JPH0633359A - 面ファスナー雌材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 安価でかつ優れた係合特性を有する面ファス
ナーの雌材を提供することにある。 【構成】 共重合ポリエステルを鞘成分とし高融点ポリ
エステルを芯成分とする複合繊維から１４０℃での乾熱
収縮率が６０％であるカードウェブを作成し、該ウェブ
にポリプロピレン製スパンボンド不織布を積層し、ニー
ドルパンチを施した後、熱処理することによりスパンボ
ンドの表面に深さ０．２〜３mmの皺を１ｃｍあたり２〜
４０個形成せしめた面ファスナー雌材。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、面ファスナー用の雌材
に関する。

【０００２】

【従来技術】従来から面ファスナーはその使用の簡便さ
から衣類、日用品、内装材、産業資材を始め様々な分野
に用途展開されており、用途に応じてファスナーの基本
構造要素であるフック（雄材）とループ（雌材）の形状
について様々な工夫がなされてきた。しかし、それらの
多くはどちらかといえばフック側から見た改良技術であ
り、ループ等の雌材から見た研究は十分になされていな
いのが現状である。これまでに面ファスナーの雌材とし
ては、例えば、織成または編成されたループまたは毛羽
を有するもの、不織布構造体からなるもの、タスラン加
工糸のループを利用したもの等が提案されている。製編
織されたループを有するものは最もポピュラーである
が、使い捨ての分野においてはコスト的に問題があり、
また、不織布タイプのものについては、従来、短繊維か
らなるものが使用されてきたためフックとの繰り返し着
脱により短繊維の脱落が生じ、係合耐久性および外観面
から満足できるものではなかった。さらに、タスラン加
工糸を使用するものについてはそのままでは使用でき
ず、実際は該加工糸を並べ揃えて基材と一体化しなけれ
ば使用できないという繁雑さがあった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
した従来の面ファスナー雌材の欠点を解決し、安価であ
りながら優れた係合特性を有する面ファスナーの雌材を
提供しようとするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、深
さ０．２〜３mmの皺を１ｃｍあたりに２〜４０個有する
長繊維不織布からなる面ファスナー雌材であり、また、
シート状物に皺を有する長繊維不織布が積層一体化され
ていることを特徴とする面ファスナー雌材である。本発
明においては、フックと係合する表面に皺が形成されて
いる長繊維不織布を使用することが重要であり、この皺
は、雌材表面の一方向に沿って形成されたものであって
も、方向性を有さず形成されたものであってもよい。ま
た、皺の形態は本発明の効果を損なわない範囲であれば
特に限定されず、不規則な形態であっても規則的な形態
であってもよい。皺の深さはフックの大きさや形状によ
って変化させることができるが、それでも０．２〜３m
m、好ましくは０．３〜２mmでなければならない。深さ
が０．２mm未満ではフックとの係合が十分おこらないの
で実用的でなく、３mmを越えると１ｃｍあたりの皺の数
を多くすることが技術的に困難となりその結果フックと
の係合も十分でなくなるばかりか外観上も好ましくなく
なる。皺の数はフックの密度との関係で変更することが
できるが、１ｃｍあたりに２〜４０個、好ましくは５〜
２０個有することが必要である。１ｃｍあたり２個未満
では雌材の表面凹凸が十分形成されないためフックとの
係合性が劣り、４０個を越えると皺の深さを上記のよう
な範囲に設定することが難しくなり、凹凸化の効果が十
分に発現しなくなる。さらに、本発明の雌材は表面が長
繊維不織布で構成されていることが必要であり、フック
の繰り返し着脱によっても雌材の構成繊維の脱落が生じ
ないため、その外観を損なうことなく優れた係合力を長
期間維持できるという特徴を有するものである。

【０００５】長繊維不織布については、特に限定はない
がフックとの係合力の点から１０〜２００ｇ／ｍ↑２の
目付を有するものが好ましく使用される。また、素材と
しては特に限定されないが不織布としたときに熱収縮率
が大きいと後述するような高収縮性のシート状物との収
縮率の差を出しにくくなるので、積層・熱処理により皺
を形成させる場合には、低収縮性の長繊維不織布を使用
することが望ましく、例えば、シート状物と長繊維不織
布の１４０℃における乾熱収縮率差が１０〜６０％であ
るような組み合わせが望ましい。また、長繊維不織布を
構成する繊維の単繊維繊度は１〜５デニール程度が好ま
しい。細すぎると係合の繰り返し時にフックによって繊
維が切断されやすくなり、一方、太すぎると繊維の剛性
が増すため皺形成時に皺がよりにくくなるのであまり好
ましくない。長繊維不織布を構成する素材としては、例
えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィ
ン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性重合体を使
用することができるが、本発明においてはポリプロピレ
ン等のポリオレフィンが好ましく使用され、代表的には
ポリプロピレンのスパンボンド不織布が好適に使用でき
る。

【０００６】皺の形成方法は種々考えられるが、長繊維
不織布単独で構成される雌材は、原料不織布を表面に所
望の形状の皺を持つ加熱ロール等に通して加圧賦形する
ことによって得ることができる。しかし、皺の形態保持
性、係合特性の面からは高収縮性のシート状物と長繊維
不織布を積層一体化した後に高温熱処理し、シート状物
の収縮力を利用して長繊維不織布に皺を形成するほうが
好ましい。また、皺の形態のコントロールは上記のよう
なロール上の皺のパターン設計を変更することで可能で
あり、また、積層・熱処理による場合は、例えば、シー
ト状物としてカードウェブを用いれば雌材の一方向に沿
った皺の形成が可能となり、ランダムウェブを使用すれ
ば複雑な形態の皺を形成させることが可能である。皺の
形成は係合性能に大きく影響するため、慎重に形成され
なければならいが、所望の皺を形成するためには長繊維
不織布Ｂとシート状物Ａの目付の比（Ｂ／Ａ）が５〜
０．１であることが望ましく、また、それぞれの目付も
１０〜２００ｇ／ｍ↑２程度であることが好ましい。

【０００７】次に、長繊維不織布と積層されるシート状
物について説明すると、該シート状物は高収縮原綿から
構成された織物、編物、不織布等のシート状繊維構造体
または高収縮性のフィルム状物であり、長繊維不織布と
積層一体化して熱処理を施して該シート状物の熱収縮を
利用して長繊維不織布に皺を形成させようというもので
ある。しかし、フィルム状物を用いる場合は雌材が硬く
なりやすいのでシート状の繊維構造体を使用するほうが
好ましい。

【０００８】高収縮性の繊維からなるシート状物として
は、１４０℃における乾熱収縮率が１５〜７０％である
ことが好ましく、高収縮性の繊維としては例えば、イソ
フタル酸、５−金属スルフォイソフタル酸等の第３成分
を数モル％〜数十モル％共重合した変性ポリエステル繊
維、アクリル系繊維、ポリアミド繊維等を使用すること
ができるが、好ましくは共重合ポリエステル繊維が使用
される。これらの繊維は、単独繊維であっても各種複合
繊維でもよいが、本発明においては共重合ポリエステル
と高融点ポリエステルからなる複合繊維を使用すると高
収縮性と同時に熱融着性を付与することができ、その結
果、長繊維不織布との積層一体化の熱処理の際に繊維間
での融着が生じ両者の一体化がさらに促進され雌材の形
態が安定化されるので好ましい。

【０００９】長繊維不織布とシート状物の積層一体化の
方法は特に限定されないが、例えば、積層後にニードル
パンチを施したりウォーターニードルを施すなどで一体
化してもよい。ニードルパンチの条件としては、例え
ば、５０〜２００ペネ程度であることが好ましく、ま
た、ウォーターニードルの条件としては、例えば、ノズ
ル径０．３〜１mm程度、水圧３０〜６０ｋｇ／ｃｍ↑２
程度であることが望ましい。

【００１０】このようにして得られる本発明の面ファス
ナー雌材は、特定の皺を有することによって、従来の様
々な織成、成形面ファスナーのフック、例えば、クラレ
製（マジックテープ、マジロック、マルチロック）、吉
田工業製（クィックロン、モールドクィックロン）、鐘
紡製（ベルタッチ）、生駒製（ユニテープ）、スリーＭ
製（デュアルロック）などとの係合が可能であるが、特
に、成形面ファスナーの突出素子との係合が極めて良好
であり、例えば、素子ピッチが３mm以下、頭巾が２mm以
下、素子厚みが１．５mm以下、素子面積が３mm↑２以
下、素子高さが２mm以下、素子密度が２０個／ｃｍ↑２
以上の比較的小さな雄材との係合に最高の効果を発揮で
きるものである。

【００１１】そして、本発明の面ファスナーの雌材は、
従来の雌材に比して安価でしかも係合特性に優れ、繰り
返し着脱による構成繊維の脱落も実質的に無いので、従
来公知の面ファスナーの総ての用途に適用可能であり、
特に使い捨て製品、例えば、下着、かみおむつ、生理用
品等の衛生材料分野に好適である。

【００１２】

【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実
施例における乾熱収縮率、シェアー強力及びピール強力
は以下の方法で求めた。また、皺の数は雌材の任意の１
cmにおける皺の山または谷の数を計測した値を平均した
ものであり、皺の深さは皺の山と谷の落差を計測した値
の平均値として表した。 ＜乾熱収縮率＞サンプル片（２５cm×２５cm）をナイロ
ンクロスの上に載せ、サンプル片の縦及び横方向にほぼ
沿う状態で一辺２０cmの正方形を描き、該サンプル片を
熱風循環式乾燥機中で熱処理（１４０℃×１０秒）し、
その後１分間冷却する。次いでサンプル片に描かれた正
方形の向かい合う辺の間隔を縦および横方向で夫々３か
所づつ測定する。そして、縦方向の３つのデータの平均
値と横方向の３つのデータの平均値とから熱収縮後の正
方形の面積Ｓを計算し、下記式に従って乾熱収縮率
（％）を求めた。 乾熱収縮率（％）＝［（４００−Ｓ）／４００］×１０
０ ＜シェアー強力＞サンプル片を約１００mm長にし、これ
をクラレ社製マジロックと５０mmオーバーラップするよ
うに軽く接合させ、２ｋｇの鉄ローラー（７０mm径×６
５mm）で一往復転圧した後、これを島津社製オートグラ
フ（ＡＧＳ−１００Ａ）を用い、引張速度３００mm／分
で、引張強力試験を行い、このときの最大強力を読取り
シェアー強力（ｇ／ｃｍ↑２）とした。また、強力は初
回のものと５回の繰り返し着脱後のものについて測定し
た。 ＜ピール強力＞サンプル片を約１３０mm長にし、これを
クラレ社製マジロックと重ね合わせて軽く接合させ、２
ｋｇの鉄ローラー（７０mm径×６５mm）で一往復転圧し
た後、これを島津社製オートグラフ（ＡＧＳ−１００
Ａ）を用い、引張速度３００mm／分、チャート速度４０
mm／分でテープの剥離を３０〜５０mm行ない、グラフか
ら極大点６点、極小点６点を読み取り、その平均値をピ
ール強力（ｇ／cm）とした。また、強力は初回のものと
５回の繰り返し着脱後のものについて測定した。

【００１３】実施例１ シート状繊維構造体Ａとして熱融着複合繊維（ポリエチ
レンテレフタレートを芯成分とし、イソフタル酸で４５
モル％変性されたポリエチレンテレフタレートを鞘成分
とする芯鞘型複合繊維、２デニール×５１mm）を使用し
て常法に従い目付５０ｇ／ｍ↑２で１４０℃での乾熱収
縮率が６０％のパラレルカードウェブを作り、その上に
長繊維不織布Ｂとして目付３０ｇ／ｍ↑２、１４０℃で
の乾熱収縮率が６％のポリプロピレンスパンボンドを載
せて、ニードルパンチを上側より１００ペネ行なうこと
によりＡ、Ｂを積層一体化した。次に積層一体化したも
のを熱風循環方式の乾燥機により１４０℃で１０秒間熱
処理したところ、長繊維不織布の表面に１cm当たり７
個、平均深さ１mmの不規則な皺を形成することができ
た。これをクラレ社製マジロックの突出素子と係合した
ところ、係合強力は極めて良好であり、繰り返しの着脱
によっても雌材を構成する繊維の脱落が生じないことが
確認された。表１に得られた雌材の皺の状態、面ファス
ナーとしてのシェアー強力、ピール強力および繊維の脱
落の有無を示した。

【００１４】

【表１】

【００１５】実施例２ シート状繊維構造体Ａとして高収縮エステル繊維（イソ
フタル酸で１２モル％共重合されたポリエチレンテレフ
タレート繊維、１．５デニール×５１mm）を使用して常
法に従い目付３５ｇ／ｍ↑２で１４０℃での乾熱収縮率
が３７％のパラレルカードウェブを作り、その上に実施
例１で使用した長繊維不織布Ｂと同じポリプロピレンス
パンボンドを載せて、ニードルパンチを上側より１００
ペネ行なうことによりＡ、Ｂを積層一体化した。次に積
層一体化したものを熱風循環方式の乾燥機により１４０
℃で１０秒間熱処理したところ、長繊維不織布の表面に
１cm当たり３個、平均深さ０．３mmの不規則な皺を形成
することができた。これをマジロックの突出素子と係合
したところ、係合強力は極めて良好であり、繰り返しの
着脱によっても雌材を構成する繊維の脱落が生じないこ
とが確認された。得れた雌材の性能は表１に示した。

【００１６】実施例３ 常法によって得られた目付５０ｇ／ｍ↑２のポリプロピ
レンスパンボンドを溝ピッチ１０個／cm、溝深さ２mm、
表面温度１６０℃のエンボスロールに線圧３０ｋｇ／ｃ
ｍとして通し、規則正しい凹凸の皺を有する雌材を作成
した。本雌材も上記実施例の場合と同様優れた係合強力
を示し、繰り返しの着脱によっても構成繊維の脱落は観
察されなかった。得れた雌材の性状および性能は表１に
示した。

【００１７】比較例１ 実施例３で使用したスパンボンドをエンボスロールに通
さないでそのまま雌材として使用した。このスパンボン
ドはその製造工程で付与された微小な凹凸（深さ０．１
mm、３〜４個／cm）をもともと有していたが、表１に見
られるようにマジロックとの係合は不良であり実用性の
ないものであった。

【００１８】比較例２ １４０℃での乾熱収縮率が１０％であり、ポリエチレン
テレフタレートを芯成分としポリエチレンを鞘成分とす
る芯鞘型熱融着性複合繊維（２デニール×５１mm）を用
いて常法に従って目付３３ｇ／ｍ↑２のカードウェブを
作製し、これを１４０℃で１０秒間熱処理して雌材とし
た。この雌材はマジロックとの係合性は良好であった
が、繰り返しの着脱により構成繊維の毛羽立ち、脱落が
著しく実用性のないものであった。

【００１９】比較例３ シート状繊維構造体Ａとして熱融着複合繊維（ポリエチ
レンテレフタレートを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成
分とする芯鞘型複合繊維、２デニール×５１mm）を使用
して常法に従い目付５３ｇ／ｍ↑２で１４０℃での乾熱
収縮率が１０％のパラレルカードウェブを作り、その上
に実施例１で使用した長繊維不織布Ｂと同じポリプロピ
レンスパンボンドを載せて、ニードルパンチを上側より
１００ペネ行なうことによりＡ、Ｂを積層一体化した。
次に積層一体化したものを熱風循環方式の乾燥機により
１４０℃で１０秒間熱処理したが、長繊維不織布の表面
に皺を形成することができなかった。これをマジロック
の突出素子と係合したところ、係合強力は極めて弱く全
く実用性のないものであった。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 深さ０．２〜３mmの皺を１ｃｍあたりに
   ２〜４０個有する長繊維不織布からなる面ファスナー雌
   材。
2. 【請求項２】 シート状物Ａの片面に皺を有する長繊維
   不織布Ｂが積層一体化されていることを特徴とする面フ
   ァスナー雌材。
3. 【請求項３】 シート状物がシート状繊維構造体であり
   該構造体Ａと長繊維不織布Ｂの夫々の目付の比Ｂ／Ａが
   ５〜０．１である請求項２に記載の面ファスナー雌材。