JPH05276899A - 肉質風味改良剤、及びそれを用いる肉質味改良法 - Google Patents

肉質風味改良剤、及びそれを用いる肉質味改良法

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JPH05276899A
JPH05276899A JP3228135A JP22813591A JPH05276899A JP H05276899 A JPH05276899 A JP H05276899A JP 3228135 A JP3228135 A JP 3228135A JP 22813591 A JP22813591 A JP 22813591A JP H05276899 A JPH05276899 A JP H05276899A
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meat
taste
elastase
quality
collagen
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JP3228135A
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Hiroshi Takagi
博史 高木
Masaaki Kondo
正明 近藤
Masakari Yamazaki
眞狩 山崎
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Ajinomoto Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 肉質や風味改善に有効な酵素を組み合わせて
低品質部位の鳥獣肉に作用させることで、肉の物性改良
と呈味向上を同時に達成可能とする。 【構成】 結合組織(スジ)の主成分であるエラスチン
やコラーゲンなどの硬質タンパク質を特異的に分解して
肉を軟化させる酵素エラスターゼと、肉の呈味性に寄与
する遊離アミノ酸やペプチドを生成させる酵素プロテア
ーゼやペプチダーゼ、またはコラーゲン繊維に作用して
プロテアーゼの攻撃を受けやすくするアミラーゼやコラ
ゲナーゼを組み合わせて低品質部位の鳥獣肉に作用させ
ることを特徴としている。 【効果】 牛、豚、鶏などの鳥獣肉の中で、硬くてスジ
の多い低品質部位の肉質を調理前に改良し、軟らかさ、
及び呈味性を付与して付加価値を向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は肉質風味改良剤、及びそ
れを用いる鳥獣肉の肉質風味改良法に関する。更に詳細
には本発明は、牛、豚、鶏などの肉の中で、硬くてスジ
の多い低品質部位の肉質を調理前に改良し、軟らかさ、
および呈味性を付与して付加価値を向上させるために用
いる肉質風味改良剤、及びそれを用いる鳥獣肉の肉質風
味改良法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】牛、豚、鶏などの食肉中には、腿、脛な
どのように結合組織(スジ)が多く、硬くて食べにくい
部位が大量に存在する。肉の硬さは筋細胞内の筋原繊維
タンパク質の構造とエラスチン、コラーゲンなどの硬質
タンパク質による筋細胞外の構造が関与している。前者
の構造は熟成によって変化を受けるが、筋細胞外の構造
は内在するエンドペプチダーゼの作用を受けず、熟成に
よってもほとんど変化を受けない。従って、従来から機
械的な破壊の他に、パパイン、ブロメライン、フィシン
など植物由来のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を
外部から加えて肉の軟化を行なっていた(Prusa,
K.J.et al.,J.Food Sci.,
,1684−1686(1981))。
【0003】しかしながら、これらの酵素は通常のプロ
テアーゼであり基質特異性が低いために、スジだけでな
く肉の食感に関与している筋原繊維タンパク質も過剰に
分解するため、軟らかくはなるが肉の組織が脆くなり、
べたつき感が生じて食感が損なわれてしまうという欠点
がある。したがって、スジを特異的に分解するエラスタ
ーゼが待ち望まれているのが現状である。
【0004】また、一般的に、食肉は熟成により軟化
し、また風味も向上する。風味の向上、特に呈味性は従
来から筋肉中のプロテアーゼやペプチダーゼの作用によ
り生成する遊離アミノ酸、核酸関連物質、ペプチドなど
が寄与すると考えられている。中でも遊離アミノ酸は、
熟成中に増加し、呈味向上に最も寄与している。例え
ば、牛肉の熟成に伴う遊離アミノ酸の含量の変化につい
てはいくつかの報告があり、旨みに関与するグルタミン
酸や甘味系アミノ酸アラニン、グリシンなどが増加する
ことが知られている(Nishimura,T.et
al.,Agric.Biol.Chem.,52,2
323−2330(1988))。また呈味向上には、
カテプシン類ならびにカルパインがペプチドを生成し、
これに主にアミノペプチダーゼが作用して各遊離アミノ
酸が生成する機構が明らかにされている(西村ら、肉の
科学、29、1−13(1988))。
【0005】従って、食肉において熟成期間の短縮や熟
成後の呈味向上を目的に外来性のプロテアーゼやペプチ
ダーゼを作用させる試みがなされている(西村ら、肉の
科学、29、1−13(1988))。
【0006】しかしながら、上記目的のためにこれらの
酵素を単独に肉に添加した場合、例えば、軟らかくはな
るがスジは残ったままであったり、筋原繊維タンパク質
の過剰分解により弾力感がなくなり組織が脆くなって、
肉の本来有する食感が著しく失われたりすることがあ
る。また、肉自体の風味や呈味性の著しい向上は認めら
れず、酵素の種類によっては分解生成物由来の異臭や苦
味が生じることがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明が解
決しようとする課題は、低品質部位の場合、従来のよう
な酵素の単独使用では肉の軟化という物性改良と、肉の
風味や味の著しい向上という呈味強化という目的を同時
には達成できない点である。
【0008】
【課題を解決するための手段】国内の畜肉メーカーにと
っては牛肉の輸入自由化に伴って、腿、脛などのスジの
多い低品質部位をどのように利用するかが大きな問題で
ある。逆にこれら使用しにくい部位を加工し、付加価値
を向上させることにより有効利用できれば大きなビジネ
スにつながると考えられている。本発明者らは、上記問
題点である低品質部位の肉質や風味を改良するべく鋭意
研究を行なったところ、目的に応じて適切な酵素を選択
することにより、上記課題を解決し、本発明を完成に至
らしめた。すなわち、本発明はエラスターゼ、及びプロ
テアーゼ、ペプチダーゼ、アミラーゼ、コラゲナーゼの
中から選ばれた1、若しくは2種類以上の酵素を含有し
てなる肉質風味改良剤、及び該改良剤を用いる鳥獣肉の
肉質風味改良法である。
【009】本発明で用いられる肉質風味改良剤中のプロ
テアーゼは具体的にはパパイン、ブロメライン、フィシ
ン、アクチニジンなど植物由来、サチライシン、サーモ
ライシンなど微生物由来、トリプシン、カテブシンなど
動物由来のプロテアーゼであり、ペプチド結合鎖の中程
から切断するエントペプチダーゼである。一般的にこれ
らの酵素を食肉に作用させると、ミオシン、アクチンな
どの筋原繊維タンパク質によく作用し、コラーゲン、エ
ラスチンなどの硬質タンパク質にはあまり作用しない。
したがって、軟らかくはなるがスジが残り、筋原繊維タ
ンパク質の過剰分解により肉本来のテクスチャーが失わ
れたり、異臭や異風味が生じてしまうために、酵素量や
反応条件に留意することが必要である。しかしながら、
条件によっては食肉の硬さの原因の一つである筋原繊維
の構造を適度に破壊することにより軟化を促進する利点
もある。
【0010】次に、本発明において用いられる肉質風味
改良剤中のペプチダーゼは具体的に植物、動物、微生物
界に広く分布するロイシアミノペプチダーゼ、アミノペ
プチダーゼM、カルボキシペプチダーゼA、Yなどペプ
チド鎖のいずれかの末端から順次アミノ酸を1個ずつ遊
離するエキソペプチダーゼである。一般的にミルクカゼ
インや大豆タンパク質などの食品タンパク質をプロテア
ーゼ処理するとロイシンが末端に存在するような苦味ペ
プチドが生成し、風味が著しく低下することが知られて
いる。そこで、この苦味ペプチドを各種のペプチダーゼ
で分解することにより、アミノ末端やカルボキシル末端
からアミノ酸を遊離させて呈味性を向上させる試みがな
されている(石田ら、食品工誌、23、524−530
(1976))。食肉の場合、通常のプロテアーゼでは
ほとんど分解しない硬質タンバク質をエラスターゼやコ
ラゲナーゼで分解して軟化させた後、適当なペプチダー
ゼを用いてエラスチンやコラーゲン中に非常に多く存在
するアラニンやグリシン(全体の50%以上)といった
甘味系アミノ酸を遊離させることによって、著しい呈味
向上が期待できる。
【0011】また、本発明の肉質風味改良剤中に用いら
れるアミラーゼは具体的にはグルコアミラーゼ、β−ア
ミラーゼなど非還元性末端からグルコース単位を切り離
していくエキソ型とα−アミラーゼ、イソアミラーゼな
どほぼランダムに分解していくエンド型のアミラーゼで
ある。一般的に筋肉の周囲や結合組織に存在するコラー
ゲン繊維にはガラクトース、グルコースなどの炭水化物
が網目上に分布しており、この炭水化物を適当なアミラ
ーゼで分解するとコラーゲンと炭水化物の結合が開裂
し、コラーゲンはプロテアーゼの攻撃を受けやすくなる
ことが考えられる。
【0012】さらに、本発明の肉質風味改良剤中に用い
られるコラゲナーゼは具体的にはコラーゲン特有の一次
構造であるグリシルプロリンなどの配列をグリシンの前
で特異的に切断する細菌由来のコラゲナーゼとコラーゲ
ン分子を大きな断片に切断する動物由来のコラゲナーゼ
である。通常のプロテアーゼやエラスターゼはその特殊
な構造のためコラーゲンをほとんど分解できない。した
がって、硬質タンパク質の主成分であるコラーゲンとエ
ラスチンをコラゲナーゼとエラスターゼを組み合わせる
ことによって、効率良く分解して低品質の食肉を軟化さ
せることが可能になるものと考えられる。
【0013】本発明の肉質風味改良剤中に用いられるエ
ラスターゼは特にその起源を問わない。従って、エラス
ターゼ活性がある限り、動物、植物、微生物由来のもの
が用いられる。しかし、好ましくはアルカリ性バチルス
属細菌由来のエラスターゼが良い。このエラスターゼは
山崎らが、アルカリ性バチルス属細菌(alkalop
hilic Bacillus sp.)Ya−B株
(AJ 12619,FERM P−12261)の培
養ろ液より見い出した(Tsai,Y.C.et a
l.,Biochem.Int.,,577−583
(1983))。本酵素はこれまでに知られているエラ
スターゼに比べて非常に強いエラスチン分解力を有し、
従来から食肉軟化剤に用いられてきたパパインなどの植
物由来のプロテアーゼに比べて筋原繊維タンパク質の過
剰分解をほとんど起こさない。従って、本酵素は肉特有
のテクスチャーを維持しながら軟化させる食肉軟化剤と
して効果的であるといえる。本酵素以外でもこのように
食肉のpH領域で、筋肉中の結合組織を分解し筋原繊維
タンパク質をほとんど分解しない酵素が肉質改良剤とし
て望ましい。
【0014】本発明に係る肉質風味改良剤として用いら
れる酵素の生産は、以下の実施例で記載されているよう
に、微生物の菌体や培養液、または動物や植物の組織か
ら調製する方法に限定されるわけではなく、大腸菌、枯
草菌や酵母などを宿主とする組換えDNA法によって
も、また変異した遺伝子を染色体に相同組換えを利用し
て野生型遺伝子と入れ替えてやることも可能であり、い
ずれの方法を用いて生産させた酵素も同程度の効果が期
待できる。なお、本発明で用いたエラスターゼは従来知
られているエラスターゼに比較して活性が著しく強いア
ルカリ性バチルス属細菌の生産するエラスターゼであ
り、本酵素は本発明者らの別の報告(特願平1−316
261号)に従って本酵素生産菌の培養上清液の硫安沈
殿物から調製したが、製造法はこれに限定されるわけで
はない。
【0015】本発明の改良剤、および改良方法は、広範
囲に適用可能であり、例えば、老廃牛などその硬さのた
めに食肉にはならず、廃棄処分していた屑肉のようなも
のも通常の食肉に変えることも考えられる。
【0016】さて、本発明に係る肉質風味改良剤中の全
酵素含有量は特に制限はないが、通常、該肉質風味改良
剤1gあたり0.01〜100mg程度、好ましくは
0.1〜50mg程度含有させればよい。この時、エラ
スターゼと他の酵素の重量比としては1:0.01〜1
00程度が好ましい。この場合、精製された酵素を用い
てもよく、また粗精製品を用いてもよい。また、安定化
剤、増量剤として、塩化カルシウム、血清アルブミン、
グリセロール、デキストリン、クエン酸ナトリウムなど
を単独、または2種類以上組み合わせて含有させてもよ
い。本発明に係る肉質風味改良剤は粉末の形でもよく、
また、水や緩衝液に溶解させた溶液の形態であってもよ
い。
【0017】次に本発明の肉質風味改良剤の使用方法で
あるが、屠殺直後から調理する前までの間に肉に振りか
けるか、肉に注入する方法以外にも本改良剤を含む溶液
中に肉を浸漬したり、または動物の屠殺直前に、本改良
剤を直接静脈や筋肉に注射し、組織全体に均一に分散さ
せたのち屠殺し、通常の手順で処理する方法も採用しう
る。酵素処理した肉は冷蔵庫、室温などで反応を進める
ことが可能であるが温度が高いほど反応が早く進行する
ことになる。また本発明に用いる酵素の使用量は肉の種
類や肉に存在する結合組織量、処理温度、処理時間、処
理方法などによって異なるため、一定に決めることはで
きないが、通常肉1kgあたり0.1〜100mgであ
る。繰り返し述べるが上記添加量に制限されるものでは
ない。以下、実施例をもって、本酵素を用いた肉質風味
改良法について示す。
【0018】
【実施例】
実施例1 本実施例ではエラスターゼとプロテアーゼを用いた食肉
の軟化と呈味性の向上を、破断テストによる物性測定、
コラーゲンの加熱溶解性、およびパネラーによる官能評
価で調べた。なお、エラスターゼはアルカリ性バチルス
属細菌(alkalophilic Bacillus
sp.)Ya−B株(AJ 12619,FERM
P−12261)由来のものであり、プロテアーゼとし
て用いたパパインは市販されているものを用いた。
【0019】米国産輸入牛の腿肉2.5kgを500g
ずつ5グループに分けて下記に記載する処理を施した
後、冷蔵庫(約4℃)で一晩放置した。 処理区 無処理 処理区 水道水50mlをランダムに肉500gに注
射した。 処理区 硫安塩析のあと水道水に溶解したエラスター
ゼ液1,200ユニット分(精製酵素0.5mgに相
当)50mlをランダムに肉500gに注射した。 処理区 水道水に溶解したシグマ社製パパイン(パパ
イヤ由来)0.25mg分、50mlをランダムに肉5
00gに注射した。 処理区 水道水に溶解したエラスターゼ(2.5mg
分)とパパイン(0.5mg分)混合液50mlをラン
ダムに肉500gに注射した。
【0020】そのあと肉の一部を4cm×4cm×3c
m(約100g)に切り70℃、20分間の加熱処理
後、レオメーター(不動工業)による破断試験を行なっ
た。5kgの切断力で深さ3mmでの応力を測定した結
果を表1に示した。
【0021】
【表1】
【0022】破断テストの結果から、水を注入しただけ
では切断力はほとんど変わらず肉は硬いままの状態であ
ったが、エラスターゼやパパイン処理することによっ
て、切断力は小さくなり肉の軟化が認められた。エラス
ターゼとパパインの混合処理ではさらに軟化効果が認め
られた。
【0023】次にコラーゲンの加熱溶解性はHillら
の方法(j.Food Sci.,31,161(19
66))に従って調べた。まず30gの肉を凍結後、ホ
モジナイズして100倍量の6N 塩酸を加えて110
℃、24時間酸加水分解した。加水分解後、上澄み中に
遊離したハイドロキシプロリンを定量することによって
組織全体のコラーゲン量を求めた。次に同量の肉を0.
03M NaCl水溶液中でホモジナイズ後、77℃、
60分間抽出し、遠心分離後の上澄み液を同じように酸
加水分解した。加水分解後、上澄み中に遊離したハイド
ロキシプロリンを定量することによって加熱溶解したコ
ラーゲン量を求めた。その結果を表2に示した。
【0024】
【表2】
【0025】一般的に筋肉内コラーゲンの溶解性は食肉
の軟化と正の相関を持つと言われているが、表2の結果
からもエラスターゼとパパインの混合処理によりコラー
ゲンの加熱溶解性が増加しており、レオメーターによる
破断テストの結果と一致していた。
【0026】さらに処理後の肉から常法に従って大きな
スジを取り除いたあとの筋原繊維タンパク質を調製した
(Kimura,S.et al.,J.Bioche
m.,94,2083−2085(1983))。その
一部をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ
たところ、エラスターゼとパパインの混合処理ではパパ
イン単独処理の欠点であるミオシンやアクチンの過剰分
解はあまり認められなかった。したがって筋原繊維タン
パク質の過剰分解による苦味ペブチドのために生じる異
臭や異風味がエラスターゼとパパインの混合処理により
軽減される可能性が示唆された。
【0027】このような物性の変化が、酵素処理した肉
を食べた時の官能評価にどのような影響を及ぼすのかを
調べた。残りの肉を1%の塩で味付けし、それぞれを別
のフライパン上で同一火力のもとで同時に加熱調理し、
ステーキを試作した。肉がさめないうちに、パネラー1
2名で外観、風味、味、食感、多汁性、結合組織の硬
さ、組織の脆さなどの点から総合評価を行なった。その
結果を表3に示した。
【0028】
【表3】
【0029】エラスターゼとパパインの混合処理区で
は、各酵素の単独処理区に比べて明らかに軟らかさ、風
味、味が向上しており総合評価も高くなった。したがっ
て、両酵素の組み合わせにより、本エラスターゼの特徴
である肉本来の食感を維持したまま軟化させる効果に加
えて、肉の味も著しく向上させることに成功した。
【0030】また、本実験のスケールを大きくして、工
業的スケールで用いられるハンドインジェクターにより
各酵素処理を施しても同様の優れた効果が得られた。こ
のことより、本発明は十分、工業的に利用される技術で
あることが証明された。
【0031】実施例2 本実施例ではエラスターゼとペプチダーゼを用いた食肉
の軟化と呈味性の向上を遊離アミノ酸の定量、破断テス
トによる物性測定、およびパネラーによる官能評価で調
べた。なお、エラスターゼは実施例1と同様にアルカリ
性バチルス属細菌由来のものであり、ペプチダーゼとし
ては市販のカルボキシペプチダーゼY、ロイシンアミノ
ペプチダーゼを用いた。
【0032】まず、腿肉の結合組織の主成分であるコラ
ーゲンとエラスチンへの作用を調べた。市販の不溶性コ
ラーゲン、またはエラスチン粉末(シグマ社)50mg
に1mlのエラスターゼ水溶液(酵素量50μg)を添
加して、37℃で振盪しながら反応させ、1時間後、カ
ルボキシペプチダーゼY(パン酵母由来)300μg、
またはロイシンアミノペプチダーゼ(ブタ腎臓由来)3
00μg(両酵素ともシグマ社)を添加して、さらに1
時間反応させた。その後、1mlの反応停止液(0.7
Mリン酸緩衝液、pH6.0)を添加、遠心分離により
未分解の基質や酵素タンパク質を除去して、上清中に遊
離してきたアミノ酸を分析定量した。表4に特徴的なア
ミノ酸の結果を示した。
【0033】
【表4】
【0034】エラスターゼや各ペプチダーゼの単独処理
では無処理に比べて顕著に増加したアミノ酸は存在しな
かったが、両酵素の混合処理により甘味系アミノ酸であ
るアラニン、グリシン、スレオニン、セリンが明らかに
増加していた。その中でもコラーゲンやエラスチンに非
常に多く含まれるアラニンとグリシンは著しく増加して
いた。また旨味の成分であるグルタミン酸もわずかなが
ら増加していた。この結果から、従来の酵素処理では分
解が困難であった硬質タンパク質(コラーゲン、エラス
チン)において、エラスターゼとペプチダーゼの組み合
わせにより甘味系のアミノ酸を中心に食肉の呈味形成に
関与する遊離アミノ酸が増加して、総合的に呈味力が向
上することが示唆された。
【0035】次に実際に食肉を酵素処理した時の物性変
化を、レオメーターを用いた破断テストにより調べた。
オーストラリア産輸入牛の腿肉2kgを500gずつ4
グループに分けて下記に記載する処理を施した後、冷蔵
庫(約4℃)で一晩放置した。 処理区 無処理 処理区 水道水50mlをランダムに肉500gに注
射した。 処理区 硫安塩析のあと水道水に溶解したエラスター
ゼ液6,000ユニット分(精製酵素2.5mgに相
当)50mlをランダムに肉500gに注射した。 処理区 水道水に溶解したエラスターゼ(2.5mg
分)とロイシンアミノペプチダーゼ(10mg分)の混
合液50mlをランダムに肉500gに注射した。
【0036】そのあと肉の一部を4cm×4cm×3c
m(約100g)に切り70℃、20分間の加熱処理
後、レオメーター(不動工業)による破断テストを行な
った。5kgの切断力で深さ3mmでの応力を測定した
結果を表5に示した。
【0037】
【表5】
【0038】破断テストの結果から、これまでと同様に
無処理や水処理に比べて、酵素を処理することにより切
断力が小さくなり、肉の軟化が認められた。
【0039】このような物性の変化が、酵素処理した肉
を食べた時の官能評価にどのような影響を及ぼすのかを
調べた。残りの肉を1%の塩で味付けし、それぞれを別
のフライパン上で同一火力のもとで同時に加熱調理し、
ステーキを試作した。肉がさめないうちに、パネラー1
2名で外観、風味、味、食感、多汁性、結合組織の硬
さ、組織の脆さなどの点から総合評価を行なった。その
結果を表6に示した。
【0040】
【表6】
【0041】官能テストの結果から、エラスターゼ単独
処理でも無処理や水処理に比べて軟らかさが改善され総
合評価が高まった。さらにエラスターゼとペプチダーゼ
の混合処理により、風味、味の項目での著しい改善によ
り、総合評価が一段と高まった。以上の結果から、両酵
素の組み合わせによる処理が食肉の軟化と呈味向上にお
いて、極めて有効な改良法であることが示された。
【0042】また、本実験のスケールを大きくして、工
業的スケールで用いられるハンドインジェクターにより
各酵素処理を施しても同様の優れた効果が得られた。こ
のことより、本発明は十分、工業的に利用される技術で
あることが証明された。
【0043】
【発明の効果】以上示したように、本発明の肉質風味改
良剤はプロテアーゼ、ペプチダーゼ、アミラーゼ、コラ
ゲナーゼの中から選ばれた1種類以上の酵素とエラスタ
ーゼを組み合わせているため、牛、豚、鶏などの肉の中
で、硬くてスジの多い低品質部位の肉質を調理前に改良
し、軟らかさ、および呈味性を付与して付加価値を向上
させるという利点がある。また本発明は、食肉のpHで
ある中性領域からアルカリ領域まで、極めて広い範囲で
実施できる有用なものであり、加熱調理に伴う筋肉の過
剰分解を起こさず、肉本来の食感を損なうことなく改良
できる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エラスターゼ、及びプロテアーゼ、ペプ
    チダーゼ、アミラーゼ、コラゲナーゼの中から選ばれた
    1、若しくは2種類以上の酵素を含有してなる肉質風味
    改良剤
  2. 【請求項2】 エラスターゼがアルカリ性バチルス属細
    菌により生産されたものである請求項1記載の肉質風味
    改良剤。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の肉質風味改良剤
    を鳥獣肉に作用させることを特徴とする肉質風味改良
    法。
JP3228135A 1991-05-30 1991-05-30 肉質風味改良剤、及びそれを用いる肉質味改良法 Pending JPH05276899A (ja)

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