JPH055333Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案に係るメタルシリンダヘツドガスケツ
トは、自動車用エンジンのシリンダブロツク上面
とシリンダヘツド下面との間に挟持し、両面間の
気密及び液密を保持するのに利用する。

（従来の技術） エンジンのシリンダブロツク上面とシリンダヘ
ツド下面との間にはシリンダヘツドガスケツトを
挟持して、シリンダブロツクに形成したシリンダ
内で発生する高圧の燃焼ガスや、シリンダブロツ
クとシリンダヘツドとの間で流通する冷却水或は
潤滑油が外部に漏洩する事を防止している。

この様なシリンダヘツドガスケツトとして従来
は、フツク付鉄板等の芯材の表裏両面に、アスベ
スト、或はカーボン等のガスケツト材料の層を形
成したものが広く使用されていたが、近年エンジ
ンの高出力化等に起因して、シリンダヘツドガス
ケツトに高度の耐熱性が要求される様になり、金
属板製のメタルシリンダヘツドガスケツトが使用
される場合が多くなつている。

このメタルシリンダヘツドガスケツトは、例え
ば第４図に示す様に構成されている。

即ち、このメタルシリンダヘツドガスケツト１
は、１枚乃至積層された複数枚の金属板２から成
り、この金属板２に、シリンダブロツク上面に開
口したシリンダ孔に整合する複数のボア孔３，３
と、同じくシリンダブロツク上面に開口した水、
油孔に整合する透孔４，４、及び、シリンダブロ
ツクとシリンダヘツドとを結合するボルトを挿通
する為の小円孔５，５を形成している。

各ボア孔３，３の周囲には必要に応じて、金属
薄板製のグロメツトを装着したり、何れかの金属
薄板を180度折り返したり、或は各種断面形状を
有する突条を形成したりする事により、このボア
孔３，３周囲の押圧力を大きくして、エンジンの
運転に伴なつて上記シリンダ孔内で発生する高圧
の燃焼ガスが、外部に漏洩する事の防止を図つて
いる。

ところが、上述の様に構成され作用する従来の
メタルシリンダヘツドガスケツト１の場合、次に
述べる様な不都合を生じる。

即ち、シリンダブロツクの上面とシリンダヘツ
ドの下面との間でメタルシリンダヘツドガスケツ
ト１を押圧する力は、上記シリンダブロツクとシ
リンダヘツドとを互いに結合する為のボルトの締
付け力によつて得るが、この締付け力は、小円孔
５，５に挿通されるボルトからの距離が大きくな
る、隣り合うボア孔３，３の間に存在する幅狭部
６，６部分で小さくなる事が避けられない。

この為、ボア孔３，３周囲の気密保持が、上記
幅狭部６，６部分で不完全となり易く、不完全と
なつた場合、隣り合うシリンダ孔同士の間での高
圧の燃焼ガスの漏洩（所謂吹き抜け）により、エ
ンジンの性能が低下してしまう。

この様な吹き抜けの発生を防止する為従来か
ら、第５〜６図に示す様に、隣り合うボア孔３，
３の間に存在する幅狭部６，６に、20〜70μm程
度の薄いシム板７，７を積層し、この幅狭部６，
６に於ける押圧力が十分に大きくなる様にして、
隣り合うボア孔３，３の間での高圧の燃焼ガスの
漏洩を防止する事が行なわれている。

（考案が解決しようとする課題） ところが、従来のメタルシリンダヘツドガスケ
ツトの場合、各幅狭部６，６にシム板７，７を積
層して固定するのに、接着剤を使用したり、或は
スポツト溶接により行なつていた為、組み立て作
業が面倒であるだけでなく、シム板７，７が外れ
易かつた。

そして、シム板７，７が外れた場合や、或は最
初からシム板７，７が欠落していた場合でも、シ
ム板７，７が無い事が外見から識別する事が出来
ず、シム板７，７のないメタルシリンダヘツドガ
スケツトを、そのままエンジンに組み付けてしま
い易かつた。

本考案のメタルシリンダヘツドガスケツトは、
上述の様な不都合を解消するものである。

（課題を解決する為の手段） 本考案のメタルシリンダヘツドガスケツトは、
前述した従来のメタルシリンダヘツドガスケツト
と同様に、少なくとも、第一、第二の２枚の金属
板を互いに積層する事により構成されており、シ
リンダブロツク上面に開口したシリンダ孔に整合
する少なくとも２個以上のボア孔を有すると共
に、隣り合うボア孔の間に位置する幅狭部にシム
板を、上記第一、第二の金属板の間に挟持する事
で積層している。

更に、本考案のメタルシリンダヘツドガスケツ
トに於いては、第一の金属板の幅狭部の両端位置
に第一の透孔を、第二の金属板の幅狭部の両端位
置に第二の透孔を、シム板の両端位置に上記第一
の透孔に進入自在な係止片を、それぞれ形成する
と共に、第一の透孔に挿通した係止片を第一の透
孔の縁部に向けて折り曲げる事により、シム板を
第一の金属板に結合し、第二の金属板に形成した
第二の透孔と係止片の折り曲げ部とを、メタルシ
リンダヘツドガスケツトの厚さ方向に亙つて整合
させている。

（作用） 上述の様に構成される本考案のメタルシリンダ
ヘツドガスケツトの場合、シム板は、両端の係止
片により第一の金属板に装着される為、装着作業
が容易となるだけでなく、係止片の折り曲げ部の
有無により、シム板の有無を判断出来る。

又、第二の金属板に形成した第二の透孔が、上
記係止片の折り曲げ部と整合している為、この折
り曲げ部の存在により、メタルシリンダヘツドガ
スケツトの板厚が部分的に大きくなる事が防止さ
れる。

（実施例） 次に、図示の実施例を説明しつつ、本考案を更
に詳しく説明する。

第１〜３図は本考案の実施例を示しており、第
１図は要部を示す分解斜視図、第２図は組み立て
た状態を示す平面図、第３図は第２図のＡ−Ａ断
面図である。

メタルシリンダヘツドガスケツト１を構成す
る、第一、第二の２枚の金属板８，９には、それ
ぞれ複数のボア孔３，３が形成されており、隣り
合うボア孔３，３の間を幅狭部６ａ，６ｂとして
いる。

上記両幅狭部６ａ，６ｂの内、第一の金属板８
の幅狭部６ａの両端位置には矩形の第一の透孔１
０，１０を、第二の金属板９の幅狭部６ｂの両端
位置には円形の第二の透孔１１，１１を、それぞ
れ形成している。但し、両透孔１０，１１の形状
は、特に図示のものに限定されない。

また、各幅狭部６ａ，６ｂの側縁からはみ出さ
ない様な形状と大きさとを有するシム板１２の、
長さ方向両端部には、上記第一の透孔１０，１０
に進入自在な係止片１３，１３を形成している。
シム板１２の本体部分よりも幅を狭くして（必ず
しも狭くする必要はないが）形成された各係止片
１３，１３の中間部は、第一の金属板８に向け直
角に折れ曲がつて、その先端部を係止部１４，１
４としている。

シム板１２を第一の金属板８に装着する場合に
は、各係止部１４，１４を第一の金属板８の幅狭
部６ａに形成した第一の透孔１０，１０に挿通
し、更に各係止片１３，１３の係止部１４，１４
を第一の透孔１０，１０の縁部に向け、それぞれ
幅狭部６ａの中央に向けて折り曲げる。

この結果、シム板１２と第一の金属板８とは、
シム板１２の両端部に設けた係止片１３，１３に
より、互いに不利に結合される。そこで、第一の
金属板８と第二の金属板９とを、シム板１２を挟
む様にして重ね合わせ、メタルシリンダヘツドガ
スケツトとして完成する。

この様に、第一、第二の両金属板８，９同士を
重ね合わせた場合に於いて、第二の金属板９の幅
狭部６ｂに形成した第二の透孔１１，１１と、係
止片１３，１３の係止部１４，１４を第一の透孔
１０，１０の縁部に折り曲げる事で構成された折
り曲げ部１５，１５とは、メタルシリンダヘツド
ガスケツト１の厚さ方向（第３図の左右方向）に
亙つて整合する。尚、本明細書に於ける整合と
は、各折り曲げ部１５，１５が第二の透孔１１，
１１の内側に存在する状態を言い、必ずしも各折
り曲げ部１５，１５の中心と第二の透孔１１，１
１の中心とが一致する必要はない。

上述の様に構成される本考案のメタルシリンダ
ヘツドガスケツトの場合、シム板１２は、両端の
係止片１３，１３により第一の金属板８に装着さ
れるが、この装着作業は、メタルシリンダヘツド
ガスケツトを組み立てる際に行なうプレス作業に
より、組み立て作業と同時に行なう事が出来る
為、装着作業が容易となる。

又、各係止片１３，１３の折り曲げ部１５，１
５は、メタルシリンダヘツドガスケツトの完成後
に於いても、外部から目視出来る為、この折り曲
げ部１５，１５の有無により、シム板１２の有無
を判断出来、シム板１２が欠落したメタルシリン
ダヘツドガスケツトを、そのままエンジンに組み
付ける危険性が少なくなる。

更に、第二の金属板９に形成した第二の透孔１
１，１１が、上記係止片１３，１３の折り曲げ部
１５，１５と整合している為、メタルシリンダヘ
ツドガスケツトをシリンダブロツク上面とシリン
ダヘツド下面との間で強く挟持した場合は、各折
り曲げ部１５，１５が第二の透孔１１，１１に向
けて沈入し、この折り曲げ部１５，１５部分が、
上記両面間で強く突つ張る事が防止される。この
為、折り曲げ部１５，１５の存在により、メタル
シリンダヘツドガスケツトの幅狭部に於ける気密
保持が不確実となる事はない。

（考案の効果） 本考案のメタルシリンダヘツドガスケツトは、
以上に述べた通り構成され作用する為、シム板を
有するメタルシリンダヘツドガスケツトの製造を
能率良く行なえるだけでなく、シム板の脱落を確
実に防止する事が出来、しかもシム板の無いガス
ケツトを外観で判別出来る為、シム板の無いガス
ケツトをそのままエンジンに組み付ける事を、確
実に防止出来る。

【図面の簡単な説明】

第１〜３図は本考案の実施例を示しており、第
１図は要部を示す分解斜視図、第２図は組み立て
た状態を示す平面図、第３図は第２図のＡ−Ａ断
面図、第４図はシム板を設けないメタルシリンダ
ヘツドガスケツトの１例を示す平面図、第５図は
シム板を設けたメタルシリンダヘツドガスケツト
の１例を示す平面図、第６図は第５図の拡大Ｂ−
Ｂ断面図である。 １……メタルシリンダヘツドガスケツト、２…
…金属板、３……ボア孔、４……透孔、５……小
円孔、６，６ａ，６ｂ……幅狭部、７……シム
板、８……第一の金属板、９、第二の金属板、１
０……第一の透孔、１１……第二の透孔、１２…
…シム板、１３……係止片、１４……係止部、１
５……折り曲げ部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 少なくとも、第一、第二の２枚の金属板を互い
   に積層する事により構成され、シリンダブロツク
   上面に開口したシリンダ孔に整合する少なくとも
   ２個以上のボア孔を有すると共に、隣り合うボア
   孔の間に位置する幅狭部にシム板を、上記第一、
   第二の金属板の間に挟持する事で積層して成るメ
   タルシリンダヘツドガスケツトに於いて、第一の
   金属板の幅狭部の両端位置に第一の透孔を、第二
   の金属板の幅狭部の両端位置に第二の透孔を、シ
   ム板の両端位置に上記第一の透孔に進入自在な係
   止片を、それぞれ形成すると共に、第一の透孔に
   挿通した係止片を第一の透孔の縁部に向けて折り
   曲げる事により、シム板を第一の金属板に結合
   し、第二の金属板に形成した第二の透孔と係止片
   の折り曲げ部とを、メタルシリンダヘツドガスケ
   ツトの厚さ方向に亙つて整合させた事を特徴とす
   る、メタルシリンダヘツドガスケツト。