斜め上方側か
ら到来して介在せしめられるものとされるので、運転席
用シートに着座した乗員のステアリングホイールに対す
る位置及び運転姿勢の如何にかかわりなく、膨張状態に
おかれるときには、車両フロント側に倒れ込む乗員の喉
元部分に的確に当接することになり、それゆえ、運転席
用シートに着座した乗員の頭部を含む上体の保護を、確
実かつ効果的に行えるものとされる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る車両のエアバッグ構造の一例をそ
れが適用されたエアバッグ装置を装備した車両の車室の
一部と共に示す概略構成図である。

【図２】本発明に係る車両のエアバッグ構造の一例が適
用されたエアバッグ装置の構成及び動作説明に供される
概略構成図である。

【符号の説明】

１ 車室 ４Ａ フロントヘッダー部 ９ ステアリングホイール １０ 運転席用シート ２０ エアバッグ格納部 ２１ エアバッグ本体 ２２ インフレータ ２４ リッド ３０ バッグ膨張方向制御板 ３１ ストッパ部材

フロントページの続き (72)発明者 森山 尚宗 広島県安芸郡府中町新地３番１号 マツダ 株式会社内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】車両の車室形成部におけるフロント側上方
   部分に設けられた格納部に、収縮状態とされるとともに
   バッグ膨張手段を伴って格納され、上記バッグ膨張手段
   の作動により上記収縮状態から車室内に膨張する状態へ
   と移行せしめられるエアバッグ本体と、 上記車室形成部におけるフロント側上方部分に配され、
   上記バッグ膨張手段が作動状態とされるとき、上記エア
   バッグ本体の膨張を上記車室内に設置されたフロント側
   シートに向けて行わせる膨張方向制御部材と、を備えて
   構成される車両のエアバッグ構造。
2. 【請求項２】膨張方向制御部材が、エアバッグ本体の膨
   張を車室内に設置されたフロント側シートに向けて行わ
   せるとき、特定の位置をとることを特徴とする請求項１
   記載の車両のエアバッグ構造。
3. 【請求項３】膨張方向制御部材が、サンバイザを兼ねる
   ものとされたことを特徴とする請求項１又は２記載の車
   両のエアバッグ構造。