JPH0626572A - ピストン装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ブローバイを低減し、またオイル上がりを低
減する。 【構成】 両面キーストンリング６の上面７は円錐面７
ａとその外側に環状の水平面７ｂと外周端に面取面７ｃ
とを有し、下面８は円錐面８ａとその外側に環状の水平
面８ｂと外周端に面取面８ｃとを有している。リング６
を装着するピストン３のリング溝５の上面９は、円錐面
９ａとその外側に環状の水平面９ｂとを有し、下面１０
は円錐面１０ａとその外側に環状の水平面１０ｂとを有
している。リング６とリング溝５の相対する円錐面は互
いに同一角度をなして形成してある。リング６に関し、
円錐面７ａ，８ａと水平面７ｂ，８ｂとの境界から半径
方向外側にリング外周面１１までの距離をＬ１とし、ピ
ストン３のリング溝５に関し、円錐面９ａ，１０ａと水
平面９ｂ，１０ｂとの境界から半径方向外側にシリンダ
ボア内周面１２までの距離をＬ２としたとき、Ｌ１＞Ｌ
２の関係にある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は内燃機関のピストン装置
に関する。

【０００２】

【従来の技術】ディーゼルエンジンや２サイクルガソリ
ンエンジンにおいて、ピストンリングのスティック防止
を目的として、断面がくさび形のキーストンリングを装
着したピストン装置を使用する場合がある。そして特に
スティック傾向が著しいエンジンの場合、リングの上下
面が両方とも傾斜している両面キーストンリングが用い
られている。

【０００３】これは、キーストンリングが半径方向に運
動するとき、傾斜面とそれに相対するリング溝面との距
離が変化し、リング溝に付着したスラッジを清掃する作
用があるからである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】このキーストンリング
の製造にあたっては、製造工程やその後の取り扱いで発
生するカケを防止すること、幅寸法管理、およびスタッ
クに組みやすくすることなどの理由から、図５に示すよ
うに、リングの内周側に形成されている円錐面の外側に
環状の水平面が設けられている。この水平面は、リング
に硬質の表面処理が施される場合、幅を大きくすること
が必要である。このため、クロムめっきや窒化処理を施
したリングの環状の水平面の幅は通常０．５ｍｍ以上あ
るのが普通である。

【０００５】しかるに、キーストンリングが装着される
ピストンのリング溝の従来の溝側面形状は、単にリング
側のキーストン角度に合わせた円錐面となっている。

【０００６】他方、ピストンリングの機能上問題となる
ブローバイに関して、リング側で採られる対策として
は、合口隙間を減らすこと、リングの外周面の面取りを
小さくすること、特殊な形状の合口とすることなどが挙
げられる。

【０００７】これらのうち、合口隙間を減らす対策は、
熱膨張を考慮すれば一定の限度が存在し、特殊な合口形
状とする対策も費用の割りには効果がそれほど期待でき
ない。また、外周面の面取りを小さくすると、カケの危
険が増すので、これにも一定の限度がある。

【０００８】本発明は、キーストンリングを装着したピ
ストン装置におけるブローバイを低減することを目的と
する。また、オイル上がりを低減することを目的とす
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、上面と下面の
うちの少なくとも上面の内周側に円錐面を有し、この円
錐面の外側に円錐面に連続する環状の水平面を有するキ
ーストンリングと、リング溝面に前記キーストンリング
の円錐面に相対する円錐面が形成されているピストンと
からなるピストン装置において、前記ピストンのリング
溝面の円錐面の外側に、円錐面に連続する環状の水平面
が形成されており、かつ、シリンダボア、このシリンダ
ボアに挿入されている前記ピストン、およびこのピスト
ンのリング溝に装着されている前記キーストンリングが
同心に位置した状態で、前記キーストンリングに関し、
前記円錐面と水平面との境界から半径方向外側にリング
外周面までの距離をＬ１、前記ピストンのリング溝に関
し、前記円錐面と水平面との境界から半径方向外側に前
記シリンダボア内周面までの距離をＬ２としたとき、Ｌ
１≧Ｌ２であることを特徴とする。

【００１０】

【作用】両面キーストンリングを装着した従来のピスト
ン装置（図５参照）を例にとって、ピストンリングの合
口を介するブローバイ経路を説明する。

【００１１】図５において、両面キーストンリング６
は、リングの上面７が、内周端から外側に向かって斜め
上方に延びている傾斜面からなる円錐面７ａと、その円
錐面７ａの外側に円錐面７ａに連続して形成されている
環状の水平面７ｂと、さらに水平面７ｂに連続し外周端
に形成されている環状の面取面７ｃとによって形成され
ている。同様に、リングの下面８が、内周端から外側に
向かって斜め下方に延びている傾斜面からなる円錐面８
ａと、その円錐面８ａの外側に円錐面８ａに連続して形
成されている環状の水平面８ｂと、さらに水平面８ｂに
連続し外周端に形成されている環状の面取面８ｃとによ
って形成されており、両面キーストンリング６は上下対
称形状に形成されている。

【００１２】一方、ピストン４３のリング溝４５の上下
面は次のように形成されている。すなわち、リング溝４
５の上面１９は、内周端から外側に向かって斜め上方に
延びている傾斜面からなる円錐面で形成され、円錐面の
傾斜角度は両面キーストンリング６の上面７の円錐面７
ａの傾斜角度と同一角度をなすように形成されている。
同様に、リング溝４５の下面２０は、内周端から外側に
向かって斜め下方に延びている傾斜面からなる円錐面で
形成され、円錐面の傾斜角度は両面キーストンリング６
の下面８の円錐面８ａの傾斜角度と同一角度をなすよう
に形成されており、リング溝４５は上下対称形状に形成
されている。

【００１３】そしてこの場合のブローバイの経路は次の
ように考えられる。すなわち、 ピストンリング６の直上部のピストン外周面４とシ
リンダボア内周面１２とで囲まれる環状の空間（図５の
ａ，ｂ，ｃ，ｄで囲まれる空間）。 リング溝４５の上面１９、リング溝４５の底面４
６、リング溝４５の下面２０、リング６の内周面４７、
リング６の上面７、およびシリンダボア内周面１２とで
囲まれる空間（図５のｂ，ｅ，ｆ，ｇ，ｈ，ｉ，ｊ，
ｋ，ｃで囲まれる空間）。 合口隙間 シリンダボア内周面１２、リング溝４５の下面２
０、リング６の下面８の水平面８ｂ、およびリング６の
外周端の下面側の面取面８ｃとで囲まれる空間（図５の
ｌ，ｍ，ｎ，ｏ，ｐで囲まれる空間）。 ピストンリング６の直下部のピストン外周面４４と
シリンダボア内周面１２とで囲まれる環状の空間（図５
のｍ，ｒ，ｑ，ｎで囲まれる空間）。 としたとき、合口隙間を介するブローバイは、上記−
−−−の経路をとるとされている。上記の経路
の解析から、，，を固定して考えると、および
の断面積を極力小さくすることが上述経路を通るブロ
ーバイを低減することにつながることがわかる。

【００１４】キーストン角度は通常、両面キーストンリ
ングで６〜２０度、片面キーストンリングで３〜１５度
である。この角度を減らすと、，の断面積が減る。
しかし、キーストン角度を減少することは先に述べたス
ラッジを清掃する作用を小さくするので好ましくない。

【００１５】本発明のピストン装置の場合、リング溝側
面の外周側に水平面を有しているので、，の断面積
が従来よりも小さくなり、流路抵抗が増してブローバイ
を低減することができる。また、オイル上がりを低減す
ることもできる。

【００１６】

【実施例】図１は本発明の一実施例を示し、両面キース
トンリングを装着したピストンがシリンダボアに挿入さ
れているピストン装置の要部を示す縦断面図である。シ
リンダ１のボア２内に挿入されているピストン３の外周
面４に形成されているリング溝５に両面キーストンリン
グ６が装着されている。

【００１７】両面キーストンリング６は、リングの上面
７が、内周端から外側に向かって斜め上方に延びている
傾斜面からなる円錐面７ａと、その円錐面７ａの外側に
円錐面７ａに連続して形成されている環状の水平面７ｂ
と、さらに水平面７ｂに連続し外周端に形成されている
環状の面取面７ｃとで形成されている。同様に、リング
の下面８が、内周端から外側に向かって斜め下方に延び
ている傾斜面からなる円錐面８ａと、その円錐面８ａの
外側に円錐面８ａに連続して形成されている環状の水平
面８ｂと、さらに水平面８ｂに連続し外周端に形成され
ている環状の面取面８ｃとで形成されており、両面キー
ストンリング６は上下対称形状に形成されている。

【００１８】一方、リング溝５の上下面は次のように形
成されている。すなわち、リング溝５の上面９は、内周
端から外側に向かって斜め上方に延びている傾斜面から
なる円錐面９ａと、その円錐面９ａの外側に円錐面９ａ
に連続して形成されている環状の水平面９ｂとで形成さ
れている。リング溝５の上面９の円錐面９ａの傾斜角度
は、両面キーストンリング６の上面７の円錐面７ａの傾
斜角度と同一角度をなすように形成されている。同様
に、リング溝５の下面１０は、内周端から外側に向かっ
て斜め下方に延びている傾斜面からなる円錐面１０ａ
と、その円錐面１０ａの外側に円錐面１０ａに連続して
形成されている環状の水平面１０ｂとで形成されてい
る。リング溝５の下面１０の円錐面１０ａの傾斜角度
は、両面キーストンリング６の下面の円錐面８ａの傾斜
角度と同一角度をなすように形成されており、リング溝
５は上下対称形状に形成されている。

【００１９】そして、両面キーストンリング６に関し、
前記円錐面７ａ，８ａと水平面７ｂ，８ｂとの境界から
半径方向外側にリング外周面１１までの距離をＬ１と
し、ピストン３のリング溝５に関し、前記円錐面９ａ，
１０ａと水平面９ｂ，１０ｂとの境界から半径方向外側
に前記シリンダボア内周面１２までの距離をＬ２とした
とき、Ｌ１＞Ｌ２の関係にある。

【００２０】したがって、燃焼行程時などにおいては、
両面キーストンリング６は爆発圧力によって、実線で示
されているようにリング溝５の下面１０に接触される。
この際、図１に示されるように、リング６の下面８の円
錐面８ａは、リング溝５の下面１０の円錐面１０ａに密
接し、リング６の下面８の水平面８ｂとリング溝５の下
面１０との間に隙間が形成されて配置する。しかし、シ
リンダボア内周面１２、リング溝５の下面１０、リング
６の下面８の水平面８ｂ、およびリング６の外周端の下
面側の面取面８ｃとで囲まれる空間は、従来の場合に比
べてかなり小さくなり、またリング６の上面７側の空間
も従来の場合に比べて小さくなるので、ここを通って吹
き抜けるガスのブローバイ量は従来に比べて低減され
る。

【００２１】また、吸入行程時には、リング６は図１に
二点鎖線で示されているように、リング溝５の上面９に
接触される。この際、図１に示されるように、リング６
の上面７の円錐面７ａは、リング溝５の上面９の円錐面
９ａに密接し、リング６の上面７の水平面７ｂとリング
溝５の上面９との間に隙間が形成されて配置する。しか
し、シリンダボア内周面１２、リング溝５の上面９、リ
ング６の上面７の水平面７ｂ、およびリング６の外周端
の上面側の面取面７ｃとで囲まれる空間は、従来の場合
に比べてかなり小さくなり、またリング６の下面８側の
空間も従来の場合に比べて小さくなるので、ここを通っ
て上がるオイルは従来に比べて低減される。

【００２２】以下に、本発明のピストン装置（図１参
照）と比較例のピストン装置（図５参照）について、作
用の項で論議したの面積を比較する。２つのピストン
装置の主要な寸法を表１に示す。

【００２３】

【表１】

【００２４】作用の項で論議したの面積は、実施例の
場合、０．０２７３ｍｍ² 、比較例の場合、０．０４７
３ｍｍ² であって、本発明のピストン装置の方が４２％
少ない。この結果、合口隙間を介するブローバイを減少
することができる。

【００２５】上記実施例では、リング溝５の上面９と下
面１０の双方を円錐面９ａ，１０ａと水平面９ｂ，１０
ｂで形成したが、図２に示すように、ピストン１３のリ
ング溝１５の下面１０のみ前記図１における実施例と同
様に形成し、リング溝１５の上面１９は、内周端から外
側に向かって斜め上方に延びている傾斜面からなる円錐
面で形成し、円錐面の傾斜角度は両面キーストンリング
６の上面７の円錐面７ａの傾斜角度と同一角度をなすよ
うに形成してもよい。

【００２６】また、図３に示すように、ピストン２３の
リング溝２５の上面９のみ前記図１における実施例と同
様に形成し、リング溝２５の下面２０は、内周端から外
側に向かって斜め下方に延びている傾斜面からなる円錐
面で形成し、円錐面の傾斜角度は両面キーストンリング
６の下面８の円錐面８ａの傾斜角度と同一角度をなすよ
うに形成してもよい。

【００２７】なお、本発明は、両面キーストンリングを
装着したピストン装置だけでなく、図４に示す片面キー
ストンリングを装着したピストン装置にも適用可能であ
る。

【００２８】図４において、片面キーストンリング３６
は、リングの上面３７が、内周端から外側に向かって斜
め上方に延びている傾斜面からなる円錐面３７ａと、そ
の円錐面３７ａの外側に円錐面３７ａに連続して形成さ
れている環状の水平面３７ｂと、さらに水平面３７ｂに
連続し外周端に形成されている環状の面取面３７ｃとで
形成されている。リングの下面３８は環状の水平面３８
ｂと、リング外周端に設けられている面取面３８ｃとで
形成されている。

【００２９】一方、ピストン３３のリング溝３５の上下
面は次のように形成されている。すなわち、リング溝３
５の上面３９は、内周端から外側に向かって斜め上方に
延びている傾斜面からなる円錐面３９ａと、その円錐面
３９ａの外側に円錐面３９ａに連続して形成されている
環状の水平面３９ｂとで形成されている。リング溝３５
の上面３９の円錐面３９ａの傾斜角度は、片面キースト
ンリング３６の上面３７の円錐面３７ａの傾斜角度と同
一角度をなすように形成されている。リング溝３５の下
面４０は環状の水平面に形成されている。

【００３０】そして、片面キーストンリング３６に関
し、前記円錐面３７ａと水平面３７ｂとの境界から半径
方向外側にリング外周面４１までの距離をＬ１とし、ピ
ストン３３のリング溝３５に関し、前記リング溝３５の
上面３９の円錐面３９ａと水平面３９ｂとの境界から半
径方向外側に前記シリンダボア内周面１２までの距離を
Ｌ２としたとき、Ｌ１＞Ｌ２の関係にある。

【００３１】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、キ
ーストンリングを装着したピストン装置におけるブロー
バイを低減できる。また、オイル上がりを低減できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示し、両面キーストンリン
グを装着したピストンがシリンダボアに挿入されている
ピストン装置の要部を示す縦断面図である。

【図２】本発明の別の実施例を示し、両面キーストンリ
ングを装着したピストンがシリンダボアに挿入されてい
るピストン装置の要部を示す縦断面図である。

【図３】本発明の別の実施例を示し、両面キーストンリ
ングを装着したピストンがシリンダボアに挿入されてい
るピストン装置の要部を示す縦断面図である。

【図４】本発明の別の実施例を示し、片面キーストンリ
ングを装着したピストンがシリンダボアに挿入されてい
るピストン装置の要部を示す縦断面図である。

【図５】従来例を示し、両面キーストンリングを装着し
たピストンがシリンダボアに挿入されているピストン装
置の要部を示す縦断面図である。

【符号の説明】

１ シリンダ ２ シリンダボア ３、１３、２３、３３ ピストン ４ ピストン外周面 ５、１５、２５、３５ リング溝 ６ 両面キーストンリング ７、３７ リング上面 ８、３８ リング下面 ９、１９、３９ リング溝上面 １０、２０、４０ リング溝下面 ７ａ、８ａ、９ａ、１０ａ、３７ａ、３９ａ 円錐面 ７ｂ、８ｂ、９ｂ、１０ｂ、３７ｂ、３８ｂ、３９ｂ
水平面 ７ｃ、８ｃ、３７ｃ、３８ｃ 面取面 １１、４１ リング外周面 １２ シリンダボア内周面 ３６ 片面キーストンリング

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上面と下面のうちの少なくとも上面の内
   周側に円錐面を有し、この円錐面の外側に円錐面に連続
   する環状の水平面を有するキーストンリングと、リング
   溝面に前記キーストンリングの円錐面に相対する円錐面
   が形成されているピストンとからなるピストン装置にお
   いて、 前記ピストンのリング溝面の円錐面の外側に、円錐面に
   連続する環状の水平面が形成されており、かつ、 シリンダボア、このシリンダボアに挿入されている前記
   ピストン、およびこのピストンのリング溝に装着されて
   いる前記キーストンリングが同心に位置した状態で、 前記キーストンリングに関し、前記円錐面と水平面との
   境界から半径方向外側にリング外周面までの距離をＬ
   １、 前記ピストンのリング溝に関し、前記円錐面と水平面と
   の境界から半径方向外側に前記シリンダボア内周面まで
   の距離をＬ２、としたとき、 Ｌ１≧Ｌ２ であることを特徴とするピストン装置。
2. 【請求項２】 前記キーストンリングが上面と下面の双
   方に前記円錐面と水平面を有する両面キーストンリング
   であり、前記ピストンのリング溝の上面と下面の双方に
   前記円錐面と水平面を有していることを特徴とする請求
   項１記載のピストン装置。
3. 【請求項３】 前記キーストンリングが上面と下面の双
   方に前記円錐面と水平面を有する両面キーストンリング
   であり、前記ピストンのリング溝の下面にのみ前記円錐
   面と水平面を有していることを特徴とする請求項１記載
   のピストン装置。
4. 【請求項４】 前記キーストンリングが上面と下面の双
   方に前記円錐面と水平面を有する両面キーストンリング
   であり、前記ピストンのリング溝の上面にのみ前記円錐
   面と水平面を有していることを特徴とする請求項１記載
   のピストン装置。
5. 【請求項５】 前記キーストンリングが上面にのみ前記
   円錐面と水平面を有する片面キーストンリングであり、
   前記ピストンのリング溝の上面に前記円錐面と水平面を
   有していることを特徴とする請求項１記載のピストン装
   置。