JPH06191976A - 有機質肥料の製造法 - Google Patents

有機質肥料の製造法

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JPH06191976A
JPH06191976A JP43A JP32258092A JPH06191976A JP H06191976 A JPH06191976 A JP H06191976A JP 43 A JP43 A JP 43A JP 32258092 A JP32258092 A JP 32258092A JP H06191976 A JPH06191976 A JP H06191976A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 家畜糞尿・屎尿・蹄角・革屑等の動物性有機
資材と、オガクズ等の植物性有機資材の廃棄資源を原料
として、悪臭を少なく且つ迅速に分解腐熟・発酵して良
質の有機質肥料を製造する。 【構成】 新菌株のクロストリジュウム・サーモセルム
SK522とサーマス・アクアティクスSK542菌株
との共生的混合培養物又はこれを有効主成分とする分解
発酵剤を、動物性有機資材と植物性有機資材とに混入
し、水分を調整しながら混和させることで新菌株の働き
によって強力に有機資材を分解発酵・腐熟させて有機質
肥料とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、家畜糞尿・人間の屎尿
・植物性繊維物質及び硬タンパク質を窒素源とする有機
肥料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、家畜糞尿・人間の屎尿等の動物性
有機資材は浄化槽処理されることが多く、肥料としての
活用はあまりされていない。古来から、これらの糞尿は
自然界の微生物を使って分解腐熟化して肥料とする方法
が知られているが、これでは分解腐熟化の速度が遅く、
且つ強い悪臭が発生する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、従来のこれらの問題点を解消し、家畜糞尿
・人間の屎尿・蹄角・革屑の動物性有機資材を高速に腐
熟分解させ、しかも悪臭の発生も少なくして良質の有機
質肥料を製造できる有機質肥料の製造法を提供すること
にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決した本
発明の要旨は 1) 下記1記載の好熱性繊維素分解菌クロストリジュ
ウム・サーモセルムSK522(Clostriduim thermoce
llum biovar.SK522,微工研条寄第3459号)
と、下記2記載のサーマス・アクアティクスSK542
(Thermus aquaticus biovar SK542,微工研条寄
第3382号)とを60℃以上の好熱性環境下で共生的
混合培養させた混合培養物又はこれを有効主成分とする
発酵分解剤を、植物性有機資材と屎尿・糞尿の動物性有
機資材とに混和させながら所要の水分に調整し、混合培
養物又は発酵分解剤により有機資材を腐熟発酵させて肥
料とすることを特徴とする有機質肥料の製造法 記1 リグニン可溶化能を有し、生育適温が65〜72℃で、
40〜80℃の温度範囲で生育し、繊維素を旺盛に発酵
する好熱性繊維素分解菌クロストリジュウム・サーモセ
ルムSK522(Clostriduim thermocellum biovar.S
K522,微工研条寄第3459号) 記2 絶対好気性、生育適温が72〜76℃で、40〜82℃
の温度範囲で通常濃度の培地に生育し、作用適温75〜
85℃、作用水素イオン濃度pH=4.0〜11.3の
高温性広域作用水素イオン濃度活性のタンパク質分解酵
素とカロチノイド系黄色色素を産生するサーマス・アク
アティクスSK542(Thermus aquaticus biovar S
K542,微工研条寄第3382号)にある。
【0005】尚、本発明に使用する好熱性繊維素分解菌
クロストリジュウム・サーモセルムSK522(Clostr
iduim thermocellum biovar.SK522,微工研条寄第
3459号)とサーマス・アクアティクスSK542
(Thermus aquaticus biovarSK542,微工研条寄第
3382号)は、いずれも本発明者らの発見にかかるも
ので、以下それぞれ単にSK522菌株及びSK542
菌株と称する。
【0006】
【作用】本発明は、有用な新菌SK522菌株とSK5
42菌株の混合培養物を有効に使用する。SK522菌
株とSK542菌株の共生的混合培養の相乗的効果は、
リグニンの顕著なる可溶化の増強と共に繊維素分解力及
びタンパク質の分解機能を高揚する。本発明は、この共
生的混合培養物又はこれを有効主成分とする発酵分解剤
を糞尿・蹄角・革屑等の動物性有機資材及びノコクズ・
米ヌカ等の植物性有機資材に混入して水分を60%前後
の所要の状態に調整しながら混和し、その後積込んで発
酵腐熟させる。環境としては好気的条件が望ましく、切
返しを必要回数行なう。共生的混合培養物又は発酵分解
剤中の新菌株SK522菌株が植物性有機資材のリグニ
ンを可溶化し、又繊維質を強力に分解する。又、新菌株
SK542菌株はタンパク質分解酵素を産生してタンパ
ク質・硬タンパク質を分解し、動物性有機資材を分解発
酵・腐熟させる。そして、新菌株SK522とSK54
2は互いにその機能を高め、強力且つ安定してリグニン
・繊維素・タンパク質等の有機分を迅速且つ強力に分解
して肥料としていく。
【0007】以下、各新菌株の機能について説明する。
SK522菌株は旺盛なる繊維素分解力と弱又は微弱な
るリグニン可溶化能を有する。又、SK542菌株は絶
対好気性中等度好熱性細菌で、高温性広域作用水素イオ
ン濃度活性の強力なタンパク質分解酵素とカロチノイド
系黄色色素を産生する。 SK542菌株の産生するタンパク質分解酵素の理化学
的性質
【表1】 以上のような理化学的性質をもつ新規酵素と思われるプ
ロテアーゼAとプロテアーゼBの他に、不安定な数種の
酵素の複合体である。 SK542菌株の産生する色素の理化学的性質 本菌の産生する黄色色素は、カロチノイド系黄色色素
で、水には不溶、次のような溶剤に可溶である。メタ
ノール,エタノール,石油エーテル,ベンジン,
アセトン,クロロホルム,アセン+メタノール
(7:3)及びアセトン+エタノール(1:1)混液。
また、赤外線吸光度最大値450nm。その他430,
435,470nmに小さなピークがある。
【0008】そして、この二つの新菌株の好熱的な共生
的混合培養は、各菌株の機能の相加的作用ではなく、相
互作用によって生ずる相乗的効果によるものであり、互
いにその機能を高め、強力かつ安定してリグニン,繊維
素,タンパク質等の有機成分を迅速かつ強力に分解す
る。本発明の混合培養物を有効主成分とすることで有機
資材の発酵分解剤を得ることができる。この有機資材の
発酵分解剤は、その用途・目的・気候・風土・土壌に応
じてSK522菌株,SK542菌株の他に有用な微生
物を混入すると更にその効果を高め、新しい有用な効果
を得ることができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明及びその利用実施例について詳
しく説明する。本発明で使用する微生物は、新菌のSK
522菌株とSK542菌株である。新両菌株の諸性質
は下記の通りである。尚、以下記載の菌学的性質の試験
及び分類同定はすべてバージェーズ マニュアル オブ
デタミネイディブ バクテリオロジー 第7版(19
57),第8版(1974)及びバージェーズ マニュ
アル オブ システマテック バクテリオロジー 第1
巻(1984),第2巻(1986)(Bergey’s Manu
al ofDeterminative Bacteriology 7th. Ed.(1957),8t
h.Ed.(1974).Bergey’s Manualof Systematic Bacterio
logy Vol.1(1984), Vol.2(1986).)の記載に基づいて行
った。
【0010】[I]SK522菌株 (Clostridium thermocellum biovar SK522,微工
研条寄第3459号,FERM BP−3459) 菌学的性質 随伴菌なしで、単独では生育ができない。しかし、随伴
菌は、容易に単離純粋培養されるので、単離した随伴菌
を基礎とし、これと共生培養しながら、その諸性質を試
験した結果である。 形 態 直桿状、わずかに湾曲するものもある。単独、ときどき
2連。0.3〜0.5×2.2〜4.0μ。培養が古く
なると糸状に伸延し、長連鎖状、長さ5.7〜12.8
μ。周毛、室温懸滴標本では運動性がみられない。末端
に楕円、または円形の胞子を形成して細胞を膨張し棍棒
状。グラム陰性。
【0011】培養的性質 (1) 平板培養 肉汁寒天、その他一般の常用培地による平板培養には生
育しない。しかし、ビルジョンら(Viljoen et al.)の
提示する培地テトロール(Tetrault)円形ろ紙寒天平板
培養に随伴菌と黄色斑点状のコロニーを形成するが、本
菌単独では作り得ない。 (2) 斜面培養,穿刺培養 シュワイツアー(Schweizer)の試薬処理ろ紙添加ビル
ジョンら(Viljoenet al.)培地寒天斜面培養,及び同
穿刺培養ともに生育しない。 (3) バレイショ培養,ゼラチン培養 表面,穿刺とも生育しない。 (4) 液体培養 ビルジョンらの(Viljoen et al.)培地,繊維素肉汁,
繊維素ペプトン水(生育僅少)等の繊維素を含有する培
地だけに生育が認められる。グルコース,キシロース等
の繊維素以外の物質を炭素源とすれば繊維素の分解力を
失う。
【0012】生理生化学的性質 1.酵素作用等 (1) 繊維素分解 本菌のもつ繊維素分解酵素は、本質的にはいくつかのβ
−1,4−グルカナーゼの複合体である。細胞外に分泌
され、作用温度80℃以上、同水素イオン濃度pH=1
0.0以上の耐熱性,耐アルカリ性の酵素が数種含まれ
ていることを確認した。ミセル構造をなす繊維素の巨大
分子の末端から切断し、グルコース,セロビオース,セ
ロオリゴ糖類等を生成する。これらの酵素を作用する基
質を主体として示すと、 ろ紙を分解する FP−アーゼ:陽性 アビセルを分解する アビセラーゼ:陽性 セロビオースを2分子のグルコースに分解する セロビアーゼ:陽性 (2) リグニン分解 イナワラリグニン可溶化 :陽性 (弱,微弱) (3) タンパク質分解 プロテオリティック酵素(Proteolytic enzymes) :陰性 ペプチダーゼ(peptidase) :陽性 (4) デンプン加水分解テスト :僅かに陽性 (5) ヘミセルロース,キシラン,ペクチンの加水分解テスト :陰性 (6) インベルターゼ,マルターゼ :陽性 (7) 脂肪分解力テスト :陰性 (8) 酸化反応 ハイドロキノン反応 :陽性 チロシン反応 :陰性 (9) 還元作用 :陽性 2.生産物試験 (1) 繊維素発酵 発酵率78〜91%,繊維素を旺盛に発酵してエタノー
ル,メタノール,アセトアルデヒド,酢酸,乳酸,ギ
酸,ラク酸,コハク酸,フマル酸,酒石酸,グルコン
酸,グルコース,セロビオース,セロオリゴ糖類,セロ
デキストリン,多量の炭酸ガス,水素,及び硫化水素等
を生成する。 (2) その他の糖,及びアルコールより生酸 グルコース,ショ糖,マルトース,セロビオースより生
酸。 (3) ガス発生試験 繊維素より猛烈にガス発生するが、グルコース,ショ
糖,マルトース,セロビオースよりガス発生は認められ
ない。 (4) ペプトン水試験 アンモニヤ :僅かに反応あり インドール :陽性 スカトール :陽性 硫化水素 :陽性 (5) 色素生産 通常,カロチノイド黄色色素生産 3.生育条件 (1) 生育温度 至適温度は65〜72℃,温度範囲は40〜80℃,4
0℃以下では生育しない。 (2) 水素イオン濃度 至適水素イオン濃度pH=6.7〜8.0,その範囲は
5.6〜9.6。 (3) 窒素源 ペプトンが最も優れ,尿素,尿酸,アスパラギン,グル
タミン酸ナトリウム等も良好である。アンモニウム塩も
良好な無機窒素源となる。 (4) 炭素源 繊維素以外の炭水化物で継代培養を続けると、その生育
と発酵力を失う。 (5) 酸素との関係 Eh=200〜−250mVと推定され、嫌気性菌であ
る。 (6) 微量栄養素の要求 ビオチン,ピリドキサミン,ビタミンB12p−アミノ
安息香酸等の微量栄養素を要求する。 4.DNAのG+Cの含有量 G+Cのmol%=38〜40(Tm)と推定される。
【0013】分類学上の位置 生育至適温度65〜72℃,温度範囲40〜80℃とい
う高温に於いて、旺盛に繊維素を発酵する本SK522
菌株に類似するものとして、次のような好熱性繊維素分
解菌が上げられる。 クロストリジュウム・サーモセルム(Clostridium ther
mocellum Viljoen, Fred and Peterson,1926.: Jour. A
gr. Sci. (London),16,7(1926).) クロストリジュウム・ディゾルベンス(C. dissolvens
Bergey et al.1925,別名 Bacillus cellulose dessolve
ns Khouvine,1923.: Ann. Inst. Past.37,711(1923);Be
rgey’s Manual,2nd.Ed.(1925)p.344.) クロストリジュウム・セルラシウム(C.thermocellulas
eum Enebo,1951.:Bergey’s Manual,7th.Ed.(1957)p.68
9.) バチルス・サーモセルロリテックス(Bacillus thermoc
ellulolyticus Coolhaas,1928.:Cent Bakt.II,75,101
(1928),76,38(1929).) バチルス・サーモフィブリンコルス(B.thermofibrinco
lus Itano and Arakawa,1929:農化,5,816,921(1929);6,
248,257(1930).) これらの中で、特に次の4つの相違点を除けば形態学
的,培養的,生理生化学的試験において本菌株とよく類
似する細菌はクロストリジュウム・ディゾルベンスであ
る。 (1) 弱又は微弱ではあるが、リグニン可溶化能を有す
る。 (2) 生育適温65〜72℃,生育温度範囲40〜80
℃,40℃以下では生育しない。 (3) 繊維素を旺盛に発酵するが、ヘミセルロース,キシ
ラン,ペクチン等は発酵しない。 (4) リグニン可溶化能はサーマス属(genus Thermus)
のある種の細菌によって共生的に顕著に強調され、同時
に本菌の繊維素分解力,その他作用機能に対して好影響
が与えられる。 しかし現在、バージェーズマニアル(Bergsy’s Manual
of Systematic Bacteriology Vol.2(1986)p.1104,p.11
41.)において、好熱性分解菌として記載されているも
のはクロストリジュウム・サーモセルムのみである。ク
ロストリジュウム・ディゾルベンス以下全部当該菌の亜
種か変種として取り扱われ、又は研究不完全なものとさ
れている。そこで、本菌株の分類同定は、クロストリジ
ュウム・サーモセルムとその菌学的諸性質を比較検討す
ることとし、同時に他の好熱性繊維素分解菌についても
対比し、参考とした。
【0014】以上のようにして、菌学的諸性質を比較検
討した結果を総括すれば、本菌株と公知のクロストリジ
ュウム・サーモセルムをはじめ列挙した好熱性繊維素分
解菌との特徴的な性状の相違点として、前記の4項目が
あげられるが、その他各種炭水化物に対する作用,微量
栄養素の要求等,色々と数え上げることができるが、特
に強調したいことはリグニンに対する問題である。本菌
株がリグニン可溶化能をもち、その可溶化能がサーマス
・アクアティックスSK542(Thermus aquaticus bi
ovar SK542)との共生的混合培養によって顕著に
増強されることである。これに対して、クロストリジュ
ウム・サーモセルムをはじめその他の好熱性繊維素分解
菌のリグニンに関する記載(description)は全く見ら
れない。あったとしても、それは繊維素の分解に対する
阻害作用についてである。斯る理由によって、本菌株の
リグニン可溶化能の生理生化学的性質をひとつの根拠と
して新菌株(Strain)とし、クロストリジュウム・サー
モセルムSK522(Clostridium thermocellum biova
r SK522)と名称した。
【0015】微生物受託番号 本菌株の微生物受託番号は、微工研条寄第3459号
(FERMBP−3459)である。本菌株を標準的菌
株とし、クロストリジュウム・サーモセルム(Clostrid
ium thermocellum Viljoen, Fred and Peterson,192
6.)に属する菌種中、リグニン可溶化能を有し、サーマ
ス属(genus Thermus Brock and Freeze1969)に属する
ある種の細菌との共生的混合培養によって顕著にリグニ
ン可溶化能を増強することを特徴し、かつSK522菌
株及び自然並びに人工的変異株を抱括する生理生化学的
性状による新菌株である。
【0016】SK522菌株のスクリーニング 土壌,海浜汚泥,堆・厩肥,人・家畜糞便を分離源とし
て55〜65℃で数回濃縮培養を繰り返した後、ビルジ
ョンら(Viljoen et al.)の提示する培地テトロール
(Tetrault)円形ろ紙寒天平板培養等によって定法通り
分離する。又、本菌は実質的に純粋に分離できた。培地
としてビルジョンら(Viljoen et al.)の提示する塩類
組成が適当であるが、必要に応じて微量の無機金属塩
類,ビタミン類,生長促進因子,例えば酵母エキス等を
添加するとよい。 ビルジョンらの培地 (Viljoen,Fred and Peterson 1926) ペプトン 5.0g 炭酸カルシウム 過剰 リン酸アンモニウムナトリウム 2.0g 酸性リン酸カリウム 1.0g 硫酸マグネシウム 0.3g 塩化カルシウム 0.1g 塩化第二鉄 痕跡 繊維素(ろ紙) 15.0g 井水 1000ml
【0017】SK522菌株の有用性 本SK522菌株は、もともと旺盛なる繊維素分解菌で
ある。この菌株が弱又は微弱ではあるが、リグニン可溶
化能を有することを本発明者たちが見出し、更にその可
溶化能が本菌株とサーマス属(genus Thermus)のある
種の細菌との共生的混合培養によって顕著に増強される
と共に、本菌株の繊維素分解力、その他作用機能にも好
影響を与えた。又、この混合培養の成功は、多種類の難
分解性有機資材の分解利用を可能にして、その生産性を
向上させ、野積堆肥化法を確実なものにし、好熱性高速
分解方式による堆肥の製造法を確立した。そして、SK
522菌株とSK542菌株を主要菌とする健全活性あ
る土壌微生物フロラーの形成は、環境要因の変化に対し
て有効菌の生育と作用機能を安定させて、土壌病害や連
作障害の消滅,克服した。又、土壌や植物の葉面に直接
撒布する新技術や屎尿の脱臭分解,硬タンパク質の分解
等、新しい次元の微生物利用法の展開が期待される。
【0018】[II]SK542菌株 (Thermus aquaticus biovar SK542, 微工研条寄第3382号,FERM BP−3382) 菌学的性質 形 態 長桿状、0.4〜0.6×3.0〜5.0μ。ある条件
下、例えば培養が古くなると糸状、長さ20〜130
μ。鞭毛なし、室温懸滴標本では運動性がみられない。
内生胞子なし。グラム陰性。
【0019】培養的性質 増殖が活発。ゼェネレーションタイムは20〜50分。 (1) 平板培養 3%寒天,60℃培養:黄色,比較的緻密,小円形コロ
ニー。 (2) 寒天穿刺培養 表面発育だけ,黄色わずかに拡張。 (3) 液体培養 表面に被膜状に生育(静置培養)。
【0020】生理生化学的性質 1.酵素作用等 (1) タンパク質分解 プロテオリティック酵素 :陽性(強力) (proteolytic enzymes) ゼラチン加水分解 :陽性 ペプチダーゼ(peptidase) :陽性 (2) デンプン加水分解 :僅かに陽性 (3) ペクチン分解 :陽性(弱い) (4) 繊維素分解 :陰性 (5) リグニン分解 :陰性 繊維素及びリグニンの分解は共に陰性ではあるが、好熱
性繊維素分解菌SK522菌株との共生的混合培養によ
って、SK522菌株のリグニン可溶化能を顕著に増強
し、同時に繊維素分解力,その他の作用機能にも好影響
を与える。 (6) 脂肪分解 :陰性 (7) インベルターゼ,マルターゼ :陽性 (8) カタラーゼ,オキシダーゼ反応 :陽性 (9) 硫化水素生成 :陽性(弱い) (10) 硫酸還元反応 :陰性 2.生産物試験 (1) 糖,アルコールより生酸及びガス発生 ガス発生せず。グルコース,ガラクトース,マルトー
ス,ラクトース,グリセロールより生酸。 (2) インドール,スカトールの生成 :陰性 (3) 色素生産 黄色色素(カロチノイド系色素,吸光度最大値450n
m,その他430,435,470nmに小さなピーク
がある)を産生する。しかし、グルコース,その他の糖
類を炭素源とする合成培地ではほとんど産生されない。
【0021】3.生育条件 (1) 培地濃度 サーマス属(genus Thermus)の細菌は一般に有機物濃
度に感受性がある。栄養物は少なく、濃度が低い方がよ
いといわれている。しかし、本菌株はこれらと趣を異に
し、通常の濃度においてもよく生育する。 食塩NaCl 5%以上でも生育する。至適濃度2.
0〜3.0%。一般にサーマス属(genus Thermus)の
細菌は2%以上のNaCl存在下では生育しない。 グルタミン酸ナトリウム3%以上でも生育する。 ショ糖,又はマルトース5%以上でも生育する。 2%ペプトン+1%酵母エキスの存在下でも、その生
育が阻害されない。一般にサーマス属(genus Thermu
s)の細菌はトリプトン,酵母エキス濃度,それぞれ
0.1%前後が適当で、各々1%以上になると生育しな
い。 (2) 生育温度 最適温度は72〜76℃,生育温度範囲40〜82℃,
40℃以下では発育できない。 (3) 水素イオン濃度 最適水素イオン濃度pH=6.0〜10.0。生育水素
イオン濃度範囲pH=4.0〜11.0。 (4) 窒素源 ゼラチン等のタンパク質,グルタミン酸塩,尿素,それ
に無機窒素源としてアンモニウム塩がよく利用される。 (5) 炭素源 グルコース,ショ糖,マルトース,ガラクトース,セロ
ビオース,ラフィノース,スタキオース,デンプン,グ
リセロール,酢酸,ラク酸,リンゴ酸,グルタミン酸塩
を利用する。 (6) 酸素との関係 絶対好気性。 (7) 微量栄養素の要求 本菌株は微量栄養素の要求が高い。ビオチン,ニコチン
酸アミド,チアミン等のビタミン類が要求されるほか
に、本菌株の良好な発育には鉄,マンガン,カルシウム
等の金属イオンを比較的高濃度に要求する。そして、こ
れらのミネラル量にも敏感である。 (8) 抗生物質に対する感受性 一般のサーマス属(genus Thermus)の細菌と同様に、
ペニシリンG,クロラムフェニコール,テトラサイクリ
ン,ストレプトマイシン,カナマイシン,その他抗生物
質に高い感受性を示す。 4.DNAのG+Cの含有量 G+Cのmol%=68(Tm)と推定される。
【0022】分類学上の位置 本菌が絶対好気性,生育至適温度72〜76℃,生育温
度範囲40〜82℃,40℃以下では生育しない。無胞
子,グラム陰性の長桿菌であること等から、その他菌学
的諸性質を勘案して、サーマス属(genus Thermus Broc
k and Freege 1967)と同定される。そして、類似する
サーマス属(genus Thermus)の細菌として、 サーマス・アクアティックス(Thermus aquaticus Broc
k and Freege 1969.:Bergey’s Manual(1984)Vol.1,P.3
37.) サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus Osh
ima and Imahori 1974.:Int.J.Bacteriol.,24,102(197
4)) サーマス・フラブス(Thermus Flavus Saiki,Kimura an
d Arima 1972.:Agr.Biol.Chem.,36,2357(1972)) 等が上げられるが、現在バーゼーズマニアル(Bergey’
s Manual of SystematicBacteriology Vol.1(1984)P.33
3)のサーマス属(genus Thermus Brock and Freeg 196
7)に属する細菌種はサーマス・アクアティックス(The
rmus aquaticusBrock and Freege 1969)だけであり、
しかも下記のような既知の菌種中に見出し得ない特徴的
な性状を有するので、本菌株をサーマス・アクアティッ
クスの新菌株(strain)として、サーマス・アクアティ
クスSK542(Thermus aquaticus biovar SK54
2)と名称するのが妥当であると結論する。
【0023】下 記 (1) 好熱性繊維素分解菌SK522菌株との共生的混合
培養によって、そのリグニン可溶化能を顕著に増強す
る。と同時に繊維素分解力,その他の作用機能にも好影
響を与える。 (2) 広域の作用水素イオン濃度と作用温度を有する強い
タンパク質分解力を持つ。 (3) 有機物濃度の感受性が、既知のサーマス属(genus
Thermus)の細菌と異なり、非常に弱く、通常濃度の培
地においてもよく生育する。 (4) 微量栄養素の要求が強く、各種ビタミン類及び金属
イオンを要求し、それらのミネラル量にも敏感である。 (5) 黄色色素(カロチノイド系色素,吸光度最大値45
0nm,その他430,435,470nmに小さなピ
ークがある)を産生する。
【0024】微生物受託番号 本菌株の微生物受託番号は、微工研条寄第3382号
(FERMBP−3382)である。SK542菌株と
は、本菌株を標準的菌株とし、サーマス・アクアティッ
クス(Thermus aquaticus Brock and Freege 1969)に
属する細菌種中、好熱性繊維素分解菌(SK522菌
株)との共生的混合培養によって、そのリグニン可溶化
能を顕著に増強し、同時に繊維素分解力にも好影響を与
えることを特徴とし、かつSK542菌株及び自然並び
に人工的変異株を抱括する生理生化学的性状による新菌
株(strain)である。
【0025】SK542菌株のスクリーニング 分離源は九州各地の温泉源及び温泉源付近の土壌,腐植
等である。分離試料を55〜60℃で前培養した後、定
法に従って3%寒天平板培養によって単離する。又、本
菌は実質的に純粋に分離できた。 分離用培地組成 (カステンホルツの培地:Castenholz,R.W.;Bacteriol.
Rev.,33,467(1969)) ニトリロ三酢酸 100mg CaSO4・2H2O 60mg MgSO4・7H2O 100mg NaCl 8mg KNO3 103mg NaNO3 689mg Na2HPO4 111mg FeCl3 0.28mg MnSO4・H2O 2.2mg ZnSO4・7H2O 0.5mg H3BO3 0.5mg CuSO4 0.016mg Na204・2H2O 0.025mg (イーストエキス 5000mg) (トリプトン 5000mg) (ショ糖 10000mg) 全量(純水で、pH=〜8) 1000ml 注:( )内の組成は発明者らが改変。
【0026】SK542菌株の有用性 本新菌株の有用性は、次の三つの作用機能によって特徴
づけられる。 (1) 好熱性繊維素分解菌(SK522菌株)との共生的
混合培養によって、該菌のもつリグニン分解能を顕著に
増強する。と同時に、その繊維素分解力、その他の作用
機能にも好影響を与える。 (2) 広域の作用水素イオン濃度と作用温度を有する強い
タンパク質分解力をもつ。 (3) 不溶性、カロチノイド系の黄色色素を産生する。菌
体中のこの黄色色素が他の微生物等による分解を受け水
溶性の低分子量体のものとなり、植物体に吸収されて、
果実の味、色沢、貯蔵性等の果実の品質の向上に役立
つ。又、本SK542菌株菌体を施用すると、これを基
質として繁殖する一般の従属栄養微生物や土壌有効菌の
増殖を促す。 以上のようなことが、既知のサーマス属(genus Thermu
s)の細菌と異なり有機物濃度の感受性の非常に弱いこ
とと相俟って、自然生態や農耕生態系において、多種類
の難分解性繊維物質,硬タンパク質や余剰汚泥、その他
広く各種の有機資材を利用できるようになった。更にこ
のことが、生産性向上、土壌病害や連作障害の克服、そ
して、屎尿の脱臭・分解、土壌又は植物葉面に直接撒布
する新技術の開発等、新次元の微生物利用法の発展へと
繋がる。
【0027】[III]SK522菌株とSK542菌
株の混合培養物 1.SK522菌株の多量培養物 前記ビルジョンら(Viljoen et al.,1926)の培地を用
い嫌気または半嫌気的条件下で、65〜70℃,48〜
60時間培養し、その培養液をもって菌体含有の培養物
とする。 2.SK542菌株の多量培養物 前記カステンホルツ(Castenholz,1969)の培地を用
い、通気または振盪等の好気的条件下で、70〜75
℃,24時間培養し、その培養液をもって培養物とす
る。
【0028】3.SK522菌株とSK542菌株の混
合培養物 下記の培地を用い、SK522菌株及びSK542菌株
の多量培養物の適量をそれぞれ接種して、65〜70
℃,24〜36時間培養して、両菌株の混合培養物とす
る。そして、これを賦型剤を用いて粉粒体となし、水分
を5〜7%以下の製品にすると2ケ年以上の保存に耐え
る。又、施用直前に両菌株の多量培養物を等量にとって
よく混和して、すぐに施用するか、或いは賦型剤を用い
て粉粒体に製造しても、その最終製品の品質性能は全く
かわらない。又、下記の共生混合培養用E−培地を以下
単にE−培地と称する。 下 記 共生混合培養用 E−培地 K2HPO4 5kg (NH42SO4 2kg 尿素 2kg ペプトン 5kg 酵母エキス 5kg ろ紙(繊維素) 15kg CaCO3 過剰 水(〜pH7.0) 1000l 4.両菌株の共生的混合培養のもたらす有用性 共に高温環境という条件下で、絶対好気性のサーマス属
(genus Thermus)のSK542菌株との共生的混合培
養は、嫌気性の好熱性繊維素分解菌SK522菌株単独
ではほとんど不可能な天然の難分解性有機資材の分解発
酵を顕著に高揚する。まず、SK542菌株の増殖はS
K522菌株の欠除するタンパク分解活性を充補する。
しかも、堆・厩肥をはじめ廃木材、都市下水汚泥等の難
分解性有機資材の分解発酵は、すべて固体発酵の状態
で、かなり通気のよい環境下におかれている。そして、
初期の段階におけるSK542菌株の増殖は高温嫌気的
環境へと変移せしめ、これによってSK522菌株の自
然界での生育を可能となる。
【0029】(1) リグニンの可溶化 ここで、特に注目されることは、SK542菌株によっ
てSK522菌株のリグニン可溶化能が顕著に発揮され
ることです。難分解性有機資材は、実際には繊維素がリ
グニン、その他の有機成分と強く結合した状態で存在す
る。こうした天然のリグノセルロースは繊維素分解力の
旺盛なSK522菌株の単独施用ではほとんど分解が不
可能である。リグニンの化学構造は、未だ完全に明らか
にされていないが、ベンゼン環に炭素数3つの側鎖を持
つフエニルプロパンが基本単位になって、この単位体が
パーオキシダーゼによって触媒されるラジカル反応によ
りランダムに三次元的に重合した高分子化合物である。
微生物の分解に対する抵抗がきわめて強く、きわめて分
解困難であることは多くの研究者・技術者の認める一致
した見解である。ところが、本願発明で使用するSK5
22菌株は弱又は微弱ではあるが、リグニンを可溶化す
る。そして、このリグニン可溶化能が、SK542菌株
と共生的混合培養することによって、たとえば、イナワ
ラリグニンの50%以上が10日前後の短日時において
可溶化されるということが、今回、本願発明において、
はじめて明らかにされた。その実際的な施用が本願発明
の重要なる特徴的態様で、その作用効果は50〜80℃
以上という高温期段階で発揮され、分解発酵へその腐植
化が急速に進行する。
【0030】(2) 黄色色素の産生 SK542菌株をはじめ、サーマス属(genus Thermu
s)の産生する黄色色素はカロチノイド系不溶性色素で
ある。菌体中のこの黄色色素が他の微生物等による分解
を受け水溶性の低分子量体のものとなり、植物体に吸収
され、必要部位に移行し、丁度都合の良い前駆物質とな
る。すなわち、このような黄色色素が、ほかの溶菌した
細胞内容物や分泌物、それに発酵生産物等とともに根茎
葉部位の増大繁茂を促すだけでなく、花芽の形成,着
果,果実の肥大等の生殖生長の代謝系に深く関与してい
ることが分子生物学的レベルで行なわれた研究によって
も明らかにされ、その応用利用へと発展し、すでに果実
の味,色沢,貯蔵性等品質向上に役立っている。
【0031】(3) 微生物生態系の混合複合化 また、この黄色色素を含むSK542菌株の菌体を施用
すると、それを基質として繁殖する一般の従属栄養微生
物,土壌有効菌等の増殖を促す。さらに重要なことは、
自然界の堆肥製造のような現場では、SK522菌株の
ような好熱性微生物が、すぐに増殖活性化するわけでは
ない。当初は、一般の常温性従属栄養微生物が増殖し、
これらの作用による発酵熱が蓄積されて品温の上昇に役
立つものであり、単一菌株の好熱性繊維素分解菌や少数
の微生物のみが、天然の難分解性有機資材の腐植化に関
与するわけではない。微生物フロラーの混合複合化多様
化が求められる。さまざまなタイプの有効菌が多く、さ
らに「エサ(基質)」も適度にあるという複合的内容が
望ましい。こうして、難分解性有機物の高温分解は、S
K522菌株を中心とする細菌フロラーがまず形成さ
れ、その腐植化過程が単純な構成成分の変化だけでな
く、きわめて複雑な微生物フロラーの相互作用やその変
遷等が、深い関わりをもって最も効率よく進行するので
ある。SK522菌株とSK542菌株に混合する他の
有効菌としては下記のものがある。
【0032】(1) ヘミセルロースの分解菌の培養物 ヘミセルロースは繊維素とともに植物体(細胞壁)を形
成し、これを構成する糖類によって、キシラン,アラバ
ン,デキストラン,マンナン,ガラクタン等と称せられ
る。ヘミセルロース分解菌の培養物は、イナワラキシラ
ン約1%の濃度に加えた岩田の培地(1936)を使用
し、30〜38℃,通性嫌気的に集殖する。通常、バク
テリウム・ブルガトゥス(Bacterium vulgatus),バク
テリウム・プロディギオサム(Bac. prodigiosum),バ
クテリウム・メセンテリクスルバー(Bac. mesentericu
s ruber),ミクロスピラ・アガーリクェフィセンス(M
icrospira ager-liquefaciens)等の1株又は2株以上
の混合培養物が獲得される。 (2) ペクチン物質分解菌の培養物 ペクチン物質を強力に分解する細菌は、好気性のもので
は枯草菌群細菌及びエタノール・アセトン菌に、又嫌気
性ではラク酸菌に属するものが多い。本発明では、モリ
シュの培地(Molisch1939)を用い、土壌,堆肥,
馬糞,バガスやチョ麻等の腐敗物を分離源として、27
〜35℃,培養日数3〜5日,厚層及び薄層で数回の集
殖培養で種菌を獲得する。本発明では、その1株以上の
数株の培養物を用いる。
【0033】(3) 土壌放線菌の培養物 放線菌(Actinomycetales Buchanan,1917)の土壌
中の働きについて一般的に言うことが難しい。しかし、
各種の有機性物質、特に難分解性の繊維素,リグニン等
を他の微生物とともに分解し、土壌肥沃のもとになる腐
植の生成に重要な働きをしており、又抗生物質の産生を
通してのミクロフローラ・コントロール面で重要な意義
をもつことは確かである。放線菌の培養は、ワックスマ
ンの培地(Waksman1919),分離源に肥沃な土壌,
又堆・厩肥を用い強力菌を集殖する。 (4) 土壌糸状菌及び酵母の培養物 土壌糸状菌の最も多く存在する場所は、細菌,放線菌と
同様土壌で、土壌中の糸状菌は当然植物根のある耕作土
に多く、特に根圏ではその働きも活発である。植物遺体
等の有機性物質の分解にあずかり、土壌の肥沃度に関係
する。糸状菌は主として分解の初期段階で活躍している
と考えられる。次に土壌酵母の働きについては不明の点
が多い。しかし、土壌中には相当数の酵母菌が存在し、
かつその含有する豊富なビタミン類や生育因子をめぐっ
て他微生物との共存共棲や土壌活性等に影響のあること
は確かである。土壌糸状菌や酵母の培養物は、ツアペッ
ク・ドックスの培地(Czapek & Dox,1910)を用
い、土壌或いは堆・厩肥より分離,培養する。
【0034】(5) 好熱性バチルス属の培養物 一般に好気性,運動性,内生胞子を有する桿菌で、土
壌,葉面,枯草等自然界に広く分布する一群の細菌で、
ほとんどの菌株が強い熱抵抗性をもち、55℃以上でも
生育できるものが多いことから堆肥製造中の主要な微生
物であるという報告もある。又、バシトラシンやバシリ
シン等の抗菌物質を分泌することが、近年土壌植物病理
学の分野で注目されている。このようなことから、本菌
群が作物生産に利用しようとする試みが可能で、肥沃な
土壌や堆・厩肥等の懸濁液を80℃,10分間,加熱処
理して分離源とする。ワックスマンの培地(Waksman,19
22)を用い、50〜60℃,好気的に本菌群を集殖す
る。本発明では、これらの菌の単独又は混合培養を用い
る。 (6) 黄色色素産生菌の培養物 細菌の産生する黄色色素はカロチノイド系の色素であ
る。特に完熟堆肥中に数多く存在し、種類も多い。また
植物葉面にもよく存在する。これらを分離源とし、通常
の肉エキス培地又はペプトン・酵母エキス培地を用い、
25〜35℃,好気的条件下で培養,分離する。黄緑
色,黄色,黄褐色,紅色等の呈色によって容易に識別さ
れ、一般にフラボバクテリウム(Flavobacterium),ク
ロモバクテリウム(Chromobacterium),シュドモナス
(Pseudomonas),セラテラ(Serratia),光合成細菌
(Phototrophic bacteria)等に属する1株又は2株以
上の培養物が獲得される。
【0035】[IV]SK522菌株とSK542菌株
の共生的混合培養物 1.種菌:SK522菌株とSK542菌株共生的多量
混合培養物 SK522菌株の多量培養物 SK542菌株の多量培養物 各培養物いずれも本明細書前記の通りである。 2.試料:試験に使用した原材料はイナワラ(粳)で、
その分析値は表2の通りである。
【表2】 3.試験方法 1000ml三角フラスコに風乾試料10.0g,E−培
地700ml(ろ紙を除いたもの)注加、常法通り加圧殺
菌後、適量の種菌を接種,65℃,20日間培養。蒸発
欠減を補い、分析に供する。 4.結果の表示
【数1】
【数2】
【数3】 5.試験結果
【表3】 表3を見ても明らかなように、この522菌株と542
菌株の二つの新株の好熱的な共生的混合培養は、それぞ
れの機能の相加的作用だけでなく、相互作用による相乗
的効果によって互いにその機能を高め、イナワラのよう
な天然の難分解性繊維物質を10〜12日という短日時
で、リグニンの50%以上を可溶化し、繊維素は90%
以上、タンバク質は70%以上を強力かつ安定して発酵
分解している。522菌株,542菌株それぞれ単独培
養とは、顕著な差異がある。
【0036】以下、この共生的混合培養物又はこれを有
効主成分とする発酵分解剤の実際の有機質肥料の製造法
の例とその効果について説明する。 応用例.家畜糞尿,難分解性繊維物質,および硬タンパ
ク質を窒素源とする有機質肥料の製造法の例 試験目的:家畜糞尿、難分解性繊維物質、および硬タン
パク質を窒素源とする有機質肥料の製造法における本発
明の発酵分解剤の施用効果((1)脱臭効果,(2)腐
熟効果))の検討。 発酵分解剤:下記のような原材料を直ちに混和し、粉状
の製品とする。 発酵分解剤の配合割合 (賦型剤:石灰岩岩粉1000kg当り) SK522菌株とSK542菌株との混合培養物 4kg (0028に記載の混合培養物) 土壌放線菌の培養物 2kg (0033に記載の培養物) 黄色色素産生菌の培養物 2kg (0034に記載の培養物) 微量要素複合物 200g (Co,B,Mo,Mn)
【0037】1.有機質肥料の製造 (1)製造装置:堅型併流発酵槽,200l容。 (2)供試原材料:豚糞(尿),ノコクズ,蹄角・革屑
の混合粉。これらの分析の1例を示すと、 供試原材料の成分組成(乾物当り%) 水分 C N 灰分 C/N 豚糞(尿) 80.6 36.9 3.4 22.2 10.9 ノコクズ 17.3 50.4 0.1 0.8 504.0 (針葉樹, 葉樹混合) 蹄角・革屑混合粉 14.2 31.7 9.2 7.4 4.6 (3)原材料の配合 ノコクズ 100kg 米ヌカ 10kg 豚糞(尿) 30kg 蹄角・革屑 5kg 過リン酸石灰(1kgを切り返し時に添加) 1kg+1kg 発酵分解剤 2kg 水分 60%に調整 (4)有機質肥料の積込み ノコクズ100kgに、本発明の発酵分解剤、蹄角・革
屑、豚糞(尿)、その他を混和しながら水分が約60%
になるように給水し、発酵槽中に積込む。 (5)製造経過 この有機質肥料の製造は、高速コンポスト化方式による
ものでも可及的好気的条件下、高温急速に微生物分解を
進める。最高温78〜86℃、10日間継続し、途中切
返し1回、残り1kgの過リン酸石灰を添加し、主発酵
は2週間で終わる。30℃以上、後熟発酵2週間、ほぼ
完熟化する。
【0038】2.結果および考察 (1)脱臭効果 結果は下記の表4.にみられるとおりです。その結果は
顕著である。指標化合物のジメチルサルファイドは、本
発明の発酵分解剤の施用によって著しく低減し、後熟期
に入ってからはほとんど検出されない。このことは官能
的にも明確で、腐熟発酵中は悪臭の心配はなく、製品と
なった有機質肥料では独特の堆肥臭、むしろ芳香を感じ
る状態である。 (2)腐熟効果 その効果は下記の表5,6の製品有機質肥料の分析結果
にあらわれているとおりです。木材堆肥としての一応の
基準値を上まわり、幼植物テストにも異常を認めない。
一般に動物質肥料は速効性であるが、蹄角・革屑等は窒
素含有量が多く、炭素率も小さいにもかかわらず分解困
難できわめて遅効性のものとされている。しかし、この
応用例にみられるように本発明の有効なる微生物の選択
によって、迅速に分解発酵が進行し、その優れたる腐熟
効果を下記の表5,6および表7.に示している。
【0039】3.主要な試験データ 主要な試験データは、本発酵分解剤の脱臭効果をみた
表4.、製品となった有機質肥料の化学的組成をみた
表5,6、および本有機質肥料の分解熟成にあたって
出現する微生物群の動態をみた表7.である。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0040】
【発明の効果】以上の様に、本発明によれば、二つの新
菌株SK522及びSK542の共生的混合培養物を使
用したことによって、家畜糞尿・屎尿・蹄角・革屑等の
動物性有機資材と繊維質を多く含む植物性有機資材とを
悪臭も少なく且つ迅速に分解腐熟・発酵して良質の有機
質肥料にすることができた。又原料となる動物性有機資
材と植物性有機資材の資源の有用な活用と処理を行なえ
る。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記1記載の好熱性繊維素分解菌クロス
    トリジュウム・サーモセルムSK522(Clostriduim
    thermocellum biovar.SK522,微工研条寄第345
    9号)と、下記2記載のサーマス・アクアティクスSK
    542(Thermus aquaticus biovar SK542,微工
    研条寄第3382号)とを60℃以上の好熱性環境下で
    共生的混合培養させた混合培養物又はこれを有効主成分
    とする発酵分解剤を、植物性有機資材と屎尿・糞尿の動
    物性有機資材とに混和させながら所要の水分に調整し、
    混合培養物又は発酵分解剤により有機資材を腐熟発酵さ
    せて肥料とすることを特徴とする有機質肥料の製造法。 記1 リグニン可溶化能を有し、生育適温が65〜72℃で、
    40〜80℃の温度範囲で生育し、繊維素を旺盛に発酵
    する好熱性繊維素分解菌クロストリジュウム・サーモセ
    ルムSK522(Clostriduim thermocellum biovar.S
    K522,微工研条寄第3459号) 記2 絶対好気性、生育適温が72〜76℃で、40〜82℃
    の温度範囲で通常濃度の培地に生育し、作用適温75〜
    85℃、作用水素イオン濃度pH=4.0〜11.3の
    高温性広域作用水素イオン濃度活性のタンパク質分解酵
    素とカロチノイド系黄色色素を産生するサーマス・アク
    アティクスSK542(Thermus aquaticus biovar S
    K542,微工研条寄第3382号)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005074423A (ja) * 2003-09-03 2005-03-24 Hide Kume 高濃度有機性廃液の微生物による処理法
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US9670508B2 (en) 2014-04-01 2017-06-06 Ductor Oy Biogas process with nutrient recovery

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