JPH0628810Y2 - 帆走船用レーダアンテナ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、ヨットなどのような中小型の帆走船に用い
るレーダのアンテナ装置に関するものである。

〔従来の技術〕

船舶に装備される電子装置のアンテナ装置としては、大
型船舶における衛星通信装置において、衛星との対向を
維持するために、前後・左右いずれにも追尾可能な、い
わゆる電動型の疑似シンバル構造のものが用いられてい
る。

一方、第３図Ａのような帆走船１においては、レーダ装
置のアンテナ２がマスト１１の頂点付近に装備される場
合と、帆１２Ａ・帆１２Ｂとの位置的関係、横倒時の船
体１０の復元力維持上の関係などからマスト１１の下半
中腹部分に装備される場合とがあるが、上記の衛星通信
アンテナのような疑似シンバル構造にはされていない。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかし、こうした帆走船１の方が船体１０の動揺や傾き
が大型船よりもはるかに大きく、このため、アンテナ２
が海面３に対して極度に傾き、レーダの探知方向が海面
３と交叉してしまい、遠方に対する探知性能が阻害され
てしまうため、この改善が望まれている。

この解決策として、上記の衛星通信装置に用いられてい
る疑似シンバル構造のものを、そのまま利用したので
は、大型過ぎてアンテナ部分の重量が余りにも重くな
り、船体１０の横倒復元力を極度に低下させてしまうほ
か、構造が高価過ぎて市場性が得られないため、これに
代わる軽量小型安価な軽便構造のものの出現が期待され
ているという問題点がある。

〔問題点を解決するための手段〕

この考案は、こうした帆走船１では、いわゆる舷側方向
（走航方向と直角な方向）におけるマスト１１の中心線
５の鉛直線４に対する傾斜角θをほぼ一定に保った状態
で走航（この考案において、傾斜走航という）する状態
が比較的長時間に亙って続くことが多いということを、
経験的に割り出し、舷側方向に対する傾斜角θのみを修
正すれば、ほとんどの場合、目的を達し得ることに着目
して装備具を構成することにより、上記の問題点を解決
し得るようにしたものであり、舷側方向にのみ左右に傾
斜可能な可動座とこれを支持する固定座とで形成された
取付座の可動座にアンテナ２を取り付け、要所に滑車ブ
ロックを設けて掛け回したループ索を、アンテナ２の舷
側方向の両脇点の一方からマスト１１の下方位置に設け
た繰り車に導いた後、アンテナ２の上記両脇点の他方に
戻すように導いて形成し、このループ索を上記繰り車に
よって手繰り又は電動機にて動かすことにより、アンテ
ナ２の正規の垂直方向を鉛直線４に合わせられるように
した構成をもつ装備構造としたものである。

この考案は、ループ索の配置の変更と延長とにより、ア
ンテナ２の装備位置に関係なく、マスト１１の下方位置
で操作できる有効な手段であるといえる。

〔実施例〕

以下、実施例を図面により説明する。

第１図Ａ・第１図Ｂにおいて、可動座２０２はアンテナ
２を取り付けるための座、また、固定座２０３はマスト
１１に取り付けるための座で、この２つの座を支点具２
１０Ａ・２１０Ｂで連結してアンテナ２の取付座を形成
している。

その連結点、つまり、支点具２１０Ａ・２１０Ｂを中心
として可動座２０２側が固定座２０３に対して左右に回
転し、帆走船１の舷側方向に可変傾斜できるようにして
ある。

可動座２０２・固定座２０３は、耐食性材、例えば、ス
テンレス鋼板を、第２図Ａのように、下向きコの字型と
上向きコの字型とに折り曲げ形成して、一方のコの字型
の外側寸法Ｗ１が他方のコの字型の内側寸法Ｗ２に入り
込むように寸法づけてある。

可動座２０２の上面部分Ｓ１には、アンテナ２を取り付
けるための穴２０２Ａを設け、適宜の固定具、例えば、
ボルト・ナットによって、アンテナ２の底面部分を可動
座２０１に固定する。

可動座２０１の両方の垂下げ面部分Ｓ２Ａ・Ｓ２Ｂの下
端側には、その幅Ｂ１の中央付近に、支点具２１０Ａ・
２１０Ｂ用の対向した穴２１０Ａ２・２１０Ｂ２を設け
る。

一方、固定座２０２の底面部分Ｓ３には、後記のマスト
固定具の固定板２０４および固定腕２０５Ａ・２０５Ｂ
に取り付けるための穴２０３Ｂおよび穴２０３Ａとを設
け、適宜の固定具、例えば、ボルト・ナットにより、固
定板２０４と固定腕２０５Ａ・２０５Ｂとを介してマス
ト１１に固定する。

固定座２０２の両方の立上げ面部分Ｓ４Ａ・Ｓ４Ｂの上
端側には、その幅Ｂ２の中央付近に、支点具２０４Ａ・
２０４Ｂ用の対向した穴２１０Ａ１・２１０Ｂ１を設け
る。

可動座２０２・固定座２０３の穴２１０Ａ１・２１０Ｂ
１と穴２１０Ａ２・２１０Ｂ２を一致させ、支点具２１
０Ａ・２１０Ｂ、例えば、ボルト・ナットによって、回
転可能に組み付け固定してある。

係留具２１０Ａ・２１０Ｂは、ループ索６の両端を係留
するためのもので、耐食性材、例えば、ステンレス鋼板
を、たんざく状にして、アンテナ２に取り付けるための
穴と、ループ索６の両端に設けた端末具６０１Ａ・６０
１Ｂを取り付けるための穴とを設けたもので、第１図Ｃ
のように、ループ索６を取り付ける側をアンテナ２の両
脇側にしてアンテナ２に固定してある。

ループ索６は、合成樹脂繊維材、例えば、グラスフアイ
バー材のロープに柔軟性の被覆を施した索であり、右端
を連結具６０１Ａ、例えば、市販のシャックルで係留具
２０１Ａに係留したＡ部分から滑車ブロック６０２Ａを
通ってＢ部分に、次に滑車ブロック６０４Ａを通り、緩
み止め具７を通ってＣ部分に、繰り具８の繰り車８０１
を巻き回してＤ部分に折り返され、再び緩み止め具７を
通り、滑車ブロック６０４Ｂを通ってＥ部分に、次に滑
車ブロック６０２Ｂを通ってＦ部分に、そして左端に至
り、左端を右端と同様の連結具６０１Ｂによって係留具
２０１Ｂ係留することにより、アンテナ２を介してルー
プ状に連結され、後記の引張具９０１Ａ・９０１Ｂによ
って適当な張力を与えて張り巡らせている。

滑車ブロック６０２Ａ・６０２Ｂ・６０４Ａ・６０４Ｂ
は、ロープ用滑車で、耐食性材、例えば、ステンレス鋼
または合成樹脂製造の市販の滑車ブロックであり、ルー
プ索６の張力による抵抗を緩和して、円滑に左右に移行
させるためのものである。

緩み止め具７は、ハンドル７０１により歯付き偏心カム
７０２が回転すると、ループ索６を背面板に押さえ付け
てロックし、あるいは逆に押さえを緩めてループ索６の
移行を自由にするように構成されたもので、例えば、市
販のロープロック器である。

繰り具８は、ハンドル８０１により繰り車８０２を回転
すると、繰り車８０２のスパイラル溝に巻き回したルー
プ索６の一方側が巻き込まれ他方側が繰り出されるよう
にしてループ索６が繰り動かされるように構成されたも
ので、例えば、市販のロープ用巻き取り器を繰り回し形
式にして用いたものである。

また第２図Ｃは繰り車８０２を、動力回転機構を設ける
とともに、制御器１００２を電子回路により構成し、ア
ンテナ２の垂直方向の傾きを検出する検出器１００６と
マスト１１の傾きを検出する検出器１００５とを設け、
この両検出器の検出出力を比較して制御器１００２を制
御して電動機１００１を駆動する構成としたものであ
る。

具体的には、検出回路１００５・１００６は、例えば、
分圧型のポテンショメーターとし、これに基準電圧回路
１００４の基準電圧を与えて、その分圧点に相当するポ
インターａ_１・ａ_２を検出すべき対象の傾きによって動
かすようにする。

ポインターａ_１・ａ_２を動かす構成としては、検出器１
００６側のａ_１は、例えば、ポテンショメーターの箱体
ｂ_１を固定座２０３に固定し、ポインターａ_１の回転軸
を可動座２０２の回転に従属して回転する軸２０５Ａ′
（例えば、支点具２１０Ａまたは２１０Ｂを可動座２０
２に熔接するなどにより固定して、この軸を軸２０５
Ａ′とし、固定座２０３に対しては回転可能にして組み
付ける）に連結して組み付ける。

検出器１００５側は、例えば、ポテンショメーターの箱
体ｂ_２を船体１０の適宜の箇所（例えば、マスト１１）
に固定し、ポインターａ_２の回転軸を動揺計型の傾斜検
出器の検出軸、例えば、重錘１００５Ａの偏移角θ１に
従属した回転軸をもつ検出器の軸に、連結して組み付け
る。

この各ポテンショメーター１００５・１００６によって
得られる各分圧出力（ポインターａ_１・ａ_２による出
力）を比較回路１００３に与えて、両分圧出力の差を検
出した出力により制御器１００２を電子的に制御し、ア
ンテナ２の傾斜角θ２を重錘１００５Ａの偏移角θ１
（マスト１１の傾斜角θに相当する）と逆方向に回転し
て、アンテナ２の垂直方向を鉛直線４に一致させるよう
に構成している。

止め環６０３は、滑車ブロック６０４Ａ・６０４Ｂの各
吊り輪部分に通した環体とこれを固定するための取り付
け板とで構成されたもので、例えば、市販の止め輪であ
る。

張り索９Ａ・９Ｂは、ループ索６と同様のロープ材で、
それぞれ、一端を滑車ブロック６０２Ａ・６０２Ｂに係
留し、他端に係留した引張具９０１Ａ・９０１Ｂによっ
て各滑車ブロック６０２Ａ・６０２Ｂを船体１０の甲板
１０１側に引っ張ることによりループ索６に適宜の張力
を与えてループ状に形成するためのものである。

引張具９０１Ａ・９０１Ｂは、その両端に設けたフック
間の距離を伸縮操作することによりフックに係留したも
のを引っ張り寄せるように構成されたもので、例えば、
市販のターンバックルである。

係留具９０２Ａ・９０２Ｂは、引張具９０１Ａ・９０１
Ｂの甲板側端を係留するための穴付き固定具で、例え
ば、市販のロープ止め金具である。

そして、緩み止め具７・繰り具８・止め環６０３はそれ
ぞれマスト１１に、また、係留具９０２Ａ・９０２Ｂは
それぞれ甲板１０１に、適宜の固定具、例えば、コーチ
スクリューなどによってマスト１１に固定してある。

固定座２０３は、上記のように、固定板２０４と固定腕
２０５Ａ・２０５Ｂとに固定されており、固定腕２０５
Ａ・２０５Ｂは、第１図Ｃのように、挟着具２０６Ａ・
２０６Ｂを介してマスト１１に取り付け固定されてい
る。

固定板２０４は、耐食性材、例えば、ステンレス鋼板で
形成された座板であり、また、固定腕２０５Ａ・２０５
Ｂは、耐食性材、例えば、ステンレス鋼のアングル材で
形成され、固定腕２０５Ａ・２０５Ｂは、後記の挟着具
２０６Ａ・２０６Ｂに、適宜の固定具、例えば、ボルト
・ナットによって、固定されている。

挟着具２０６Ａ・２０６Ｂは、例えば、市販のマスト固
定具であり、耐食性材、例えば、ＦＲＰ樹脂材または木
材のブロックで形成されており、マスト１１を外側から
抱き抱えるように挟み込んで、適宜の固定具、例えば、
ボルト・ナットにより、締め付け固定されるものであ
る。

〔変形実施〕

この考案は、次のような変形実施が可能である。

(1)可動座２０２・固定座２０３などの耐食性材を耐食
アルミニウム材またはＦＲＰ樹脂材によって形成する。

(2)可動座２０２・固定座２０３などの形状を所要部分
を残して削り、かつ、張り骨をつけて軽量な剛構造に形
成する。

(3)可動座２０２と固定座２０３とのコの字型の幅Ｗ１
・Ｗ２を上下逆にして形成する。

(4)止め環６０３を、更に下方のマスト１１の下端部分
に取り付け、張り索９Ａ・９Ｂを不要にする。

(5)繰り具８・緩み止め具７・滑車ブロック６０４Ａ・
６０４Ｂ・止め環６０３の系統を、マスト１１脇に、例
えば、第１図ＤのブラケットＸ３などのようなものを張
り出して取り付けるなどにより、第１図Ａの軸線Ｙを
Ｙ′のようにマスト１１の側方にズラせて配置する。さ
らに、ハンドル８０２を後方に向けて配置し、操縦席側
から操作できるようにする。

(6)第１図Ｄのように、アンテナ２を高所に装備する場
合、固定座２０３の下方に位置するマスト１１の中途部
分から舷側方向にブームＸ１・Ｘ２を張り出して設け、
この左右の端部分で滑車ブロック６０２Ａ・６０２Ｂを
係留し、第１図Ａの軸線Ｙの部分を下側に向けて配置す
ることにより、ループ索６が帆１２Ｂの操作に邪魔にな
らないようにする。

さらに、マスト１１の下方部分に滑車ブロック６０５Ａ
・６０５Ｂを増設するとともに、マスト１１の側方にブ
ラケットＸ３を張り出して設け、これに繰り具８を取り
付け、ハンドル８０１を後方に向けて配置することによ
り、操縦席側から操作できるようにする。

(7)第２図Ｂのように、繰り車８０２の回転軸２０１Ｘ
を歯車機構２１０Ｇを介して電動機１００１で回転する
動力回転機構を設けるとともに、この電動機１００１の
正・逆回転と停止とを制御する制御器１００２、例え
ば、スイッチを設け、制御器１００２を操縦席側に配置
して、手動で遠隔操作できるように構成する。

〔考案の効果〕

この考案によれば、上記のように、アンテナ２を取り付
ける可動座２０２とマスト１１に取り付ける固定座２０
３とを支点具２１０Ａ・２１０Ｂで連結した取付座によ
りアンテナ２を帆走船１の舷側方向にのみ傾斜可能に
し、アンテナ２の両脇に取り付けたループ索６をマスト
１１の下方に設けた繰り具８で繰り動かすことによりア
ンテナ２の垂直方向を鉛直線４に修正できるようにした
構造なので、第２図Ｂまたは第２図Ｃのように電動機構
造にした場合でも、マスト１１の上方側に装備する構造
部分を軽量小型に構成できるので、マスト１１の上方向
の重量を増加させて船体１０の横倒復元力を極度に低下
させることがなく、また、構造が簡単簡便なので安価に
提供できるなどの特長がある。

【図面の簡単な説明】

図面は実施例を示し、第１図Ａ・第１図Ｄは組立正面
図、第１図Ｂは組立側面図、第１図Ｃは組立底面図、第
２図Ａは要部分解斜視図、第２図Ｂ・第２図Ｃは電動の
場合のブロック構成図、第３図Ａは装備位置の側面図、
第３図Ｂは装備位置の正面図である。 １…帆走船 ２…アンテナ ３…海面 ４…鉛直線 ５…マストの中心線 ６…ループ索６ ７…緩み止め具 ８…繰り具 １０…船体 １１…マスト １２Ａ・１２Ｂ…帆 ２０２…可動座 ２０３…固定座 ２０４…固定板 ２１０Ａ・２１０Ｂ…支点具

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】帆走船のマストなどに装備されるレーダの
   アンテナ装置であって、 ａ．前記レーダのアンテナを取り付けるための可動座と
   前記マストに取り付けるための固定座とを支点具で連結
   し、前記可動座が前記帆走船の舷側方向の左右に傾斜し
   得るように形成した取付座と、 ｂ．前記アンテナの両脇に両端部分が取り付けられ前記
   マストの下方側にまで及ぶ長さをもつ索を前記アンテナ
   を介してループ状に形成したループ索と、 ｃ．前記ループ索の前記下方側付近に設けられた前記ル
   ープ索を繰り動かして前記アンテナの垂直方向を変化さ
   せるための繰り具と、 ｄ．前記繰り具を前記アンテナの垂直方向の傾きを検出
   する検出器と、前記マストの傾きを検出する検出器を設
   け、当該両検出器の検出出力を比較する比較器と、電動
   機と、当該電動機を前記比較器の出力で制御する制御器
   とで制御する手段と、 を具備することを特徴とする装備構造をもつアンテナ装
   置。