JPH0556127U - 歯科用患者椅子 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 背もたれの運動軌道を患者の生理的実状に一
層良好に適合させることができる歯科用患者椅子を提供
する。 【構成】 背もたれ支持体（差し込み板）２５及び座部
３５がそれぞれ曲線軌道４２、４３を備え、これらの軌
道に対応する案内装置３７、４１が付設され、それによ
り背もたれ支持体が背もたれの後ろ向き傾動の際に座部
３５の下方へもぐり込むことができ、また前向き傾動の
際に座部３５から再び抜け出ることができ、更に座部３
５と背もたれ支持体２５の両曲線軌道４２、４３の湾曲
形状は、背もたれ２の傾動の際の瞬間中心Ｍ_P が一定で
なく、望ましくは螺旋形に開き背もたれの傾動と両方向
へ延びる曲線の一部上を移動するように構成される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、傾動可能な背もたれを備える歯科用患者椅子に関する。

【０００２】

【従来の技術】

背もたれ支持体により座部のそばに傾動可能にかつ座部へ向かって又は座部か ら遠ざかるように調節可能に配置された背もたれを備える歯科用患者椅子は、例 えばドイツ連邦共和国特許第2118614 号又は同第1248860 号明細書から知られて いる。背もたれの傾動の際の回転中心を患者椅子に座っている患者の頸椎の範囲 に置くことが種々の手段によりしばしばこれまで試みられたが、従来提案された 構造は、特に公知の椅子の場合に設けられる固定の機械的な回転中心が一般に円 運動を実行し、それゆえに患者の上体の運動機能に近似的に追従するにすぎない ゆえに、期待される成果をもたらさなかった。

【０００３】 それゆえに公知の患者椅子の場合には、依然として必然的に患者背部と背もた れ又は頭部とヘッドレストの間の移動を招く。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

この考案の課題は、上記欠点を改善し、背もたれの運動軌道を患者の生理的実 状に一層良好に適合させることができる歯科用患者椅子を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

この課題はこの考案に基づき、背もたれ支持体及び座部がそれぞれ曲線軌道を 備え、これらの軌道に対応する案内装置が付設され、それにより背もたれ支持体 が背もたれの後ろ向き傾動の際に座部の下方へもぐり込むことができ、また前向 き傾動の際に座部から再び抜け出ることができ、更に座部及び背もたれ支持体の 両曲線軌道の湾曲形状は、背もたれの傾動の際の瞬間中心が一定でなく、むしろ 望ましくは螺旋形に開き背もたれの傾動と同方向へ延びる曲線の一部上を移動す るように構成されることにより解決される。

【０００６】

【作用効果】

この考案は、患者頭部が背もたれの傾動の際に正確な円軌道を描かず、むしろ 運動経過が脊椎の運動と頸椎の運動との複合運動を示すという考察に基づいてい る。それゆえに背もたれ及び座部はこの考案に基づき、一定ではなく変化する回 転中心（動的な回転中心）が生じるように相互に調節される。以下で瞬間中心と 呼ぶこの変化する回転中心は、望ましくはほどけていく螺旋形のひずんだ円軌道 に相応する曲線上を移動する。この移動曲線は脊椎特に腰関節の伸展運動に相応 し、それにより患者の背部の自然の運動への最適な適合が達成される。

【０００７】 両曲線軌道の湾曲形状は異なる半径を備え相互に移行する円軌道により決定さ れるのが有利であり、その際背もたれと反対側の円軌道の半径が背もたれに向か う側の円軌道の半径より著しく大きい。この平坦化により背もたれを起こす場合 にヘッドレスト方向への背もたれの比較的大きい移動が得られる。

【０００８】 曲率半径の比が背もたれ支持体の曲線軌道の場合には約１：２であり、座部の 曲線軌道の場合には約１：１．５であるのが有利である。

【０００９】

【実施例】

次にこの考案に基づく歯科用患者椅子の一実施例を示す図面により、この考案 を詳細に説明する。

【００１０】 図１は、歯科用患者椅子を側面図で示す。座部１、背もたれ２及びヘッドレス ト３から成る椅子上部は、設置面（床）５に支えられ全体を符号４で示された調 節機構により支持される。調節機構４は、椅子上部を矢印６に応じて高さ方向へ 調節し、背もたれを矢印７に応じて傾け、椅子上部全体を矢印８に応じて長手方 向へ移動できるように構成されている。調節機構４はこのために二つのリンクア ーム９、１０から成り、リンクアーム９、１０は継手個所１１で相互にピン結合 され、それらの自由端部は一方では継手個所１２を介して座部１の剛性の付加部 １３とピン結合され、また他方では継手個所１４で設置面５上に固定された台座 １５とピン結合されている。三つの調節駆動装置１６、１７、１８により、椅子 上部全体を高さ方向にかつ長手方向に調節可能に動かすことができるように両リ ンクアーム９、１０を調節することができる。矢印７に相応する背もたれの傾動 は後に詳述するように別の調節駆動装置１９により達成される。調節駆動装置１ ６〜１９はねじ軸駆動装置とするのが有利であり、その電動機Ｍ１〜Ｍ４はブロ ック線図により図２に略示されたように制御装置２０により駆動される。駆動は 公知の方法で例えば椅子背もたれ２に配置されたキーボード２４にまとめられた 個別キー２１〜２３によるか、又は同様に背もたれに設けることができるプログ ラム選択キーＰ１〜Ｐ３により行うことができる。椅子下部の構成はリンクアー ム９、１０及び調節駆動装置１６〜１８に関する限りではこの考案にとって重要 でないので、この機構の詳細な説明は省略する。これについては欧州特許第0373 245 号明細書を参照されたい。矢印６、８の方向への座部の調和した運動を得る ためには調節電動機Ｍ１〜Ｍ３の正確な制御が必要である。このために制御装置 ２０はマイクロプロセッサを備え、このマイクロプロセッサは位置センサＧ１〜 Ｇ４を介して当該椅子部分のそれぞれの位置についての相応の情報を入手し、ま たマイクロプロセッサはこれらの情報に従い調節電動機Ｍ１〜Ｍ４を所望の位置 に応じて駆動する。センサＧ１〜Ｇ４は電気式、光学式又はオプトエレクトロニ クス式とすることができ、駆動装置自体のそばか又は駆動装置と結合された椅子 部分のそばに配置することができる。

【００１１】 背もたれ２は、一方では矢印の方向へ前後へ傾き他方では傾動の際に座部へ向 かうか又はこれから遠ざかる運動を実行するように、湾曲した差し込み板２５の 形の背もたれ支持体により座部１と結合されている。このために必要な調節機構 の詳細を説明する前に背もたれ２の構造を詳細に説明する。

【００１２】 背もたれ２及びヘッドレスト３を背もたれクッションを取り外して正面図従っ て平面図で示す図３から分かるように、ヘッドレスト３は背もたれ２に対して長 手方向へ移動可能に保持されたヘッドレスト支持体２６に配置されている。この ために背もたれ２は少なくともヘッドレスト支持体２６の下部が適合し上向きに 開いた空所２７を備える。空所２７の両側には背もたれ２に沿って案内棒２８が 配置され、ヘッドレスト支持体２６に取り付けられた案内ブッシュ２９が案内棒 ２８上を滑る。ヘッドレスト３の長手方向調節のために背もたれ２中に保持され た歯車付き電動機３０が用いられる。電動機３０は案内ブッシュ２９に取り付け られた歯付ベルト３１を駆動する。歯付ベルト３１により同時に位置センサ３２ が駆動される。位置センサ３２により背もたれ２に関するヘッドレスト支持体２ ６の正確な位置を検出又は設定することができる。差し込み板２５の背もたれ側 の端部は背もたれ２の下端部に強固に取り付けられ、また他方の端部は図４によ り後述するように案内軌道中を滑る。

【００１３】 図４は、クッション及び上張り部品を取り外して斜め上から座部１の一部を斜 視図で示す。ダイカストから加工されるのが有利である剛性の座部枠３５は、既 に図１で説明した側方の突出部１３を両側に備え、突出部１３はリンクアーム９ のための継手ピン１２を収容する。更に座部枠３５は両側に配置されリンク溝３ ６の形を有する案内軌道を備え、リンク溝３６中には差し込み板２５の下端部に 軸受支持されたローラ３７が走行する。差し込み板２５はこのためにフォーク状 に分岐したアーム３８を有する。両アーム３８の間にはねじ軸３９の一方の端部 がピン結合され、調節駆動部１９を備える他方の端部が座部枠３５のフランジ４ ０にピン結合されている。ねじ軸駆動装置により差し込み板従ってこの板に取り 付けられた背もたれを座部の方へ向かって又はこれから遠ざかるように動かすこ とができる。差し込み板２５は更に座部枠３５の両側に配置された別の案内ロー ラ４１の間を導かれている。差し込み板２５の符号４２で示された湾曲部並びに 両側のリンク溝３６及び案内ローラ４０での差し込み板２５の案内は、椅子に座 っている患者に対して背もたれの傾動の際に、それが背もたれの前向きの傾動（ 起こすこと）であれ又は背もたれの後ろ向きの傾動（倒すこと）であれ、患者の 背部と背もたれとの間の相対運動の無い調和した運動が得られるように相互に調 整されている。

【００１４】 差し込み板２５の湾曲形状及びリンク溝３６の曲線軌道は、図５に示す原理図 により説明するようにそれぞれ異なる半径を有する複数の円軌道により形成され ている。

【００１５】 差し込み板２５の湾曲部４２及びリンク溝３６の曲線軌道４３は主として、半 径Ｒ１、Ｒ２又はＲ３、Ｒ４を有し相互に移行する二つの円軌道により決定され 、その際背もたれ２と反対側の部分が背もたれに向かう側の部分より大きい半径 を有する。すなわち半径Ｒ２はＲ１より大きく、また曲線軌道に対して同じこと が成り立ちそこではＲ３はＲ４より大きい。半径の比は差し込み板２５の場合に は約１：２であり、リンク溝３６の曲線軌道の場合には約１：１．５であり、そ の際曲線軌道は異なる中心点Ｍ₁ 、Ｍ₂ 、Ｍ₃ を有する。その際中心点Ｍ₁ は椅 子に座っている患者の腰関節回転中心の範囲に存在する。

【００１６】 差し込み板２５の大きい方の半径Ｒ２又はリンク溝３２の曲線軌道の半径Ｒ３ により生じる平坦化は、背もたれ２を起こす場合にヘッドレストの方向への比較 的大きい移動をもたらす。下側の角度範囲α₁ （水平線から約３０°まで）内で は差し込み板２５及び曲線軌道がほぼ同一の中心点を有し、ここでは円運動が実 際上中心点Ｍ₁ を中心として行われるが、それに続く上側の角度範囲α₂ （水平 線に対し約６０°の傾斜まで）内では比較的小さい半径Ｒ４が働き始める。すな わち背もたれ２上の点Ｎは寸法ΔＨだけ半径Ｒ_N を備える円軌道から外れて上に 向かってＮ′まで動く。従って背もたれ２′はこの角度範囲内では比較的強くヘ ッドレストの方向へ移動される。背もたれの傾動の際の実際上の回転中心Ｍ_P （ 先に述べた瞬間中心）はその際一定でない。回転中心Ｍ_P は図６に示すようにこ の実施例では、背もたれの傾動と同方向へ延び従って上に向かう背もたれの傾動 に応じて左に向かって開く螺旋形の曲線の一部Ａ上で移動する。それにより得ら れる背もたれ運動は、患者が横臥位から起き上がった座位へもたらされるときに 患者の腰関節の自然の運動に相応する。

【００１７】 リンク溝及び差し込み板の曲線形状に対する半径の決定は既に述べた考察を考 慮しながら経験的に行われる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案に基づく歯科用患者椅子の一実施例の
側面図である。

【図２】図１に示す椅子の調節駆動装置の制御のための
ブロック線図である。

【図３】図１に示す椅子の背もたれクッションを取り外
した状態における背もたれ及びヘッドレストの平面図で
ある。

【図４】図１に示す椅子のクッション及び上張り部品を
取り外した状態における座部枠及び背もたれ支持体の斜
視図である。

【図５】背もたれの二つの調節位置を示す側面略図であ
る。

【図６】背もたれ形状の際の瞬間中心の運動軌道の略図
である。

【符号の説明】

１ 座部 ２ 背もたれ ３ ヘッドレスト １９ 調節駆動装置 ２５ 差し込み板 ２６ ヘッドレスト支持体 ２７ 空所 ３５ 座部枠 ３６ リンク溝 ３７、４１ 案内ローラ ３８ アーム ３９ ねじ軸 ４２、４３ 曲線軌道

Claims (10)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 背もたれ支持体（２５）により座部
   （１）のそばに傾動可能にかつ座部へ向かって又は座部
   から遠ざかるように調節可能に配置された背もたれ
   （２）を備える歯科用患者椅子において、背もたれ支持
   体（２５）及び座部（１）がそれぞれ曲線軌道（４２、
   ４３）を備え、これらの軌道に対応する案内装置（３
   ７、４１）が付設され、それにより背もたれ支持体が背
   もたれの後ろ向き傾動の際に座部の下方へもぐり込むこ
   とができ、また前向き傾動の際に座部から再び抜け出る
   ことができ、更に座部（１）及び背もたれ支持体（２
   ５）の両曲線軌道（４２、４３）の湾曲形状は、背もた
   れ（２）の傾動の際の瞬間中心（Ｍ_P）が一定でなく、
   望ましくは螺旋形に開き背もたれの傾動と同方向へ延び
   る曲線の一部（Ａ）上を移動するように構成されている
   ことを特徴とする歯科用患者椅子。
2. 【請求項２】 両曲線軌道（４２、４３）の湾曲形状が
   異なる半径（Ｒ１、Ｒ２、Ｒ３、Ｒ４）を備え相互に移
   行する円軌道により決定されることを特徴とする請求項
   １記載の患者椅子。
3. 【請求項３】 両曲線軌道（４２、４３）の湾曲形状が
   主として相互に移行する二つの円軌道により決定され、
   その際背もたれと反対側の湾曲部が背もたれに向かう側
   の湾曲部より大きい半径（Ｒ３＞Ｒ４；Ｒ２＞Ｒ１）を
   有することを特徴とする請求項１記載の患者椅子。
4. 【請求項４】 曲率半径の比が背もたれ支持体（２５）
   の曲線軌道の場合には約１：２であり、座部（１）の曲
   線軌道の場合には約１：１．５であることを特徴とする
   請求項３記載の患者椅子。
5. 【請求項５】 背もたれ支持体（２５）が湾曲した差し
   込み板として構成され、その湾曲部（４２）が曲線軌道
   （４３）の湾曲形状に相応することを特徴とする請求項
   １記載の患者椅子。
6. 【請求項６】 差し込み板（２５）が座部側に二つのア
   ーム（３８）を備えるフォーク状端部を有し、これらの
   端部には案内ローラ（３７）が軸受支持され、これらの
   案内ローラは座部枠（３５）に配置されたリンク溝（３
   ６）中を導かれていることを特徴とする請求項５記載の
   患者椅子。
7. 【請求項７】 アーム（３８）の間に電動駆動されるね
   じ軸（３９）の自由端部がピン結合され、ねじ軸に従属
   する調節駆動装置（１９）が座部枠（３５）にフランジ
   固定されていることを特徴とする請求項５記載の患者椅
   子。
8. 【請求項８】 座部枠（３５）が差し込み板（２５）の
   両側に差し込み板のための少なくとも別の一対の案内ロ
   ーラ（４１）を備えることを特徴とする請求項５記載の
   患者椅子。
9. 【請求項９】 座部枠（３５）及び差し込み板（２５）
   がダイカストから作られていることを特徴とする請求項
   ５記載の患者椅子。
10. 【請求項１０】 背もたれ（２）が差し込み板（２５）
    と強固に結合され、かつ中央に置かれ上向きに開いた空
    所（２７）を備え、ヘッドレスト（３）を支持しクッシ
    ョンを入れたヘッドレスト支持体（２６）がこの空所中
    に長手方向に調節可能に保持されていることを特徴とす
    る請求項１ないし５の一つに記載の患者椅子。