JPH06113829A - 動物細胞培地添加血清の調製方法、動物細胞培地の調製方法及び培養装置 - Google Patents

動物細胞培地添加血清の調製方法、動物細胞培地の調製方法及び培養装置

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JPH06113829A
JPH06113829A JP4297903A JP29790392A JPH06113829A JP H06113829 A JPH06113829 A JP H06113829A JP 4297903 A JP4297903 A JP 4297903A JP 29790392 A JP29790392 A JP 29790392A JP H06113829 A JPH06113829 A JP H06113829A
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Hidetaka Shimoizu
英貴 下伊豆
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Tabai Espec Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの膜また
はフィルターを用いて1回以上の分画を行い通過成分と
不通過成分とに分画し、該通過成分に少なくとも1種以
上の該通過成分より大きな分子量を持つ培養必要成分を
添加することを特徴とする、動物細胞培地添加血清の調
製方法、該血清およびこれを用いた培養装置、並びに、
哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの膜またはフィル
ターを用いて1回以上の分画を行い通過成分と不通過成
分とに分画し、該通過成分と不通過成分を所望の比率で
動物細胞の培養を目的とする培地に添加することを特徴
とする、動物細胞培地の調製方法およびこれを用いた培
養装置に関する。 【効果】本発明により、血清中の通過成分と不通過成分
を効率よく利用することができ、効率性の高い培養コス
トが低減された動物細胞の培養を行うことが可能となっ
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、動物細胞培地に添加す
る血清の調製方法及び該方法により調製された血清、さ
らに該調製手段を有する培養装置に関する。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようとする課題】動物細胞
の増殖・生育のためには、基本培地の他、哺乳動物由来
の血清が添加される。これらの血清としては、牛、豚、
鶏、羊、兎など種々の動物由来のものが用いられてき
た。血清は大きく分けると胎児性のものと非胎児性のも
のとに分けられるが、とりわけ、牛の胎児由来の血清
(Fetal Bovine Serum, 以下、FBSと略す。)が利用
されてきた。動物細胞の培養が小規模の場合や短期間の
場合は血清の使用量は少量で済むが、大量培養や、長期
培養を実施する場合は血清の使用量は膨大なものとな
る。しかしながら、FBS等の胎児性血清は非胎児性血
清に比べて非常に高価(3〜10倍程度)であるため、
細胞の培養および目的物生産のコストを著しく上昇させ
るといった問題を有している。さらに、近年では、胎児
性血清の利用は動物愛護関連の動向に逆行するとの見解
もあり、この観点からも胎児性血清の利用は望ましくな
い。このため非胎児性血清の利用が当業界において望ま
れているものの、以下のような問題点を有するので、そ
の使用量は非常に少ないのが現状である。
【0003】すなわち、非胎児性の血清には各種免疫系
のタンパクが多量に含有されているため、これらの免疫
系タンパクは細胞の増殖・生育を阻害し、かつ培養によ
り生産された物質の精製を著しく困難にする。従って、
動物細胞の増殖・生育のためには免疫系タンパクが培地
中に含有されることは非常に問題となる。免疫系タンパ
クにはイムノグロブリンタンパク及び補体系タンパクが
含まれる。イムノグロブリンは、動物が生命を維持して
いく上で不可欠の役割を果たす免疫の仕組みの中心的物
質である。これは、主に動物体内の免疫担当細胞群の中
のB細胞が生産し、血中に放出するものであり、一般に
イムノグロブリン(免疫グロブリン)、抗体などと称さ
れている。また、補体系タンパクは免疫担当細胞に作用
し免疫力を強めるとともに、イムノグロブリンにも結合
して、その作用を増強させる重要な役割を担っており、
C1〜C9等の多数の成分に分類される。
【0004】イムノグロブリン(以下、Igと略す。)
はG,M,A,D,Eという5つのクラスに分類され、
各々IgG,IgM,IgA,IgD,IgEと表され
る。このIgは重鎖(H鎖)と軽鎖(L鎖)から構成さ
れ、H鎖2本とL鎖2本がジスルフィド結合した基本構
造をとっている。前記5つのクラスは各々異なった重合
をとっているため、その構造、分子量は各々異なってい
る。各クラスの分子量は、IgG,IgM,IgA,I
gD,IgEの順におよそ150,000、900,0
00、160,000、170,000〜200,00
0、190,000である。一方、補体系タンパクは分
子量が約23,000〜890,000と幅があるが約
70,000〜200,000のものが大半を占める。
【0005】以上のようなIgおよび補体系タンパクが
非胎児性の血清には多量に含まれているため、該血清を
動物細胞の培地の成分として用いた場合、細胞の増殖の
阻害、具体的には細胞の培養器基質との直接的及び間接
的接着阻害を引き起こしたり、細胞膜に作用し、溶解を
引き起こしたりするといった大きな問題点があった。
【0006】また、細胞培養の目的とする物質が非胎児
性血清中に存在するIgと同種である場合、血清中に存
在するIgの存在により、目的物質の精製は非常に困難
であり、精製品中への混入を免れ得ない。例えばモノク
ローナル抗体の生産を行う場合、培養による血清含有培
地中の生産物(モノクローナル抗体)は、アフィニティ
ークロマトグラフィーにより分離される。該生産物はア
フィニティーカラムのプロテインAあるいはコンカナバ
リンなどに吸着させて、その後塩濃度を変えるなどして
溶出し、吸着物を回収するが、血清中Igも、細胞によ
り生産されたモノクローナル抗体も区別なくカラムに吸
着されてしまう。この点も大きな問題であった。もう一
つ、非胎児性血清における問題は、ウイルスマイコプラ
ズマの混入が多いことである。これらの混入は、動物細
胞の培養における細胞の増殖、物質生産の阻害のみなら
ず、研究者など、血清取扱者の生命、健康をおびやかす
ものであり、問題であった。
【0007】一方、胎児性血清を利用して動物細胞の培
養を行う場合は、アミノ酸、ビタミン、塩類等を基本と
した培地に対して1%〜20%の割合となるように血清
を添加して用いることが一般的である。血清添加後の培
地はペトリディッシュ(シャーレ)、T型フラスコ、ス
ピナーフラスコ、ローラーボトル、タンク型培養器やホ
ローファイバー型培養器等を用いて動物細胞の培養が行
われてきた。ところで胎児性血清の成分中には、多くの
増殖作用をもつ因子、例えばインスリン(分子量5,1
00)、EGF(上皮様細胞増殖因子=Epidermal Grow
th Factor :分子量6,100)、アルブミン(分子量
69,000)、トランスフェリン(分子量75,00
0)等が相当量存在する。また、血清中にはこれらの既
知の因子以外に、動物細胞の増殖に影響を及ぼす因子が
含まれていると考えられる(未知因子)。
【0008】現在、このような増殖因子を添加する目的
で、当業者らはその経験のみに基づいて前記のように1
%から20%の割合で、血清を動物細胞の培養のために
添加している。しかしながら、従来の培養方法において
はこれらの多くが細胞の増殖に充分に作用せずに残存し
た状態で廃棄されているのが現状であり、これは、培地
交換等をした使用済の血清を含んだ培地をNative
電気泳動等により分析することにより一目瞭然に確認す
ることができる。この理由は、細胞が生育、増殖する過
程において、乳酸やアンモニア等の細胞老廃物が培地中
に蓄積し、細胞の生育および増殖を阻害するため、この
阻害を防止する1つの手段として血清を含む古い培地を
適宜新鮮な培地と交換することが行われているためであ
る。しかし、これは非常に効率の悪い方法である。ま
た、大量培養においては、血清成分の使用量の節減のた
めに、使用済の血清を含んだ培地を、該培養装置に敷設
した限外濾過膜で濾過することにより、膜の不透過画分
のみを回収して再び培養に用いる試みがなされているも
のの、限外濾過膜で濾過を行う場合、血清成分中の、上
記インスリンやEGF等の増殖作用をもつ因子の大部
分、すなわち分子量約10,000ないし20,000
以下の成分を全て廃棄してしまうことになるため、この
方法も非常に効率の悪い方法であるといえる。
【0009】また、培養器として限外濾過能をあるいは
透析能を有する膜を用いたホローファイバー型培養器等
を用いる場合においても循環させる培地には、1〜10
%もの血清が加えられている。ホローファイバー型培養
器においてはホローファイバーが膜構造を形成している
が、ホローファイバー等の膜を用いる培養器の特徴とし
て、ICS(Intra Capillary Space) の循環による液圧
により、ECS(ExtraCapillary Space) との間で培地
の交換作用が起きる。この作用により、細胞の培養が行
われるわけであるが、この際にICSの液中に存在する
不通過成分が膜の目詰まりを引き起こす原因となるので
ある。この不通過成分の大部分は、細胞培養においては
不要であるばかりでなく、ホローファイバー等の膜を用
いる培養器において、不通過成分(主に蛋白成分)によ
る膜孔の目詰まりが大きな問題になっている。すなわ
ち、ホローファイバー型培養器による培養においては、
循環させる培地に前処理として分画することなく血清を
用いることは、生産性の問題だけではなく、目づまりの
問題も有していたので、非効率的な培養がおこなわれて
いた。
【0010】本発明は上記の問題点を解決するものであ
り、本発明の目的の一つの観点は、非胎児性血清を利用
した、効率のよい、培養コストが低減された培養に用い
る動物細胞培地添加血清の調製方法、動物細胞培地添加
血清、及びこれを用いる培養装置を提供することを目的
とする。更に、本発明のもう一つの観点は、胎児性血清
を利用した、効率のよい、培養コストが低減された動物
細胞培地の調製方法およびこれを用いる培養装置を提供
することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は前記課題を
解決するために鋭意検討した。その結果、哺乳動物由来
血清を、多孔性ポリマーの膜またはフィルターを用いて
分画を行うことにより、血清中の成分のうちIgおよび
補体系タンパクといった細胞の増殖を阻害する成分を除
去すること等により動物細胞培地添加血清を調製するこ
とが可能であることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0012】即ち、本発明の要旨は、 (1) 哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの膜また
はフィルターを用いて1回以上の分画を行い通過成分と
不通過成分とに分画し、該通過成分に少なくとも1種以
上の該通過成分より大きな分子量を持つ培養必要成分を
添加することを特徴とする、動物細胞培地添加血清の調
製方法、 (2) 哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの膜また
はフィルターを用いて1回以上の分画を行い通過成分と
不通過成分とに分画し、該通過成分と不通過成分を所望
の比率で動物細胞の培養を目的とする培地に添加するこ
とを特徴とする、動物細胞培地の調製方法、 (3) 以下の成分を所望の比率で動物細胞の培養を目
的とする培地に添加することからなる、哺乳動物細胞培
地の調製方法、 イ)培養済みの培養液を多孔性ポリマーの膜またはフィ
ルターを用いて通過成分と不通過成分に分画して得られ
る、該不通過成分、 ロ)哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの膜またはフ
ィルターを用いて1回以上の分画を行い通過成分と不通
過成分とに分画して得られる、該通過成分、該不通過成
分またはその両成分、 (4) 哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの膜また
はフィルターを用いて1回以上の分画を行い通過成分と
不通過成分とに分画し、該通過成分に少なくとも1種以
上の該通過成分より大きな分子量を持つ培養必要成分を
添加して得られることを特徴とする動物細胞培地添加血
清、 (5) 哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの膜また
はフィルターを用いて1回以上の分画を行い通過成分と
不通過成分とに分画する手段、および該手段により得ら
れる該通過成分に少なくとも1種以上の該通過成分より
大きな分子量をもつ培養必要成分を添加する手段とを備
えた、または接続した培養装置、 (6) 哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの膜また
はフィルターを用いて1回以上の分画を行い通過成分と
不通過成分とに分画する手段および/または該手段によ
り得られる該通過成分と不通過成分を所望の比率で動物
細胞の培養を目的とする培地に添加する手段を備えた、
または接続した培養装置、に関する。
【0013】本発明において、哺乳動物由来の血清と
は、例えば、牛、豚、鶏、羊、兎など種々の哺乳動物の
非胎児性血清および胎児性血清が挙げられ、胎児性血清
を用いる場合、好ましくはFBSである。本発明におい
て、分画とは、哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの
膜またはフィルターに通すことによって膜(またはフィ
ルター)を通過する分子量を有する成分(以下、通過成
分)と膜(またはフィルター)を通過出来ない分子量を
有する成分(以下、不通過成分)とに分ける操作をさ
す。
【0014】用いる血清が市販されているものである場
合は、菌、微生物やマイコプラズマなどが除去されてい
るが、市販されていないものを用いる場合は前記のよう
な夾雑物の除去が必要である。該除去を行う方法は様々
あり、その1つとして、膜による濾過がある。しかし、
この場合の濾過とは、本発明でいう分子量による分画を
意図するものではなく、通常、0.2μmという目の粗
い膜が利用されるものであり、従って、本発明における
分画とは大きく異なるものである。なお、一般的に多孔
性ポリマーの膜あるいはフィルターによる分画分子量
は、分画を目的とする分子の分子量により決定される
が、その示す値は絶対値で100%を意味するのではな
く、分画可能な割合を意味するものである。つまり、分
画分子量10,000の膜あるいはフィルターが実際に
分画する分子量は、例えば7000〜14,000程度
の値となる。従って、分画分子量10,000で70%
カットという表現が最もふさわしく、分子量10,00
0以上の分子70%がカットされるということを意味し
ていることになる。
【0015】分画分子量10,000(70%カット)
という膜あるいはフィルターの性能は、分画分子量1
4,000(90%カット)という表記も可能であり、
また、分画分子量10,000という表記のみであれ
ば、分画分子量10,000で50%カットのものも存
在すれば、90%カットのものも存在する。それらは、
膜、フィルターの材質、加工方法により大きく左右され
る。本明細書においては、表記のない膜あるいはフィル
ターの分画分子量の値については、70%カットを意味
する。従って、特許請求の範囲における3,000ある
いは75,000等の値の意味も同様であり、分画分子
量2,000(50%カット)という膜(あるいはフィ
ルター)を用いた場合であっても3,000(70%)
の性能を有していれば、また分画分子量100,000
(50%カット)という膜(あるいはフィルター)を用
いた場合であっても75,000(70%)の性能を有
していれば、本発明の範疇に入っていると考えられる。
また、この分画分子量の値は、多孔性ポリマーの膜ある
いはフィルターの持つ性能の初期値を示す。
【0016】本発明において、多孔性ポリマーの材質は
特に制限されるものではなく、セルロースアセテート、
ポリサルホン、クプロファンなどが用いられる。多孔性
ポリマーの膜またはフィルターの厚さは特に制限される
ものではないが、膜の機能を有する部分として5μm〜
200μm程度、好ましくは10μm〜40μm程度の
ものが用いられる。なお、該多孔性ポリマーは単一素材
でなくてもよく、また、単層あるいは複層のどちらであ
ってもよい。
【0017】本発明において動物細胞培地に添加する血
清の調製方法には以下の2つの態様がある。 (1)第一の態様 第一の態様は、非胎児性血清を用いるのに適した態様で
ある。多孔性ポリマーの膜またはフィルターの孔の大き
さは分画により除去を行なうことが好ましい血清成分の
分子量の大きさにより適宜決定されるが、60,000
を越える分子量をもつ成分を除去することにより、免疫
系タンパク等の高分子量の培養阻害成分を含む血清成分
を除去することができる。なお、効率の点からは、分画
分子量が20,000〜30,000程度の多孔性ポリ
マー膜を用いた場合が最も効率が良いといえる。例え
ば、分画分子量が20,000(90%)であるセルロ
ースアセテート製の多孔性ポリマー膜を用いた場合、2
0,000を越える分子量のものを90%までは分画す
ることが出来る。
【0018】分画分子量が60,000を越える多孔性
ポリマーを用いても免疫系タンパク等の除去は可能であ
るが、例えば分画分子量が70,000程度である場
合、非常に効率が悪いという問題がある。この原因とし
ては、血清中に多量に存在する血清アルブミンがポリマ
ーの孔を塞ぐためと考えられ、アルブミンは分画後の膜
通過・不通過両成分中に検出される。分画分子量が10
0,000程度である場合、70,000程度の場合よ
りも更に効率が悪くなる。これは補体系のタンパクが多
く通過成分中に含まれるためであると考えられる。
【0019】また、本発明の調製方法を用いる場合、種
々の材質・孔径を有する多孔性ポリマー膜(またはフィ
ルター)を組み合わせて複数回の分画を行うことによ
り、より培養に好ましい成分の分子量部分の画分のみを
選択的に取出すことも可能である。分画の回数としては
通常1〜3回が好ましい。このような処理により、イム
ノグロブリン、補体系タンパクの大部分を除去すること
が可能であり、分画後の通過画分にはインスリン、EG
F、ソマトメジン、PDGFなどの細胞の増殖を促す因
子が多数含まれている。なお、PDGFは多孔性ポリマ
ーの材質により吸着しやすいものがあり、PDGF要求
性の細胞株を培養するときには注意する。
【0020】該通過成分より大きな分子量をもつ該血清
由来の培養必要成分とは、前記の方法による分画後の不
通過成分に含まれる血清由来成分のうち動物細胞の培養
に好ましい成分を指し、例えば血清アルブミン等が挙げ
られる。すなわち、前記の方法において分画分子量を7
0,000程度とした場合、血清中のアルブミン(血清
アルブミン)分子は通常69,000程度の分子量を有
するため、多孔性ポリマー膜をほとんど通過することが
できない。この分画による通過成分のみを培地用血清と
して添加して動物細胞の培養を行っても細胞は殆ど増殖
を行わず、数日後に死滅する。一方、該通過成分に牛血
清アルブミン(BSA)を通常の血清中の含有量と同等
量添加して培養を行った場合、細胞は通常に近い増殖を
行う。
【0021】なお、血清アルブミンには脂質の細胞内取
り込みを促進したり細胞内外の浸透圧調節を行うといっ
た作用を有することが知られており、これらの事実よ
り、本発明者らは血清アルブミンの存在が細胞の増殖・
生育に重大な作用を及ぼすと結論づけた。すなわち、動
物細胞の本培養においてはアルブミンは必須の成分であ
ると考えられる。従って、該通過成分に市販のBSA、
あるいは、Cohnらの方法に基づき、エタノール沈澱させ
て得たフラクションV(Fraction V; E.J.Cohnら,J.A
m.Chem.Soc.,68,459 (1946)) 等の血清アルブミンを適
量(好ましくは通常の血清中の含有量と同等量程度、血
清0.1リットル中2.3g)添加し、更に必要に応じ
てその他の血清由来成分を添加することにより、本発明
の動物細胞培地添加血清とすることができる。更に、該
血清に血清アルブミンの作用を増強させる目的でリノー
ル酸、オレイン酸等の脂肪酸を添加することも有効であ
る。また、血清アルブミンを添加する代わりにこれと同
様の作用を有する物質として知られるα−シクロデキス
トリンを添加することも可能である。更に、培地成分中
に、鉄成分を含有させればよくなり、更にトランスフェ
リンを添加することが最適である。
【0022】本発明の動物細胞培地添加血清を用いて培
養される動物細胞は特に制限されるものではなく、例え
ばHela細胞、CHO細胞、ナマルバ細胞等の組換え
体細胞、ハイブリドーマ細胞、昆虫細胞Bm−N、Sf
−9などが挙げられる。
【0023】なお、Hela細胞、CHO細胞(チャイ
ニーズハムスター卵巣細胞の組換え体細胞)等の接着依
存性細胞において増殖・生育に関連するものとして、E
CM(Extra Cellular Matrix) として各タイプコラーゲ
ン、ファイブロネクチン、ヴィトロネクチン等の接着因
子があるが、血清中に含有されるこれらの因子は分画分
子量が50,000程度の多孔性ポリマーによる分画に
よりその大部分は、不透過性成分へ分画される。従っ
て、接着依存性細胞の種類によっては本発明の動物細胞
培地添加血清を用いた培養において、接着がうまくいか
ない可能性がある。このような場合、不透過性成分へ分
画された因子を予め培養器材に塗布してレセプターを介
した接着をさせる方法、あるいはポリリジンを用いると
いった、細胞膜の物理化学的性質を利用した方法のいず
れかを用いればよい。また、細胞を順化させることも必
要な場合がある。すなわち、10%血清添加培地で継続
的に培養、継代してきた細胞をいきなり異なる成分を含
有する培地に換えてしまうと、増殖や物質生産が低下す
ることがある。このときには、必ず一定期間、例えば一
ヵ月程度、順次順化させる手順を踏まなければならな
い。
【0024】(2)第二の態様 第二の態様は、胎児性血清を用いるのに適した態様であ
る。多孔性ポリマーの膜またはフィルターの孔の大きさ
は分画を行なうことが好ましい血清成分の分子量の大き
さにより適宜決定されるが、従来技術の項で記載したよ
うに胎児性血清中に含まれる増殖因子のうち既知の因子
としては、インスリン(分子量5,100)、EGF
(分子量6,100)等の低分子量因子およびアルブミ
ン(分子量69,000)、トランスフェリン(分子量
75,000)等の高分子量因子が、また、これらの既
知因子以外に、動物細胞の増殖に影響を及ぼす未知因子
が含まれていると考えられる。本発明の第二の態様にお
いては、これらの因子を効率よく、好適な所望の比率で
培地に添加して培地を調製する方法を提供するものであ
る。
【0025】多孔性ポリマーの膜またはフィルターによ
り分画を行なう基準となる分子の大きさについては血清
中にもっとも多く含まれるアルブミン(分子量69,0
00)を目安とすればよく、通常3,000〜75,0
00程度であればよく、好ましくは、多孔性ポリマーの
分画分子量が細かすぎると、目詰まりを起こしやすく、
耐用分別量が減少するため、つまり多孔性ポリマーの耐
久性の点、及び使用済培地より回収する場合、分画を小
さくした方が回収効率が上昇するという効率性の点から
5,000〜30,000程度である。
【0026】例えば、分画分子量が10,000(70
%カット)の多孔性ポリマー膜を用いれば、通過成分と
不通過成分とに分ける操作を行うと、前者にはインスリ
ンやEGF等が、後者にはアルブミンやトランスフェリ
ン等が分別される。また、分画分子量を20,000
(90%カット)とし、同様の操作を行うと、円滑に濾
過した場合、少なくとも血清の体積比として、60%
(V/V)以上の通過成分が得られる。分画の回数は1
回以上行われ、好ましくは1〜3回程度である。
【0027】しかしながら、本発明において、このよう
な通過成分と不通過成分を添加する比率は、分画分子量
により異なるので一概にはいえるものではなく、適宜所
望の比率が選択される。例えば、分画分子量が10,0
00の場合と17,000の場合について述べると、そ
れの差による大きな変化はない。傾向として、通過成分
のみの添加では、細胞の増殖は著しく阻害される。一
方、不通過成分に通過成分を添加していくごとに、細胞
の増殖性及び物質生産性が良好となる。
【0028】また、もともとの血清に含有されている量
をそれぞれ1と考えると、通過成分が0.6〜1では、
不通過成分1の時に、同程度の増殖性、物質生産性を示
す。すなわち、通過成分の添加量が通常のままの血清に
含有されているときの60%程度で、100%と同等で
あるといえる。また、不通過成分0.8でも同等とな
る。
【0029】また、分画分子量が5,000のものを用
いた時には、上記傾向が益々強くなる。通過成分の添加
のみでは、細胞の形状が変化し、死亡する細胞がかなり
増加する。そして、不通過成分の占める割合が多くて
も、増殖性、物質生産性が通常の添加に近い値を示す。
すなわち、通過成分と不通過成分の比率が0.2:0.
8〜1程度の添加が適当である。
【0030】一方、分画分子量が30,000のものを
用いた時には、逆で、通過成分のみでも、細胞がある程
度の増殖性を示す。そして、不通過成分のみの添加では
増殖性が阻害される傾向がでてくるので、通過成分と不
通過成分の比率が0.8:0.8〜1程度の添加が最適
となる。
【0031】例えば、分画分子量が20,000(90
%カット)の、該多孔性ポリマー膜を用いて血清100
mlを1回以上の分画を行い通過成分と不通過成分とに
分画した場合で、培地量1000ml程度を作製する場
合、該通過成分と不通過成分の比率が12ml:32m
l〜60ml:40mlとなるように各成分を哺乳動物
細胞の培養を目的とする培地に添加すればよく、好まし
くは36ml:40ml程度の比率の添加である。比率
が該通過成分に偏っていると期待される増殖効果を有し
ないので好ましくない。また、添加する総量が全培地量
の12%(V/V)を越えるとその量に見合うだけの効
果が得られないので好ましくない。また、添加手段や血
清以外の培地成分の添加については特に制限されるもの
ではない。また、該通過成分と不通過成分の両成分をあ
わせた血清成分が、培地中にどの程度含まれるかについ
ては特に制限はなく、通常培地全量の1〜20%(V/
V)程度添加すればよく、好ましくは培地全量の5〜8
%(V/V)である。培地全量の2%(V/V)以下で
あると期待される増殖効果を有しないので好ましくな
い。また、10%(V/V)以上であるとその量に見合
うだけの効果が得られないので好ましくない。
【0032】本発明の動物細胞培地を用いて培養される
動物細胞は特に制限されるものではないが、例えばCH
O細胞(チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞)、ナマル
バ細胞、Hela細胞、BHK細胞(ベイビー・ハムス
ター・キッドニー細胞)の組換え体細胞、ハイブリドー
マ細胞、昆虫細胞Bm−N、Sf−9等である。
【0033】また、培養済みの培養液中には、細胞が生
育、増殖する過程において発生した乳酸やアンモニア等
の細胞老廃物が蓄積している。このような細胞老廃物は
細胞の生育および増殖を阻害する物質であるが、これら
の細胞老廃物は通常数十〜数百程度の分子量を有するの
で、分画分子量10,000程度のセルロースアセテー
ト膜またはフィルターを用いて、培養済みの培養液を通
過成分と不通過成分に分画すると、不通過成分中にはア
ルブミン等の分子量の大きな有効成分が残存する。しか
し、細胞老廃物は該膜(またはフィルター)を通過して
通過成分となる。従って、該老廃物を含有する該通過成
分は廃棄する必要があるが、該不通過成分は該老廃物を
含有しないので、回収して再利用することがが可能とな
る。即ち、本発明の調製方法は、培養済みの培養液から
回収されたアルブミン等を含む不通過成分と、これとは
別に前記のようにして哺乳動物由来の血清を、多孔性ポ
リマーの膜またはフィルターを用いて1回以上の分画を
行うことにより得られる通過成分とを、所望の比率で動
物細胞の培養を目的とする培地に添加することよりなる
調製方法をも含むものである。
【0034】次に、本発明の培養装置、すなわち前記第
一の態様および第二の態様に適した培養装置について、
図面を用いて説明する。 (1)第一の態様に適した培養装置 図1は本発明の動物培地添加血清を調製する手段を有す
る培養装置の概略構成図である。即ち、本発明の培養装
置は、動物由来血清を、多孔性ポリマーの膜またはフィ
ルターを用いて1回以上の分画を行い通過成分と不通過
成分とに分画する手段、および該手段により得られる該
通過成分に少なくとも1種以上の該通過成分より大きな
分子量をもつ該血清由来の培養必要成分を添加する手段
とを備えたものである。培養装置は全体として無菌的に
構成されており、外部からの雑菌等によるコンタミネー
ションの恐れのない設計となっている。
【0035】血清分画用容器1内に取り付ける多孔性ポ
リマー膜(またはフィルター)2は平板式あるいは中空
糸式のいずれの形状であっても構わない。血清9は成分
無調製の非胎児性血清であり、エアーフィルターを用い
て移送され血清分画用容器1で分画される。分画後の通
過成分は、血清調製容器3に送られる。一方、非通過成
分は廃液ビン4に送られる。添加ビン5より血清アルブ
ミンを血清調製容器3に添加する。この時、血清調製容
器3内の血清アルブミン量が通常の血清中と同等量とな
るように調製すると、より好ましい。さらに、添加ビン
6よりリノール酸等を血清調製容器3に適宜添加するこ
とが可能である。血清調製容器3内に調製された動物細
胞培地添加血清はポンプ7により必要量が、血清以外の
培地成分および培養する細胞が予め用意された培養器8
に移送され、培養器内に設けた攪拌羽根により攪拌され
て培養が開始される。なお、ポンプ7の代わりにエアー
フィルターを通して圧力により血清調製容器3から培養
器8へ調製後の血清の移送を行うことも可能である。
【0036】更に、複数種の多孔性ポリマーを多次元的
に用いることにより効率的に分画を行うことも可能であ
る。この場合の装置例を図2に示す。血清分画用容器1
a,1b,1c内に各々分画分子量約100,000、
約70,000、約30,000である多孔性ポリマー
膜(またはフィルター)2a,2b,2cが取り付けら
れている。各多孔性ポリマー膜の取り付けは平板式ある
いは中空糸式のいずれの形状であっても構わない。血清
9aは成分無調製の非胎児性血清であり、エアーフィル
ターを用いて移送され、順次、血清分画用容器1a,1
bおよび1c内で多次元的に分画される。血清分画用容
器1cで分画後の通過成分は、血清調製容器3に送られ
る。血清分画用容器1a,1cで分画後の非通過成分は
廃液ビン4a,4bに送られる。一方、血清分画用容器
1bで分画後の非通過成分は約70,000以上約10
0,000未満の分子量を有する画分であり、血清アル
ブミン等の培養必須成分を含有するので、血清調製容器
3に接続した開閉可能なロックを有する輸送ラインを設
けることにより適宜添加することが可能である。
【0037】さらに、添加ビン5より血清アルブミンを
血清調製容器3に添加する。この時、血清調製容器3内
の血清アルブミン量が通常の血清中と同等量となるよう
に調製すると、より好ましい。さらに、添加ビン6より
リノール酸等を血清調製容器3に適宜添加することが可
能である。血清調製容器3内に調製された哺乳動物培地
用血清はポンプ7により必要量が、血清以外の培地成分
および培養する細胞が予め用意された培養器8に移送さ
れ、培養器内に設けた攪拌羽根により攪拌されて培養が
開始される。なお、ポンプ7の代わりにエアーフィルタ
ーを通して空気圧力により血清調製容器3から培養器8
へ調製後の血清の移送を行うことも可能である。
【0038】(2)第二の態様に適した培養装置 培養器として通常の培養器(例えば、タンク型培養器)
を用いる場合、培養器に多孔性ポリマー膜(またはフィ
ルター)を敷設し、血清を通過成分と不通過成分とに分
画する手段と、該手段により得られる通過成分と不通過
成分を所望の比率で培地に添加する手段を設ければ本発
明の培養装置とすることができる。
【0039】図3は哺乳動物由来の血清を分画する手段
と添加手段が敷設された、本発明の培養装置の概略構成
図である。培養装置は全体として無菌的に構成されてお
り、外部からの雑菌等によるコンタミネーションの恐れ
のない設計となっている。血清分画用容器21内に取り
付ける多孔性ポリマー膜(またはフィルター)22は平
板型あるいは中空子型のいずれの形状であっても構わな
い。図3には中空子型のものを、図4には平板型のもの
を例示する。図5は中空子型多孔性ポリマー膜を有する
血清分画用容器の横断面図である。血清29は成分無調
製の胎児性血清であり、ペリスタリックポンプを用いる
か、あるいは、エアーフィルターを通して空気圧をかけ
るかにより、移送され血清分画用容器21内で分画され
る。このときの分画分子量の大きさは、前記のように多
孔性ポリマーの耐久性及び回収時の効率性の点から5,
000〜30,000程度が好ましい。
【0040】分画後の通過成分23は、培養器25に接
続するラインを通じて培養器25内に適量が添加され
る。一方、不通過成分24は通過成分:不通過成分が
3:5程度(V/V)となるように、培養器25に接続
するラインを通じて培養器25内に添加される。培養器
25は攪拌羽根26を有し、攪拌羽根26が回転するこ
とにより培養器内の成分が均一となるように攪拌され
る。
【0041】(2)第二の態様に適した培養装置 次に、培養器としてホローファイバー型の培養器を用い
る場合について図6を用いて説明する。ホローファイバ
ー型の培養器を用いる(ホローファイバー培養法)場
合、ホローファイバーの中空部分であるICS27に循
環させる培地に加える血清を、市販のまま用いるのでは
なく、培養装置には前記のように、分画分子量5,00
0〜30,000程度の多孔性ポリマー膜(またはフィ
ルター)を用いて予め分画するための設備を敷設し、通
過成分23のみを培養器のICS27に添加する手段を
設ければ、該成分はホローファイバーに用いる膜を通過
して有効にECS28、すなわち細胞生育空間に供給さ
れるようになる。この時に、予め分画を行う際の多孔性
ポリマー膜と、ホローファイバーに用いる膜が同一の多
孔性ポリマーであることが最も好ましい。
【0042】また、分画して得られる不通過成分24の
適量を直接ECS28に添加する手段を設けることによ
り、不通過成分24中のアルブミンやトランスフェリン
等が細胞に供給されるので血清が無駄なく使用される。
この場合、通過成分23と不通過成分24を供給する比
率が通常10:1(V/V)となるよう適宜調整され
る。このようにすることにより、従来に比べて血清の使
用量の少量化が実施できる。また、従来より問題となっ
ている、ホローファイバー等の膜を用いる培養器におい
て、蛋白成分等の不通過成分による膜孔の目詰まりを防
止して、ECSとICSの交換を滞りなく行い、スムー
ズに培養を行なうことが可能となる。
【0043】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説
明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定
されるものではない。 実施例1 非胎児性牛血清を原料とした動物細胞培地添加血清の調
製 図1にその概略構成図が示される、動物細胞培地添加血
清を調製する手段を有する培養装置を用いて動物細胞培
地添加血清の調製を行った。培養装置は全体として無菌
的に構成されており、外部からの雑菌等によるコンタミ
ネーションの恐れのない設計となっている。血清分画用
容器1内に、分画分子量20,000(90%カット)
程度の濾過膜となるように、(孔径14nm程度)を有
するセルロースアセテート製の多孔性ポリマー膜(また
はフィルター)2を平板式に取り付けた。
【0044】血清9は成分無調製の牛由来の非胎児性血
清である。500mlの血清9を、エアーフィルターを
用いて血清分画用容器1に移送し、分画した。通過成分
は300ml、不通過成分は200mlに分別した。分
画後の通過成分を、20%ポリアクリルアミドゲルNa
tiveによる電気泳動により分析し、分子量150,
000付近のバンドをデンシトメトリカリーに測定した
ところ、10分の1以下に減少していた。分画後の通過
成分400mlを、血清調製容器3に移送した。一方、
非通過成分は廃液ビン4に送った。添加ビン5より血清
アルブミンを23g/lの濃度となるように血清調製容
器3に添加する。この時、添加したアルブミン量は通常
の血清中と同等量とした。さらに、添加ビン6よりリノ
ール酸を血清調製容器3に添加することにより、血清調
製容器3内に動物細胞培地添加血清約400mlが調製
された。
【0045】実施例2 マウス−マウスハイブリドーマ細胞の培養 前記動物細胞培地添加血清を用いて、抗ヒトIgGFc
モノクローナル抗体を得るために図1の培養装置を用
い、下記のようにマウス・マウスハイブリドーマ細胞の
培養を行った。実施例1により、血清調製容器3内に調
整された動物細胞培地添加血清(BSAが2.3g/l
の濃度で添加されている)を、10%(V/V)となる
ようにDMEM培地に加えて、マウス・マウスハイブリ
ドーマ細胞培養に供した。ハイブリドーマ細胞を5.0
×108 個、培養器5(3700ml容量のタンク培養
器)に播種し、攪拌しながら、37℃、pH6.4〜
7.2で35日間培養した。培養中の細胞密度は3.8
×106 個細胞/ml程度で維持し、35日間の連続培
養で総量として、780mgの抗ヒトIgGFc抗体が
得られた。用いた培地量は、総量で85リットルであ
り、該血清を8.5リットル使用した。この時の血清コ
ストは1/5に低下した。また得られた抗ヒトIgGF
c抗体は、アフィニティークロマトグラフィーにより精
製したところ、容易に精製でき、評品の純度は95%以
上と非常に高いものであった。
【0046】一方、用いた牛血清由来のIgGを7.5
%ポリアクリルアミドゲルを用いてNative電気泳
動し、その後、ニトロセルロースメンブレンに転写し
て、パーオキシダーゼを結合した抗牛IgG抗体を用い
てウエスタンブロットしたところ、殆ど牛血清由来のI
gGは検出されなかった。また、本抗牛IgG抗体はマ
ウスIgG抗体と交差しなかった。なお、一連の電気泳
動による分析は、銀染色法を用いて定量的に行った。な
お、培養後の培養器内においてマイコプラズマ等のコン
タミネーションは検出されなかった。
【0047】実施例3 胎児性牛血清を添加した動物細胞培地の調製 図3に示される概略構成図よりなる、本発明の培養装置
を用いて動物細胞培地の調製を行った。培養装置は全体
として無菌的に構成されており、外部からの雑菌等によ
るコンタミネーションの恐れのない設計となっている。
血清分画用容器21内に、分画分子量17,000程度
(70%カット)のセルロースアセテート製の多孔性ポ
リマー膜(またはフィルター)22を中空子型に取り付
けた。血清29は成分無調製の市販の牛由来の胎児性血
清である。500mlのこの血清29を、エアーフィル
ターを通して圧力により血清分画用容器21に移送し分
画した。300mlの分画後の通過成分23を、ポリア
クリルアミド20%ゲルによるNative電気泳動に
より分析したところ、分画分子量20,000以上の分
子のほとんどが除去されていた。目安として、分子量6
9,000のアルブミンをデンシトメトリカリーにより
測定したところ、通常のままの血清に含まれる量の60
分の1に減少していた。
【0048】一方、200mlの不通過成分24を、ポ
リアクリルアミド12.5%ゲルによるNative電
気泳動により分析したところ、インスリン、EGF付近
のバンドが、通常のままの血清で検出される量の10分
の1以下であった。300mlの分画後の通過成分23
および200mlの不通過成分24を培養器25に接続
するラインを通じて、血清以外の培地としてDMEM培
地が既に入った3700mlのタンク25に移送し、適
量ずつ添加した。培養器25内の攪拌羽根26を回転さ
せることにより培養器内の成分が均一となるように攪拌
した。なお一連の電気泳動による分析は銀染色を行うこ
とにより定量的に測定した。
【0049】実施例4 マウス−マウスハイブリドーマ細胞の培養 前記動物細胞培地を用いて、抗ヒトIgGFcモノクロ
ーナル抗体を得るために図3の培養装置を用い、下記の
ようにマウス−マウスハイブリドーマ細胞の培養を行っ
た。実施例3により、培養器25内に調製された培地成
分にマウス−マウスハイブリドーマ細胞5.0×108
個細胞を播種し、培養器内に設けた攪拌羽根により攪拌
しながら37℃、pH6.5〜7.1、30日間の連続
培養を行った。培養中の細胞密度は4.0×106 個細
胞/mlで維持した。その結果、抗IgGFc抗体75
0mgが総量で生産された。抗IgGFc抗体は、アフ
ィニティークロマトグラフィーという通常の精製方法に
より容易に精製された。精製品の純度は95%以上と非
常に高いものであった。なお、培養後の培養器内でコン
タミネーションはみられなかった。
【0050】
【発明の効果】本発明の方法を用いることにより、血清
中の通過成分と不通過成分を効率よく利用することがで
き、効率性の高い培養コストが低減された動物細胞の培
養を行うことが可能となった。また、培養器としてホロ
ーファイバー型培養器を用いる場合、予め分画された血
清を用いるので、不通過成分による膜孔の目詰まりの問
題が生じることなく培養を行なうことができる。更に、
本発明においては多孔性ポリマーにより血清を分画する
ことにより、ウィルスやマイコプラズマ等の培地への混
入によるコンタミネーションを防ぐことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の動物細胞培地添加血清を調製
する手段を有する培養装置の概略構成図である。
【図2】図2は、複数種の多孔性ポリマーを多次元的に
用いた、本発明の哺乳動物細胞培地添加血清を調製する
手段を有する培養装置の概略構成図である。
【図3】図3は、血清分画用容器として中空子型多孔性
ポリマー膜を用い、培養器としてタンク型培養器を用い
た本発明の培養装置の概略構成図である。
【図4】図4は、本発明の培養装置において用いる平板
型血清分画用容器の概略構成図である。
【図5】図5は、図3に示す培養装置において用いる中
空子型多孔性ポリマー膜を有する血清分画用容器部分の
横断面図である。
【図6】図6は、本発明の培養装置において用いるホロ
ーファイバー型培養器の縦断面図である。
【符号の説明】
1 血清分画用容器 1a 血清分画用容器 1b 血清分画用容器 1c 血清分画用容器 2 多孔性ポリマー膜 2a 多孔性ポリマー膜 2b 多孔性ポリマー膜 2c 多孔性ポリマー膜 3 血清調製容器 4a 廃液ビン 4b 廃液ビン 5 添加ビン 6 添加ビン 7 ポンプ 8 培養器 9 血清 9a 血清 9b 血清 9c 血清 9d 血清 10 エアーフィルター 21 血清分画用容器 22 多孔性ポリマー膜 23 通過成分 24 不通過成分 25 培養器 26 攪拌羽根 27 ICS 28 ECS 29 血清

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの
    膜またはフィルターを用いて1回以上の分画を行い通過
    成分と不通過成分とに分画し、該通過成分に少なくとも
    1種以上の該通過成分より大きな分子量を持つ培養必要
    成分を添加することを特徴とする、動物細胞培地添加血
    清の調製方法。
  2. 【請求項2】 哺乳動物由来血清が、非胎児性血清であ
    る請求項1記載の調製方法。
  3. 【請求項3】 添加する培養必要成分がアルブミンを含
    有するものである請求項1記載の調製方法。
  4. 【請求項4】 多孔性ポリマーの膜またはフィルターの
    分画分子量が3,000〜60,000の間である請求
    項1記載の調製方法。
  5. 【請求項5】 哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの
    膜またはフィルターを用いて1回以上の分画を行い通過
    成分と不通過成分とに分画し、該通過成分と不通過成分
    を所望の比率で動物細胞の培養を目的とする培地に添加
    することを特徴とする、動物細胞培地の調製方法。
  6. 【請求項6】 多孔性ポリマーの膜またはフィルターの
    分画分子量が3,000〜75,000である請求項5
    記載の調製方法。
  7. 【請求項7】 以下の成分を所望の比率で動物細胞の培
    養を目的とする培地に添加することからなる、哺乳動物
    細胞培地の調製方法。 イ)培養済みの培養液を多孔性ポリマーの膜またはフィ
    ルターを用いて通過成分と不通過成分に分画して得られ
    る、該不通過成分、 ロ)哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの膜またはフ
    ィルターを用いて1回以上の分画を行い通過成分と不通
    過成分とに分画して得られる、該通過成分、該不通過成
    分またはその両成分、
  8. 【請求項8】 哺乳動物由来血清が、胎児性血清である
    請求項5、6、又は7記載の調製方法。
  9. 【請求項9】 哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマーの
    膜またはフィルターを用いて1回以上の分画を行い通過
    成分と不通過成分とに分画し、該通過成分に少なくとも
    1種以上の該通過成分より大きな分子量を持つ培養必要
    成分を添加して得られることを特徴とする動物細胞培地
    添加血清。
  10. 【請求項10】 哺乳動物由来血清が、非胎児性血清で
    ある請求項9記載の血清。
  11. 【請求項11】 哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマー
    の膜またはフィルターを用いて1回以上の分画を行い通
    過成分と不通過成分とに分画する手段、および該手段に
    より得られる該通過成分に少なくとも1種以上の該通過
    成分より大きな分子量をもつ培養必要成分を添加する手
    段とを備えた、または接続した培養装置。
  12. 【請求項12】 哺乳動物由来血清を、多孔性ポリマー
    の膜またはフィルターを用いて1回以上の分画を行い通
    過成分と不通過成分とに分画する手段および/または該
    手段により得られる該通過成分と不通過成分を所望の比
    率で動物細胞の培養を目的とする培地に添加する手段を
    備えた、または接続した培養装置。
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