JPH06147057A - 燃料噴射ノズル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 燃料噴射を段階的に行う燃料噴射ノズルにお
いて、燃料噴射特性を改善する。 【構成】 針弁２が着座する円錐形の座面１１に偶数個
の噴孔２１を開口させ、針弁２の周囲を流れる燃料に旋
回流を生起する螺旋溝２５を形成し、隣り合う噴孔２１
どうしの間隔を周方向で交互に大小異ならせて、隣り合
う噴孔２１どうしで各噴孔２１を流れる燃料に生起され
る旋回流の勢力を相違させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、直噴式ディーゼルエン
ジン等に用いられる燃料噴射ノズルの改良に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】この種の燃料噴射ノズルとして従来例え
ば図１６に示すものがあった(特開昭６０−２６１９７
５号公報、同６１−１７１８６９号公報参照)。

【０００３】これについて説明すると、ノズルボディ４
１の先端には複数の噴孔４３が放射状に開口する一方、
針弁４２の外周に螺旋溝４５が形成されて、針弁４２の
周囲に燃料の旋回流を生起することにより、各噴孔４３
を通って燃焼室に噴出する燃料に旋回流を持続させ、各
噴孔４３から燃焼室に拡散する燃料噴霧角を大きくする
ようになっている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来装置にあっては、ノズルボディ４１の先端に多
数の噴孔４３が放射状に形成された場合、隣り合う噴孔
４３から拡散する燃料噴霧どうしが互いに重なり合い、
燃焼室に燃料が過濃となる領域をつくってスモークの悪
化を来すという問題点があった。

【０００５】本発明は上記の問題点に着目し、燃料噴射
ノズルの噴射特性を改善することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、燃料噴射を段
階的に行う燃料噴射ノズルにおいて、針弁が着座する円
錐形の座面に偶数個の噴孔を開口させ、針弁の周囲を流
れる燃料に旋回流を生起する手段を設け、針弁の小リフ
ト時に２つの噴孔を１組として各噴孔を流れる燃料に生
起される旋回流の勢力を隣り合う噴孔間で相違させる手
段を設ける。

【０００７】

【作用】針弁と座面との間に画成される円錐筒状流路の
間隙が小さい針弁の小リフト時、針弁の周囲を流れる燃
料に旋回流が生起されると、各噴孔を通って燃焼室に噴
出する燃料にも旋回流が持続し、噴射された燃料に働く
遠心力により各噴孔から燃焼室に拡散する燃料噴霧角が
大きくなる。

【０００８】針弁の小リフト時は座面に対する各噴孔開
口部の配置あるいは形状差によって各噴孔開口部の圧力
分布を異ならせることにより、各噴孔を流れる燃料に生
起される旋回流の勢力を隣り合う噴孔間で相違させるこ
とができる。隣り合う噴孔間で各噴孔を流れる燃料に生
起される旋回流の勢力を相違させることにより、燃料噴
射ノズルから噴霧角の大小異なる燃料噴霧が交互に並ん
で拡散し、各噴孔から噴出される燃料噴霧どうしが重な
り合うことを防止し、着火遅れの少ない円滑な燃焼を実
現する。

【０００９】針弁のリフト量が増大するのに伴って、針
弁と座面との間に画成される円錐筒状流路の間隙が大き
くなると、座面に対する噴孔開口部の圧力分布差が少な
くなり、燃焼室に貫徹力の強い燃料噴霧が供給され、拡
散燃焼を活発化させてスモークを抑えるとともに、燃料
噴射時期をある程度遅らせてＮＯｘの低減をはかること
が可能となる。

【００１０】

【実施例】以下、本発明を直噴式ディーゼルエンジンの
燃料噴射ノズルに適用した実施例を添付図面に基づいて
説明する。

【００１１】図３に示すように、燃料噴射ノズル１０
は、中空の筒状ノズルボディ１内に針弁２が摺動可能に
収装され、針弁２を閉弁付勢する第一バネ６と第二バネ
７が並列に介装され、針弁２がリテーナ８に当接する初
期リフトまでの段階では第一バネ６が働き、初期リフト
を過ぎるとこれに加えて第二バネ７の付勢力がプッシュ
ロッド５を介して働くことにより、燃料ポンプから通路
３を介して圧送される燃料噴射圧力に対して針弁２が段
階的にリフトし、初期噴射燃料が着火した後に大量の主
噴射が行われる。ここでは初期リフト量Ｌ₁が例えば
０．０６ｍｍ、全リフト量Ｌ₂が例えば０．２５ｍｍに
設定される。

【００１２】図５、図６に示すように、ピストン１８の
頂面には皿状に窪むキャビティ１９が形成され、燃料噴
射ノズル１０はシリンダヘッドから燃焼室の中央に臨ん
で垂直に設けられる。

【００１３】図１、図２に示すように、針弁２の先端に
は円錐状に突出するシート面部２０が形成される一方、
ノズルボディ１にはこのシート面部２０を着座させる座
面１１がノズル中心線Ｎを中心とする円錐形に形成され
る。この座面１１には燃焼室に連通する６つの噴孔２１
が開口する。

【００１４】針弁２の途中には補助案内部２４が形成さ
れる一方、ノズルボディ１にはこの補助案内部２４を摺
動可能に嵌合させるガイド穴１５が形成され、針弁２が
座面１１に対して同心的に案内される。

【００１５】針弁２の補助案内部２４の外周面には複数
条の螺旋溝２５が形成され、これを通過して針弁２の周
囲に導かれる燃料に旋回流を生起するようになってい
る。

【００１６】図２は各噴孔２１をノズル中心線Ｎについ
て直交する平面上に投影した図であり、この投影図上に
おいて、２つで１組となる各噴孔２１はノズル中心線Ｎ
と交差する放射線Ｏに対して一方は時計回り方向、他方
は反時計回り方向に同一値だけ偏心して、隣り合う噴孔
２１どうしの間隔が周方向で交互に大小異なるように配
置され、かつ隣り合う噴孔２１どうしの挟み角度が略６
０度と均一になるように配置される。これにより、各組
の噴孔２１を流れる燃料に生起される旋回流の勢力を隣
り合う噴孔２１間で相違させるようになっている。この
場合、各噴孔２１の中心線と放射線Ｏとのオフセット量
は噴孔２１の半径と等しく設定する。

【００１７】次に、作用について説明する。

【００１８】燃料噴射ポンプから燃料噴射ノズル１０に
エンジン回転に同期して送られる燃料は、その圧力上昇
に伴って第一バネ６のみを圧縮して針弁２を初期リフト
させて低噴射圧で小量の燃料を初期噴射した後、圧力の
上昇に伴って、こんどは第二バネ７も圧縮しながらフル
リフトして高噴射圧で大量の燃料を主噴射する。

【００１９】針弁２の先端シート面部２０と座面１１と
の間に画成される補助案内部２４に形成された各螺旋溝
２５は図中矢印で示すように針弁２とノズルボディ１の
間の流路に旋回流を生起し、各噴孔２１を通って燃焼室
に噴射される燃料にも旋回流を持続する。

【００２０】座面１１に対して各噴孔２１の開口する間
隔が異なることにより、流路の間隙が小さい初期リフト
時に、隣り合う噴孔２１の間隔が小さい側に比べて、隣
り合う噴孔２１の間隔が大きい側の圧力が高くなる。こ
の圧力差により、各噴孔２１に流入する燃料の流れは、
図４にそれぞれ矢印で示すように、隣り合う噴孔２１の
間隔が小さい側より大きい側に集まり、旋回流の上流側
に広い間隔を持った各噴孔２１内には強い旋回流が生起
されるのに対し、旋回流の上流側に狭い間隔を持った各
噴孔２６を通過する燃料流は直進する成分が強くなる。

【００２１】燃料の旋回成分が強められる各噴孔２１で
は遠心力により燃料噴霧角度が大きくなるとともに貫徹
力が小さくなって燃焼室の中央部に拡散する一方、燃料
の直進成分が強められる各噴孔２１ではこれから噴出す
る燃料噴霧角度が小さくなるとともに貫徹力が大きくな
って燃焼室の側方に到達する。したがって、ピストン１
８のキャビティ１９では、図５、図６に示すように、噴
霧形態の異なる燃料噴霧がノズル１０を中心に交互に拡
散し、隣り合う燃料噴霧どうしが互いに重なり合うこと
が防止される。この結果、着火遅れの少ない初期燃焼を
実現し、針弁２の初期リフトだけで燃料噴射が終了する
低負荷域でも、空気利用率を高めてスモークを低減する
ことができ、また排気還流量を増やしてＮＯｘを低減す
ることが可能となる。

【００２２】針弁２の先端シート面部２０と座面１１と
の間に画成される流路の間隙が大きくなる針弁２の主噴
射時に、燃料の流れ抵抗が小さくなるために、図７に示
すように各噴孔２１に流入する燃料の流れが均一にな
り、しかも燃料噴射圧も上昇することから、キャビティ
１９では、図８、図９に示すように、噴霧角が小さく貫
徹力の大きな燃料噴霧が均等な角度をもって放射状に拡
がる。この結果、各噴孔２１からの燃料噴霧が重なり合
うことがなく、空気利用率を高めてスモークを抑えるこ
とができ、また燃料噴射時期をある程度遅らせても安定
して着火するのでＮＯｘの低減をはかることが可能とな
る。

【００２３】次に、図１０、図１１に示した他の実施例
について説明する。

【００２４】針弁２とノズルボディ１の間に画成される
燃料溜まり３１に燃料噴射ポンプからの加圧燃料を導く
通路３３が燃料溜まり３１に対して平面図上接線方向に
傾斜して形成され、針弁２のまわりに旋回流が生起され
るようになっている。

【００２５】図１２に示すように、ノズルボディ１の座
面１１には燃焼室に連通する６つの噴孔２６が開口し、
２つのものが１組となり、互いに入口部分を近接し、一
方はノズル中心線と交差する放射状に配置される噴孔２
６と、他方は座面１１の内周に対し接線方向に配置さ
れ、かつ針弁２のまわりに生起される旋回流と同方向に
傾斜する噴孔２６とが交互に形成される。針弁２のまわ
りに生起される旋回流に対して放射状に配置される各噴
孔２６の上流側には比較的大きな間隔が空けられ、座面
１１の接線方向に配置される各噴孔２６の上流側には比
較的小さな間隔が空けられる。

【００２６】初期噴射時、放射状に配置される各噴孔２
６では座面１１に対する開口縁部に生じる圧力差により
強い旋回流が強化される一方、座面１１の接線方向に配
置される各噴孔２６では直進成分が強くなり旋回流が弱
められる。これにより、ピストン１８のキャビティ１９
では、図１３に示すように、噴霧形態の異なる燃料噴霧
がノズル１０を中心に交互に拡散し、隣り合う燃料噴霧
どうしが互いに重なり合うことがない。

【００２７】針弁２のリフト量が大きくなる主噴射時
に、流路の間隙が大きくなって燃料の流れ抵抗が小さく
なるために、図１４に矢印で示すように各噴孔２６に流
入する燃料の流れが均一になり、各噴孔２６を通過する
燃料流は直進する成分が強くなり、キャビティ１９で
は、図１５に示すように、噴霧角が小さく貫徹力の大き
な燃料噴霧が放射状に拡がり、各燃料噴霧が重なり合う
ことが抑えられる。

【００２８】

【発明の効果】以上説明したように本発明は、燃料噴射
を段階的に行う燃料噴射ノズルにおいて、針弁が着座す
る円錐形の座面に偶数個の噴孔を開口させ、針弁の周囲
を流れる燃料に旋回流を生起する手段を設け、針弁の小
リフト時に隣り合う噴孔どうしで各噴孔を流れる燃料に
生起される旋回流の勢力を相違させる手段を設けたた
め、噴霧角の大小異なる燃料噴霧が交互に放射状に拡散
して、着火遅れの少ない円滑な燃焼を実現し、ディーゼ
ルエンジンの騒音を低減するとともに、スモークとＮＯ
ｘを両立して低減することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を示す燃料噴射ノズルの先端部
の縦断面図である。

【図２】同じく噴孔の投影図である。

【図３】同じく燃料噴射ノズルの全体断面図である。

【図４】同じく針弁の初期リフト時の燃料流を示す座面
の展開図である

【図５】同じく初期リフト時の燃料噴霧の形態を示す側
面図である。

【図６】同じく初期リフト時の燃料噴霧の形態を示す平
面図である。

【図７】同じく針弁の主リフト時の燃料流を示す座面の
展開図である

【図８】同じく主リフト時の燃料噴霧の形態を示す側面
図である。

【図９】同じく主リフト時の燃料噴霧の形態を示す平面
図である。

【図１０】他の実施例を示す燃料噴射ノズルの縦断面図
である。

【図１１】同じく燃料噴射ノズルの平面図である。

【図１２】同じく噴孔の投影図である。

【図１３】同じく針弁の初期リフト時の燃料噴霧の形態
を示す平面図である。

【図１４】同じく針弁の主リフト時の燃料流を示す噴孔
の投影図である

【図１５】同じく主リフト時の燃料噴霧の形態を示す平
面図である。

【図１６】従来例を示す燃料噴射ノズルの縦断面図であ
る。

【符号の説明】

１ ノズルボディ ２ 針弁 １０ 燃料噴射ノズル １１ 座面 ２０ シート面部 ２１ 噴孔 ２５ 螺旋溝

フロントページの続き (72)発明者 李 新和 埼玉県東松山市箭弓町３丁目13番26号 株 式会社ゼクセル東松山工場内 (72)発明者 田畑 康弘 埼玉県東松山市箭弓町３丁目13番26号 株 式会社ゼクセル東松山工場内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 燃料噴射を段階的に行う燃料噴射ノズル
   において、針弁が着座する円錐形の座面に偶数個の噴孔
   を開口させ、針弁の周囲を流れる燃料に旋回流を生起す
   る手段を設け、針弁の小リフト時に２つの噴孔を１組と
   して各噴孔を流れる燃料に生起される旋回流の勢力を隣
   り合う噴孔間で相違させる手段を設けたことを特徴とす
   る燃料噴射ノズル。