JPH0622619B2 - 体外血液循環回路装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野】 本発明は、心臓手術等において、患者の静脈から脱血し
た血液を血液処理して再び動脈に戻すために使用される
体外血液循環回路装置の改良に関する。

［従来の技術］ 一般に、人工肺体外血液循環においては、プライミング
操作や循環内の安全性に対して回路中の空気の除去が大
きな課題となっている。

従来、この種の体外血液循環回路装置においては、例え
ばば特開昭５８−９９９６８号公報、特開昭５９−２２
８８４９号公報あるいは特開昭６１−１０３４５１号公
報等に開示されているように、人体の静脈ラインから脱
血ラインを経て脱血した静脈血を貯血槽（静脈リザー
バ）内に一時的に貯溜して除泡し、この貯血槽内の除泡
された脱血液を血液ポンプを介して人工肺、または熱交
換器付人工肺に送血するとともに、この人工肺でガス交
換がなされ血液処理された血液を返血ラインを経て再び
人体の動脈ラインに返血させている。

ところが、このような従来の体外血液循環回路装置にあ
っては、患者の心臓手術が終わると、体外循環する血液
量を順次減らしながら血液の流れを心臓の動きに移行さ
せて行き、又、血液回路中に若干残る血液も人体に戻す
必要がある。この場合、静脈ラインをクランプで閉じ
て、血液ポンプの作動により残血を送り出すことが考え
られるが、従来、この血液ポンプとしては流量規制型の
ローラポンプが使用されている。

［発明が解決しようとする課題］ しかしながら、このようなローラポンプを用いた従来の
体外血液循環回路装置では、次のような問題が生じてい
た。すなわち、プライミング特性及び対気泡性能の向上
を図るためには、人工肺と貯血槽との間に空気抜き用の
バイパスラインを設ける必要があるが、このバイパスラ
インを設けると血液の体外血液循環回路から心臓への移
行に際して、患者の血圧を見ながらポンプをコントロー
ルする必要があるが、次第に血液の流量を下げて行く過
程で、少しでもローラポンプを停止したりすると、動脈
圧があるために、バイパスラインの存在が誤差となっ
て、動脈ラインから返血ラインを経て血液が逆流して回
路中に流れ込んで来てしまう。また、手術後、血液回路
中に若干残る血液を静脈ラインをクランプで閉じて送り
出すとき、貯血槽内の残血量をコントロールする際に、
血液がバイパスを通って動脈ラインから貯血槽へ流れて
しまう。それを防止するために出口側のラインをクラン
プで止め、その後このクランプを外し忘れてローラポン
プを回すと、ラインの圧力が上昇して破裂してしまう恐
れがある。従って、結局そのときはバイパスを閉じてい
なければならない。このようなことから、従来のローラ
ポンプを用いた回路構成では、プライミング特性及び対
気泡性能の向上を図るための空気抜き用のバイパスライ
ンの形成が困難であるといった問題があった。

本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、
人工肺と貯血槽との間に空気抜き用のバイパスラインの
形成を可能にして、プライミング特性及び対気泡性能の
向上を図ることができる体外血液循環回路装置を提供す
ることを目的とする。

［課題を解決するための手段］ 上記課題を解決するために、本発明は、静脈ラインから
脱血した静脈血を貯血槽内に一時的に貯溜して除泡し、
該貯血槽内の除泡された脱血液を血液ポンプを介して人
工肺に送血するとともに、該人工肺でガス交換がなされ
た血液を動脈ラインに返血させてなる体外血液循環回路
装置において、前記血液ポンプを遠心ポンプとするとと
もに、前記人工肺と貯血槽との間に空気抜き用のバイパ
スラインを連通させて設けたことを特徴とするものであ
る。この場合、前記バイパスラインを常に開放状態に
し、また返血ラインに流量検出器を設置して、この流量
検出器で遠心ポンプを駆動制御するとともに、前記人工
肺の上部に前記バイパスラインに連通した空気抜き部を
設けることが好ましい。

［作 用］ 上記構成により本発明による体外血液循環回路装置にお
いては、血液を体外循環させる血液ポンプが圧力規制型
の遠心ポンプからなるために、遠心ポンプの回転数を動
脈圧よりも大きな圧力となるようにして流量を制御しな
がら駆動させれば、回路中への動脈血の逆流が発生せ
ず、人体への送血を容易に行うことができ、しかも人工
肺と貯血槽との間に設けたバイパスラインによる空気抜
きを円滑に行うことができる。また、遠心ポンプに空気
が大量に入り込んで来ると、遠心ポンプが空転して本来
のポンプ機能を失うことにより空気の送出を防ぐ。しか
も、血液を体外血液循環回路から心臓へ移行させる際に
おいて、患者の血圧を見る必要があときや、貯血槽内の
残血量をコントロールするときには、遠心ポンプの出口
側のラインをクランプで止めてもラインが破裂すること
はない。さらに、貯血槽が空になっても、人工肺の上部
に設けられた空気抜き部で完全に気泡の流出が防げると
ともに、バイパスラインが常に開放状態となっているた
めに、空気抜きを意識することなく行うことができる。

［実施例］ 以下、本発明の実施例を図面を参照しながら詳細に説明
する。

第１図は本発明の一実施例に係る体外血液循環回路装置
の全体構成を概略的に示すものである。図中、１は例え
ば軟質塩化ビニルシートを高周波等によりシールして内
部に貯血空間を形成した第１の貯血槽（静脈リザーバ）
であり、その容量は例えば１０００ｍｌである。この第
１の貯血槽１にはその下部に第１の血液流入口２、第２
の血液流入口３及び血液流出口４が内部の貯血空間に臨
ませてそれぞれ設けられ、一方、上部には貯血空間に導
入された血液から除泡された空気を排出する空気抜き口
５が開口形成されている。そして、第１の血液流入口２
には、人体Ｐ内の静脈ライン（図示せず）から脱血した
静脈血を貯血槽１内の貯血空間に導入する脱血ラインで
ある脱血チューブ６が接続されている。すなわち、第１
の貯血槽１は、脱血チューブ６を経て貯血槽１内に一時
的に貯溜された静脈血を除泡して、その空気を空気抜き
口５から排出し得るようになっている。また、第１の貯
血槽１の血液流出口４には送血チューブ部７の一端が接
続され、この送血チューブ７の途上には血液ポンプであ
る遠心ポンプ８が設けられ、駆動モータ９により回転駆
動されるようになっている。さらに、この送血チューブ
７の他端は熱交換器付人工肺１０に接続され、遠心ポン
プ８の駆動により、第１の貯血槽１内で除泡された脱血
液を人工肺１０に送血するようになっている。

上記熱交換器付人工肺１０は、熱交換器１１と、この熱
交換器１１の下流側に設けた人工肺本体１２とからなる
一体構造を有している。熱交換器１１の血液流入口１１
ａには上記送血チューブ７が接続されており、この送血
チューブ７を経て送血された貯血槽１内の静脈血を熱交
換器１１を介して温度調整を行った後、人工肺本体１２
に送血するようになっている。

人工肺本体１２としては、例えば特開昭６０−４００６
５号公報に開示されている中空糸膜からなる一般的な構
造のものが用いられる。すなわち、この中空糸型の人工
肺本体１２は、第２図に示すように、筒状のハウジング
１３と、この筒状ハウジング１３の内部空間に収納され
た多数の中空糸膜１４からなる中空糸束１５と、この中
空糸束１５の上下両端部を液密的に保持する隔壁１６，
１７と、上部の隔壁１６とハウジング１２の上端部内壁
との間にヘッダー１８及びリングナット状の固定部材１
９を介して形成された血液流入ポート２０を有する血液
流入室２１と、下部の隔壁１７とハウジング１２の下端
部内壁との間にヘッダー２２及びリングナット状の固定
部材２３を介して形成された血液流出ポート２４を有す
る血液流出室２５とで構成され、ハウジング１２の内
面、各々の中空糸膜１４の外面及び隔壁１６，１７の内
面でガス室２６を画成し、このガス室２６に前記ハウジ
ング１２の外側下部に設けたガス流入ポート２７から酸
素含有ガスを導入することにより、前記血液流入ポート
２０から導入されて各々の中空糸膜１４内を通過する静
脈血を酸素化して血液処理が行なわれるようになってい
る。なお、２８は前記ハウジング１２の外側上部に設け
たガス流出ポートで、このガス流入ポート２７からガス
室２６に導入された血液処理後のガスを排出し得るよう
になっているものであり、また、２９は血液流入室２１
の上部に設けた空気抜き部（エアトラップ）であり、そ
の上部には空気抜き口２９ａが開口形成されている。こ
の空気抜き口２９ａは後述の熱交換器１１に設けた空気
抜き口１１ｂに接続されている。そして、人工肺本体１
２の血液流出ポート２４には、返血ラインである返血チ
ューブ３０が接続されていて、この返血チューブ３０を
通して人工肺本体１２でガス交換がなされた血液を人体
Ｐ内の動脈ライン（図示せず）に返血させるようになっ
ている。また、上記第１の貯血槽１と熱交換器付人工肺
１０との間には、バイパスラインであるバイパスチュー
ブで３１が連通させて設けられている。このバイパスチ
ューブ３１の一端は、熱交換器付人工肺１０における熱
交換器１１の上部に設けた空気抜き口１１ｂに接続さ
れ、かつその他端は第２の貯血槽（カーディオトミーリ
ザーバ）３２を介して第１の貯血槽１の第２の血液流入
口３に接続されており、また、このバイパスチューブ３
１は常に開放状態を維持している。なお、３３は返血チ
ューブ３０の途上に設置した流量検出器であり、この流
量検出器３３により返血チューブ３０内を通る血液の流
量を検出して、遠心ポンプ８の動脈圧よりも大きな圧力
となるような回転数に制御して駆動させるようになって
いる。さらに、３４は脱血ライン６を閉塞可能な第１の
クランプ、３５は送血ライン３０を閉塞可能な第２のク
ランプである。

上記構成により本発明による体外血液循環回路装置にお
いては、血液を体外循環させる血液ポンプが圧力規制型
の遠心ポンプ８からなるために、遠心ポンプ８の回転数
を動脈圧よりも大きな圧力となるようにして流量を制御
しながら駆動させれば、回路中へ動脈血が逆流すること
がなく、熱交換器付人工肺１０への送血を容易に行うこ
とができ、しかも人工肺１０と貯血槽１との間に設けた
バイパスライン３１による空気抜きを円滑に行うことが
できる。また、遠心ポンプ８に空気が大量に入り込んで
来た場合には、遠心ポンプ８が空転して本来のポンプ機
能を失うことにより空気の送出を防ぐ。しかも、血液を
体外血液循環回路から心臓へ移行させる際において、患
者の血圧を見る必要があるときや、第１の貯血槽１内の
残血量をコントロールするときには、遠心ポンプ８の出
口側のラインを第２のクランプ３５で止めてもラインが
破裂することはない。さらに、第１の貯血槽１が空にな
っても、人工肺１０の上部に設けられた小さな空気抜き
部２９により完全に気泡の流出を防ぐことができるとと
もに、バイパスライン３１が常に開放状態となっている
ために、空気抜きを意識することなく行うことができ
る。

上記した本実施例による体外血液循環回路装置につい
て、血液ポンプとして遠心ポンプを用いるが人工肺と貯
血槽との間をバイパスラインで接続していない体外血液
循環回路装置を比較例として実験を行った。すなわち、
先ず、第１及び第２の貯血槽にプライミング液を充填
し、ポンプを作動させたところ、人工肺上部の気泡は、
比較例においては、そのままでは抜けず、若干人工肺を
傾けることにより抜けたのに対し、本実施例においては
何もせずに空気が抜けプライミングが終了した。次に、
第１及び第２の貯血槽を空にして遠心ポンプに空気を混
入させた後、再度貯血槽に血液を入れて循環を再開させ
たところ、比較例では遠心ポンプより出た若干の気泡が
人工肺の上部に溜り、順次人工肺から送出されたのに対
し、実施例では、遠心ポンプより出た若干の気泡は人工
肺の上部に設けた空気抜き部にトラップされ、バイパス
ラインを通じて第１の貯血槽に戻された。

以上に実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上
記実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更し
ない範囲で種々変更可能である。例えば、上記の実施例
においては、バイパスライン３１を熱交換器１１の上部
に設けた空気抜き口１１ｂに接続したが、人工肺本体１
２の血液流入口２１の上部に開口した空気抜き口２９ａ
に直接接続してもよい。また、上記実施例においては、
熱交換器付人工肺１０と第１の貯血槽１との間に第２の
貯血槽３２を設けるようにしたが、この第２の貯血槽３
２を設けることなく、人工肺１０と第１の貯血槽１との
間を直接バイパスチューブ３１により連結するようにし
てもよい。また、人工肺１０における血液の流れれ方向
の下流側に空気抜き部を設けて、この空気抜き部と貯血
槽との間に空気抜き用のバイパスラインを設けるように
してもよい。さらに、上記実施例においては、貯血槽
１、遠心ポンプ８、熱交換器付人工肺１０をそれぞれ別
体としてチューブで連結する構成としたが、例えば第３
図に示すように、送血チューブ７を廃止して、貯血槽１
と熱交換器１１とを一体にするとともに、熱交換器１１
の下端に遠心ポンプ８の流入口を直結し、かつ遠心ポン
プ８の流出口を人工肺１２に直結し、さらに貯血槽１の
上部に形成した空気抜き口と人工肺本体１２の空気抜き
口とをバイパスチューブ３１で連通させるように構成す
れば、より良好なプライミング特性を得ることができ
る。

［発明の効果］ 以上の説明から明らかなように、本発明の体外血液循環
回路装置によれば、血液ポンプを遠心ポンプとするとと
もに、人工肺と貯血槽との間に空気抜き用のバイパスラ
インを連通させて設けてなる構成としたので、遠心ポン
プの回転数を動脈圧よりも大きな圧力となるようにして
流量を制御しながら駆動させれば、動脈血の回路中への
逆流が発生することがないために、人体への送血を容易
に行うことができ、しかも、人工肺と貯血槽との間に設
けたバイパスラインによる空気抜きを円滑に行え、これ
により良好なプライミング特性及び対気泡性能を得るこ
とができる。また、遠心ポンプの使用により、遠心ポン
プに空気が大量に入り込んでも、遠心ポンプが空転して
本来のポンプ機能を失うことにより空気の送出を防ぐ。
さらに、血液を体外血液循環回路から心臓へ移行させる
際において、患者の血圧を見る必要があるときや、貯血
槽内の残血量をコントロールするときには、遠心ポンプ
の出口側のラインをクランプで止めても、ラインが破裂
することはない。さらに、貯血槽が空になっても、人工
肺の上部に設けた空気抜き部で完全に気泡の流出を防ぐ
ことが可能であるとともに、バイパスラインが常に開放
状態となっているために、空気抜きを意識することなく
行うことができるという優れた効果を奏するものであ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る体外血液循環回路装置の一実施例
を示す回路構成図、第２図は同じく人工肺本体の断面
図、第３図は本発明の他の実施例を示す正面図である。 １……第１の貯血槽（静脈リザーバ） ２……血液流入口、４……血液流出口 ６……脱血ライン（脱血チューブ） ７……送血ライン（送血チューブ） ８……血液ポンプ（遠心ポンプ） １０……熱交換器付人工肺 １１……熱交換器 １１ａ……血液流入口、１１ｂ……空気抜き口 １２……人工肺本体、２０……血液流入ポート ２１……血液流入室、２４……血液流出ポート ２５……血液流出室、２６……ガス室 ２７……ガス流入ポート、２８……ガス流出ポート ２９……空気抜き部 ３０……返血ライン（返血チューブ） ３１……バイパスライン（バイパスチューブ） ３２……第２の貯血槽（カーディオトミーリザーバ） ３３……流量検出器、３４……第１のクランプ ３５……第２のクランプ、Ｐ……人体

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】静脈ラインから脱血した静脈血を貯血槽内
   に一時的に貯溜して除泡し、該貯血槽内の除泡された脱
   血液を血液ポンプを介して人工肺に送血するとともに、
   該人工肺でガス交換がなされた血液を動脈ラインに返血
   させてなる体外血液循環回路装置において、前記血液ポ
   ンプを遠心ポンプとするとともに、前記人工肺と貯血槽
   との間に空気抜き用のバイパスラインを連通させて設け
   たことを特徴とする体外血液循環回路装置。
2. 【請求項２】前記バイパスラインを常に開放状態にして
   なる請求項１記載の体外血液循環回路装置。
3. 【請求項３】返血ラインに前記遠心ポンプを駆動制御す
   るための流量検出器を設置してなる請求項１又は２記載
   の体外血液循環回路装置。
4. 【請求項４】前記人工肺の上部に前記バイパスラインに
   連通した空気抜き部を設けてなる請求項１乃至３のいず
   れか１つに記載の体外血液循環回路装置。
5. 【請求項５】人工肺における血液の流れ方向の下流側に
   空気抜き部を設け、該空気抜き部と貯血槽との間に前記
   バイパスラインを設けてなる請求項１乃至４のいずれか
   １つに記載の体外血液循環回路装置。