JPH0625128Y2 - 履物用中敷 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、紳士靴、婦人靴あるいは運動シューズなどの
履物の靴底内面上に敷設され、保温性、濡れ・蒸れ防止
性、速乾性および防滑性の向上を同時に満足させること
ができる履物用中敷に関する。

〔従来の技術〕

従来の履物用中敷として、上層と下層とからなる２層構
造のものが知られている。この２層構造の履物用中敷に
は、上層に例えばポリ塩化ビニリデンなどの不透水性の
編織布を使用させ、かつ下層に比較的防滑性の低い素材
からなるものを使用させたものがあるが、このものは上
層が不透水性の層であるため、汗が吸収されずに中敷上
に水滴として残り、従って足裏に濡れ感や蒸れ感を感じ
るとともに保温性も低下し、しかも履物を脱いだのち汗
が付着した中敷の乾燥にも時間がかかる一方、下層には
比較的防滑性の低い素材が使用されているため、靴の着
用時にこの履物用中敷の位置ずれなどが発生していた。

このような課題を解消する従来技術として、前記上層に
例えば綿や麻などの吸水性の編織布を使用させた履物用
中敷がある。このものは、汗を吸水性の良い上層で吸着
・保持することにより、足裏の濡れ感および蒸れ感およ
び保温性の低下を減少させるものである。

なお、依然として下層には比較的防滑性に乏しい素材が
使用されており、このため同様に靴の着用時にこの履物
用中敷の位置ずれなどが発生していた。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、この吸水性の上層を有する履物用中敷は前述
したような２層構造であるため、上層の表面が直接使用
者の足裏に接触する。

このため、この上層が不透水性のものほどではないが、
比較的足裏にじめじめした濡れ感や蒸れ感を感じるとと
もに保温性も低く、また中敷に付着された汗の速乾性も
乏しかった。

また、前述したように下層には比較的防滑性に乏しい素
材が使用されており、このため靴の着用時にこの履物用
中敷の位置ずれなどが発生していた。

本考案はこのような従来の問題点に鑑みなされたもの
で、足裏の濡れ・蒸れ防止性、保温性および速乾性の向
上、ならびに敷設位置の位置ずれ防止をも同時に満足で
きる履物用中敷を提供することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

本考案は、多数の微細な小孔を有する多孔性繊維からな
る汗を通し易い疎水性表面層と、この疎水性表面層から
浸透した汗を吸着させる吸水性中間層と、中敷の履物内
の滑動を防止させる防滑性基材層とを順次積層させたこ
とを特徴とする履物用中敷を提供するものである。

〔作用〕

本考案の履物用中敷を履物内に敷設して使用させると、
足裏の汗は接触する多孔性繊維からなる疎水性表面層を
通過して吸水性中間層に浸透して行き、そこで拡散・吸
着される。このとき、この汗は一部が多孔性繊維間の隙
間および繊維の表面を伝い、残りが多孔性繊維の内部に
形成された多数の微細な小孔を毛細管現象により伝って
吸水性中間層に浸透して行く。

このため、足裏が接触する疎水性表面層には汗が付着し
難くて常時サラッとした肌触りを維持でき、従って足裏
の濡れ・蒸れ防止の向上ができ、また吸水性中間層より
も疎水性表面層が乾いているため、履物を脱いだ後の乾
きも速くて速乾性が良好である。

また、多孔性繊維の内部には前述したように多数の微細
な小孔が形成されているため、この小孔内に空気を保持
させることで保温性の向上ができる。

さらに、防滑性基材層は、防滑性を有するため、歩行中
に載置された履物用中敷が履物の靴底面を滑って移動す
るということがない。

本考案は、これらのことを同時に満足させることができ
る履物用中敷である。

〔実施例〕

以下、実施例を挙げ、本考案をさらに具体的に説明する
が、本考案は以下の実施例に限定されるものではない。

なお、この実施例を述べるにあたって、紳士靴用の履物
用中敷を例にとる。

まず、第１図〜第３図に示す本考案の第１実施例の履物
用中敷を説明する。

この第１実施例の履物用中敷Ａは、第１図に示すように
足形の形状を有する中敷であり、かつ第２図に示すよう
に疎水性表面層１０、吸水性中間層２０および防滑性基
材層３０を備えている。

前記疎水性表面層１０は、この履物用中敷Ａの上層とな
る層で、第３図に示すように多数の微細な小孔１１ａを
有する多孔性繊維１１の汗を通し易い素材からなる単層
または複層のものである。

また、この疎水性表面層１０の素材としては、例えばウ
ール、アクリル繊維、ポリエステル繊維（ポリエチレン
テレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど）、
ポリアミド繊維（ナイロン６、ナイロン６，６など）お
よびこれらの混紡などの素材からなる多孔性繊維１１が
使用でき、この第１実施例ではこれらのうち多孔性のア
クリル繊維（例えばカネボウ（株）製、アクワロン）を
使用している。

なお、ここでいう多孔性繊維１１とは、繊維の内部およ
び表面に多数の小孔を有するもので、毛細管現象によっ
て水分や水蒸気を吸収発散し易い構造になっていること
を指称する。

また、この第１実施例の疎水性表面層１０では保温性を
向上させるために繊維集合体構造としてボアを採用され
ているが、必ずしもこれに限定させなくともよく、例え
ばハイパイル、フレンチパイルまたは起毛トリコットな
どの他の立毛状繊維素材、ならびに他の織布、編布およ
び不織布などの布帛も使用できるが、保温性の見地から
立毛状繊維素材を採用させた方が好ましい。

また、この第１実施例の多孔性繊維１１の長さは０．５
〜２０mm、特に２〜１０mmが好ましく、０．５mm未満で
あると短毛となって保温性が減少し、かつ吸水性中間層
２０と足裏との距離が短くなり、従ってこの吸水性中間
層２０に保持された汗が足裏に移行し易くなるため濡れ
感を感じ易くなる一方、２０mmを超えると長毛過ぎて不
経済となり、かつ靴内に敷設した際にその厚みにより靴
内部のサイズが小さくなる恐れがある。

さらに、第２図に示すこの疎水性表面層１０に、カビ、
雑菌、および臭いの発生を抑制する抗菌・衛生加工を施
すこともでき、この第１実施例ではこの抗菌・衛生加工
が施されている。

また、吸水性中間層２０への汗の移行を良好にさせるた
め、疎水性表面層１０の表面側から底面側へ吸湿性およ
び吸水性の高い多孔性繊維１１を積層した複層式を採用
することもできる。この場合、吸水性を高めるために、
例えばこの多孔性繊維１１に化学的あるいは物理的な公
知の吸水加工を施すこともできる。

さらに、この疎水性表面層１０の多孔性繊維１１の目付
量は、７０〜１，０００ｇ／m²、好ましくは１５０〜８
００ｇ／m²であり、７０ｇ／m²未満では吸水性中間層に
保水された汗が足裏に移行し易く、一方１，０００ｇ／
m²を超えると履物が重くなる欠点がある。

さらにまた、第１実施例ではパイルをアクワロン３２／
２、バックを１５０deのポリエステル繊維とし、目付量
４２０ｇ／m²、パイル長さ６mmのボアが採用されてい
る。

前記吸水性中間層２０とは、疎水性表面層１０を浸透し
た汗を吸着させる履物用中敷Ａの中間層で、例えばレー
ヨン、吸水性ポリエステル繊維、吸水性ポリアミド繊
維、レーヨン／ポリエステル混紡繊維、綿、麻などの吸
水性繊維からなる単層または複層の織布、編布、不織布
などの層であり、特に素材には吸水効果の高いポリエス
テル／レーヨン〔例えばポリエステル／レーヨン（重量
比）＝４０／６０〕混紡繊維をニードルパンチしたも
の、あるいは表面側にポリエステル繊維、底面側にレー
ヨン繊維を合わせて二重構造とし、これをニードルパン
チした複層構造のものなどを使用するのが好ましい。な
お、この第１実施例ではニードルパンチしたポリエステ
ル繊維に合成ポリマーを含浸させた吸水性の不織布が採
用されている。

このほか、吸水性中間層２０の素材としては、ポリエス
テル繊維あるいはポリアミド繊維などの合成繊維に、化
学的あるいは物理的な公知の吸水性加工を施したもので
あってもよい。

なお、この吸水性中間層２０の吸水性の度合いは、一般
的な成人男子の発汗量である約３cc／hr程度以上が好ま
しく、またこの吸水性中間層２０に前記疎水性表面層１
０と同様にカビ、雑菌、および臭いの発生を抑制するた
め抗菌・衛生加工を施すこともできる。さらに、汗の吸
着性をより良好になすため、この中間層２０の表面側か
ら底面側へ吸湿性および吸水性の高い繊維を使用して複
層にしたり、表面側から底面側へ徐々に吸水性の高い他
の繊維を混合させたりすることもできる。

さらにまた、この吸水性中間層２０に、例えば合成ゴ
ム、デンプン系グラフト化物、セルロース系グラフト化
物、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチ
レンオキサイドなどの合成ポリマーなどを適度に含浸さ
せることにより、この層の硬度や吸湿性および吸水性を
適宜調整させるともに、この吸水性中間層２０に適度な
硬度を持たせ、履物用中敷Ａに保形性、クッション性を
与えることもできる。

この吸水性中間層２０の厚さは、０．５〜４mm、好まし
くは１〜２mmであり、０．５mm未満ではクッション性や
剛性が乏しいとともに、短時間の履用で吸水量的に飽和
状態となってしまい、一方４mmを超えると靴のサイズが
小さくなり着用に不都合となる。

また、この吸水性中間層２０の繊維の目付量は、２００
〜６００ｇ／m²、好ましくは３００〜５００ｇ／m²であ
り、２００ｇ／m²未満では硬度や剛性に不足して着用時
に変形することがあり、一方６００ｇ／m²を超えると重
くなるばかりでなく、コスト的に不経済となる。

なお、人間の発汗量は、前記したように成人男子で約３
cc／hr程度と考えられるので、これを考慮して使用する
履物の用途に応じ目付を調整することも有効である。

さらに、この吸水性中間層２０の繊維のフィラメントの
太さは、１〜１０de、好ましくは３〜６deである。

前記防滑性基材層３０とは、同じく第２図に示すように
防滑性を有する例えば合成ゴム、天然ゴム、ポリウレタ
ンフォーム、ポリ塩化ビニルフォームなどからなる単層
または複層の履物用中敷Ａの下層となる層であり、この
第１実施例では吸水性中間層２０より移行した汗をさら
に下層に拡散させること、および乾燥速度を早めるこ
と、そのほかクッション性、保温性、防滑性などの点か
ら連続気泡を有するポリウレタンフォームを採用してい
る。

なお、この防滑性基材層３０は、少なくとも図示しない
靴底に接触する底部が防滑性を有していればよく、例え
ば織布や不織布などの底面にポリウレタン、ポリ塩化ビ
ニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、合成ゴムなどの
合成樹脂製の突起を融着して形成させたものでもよい。

また、この防滑性基材層３０は、防滑性を良好になすた
め摩擦係数の大きいものが好ましい。

この防滑性基材層３０の厚さは、１〜５mm、好ましくは
２〜４mmであり、１mm未満では防滑性に劣りかつ保温性
が悪くなる一方、５mmを超えると重くなったり、靴の内
サイズを小さくすることになる。

なお、これらの疎水性表面層１０、吸水性中間層２０お
よび防滑性基材層３０の積層は、例えば接着剤による部
分接着または点接着、フレームラミネートによるラミネ
ート加工、縫着法、あるいはニードルパンチング法など
の積層手段により適宜実施される。

この第１実施例の履物用中敷Ａの使用にあたっては、第
１図に示すこの履物用中敷Ａを図示しない靴の内部に挿
入して靴底面に敷設させ、そののちこの靴を履いて歩行
すると、足裏の汗は接触する第２図に示す疎水性表面層
１０を通過して吸水性中間層２０に浸透して行き、そこ
で拡散・吸着されて保持される。

このとき、この汗は一部が多孔性繊維１１間の隙間およ
びこの繊維１１の表面を伝い、残りがこの多孔性繊維１
１の内部に形成された第３図に示す多数の微細な小孔１
１ａを毛細管現象により伝って吸水性中間層２０へ浸透
して行く。

このため、足裏が接触する第２図に示す疎水性表面層１
０には汗が付着し難くて常時サラッとした肌触りを維持
でき、従って足裏の濡れ・蒸れ防止の向上ができ、また
吸水性中間層２０よりも疎水性表面層１０が乾いている
ため、靴を脱いだ後の乾きも速くて速乾性が良好であ
る。

さらに、多孔性繊維１１の内部には前述したように第３
図に示す多数の微細な小孔１１ａが形成されているた
め、この小孔１１ａ内に空気を保持させることで保温性
の向上ができる。

さらにまた、第２図に示す防滑性基材層３０は、防滑性
を有するため、歩行中に敷設された履物用中敷Ａが靴底
面を滑って移動するということがない。

以上説明してきたように、第１実施例の履物用中敷Ａに
あっては、多数の微細な小孔１１ａを有する多孔性繊維
１１からなる汗を通し易い疎水性表面層１０と、この疎
水性表面層１０から浸透した汗を吸着する吸水性中間層
２０と、この履物用中敷Ａの靴内滑動を防止する防滑性
基材層３０とを順次積層させたため、足裏の濡れ・蒸れ
防止性、保温性および速乾性の向上、ならびに敷設位置
の位置ずれ防止をも同時に満足できる。

また、この第１実施例にあっては、疏水性表面層１０の
繊維集合体構造に、ボアを採用しているため、保温性が
一段と優れている。

次に、本考案の履物用中敷の第２実施例を説明する。

この第２実施例の履物用中敷Ｂは、第４図に示すように
疎水性表面層１０と吸水性中間層２０との間にポリウレ
タンフォームからなる接着層４０を積層させたものであ
るが、これに限定させなくとも例えばベースがゴムまた
はウレタンプレポリマーからなる溶剤系などの他の接着
層であってもよい。

また、この接着層４０の厚みは、０．３〜２．０mm、特
に０．３〜１．０mmが好ましく、０．３mm未満では接着
力が弱い一方、１．０mmを超えると不経済となる。

なお、このときの疎水性表面層１０を構成する多孔性繊
維１１の積層方法は、防滑性基材層３０上に積層された
吸水性中間層２０上にさらに接着層４０を周知方法で載
置し、そののち接着層４０側からこれらを加熱して接着
層４０を溶融状態にさせ、次にまたこの溶融状態の接着
層４０上に所定量の多孔性繊維１１を載置してこれを加
圧プレスさせることでなされる。

なお、この第２実施例の履物用中敷Ｂの他の構成および
作用は、第１実施例の履物用中敷Ａと同様であるため説
明を省略する。

以上、本考案の実施例を説明したが、具体的な構成はこ
の実施例に限られるものではなく、本考案の要旨を変更
しない範囲における設計変更などがあっても本考案に含
まれる。

例えば、実施例では、紳士靴用の履物用中敷を例に示し
たが、これに限定されず、例えば、婦人靴、運動靴、ま
たは長靴などの他の履物用中敷にも使用できるものであ
る。

〔考案の効果〕

本考案によれば、履物内に敷設して使用することで、足
裏の汗は接触する疎水性表面層を通過して吸水性中間層
に浸透して行き、そこで汗が拡散・吸着されるが、この
とき汗の一部は多孔性繊維の内部に形成された多数の微
細な小孔を毛細管現象により伝って吸水性中間層に浸透
して行くため、足裏が接触する疎水性表面層には汗が付
着し難く、常時サラッとした肌触りを維持でき、従って
足裏の濡れ・蒸れ防止の向上ができるという効果が得ら
れる。

また、吸水性中間層より疎水性表面層が乾いているた
め、履物を脱いだ後の乾きも速くて速乾性が良好である
という効果が得られる。

さらに、多孔性繊維の内部には前述したように多数の微
細な小孔が形成されているため、この小孔内に空気を保
持させることで保温性の向上ができる。

さらにまた、防滑性基材層は防滑性を有するため、歩行
中に載置された履物用中敷が履物の靴底面を滑って移動
するのを防止できるという効果が得られる。

本考案は、これらを同時に満足させることができるもの
である。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第３図は本考案の第１実施例の履物用中敷を示
し、第１図は平面図、第２図は拡大縦断面図、第３図は
第１実施例の履物用中敷に使用される多孔性繊維の拡大
斜視図、第４図は本考案の第２実施例の履物用中敷の拡
大縦断面図である。 １０；疎水性表面層 １１；多孔性繊維 １１ａ；小孔 ２０；吸水性中間層 ３０；防滑性基材層

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】多数の微細な小孔を有する多孔性繊維から
   なる汗を通し易い疎水性表面層と、この疎水性表面層か
   ら浸透した汗を吸着させる吸水性中間層と、中敷の履物
   内の滑動を防止させる防滑性基材層とを順次積層させた
   ことを特徴とする履物用中敷。