JPH0565949U - 複合ロール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】ＦＲＰ製内筒と金属製シェルとの密着性の低下
を防止でき、長期にわたって安定して使用できる複合ロ
ールを得る。 【構成】表面に凹部を有するＦＲＰ製内筒に金属製シェ
ルを被せ、シェルを絞り加工すると、凹部にシェルが絞
り込まれ、内筒とシェルとが機械的に結合された複合ロ
ールが得られる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、合成樹脂フィルム、布帛、紙、金属箔等の製造装置や、印刷装置 等において好ましく使用することができる、繊維強化プラスチック（ＦＲＰ）と 金属との複合ロールに関する。

【０００２】

【従来の技術】

たとえば、合成樹脂フィルムの製造工程においては、軽量で慣性が小さくて追 従性に優れ、表面が平滑でフィルムを傷付けるようなことがなく、耐摩耗性に優 れていて長期にわたって安定して使用できるロールを必要とする。

【０００３】 そのようなロールは、従来、ほとんど、ステンレス鋼やアルミニウム合金等の 金属で作られている。金属は、平滑に加工しやすく、しかも、耐摩耗性に優れて いるからである。しかしながら、そのような金属製のロールは、重量が大きく、 慣性が大きいために追従性がよくないという問題がある。また、やはり重量が大 きいために交換作業等がやっかいであるという問題もある。そこで、近年、より 軽量な、ＦＲＰを主体とするロールが検討されるようになってきた。

【０００４】 そのような、ＦＲＰを主体とするロールは、たとえば、特公昭５９−４５８４ ３号公報や実開昭６３−６９８１２号公報、実開昭６３−１０１３２４号公報、 特願平２−８８０８７号明細書に、ＦＲＰ製内筒に金属製シェルを被せてなる複 合ロールが記載されている。これらの複合ロールは、いずれも、必要とする強度 や剛性といった力学的特性の大部分をＦＲＰ製内筒に受け持たせて軽量化を図る とともに、表面を金属とすることで金属製ロールの特長をも合わせて引き出そう というもので、ＦＲＰ製内筒に、金属製シェルを、圧入によって、あるいは、電 磁加工法による絞り加工によって被せている。ところが、このような従来のロー ルは、ＦＲＰと金属とは熱的性質が大きく異なるために膨脹、収縮を繰り返すう ちにＦＲＰ製内筒と金属製シェルとの密着性が低下してきて、著しい場合には滑 りを生ずるようになるという問題がある。また、ＦＲＰ製内筒と金属製シェルと では応力緩和の程度に差があるために、常温下での使用であっても、長期間使用 しているとやはり密着性が低下してくる。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

この考案の目的は、従来の複合ロールの上述した問題点を解決し、ＦＲＰ製内 筒と金属製シェルとの密着性の低下を防止することができ、長期にわたって安定 して使用することができる複合ロールを提供するにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために、この考案は、繊維強化プラスチック製内筒に金属 製シェルを被せてなる本体と、この本体の各端部に装着されたヘッダとを有し、 上記内筒は表面に凹部を有し、その凹部に上記シェルが絞り込まれていることを 特徴とする複合ロールを提供する。合わせて、内筒とシェルとが接着されていて もよい。また、上記凹部は、内筒の軸方向および／または周方向に延びる溝とし て形成されていてよく、また、ローレット加工によって形成されていてもよい。 この考案の複合ロールは、ロールとして必要な曲げ強度や曲げ剛性、圧縮強度 等の力学的特性のほとんどを受け持つＦＲＰ製内筒と、上述した金属製ロールと しての特長を発現させる金属製シェルとを含むロール本体を有している。

【０００７】 内筒は、上述したようにＦＲＰからなっている。ＦＲＰにおける強化繊維とし ては、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等の高強度、高弾性率繊維を使用す ることができる。炭素繊維が最も好ましいが、これとガラス繊維やアラミド繊維 等の他の強化繊維とを併用してもよい。また、マトリクス樹脂としては、エポキ シ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を使用することができる。

【０００８】 ＦＲＰ製内筒は、長手方向に対して±０〜３０゜の角度で配列された強化繊維 を含んでいるか、長手方向に対して±０〜１５゜の角度で配列された強化繊維と 、長手方向に対して±８０〜９０゜の角度で配列された強化繊維とを含んでいる のが好ましい。このような強化繊維の配列により、内筒、ひいては複合ロールの 曲げ強度や曲げ剛性、圧縮強度等の力学的特性が大きく向上する。強化繊維量は 、複合ロールの長さや直径、用途等によって異なるものの、４５〜７０体積％程 度がよい。なお、強化繊維として炭素繊維を使用すると、内筒が導電性を呈する ようになり、金属製シェルとの間の電食が問題になることがある。そのような場 合には、内筒とシェルとの間に、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維 等の非導電性繊維を使用したＦＲＰ層や合成樹脂層を介在させて両者を電気的に 絶縁する。内筒とシェルとを接着する場合には、接着剤にその作用をもたせても よい。

【０００９】 内筒は、複合ロールの長さや直径、用途等によって異なるものの、２〜１０mm ほどの厚みを有する。そして、表面には、成形時か、成形後の切削加工等によっ て形成された凹部を有する。凹部は、内筒の軸方向か、ら旋状を含む周方向か、 軸方向と周方向の双方に延びる、幅が０．５〜３mm、深さが０．３〜２mmほどの 溝であってよい。また、ローレット加工によって形成されたローレット模様であ ってもよい。この凹部には、後述するように金属製シェルが絞り込まれる。

【００１０】 上述したようなＦＲＰ製内筒は、ＦＲＰの成形法として周知のフィラメントワ インディング法や、プリプレグによるシートラッピング法等によって容易に成形 することができる。

【００１１】 一方、シェルは、ステンレス鋼やアルミニウム合金、銅等の金属からなってい る。この金属製シェルは、主として複合ロールに金属製ロールとしての特長を与 える。複合ロールの力学的物性は、上述したようにＦＲＰ製内筒が主として受け 持つので、シェルは薄くてよい。材質等によって異なるものの、０．２〜３mm程 度でよい。

【００１２】 ヘッダとしては、通常、アルミニウム合金や炭素鋼、鉄−クロム合金、ステン レス鋼等からなる金属製のものを使用する。複合ロールとしての回転軸と一体の ものでもあってもよいし、別体のものであってもよい。そして、このヘッダは、 内筒とシェルとで構成されるロール本体の各端部に嵌着して装着される。このと き、通常、接着剤を併用する。

【００１３】 さて、ＦＲＰ製内筒に金属製シェルを被せ、絞り加工すると、シェルが内筒に 密着する。このとき、合成樹脂系等の接着剤を併用してもよい。

【００１４】 絞り加工は、電磁加工法によるのがよい。この方法は、被加工物を取りまくよ うに電磁コイルを配置し、電磁コイルに電流を瞬間的に流して強力な磁場を作り 、そのとき被加工物に誘起される渦電流による反発磁場を利用して被加工物を変 形させるもので、ＦＲＰ製内筒に金属製シェルを被せた後、シェルの外側に電磁 コイルを配置し、電磁コイルに電流を流して磁場を作り、シェルに誘起される渦 電流による反発磁場を利用してシェルを内筒側に変形させ、内筒を締め付けるよ うに密着させる。このとき、シェルは、内筒の凹部においては、その凹部に嵌り 込むように絞り込まれる。これにより、シェルが内筒に機械的に結合される。な お、この加工に際しては、絞り込みが順次に行われるよう、内筒とシェルとを、 たとえば一端部から他端部に向かって間歇的に移動させる。内筒とシェルを固定 し、電磁コイルを間歇的に移動させてもよい。また、ヘッダは、加工前に内筒に 装着しておくことでもよいし、加工後のロール本体に装着することであってもよ い。

【００１５】 ＦＲＰ製内筒に金属製シェルを密着させた後は、旋盤等を使用して絞り加工時 にできたシェル表面の凹凸を修正し、さらに研磨加工する。すなわち、仕上加工 を施して複合ロールとする。必要に応じて、硬質クロムメッキ等の表面処理を施 してもよい。

【００１６】

【実施態様】

図１、図２において、ロール本体１は、ＦＲＰ製内筒２と、この内筒２に被せ られた金属製シェル３とを有し、端部には、金属製ヘッダ４、４が装着されてい る。内筒２は、その表面に軸方向に延びる２本の溝５、５を有し、この溝５、５ にシェル３が絞り込まれている。

【００１７】

【実施例】

東レ株式会社製炭素繊維糸“トレカ”Ｍ４０糸とエポキシ樹脂とを使用し、フ ィラメントワインディング法によって、内径９５mm、外径１０５mmのＦＲＰ製内 筒を得た。層構成は、内層を±９０゜のフープ巻層（厚み：２mm）とし、外層を ±１０゜のヘリカル巻層（厚み：４mm）とした。なお、この内筒における炭素繊 維の含有率は、６５体積％であった。

【００１８】 次に、上記内筒を外径が１０４mmになるように切削、研磨加工した後、砥石を 使用して、軸方向に延びる、幅２mm、深さ０．５mmの溝を図２に示すように周方 向において対称的に２か所形成した。

【００１９】 次に、上記内筒に、シェルとなる、内径１０４．５mm、外径１０６．５mmのア ルミニウム合金製の筒を被せ、電磁加工法による絞り加工を施してロール本体を 得た。

【００２０】 次に、研削、研磨加工によって絞り加工時にできたシェル表面の凹凸をなくし た後、ロール本体の両端部に金属製ヘッダを装着し、この考案の複合ロールを得 た。

【００２１】 上記複合ロールについて、ねじり試験機を使用し、内筒とシェルとが滑り始め るときのトルクを測定したが、１００kgm のトルクでも滑ることはなかった。こ の値は、５００時間放置した後においても変わらなかった。

【００２２】

【考案の効果】

この考案の複合ロールは、ＦＲＰ製内筒の表面の凹部に金属製シェルが絞り込 まれ、両者が機械的に結合されているから、両者の密着性の低下を防止すること ができ、長期にわたって安定して使用することができる。もちろん、ＦＲＰを主 体とするロールであるから、長尺、大径であっても軽く、扱いやすいばかりか、 慣性が小さいので追従性にも優れている。また、表面は金属であるから、平滑で 耐摩耗性等にも優れるという金属製ロールの特長はそのまま具有している。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の一実施態様に係る複合ロールを示す
概略一部断面正面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ断面図である。

【符号の説明】

１：ロール本体 ２：繊維強化プラスチック製内筒 ３：金属製シェル ４：ヘッダ ５：内筒の表面に形成した凹部

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】繊維強化プラスチック製内筒に金属製シェ
   ルを被せてなる本体と、この本体の各端部に装着された
   ヘッダとを有し、上記内筒は表面に凹部を有し、その凹
   部に上記シェルが絞り込まれていることを特徴とする複
   合ロール。
2. 【請求項２】内筒とシェルとが接着されている、請求項
   １の複合ロール。
3. 【請求項３】凹部が内筒の軸方向および／または周方向
   に延びる溝である、請求項１または２の複合ロール。
4. 【請求項４】凹部がローレット加工によって形成されて
   いる、請求項１または２の複合ロール。