JPH05297246A - 光コネクタ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 光コネクタに接続された光ファイバコードに
高荷重や低荷重が加わっても、この光ファイバコードと
上記光コネクタとの接続部に急角度の曲がりを生じさせ
ないように構成すること。 【構成】 プラグ３と、これに接続する光ファイバコー
ド２とをブーツ１７で被覆し、このブーツ１７を高硬度
の材料からなる第１の部材１７ａと、この第１の部材１
７ａの後部に結合し、中硬度の材料からなる第２の部材
１７ｂとから構成し、第２の部材１７ｂは先細側に所定
長のフラット部１７ｃを有して構成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は光コネクタに関するもの
である。

【０００２】ＳＭ型光ファイバコードの心線接続には、
脱着が自在な光コネクタが多用されるようになってお
り、とくに室内光配線や機器への配線ではこの傾向が著
しい。

【０００３】この光コネクタに要求される特性として、
従来は接続損失の低減化、脱着の容易性、小形軽量化、
安価な量産性などが問題とされることが多かった。しか
し、本発明者が光ファイバコードの伝送特性の向上につ
き種々研究しているうち、光コネクタと光ファイバコー
ドとの接続部の曲がりによる伝送損失の問題にぶつかっ
た。

【０００４】すなわち、光コネクタが水平配置で使用さ
れる場合、光ファイバコードが自重などで垂れ下がり、
これを保守点検時などに動かすとその荷重で光コネクタ
と光ファイバコードとの接続部に急角度の曲げが生じ、
そのため光ファイバに側圧が加わり伝送損失が増大す
る。本発明者はこのような問題点に着目し、種々試験し
て問題点の分析を行なった。以下これを図面にもとづい
て説明する。

【０００５】図９，図１０は従来一般の光コネクタの断
面図である。

【０００６】この光コネクタ１では、光ファイバ心線に
外被を被せてなる光ファイバコード２の端部にプラグ３
が接続され、その外部にかしめリング４が装着されてい
る。符号５は外被の締付けリングである。このかしめリ
ング４と締付けリング５と光ファイバコード２の一部と
はブーツ７によって被覆されている。このブーツ７は、
前記プラグ３を包囲するかしめリング４と光ファイバコ
ード２との接続部６を保護するものである。

【０００７】このブーツ７の材質として従来ゴムまたは
弾性を有するプラスチックが使用されており、かつ一体
成形されている。ブーツ７の断面形状は図に示すとおり
であり、その前部７ａの厚みは約０．５５ｍｍ程度と薄
く、後部７ｂはこれよりも肉厚に形成されているととも
に、後部に向かって肉薄となるようテーパが付形されて
いる。このようにブーツ７の前部７ａと後部７ｂに肉厚
の差があるのは、かしめリング４の外径と光ファイバコ
ード２の外径に差があること、およびかしめリング４は
硬い金属で形成されているため、前部７ａは比較的肉薄
であってもかまわないことによる。

【０００８】しかし、上記従来のブーツ７によると、図
１０に示すように光ファイバコード２に手で引張る等の
保守点検作業で荷重が加わった場合、容易に伸びてしま
い、光ファイバケーブル２の曲率を後方に分散すべきブ
ーツ７の後部７ｂの根元部７ｃの角度が急に下向きにな
る。さらに、ブーツ後部７ｂ自体の柔軟性が高すぎるう
え、径が小さく、その長さが長いうえ、厚み勾配が小さ
いことから片持ち梁の原理により根元部７ｃに曲りが集
中する。そのため、光ファイバコード２の下向きの荷重
が約０．３ｋｇ以上の荷重範囲では急激な曲がりの防止
作用を全くなさず、したがって、光ファイバコード２が
前述の根元部７ｃで側圧を受けて伝送損失が増大する。

【０００９】本発明者らは、上述の考察により、解決す
べき問題点を次の３点に整理した。光ファイバコード
２の先端の外被（ジャケット）２ａをかしめリング４の
後部に嵌着するため切り裂き部８を形成しており、その
ために曲がりに対する強度が低下しているので、この切
り裂き部８を補強することにより伝送損失を低減できな
いか。ブーツ７の前部７ａの薄肉部の伸びが前述の急
激な曲がりを助長しているのではないか。したがって、
これを防止する対策はないか。ブーツ７の肉厚部であ
る後部７ｂの根元部７ｃへの曲がりの集中を分散できな
いか。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上述の光
コネクタ部での光ファイバケーブルの曲がりによる伝送
特性低下を防止するには、ブーツの構造を根本的に改良
することにより光ファイバケーブルのプラグ（したがっ
て、かしめリング）と、光ファイバコードとの接続部の
急な曲がりを防止する以外ないとの結論に達した。そし
て、従来のこの種の光コネクタの欠点は、光ファイバコ
ードの曲がりを緩やかに行なわせ、それにより伝送損失
の増大を少なくするうえで最適な構造ではない点であ
る。本発明者はこのような問題点を解決した光コネクタ
を提供することを目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は、光ファイバコ
ードに接続したプラグおよびプラグを包囲するかしめリ
ングと、光ファイバコードをブーツで被覆してなる光コ
ネクタにおいて、ブーツを高硬度の材料からなる第１の
部材と、第１の部材の後部に結合し、中硬度の材料から
なる第２の部材の組合わせにより構成し、光ファイバコ
ードとかしめリングの接続部は第１の部材内に位置して
なる構成を特徴とする。

【００１２】前述の第２の部材は、ロックウエルの硬度
約Ｒ４５（の硬度）を有するとともに、後部を先細に形
成し、その先端に約４．０ｍｍ以上の長さのフラット部
を有し、第１の部材は第２の部材より約１．５倍以上の
硬度を有する構成とするのがよい。

【００１３】

【作用】光コネクタに接続した光ファイバコードに高荷
重や低荷重のいずれの荷重が加わった場合でも、硬度の
異なる第１の部材と第２の部材との組合せにより、光フ
ァイバコードの光コネクタ本体への接続部には常に緩や
かな角度での曲げが生じるので、伝送損失の増加が少な
い。

【００１４】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。なお、従来と同一要素には同一符号を付して説明
する。

【００１５】図１、図２は本発明に係る光コネクタ１１
を示し、この光コネクタ１１においてプラグ３を包囲す
るかしめリング４及び、かしめリング４の径小部に接続
する光ファイバコード２の端部を被覆するブーツ１７
は、第１の部材１７ａと第２の部材１７ｂとから構成さ
れている。この第１の部材１７ａは高硬度の材質から構
成され、第２の部材１７ｂは中硬度の材質から構成され
ている。また、第２の部材１７ｂの後部は先細に形成さ
れ、その先端にフラット部１７ｃを有している。

【００１６】本発明者は、上記構成の光コネクタ１１を
図３ないし図８に示す検討結果にもとづいて実施したの
で、以下これについて説明する。

【００１７】本発明者はまず、図５に示すように、つま
み１３と従来構造のブーツ７を嵌着し、その内部に光フ
ァイバコード２を挿通して試験準備した。そして、この
ブーツ７は低硬度、中硬度、高硬度の３種の硬度の異な
る材質のものを準備し、各ブーツ７につき、それぞれ光
ファイバコード２に３．０ｋｇｆの中荷重と、０．３ｋ
ｇｆの低荷重を加えて、合計６種類の試験を行なった。
ブーツ７の材質名と硬度を下の表に示し、前述の試験結
果による光損失増加と荷重との関係を図６に示す。

【００１８】

【表１】

【００１９】図５に示すようにブーツ材料の硬さによっ
て坐屈の発生状態が微妙に変化し、それに応じて図６に
示すように光損失増加が変る。図６より、従来のゴム製
ブーツより約２倍硬い中硬度のブーツが最良であるが、
難点として、低荷重（＝約０．３ｋｇｆ）での光損失増
加が僅かにみられる。しかし、さらにブーツ材質を約２
倍硬くすると、より以上に光損失が増えるので、結果と
して、従来品の硬度より１．５〜３．０倍硬くするのが
よいことが確認された。

【００２０】つぎに、本発明者は、上述の中硬度材料か
らなるブーツの低荷重での光損失を防ぐことを構造面か
ら検討し、図７に示す構造のブーツ１０を試作し、試験
を行った。このブーツ１０は、先細の後端部に所定の長
さに亘ってフラット部１０ａを有している。なお、従来
のブーツは図面上、点線１２で示すようにフラット部の
ない構造であった。前述のブーツ１０によるフラット部
１０ａの長さと、低荷重での光損失増の関係を図８に示
す。なお、２つの実験では、ブーツ材料に、図５の試験
における中硬度品と同じ材料を用いた。図８から分るよ
うに、フラット部１０ａをブーツ１０の先細の後端部に
設けると光損失増が改善され、フラット部１０ａの長さ
が４ｍｍ以上で光損失増が全くなくなった。なお、実験
では、従来のブーツの全長の範囲内で、先細側にフラッ
ト部１０ａを設けたが、新たにフラット部を延長しても
同様の効果が得られることが確認された。

【００２１】本発明者は、前述の知見にもとづき、図６
における高荷重時の光損失増加をさらに改善するために
図１のようにブーツ１７の第１の部材１７ａのみをさら
に硬い材料にした２部品型ブーツを試作した。その構造
を先に説明した図１、図２に示すとともに、荷重とたわ
みの関係を図３に示し、光損失増加の関係を図４に示
す。この２部品型ブーツ１７は、図１に示すように高硬
度の材質からなる第１の部材１７ａと中硬度の材質から
なる第２の部材１７ｂを結合して構成される。第１の部
材１７ａは、その後部の径を小径に絞ってあり、この部
材後部の外部には突条１８が周方向に設けられている。
この突条１８を第２部材１７ｂの先端部内周の環状溝１
９に係合させることによって、第１と第２の部材１７
ａ、１７ｂが結合される。なお、第１と第２の部材１７
ａ、１７ｂの結合には接着剤を用いてもよいし、この接
着剤と前述の結合構造とを併用して一体化してもよい。

【００２２】前述の２部品型のブーツ１７の実施に先立
ち、図３に示す実験を行った。同図において、つまみ１
３とブーツ７を接続し、光ファイバコード２に下向きの
荷重を加えた。なお、図３では、一部品型のブーツ７の
みを示し、２部品型のブーツの図示は省略し、この２部
品型のブーツについては荷重が加わったときの曲がりの
状態だけを曲線で示している。同図から分るようにブー
ツを中硬度材料と、これよりも硬い高硬度材料との２部
品型とすることにより、約５ｋｇｆの高荷重時と、約
０．３ｋｇｆの低荷重時のいずれにおいても坐屈発生が
阻止され、その結果、図４に示されるように光損失増加
が改善されることが確認された。

【００２３】なお、図２の２部品型の光コネクタ１１に
おいて、第１の部材１７ａを高硬度の材質で構成する
と、ブーツの装着が困難な場合が生じるので、この場合
は、第１の部材１７ａの軸方向にスリット（図示せず）
を形成するとよい。また、このスリットがあると、第１
の部材１７ａをプラスチックのインジェクションで成形
する場合に金型からの脱型が容易となる。第１の部材１
７ａの先端縁には、突起１４が設けられていてこれも成
形時に金型からの脱型を容易な構造とする。

【００２４】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る光コ
ネクタによると、プラグ及びこれに接続する光ファイバ
コードを被覆する部材を高硬度の材料からなる第１の部
材と、中硬度の材料からなる第２の部材を組合わせて構
成し、しかも各部材の硬さを最適な硬度に選択し、ブー
ツ後端部にフラット部を設けて構成したので、光ファイ
バコードに高荷重または低荷重のいずれの荷重が加わっ
た場合でも、光ファイバコードとプラグとの接続部に急
角度の曲がりが生せず、伝送損失増を抑えることができ
るという実用上の効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る光コネクタのブーツの断面図であ
る。

【図２】図１のブーツを用いた光コネクタの断面図で、
光ファイバコードに荷重がかかった状態の図である。

【図３】１部品型と２部品型のブーツの光ファイバコー
ドの荷重によるたわみの関係を示す説明図である。

【図４】図３のブーツの荷重と光損失増加の関係をグラ
フで示す図である。

【図５】ブーツ材料の硬さと光ファイバコードに加わる
荷重によるたわみの関係を示す説明図である。

【図６】図３のブーツの荷重と光損失増加の関係をグラ
フで示す図である。

【図７】フラット部を有するブーツの側面図である。

【図８】フラット部の長さと光ファイバコードに加わる
低荷重での光損失増加の関係をグラフで示す図である。

【図９】従来の光コネクタの断面図である。

【図１０】光ファイバコードの荷重による光コネクタの
たわみを示す断面図である。

【符号の説明】

３…プラグ、４…かしめリング、１１…光コネクタ、１
７…ブーツ、１７ａ…第１の部材、１７ｂ…第２の部
材、１７ｃ…フラット部。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安東 泰博 東京都千代田区内幸町一丁目１番６号 日 本電信電話株式会社内 (72)発明者 渡邉 哲章 神奈川県横浜市栄区田谷町１番地 住友電 気工業株式会社横浜製作所内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 光ファイバコードに接続したプラグおよ
   びプラグを包囲するかしめリングと、光ファイバコード
   をブーツで被覆してなる光コネクタにおいて、 前記ブーツを高硬度の材料からなる第１の部材と、前記
   第１の部材の後部に結合し、中硬度の材料からなる第２
   の部材の組合わせにより構成し、前記ファイバコードと
   かしめリングの接続部は前記第１の部材内に位置してな
   る構成を特徴とする光コネクタ。
2. 【請求項２】 前記第２の部材は、ロックウエル硬度約
   Ｒ４５の硬さを有するとともに、後部を先細に形成し、
   その先端にフラット部を有する請求項１記載の光コネク
   タ。
3. 【請求項３】 フラット部の長さが４．０ｍｍ以上であ
   る請求項２記載の光コネクタ。
4. 【請求項４】 第１の部材は第２の部材よりも約１．５
   倍以上の硬度を有する請求項２または請求項３記載の光
   コネクタ。