JPH0512505Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は車両の湿式ブレーキ装置に関し、特に
遊星歯車減速機を有するアクスル装置に設けたも
のに関する。

〔従来技術〕

一般に、遊星歯車減速機を有するアクスル装置
に設けた車両の湿式ブレーキ装置は、ブレーキデ
イスク・デイスクプレート・ブレーキ板・環状ピ
ストン等から構成されており、インターナルギヤ
ハブに設けられた環状ピストンを油圧で駆動する
ことにより駆動軸にスプライン嵌合されたブレー
キデイスクを、デイスクプレート及びブレーキ板
で挟んで制動するようになつている。

従来、上記デイスクプレート及びブレーキ板の
外周部はインターナルギヤハブのリング部材の内
歯車にスプライン嵌合されており、リング部材で
デイスクプレート及びブレーキ板に作用する制動
トルクを支承するようになつている。

また、ブレーキ板のリング部材軸方向への移動
は、ブレーキ板の外方側においてリング部材の内
歯車とスプライン嵌合させるとともに、ボルトで
リング部材に固着された環状のストツパーにより
規制されている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

従来の湿式ブレーキ装置においては、ブレーキ
板の外周にリング部材の内歯車とスプライン係合
させるためのスプライン歯を形成していたのでブ
レーキ板の製造コストが高くなつていた。

また、ブレーキ板の軸方向の移動を制限するス
トツパーは、リング部材にスプライン嵌合される
とともにボルトで内周面に固着されていたので、
ストツパーの取付け及び取り外しが困難でブレー
キ板の交換作業を能率的に行えず、しかもボルト
取付け用のスペースをストツパーに設けなければ
ならず、ストツパーが厚肉になりブレーキ装置が
軸方向に大型化していた。しかも、ストツパーの
外周にはブレーキ板と同様にスプライン歯を形成
するので製造コストが高くなる。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案に係る車両の湿式ブレーキ装置は、遊星
歯車減速機を有するアクスル装置に設けた車両の
湿式ブレーキ装置において、上記ブレーキ装置の
環状ピストンに対応する半径方向位置で遊星歯車
減速機のキヤリヤとブレーキデイスク間に環状の
ブレーキ板を設けられ、遊星歯車減速機の遊星ピ
ンに対応する上記ブレーキ板の内周部に部分円状
の切欠係合部が形成され、各切欠係合部に各遊星
ピンの一部を係合させることにより、ブレーキ板
に作用する回転トルクを遊星ピンで支承するよう
に構成したものである。

〔作用〕

本考案に係る車両の湿式ブレーキ装置において
は、環状のブレーキ板が環状ピストンに対応する
半径方向位置で且つ遊星歯車減速機のキヤリヤと
ブレーキデイスク間に配設され、この環状のブレ
ーキ板の内周部に形成された部分円状の切欠係合
部に遊星歯車減速機の各遊星ピンの一部が係合し
ている。

そして、ブレーキペダルを操作して環状ピスト
ンを駆動するとブレーキデイスクがキヤリヤに当
接しているブレーキ板に押圧され、ブレーキデイ
スクの回転トルクがブレーキ板に作用し、この回
転トルクがブレーキデイスクよりも低速回転する
複数の遊星ピンで支承され、ブレーキデイスクに
制動力が作用する。

〔考案の効果〕

本考案に係る車両の湿式ブレーキ装置によれ
ば、以上説明したように、ブレーキ板に作用する
回転トルクを複数の遊星ピンで支承するので、ブ
レーキ板の外周部にスプライン歯を形成する必要
がなくブレーキ板の構造を簡単化して製造コスト
を低減出来る。

また、ブレーキ板の軸方向の移動を制限するス
トツパー等を設ける必要がないので、ブレーキ装
置の構造を簡単化でき、ブレーキ板の取り換えも
容易に行うことが出来、軸方向の寸法を小さくし
て、ブレーキ装置をコンパクトに構成することが
出来る。更に、ブレーキ装置を構成する部品数を
少なくして、製造コストを低減出来る。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面に基いて説明す
る。

第１図及び第２図に示すように、車両の駆動輪
を駆動する駆動軸１の軸端に設けられたアクスル
装置２は最終減速装置としての遊星歯車減速機３
とブレーキ装置４から構成され、遊星歯車減速機
３のキヤリア５の外端面外周部においてタイヤホ
イール６に固着されている。

アクスルハウジング７は上記駆動軸１に外嵌さ
れるとともに車体側に固着されタイヤホイール６
の幅方向中央部まで連出され、外端部がインター
ナルギヤハブ８のハブ本体９にスプライン嵌合で
内嵌されるとともに端部にナツト１０が螺合さ
れ、インターナルギヤハブ８に固着されている。

上記インターナルギヤハブ８はハブ本体９と筒
状のリング部材１１とから構成され、リング部材
１１の内周面には内歯車１２が形成され、リング
部材１１の内周側のリングギヤ１２にハブ本体９
のスプライン歯９ａを嵌合させ且つ内歯車１２と
ハブ本体９とに亙つてストツプリング１３を嵌め
込むことによりハブ本体９とリング部材１１とが
一体的に連結されている。但し、ハブ本体９とリ
ング部材１１とは一体形成してもよい。

上記インターナルギヤハブ８の外周側はホイー
ルハブ１４に囲繞され、ホイールハブ１４の外方
側外周端部はキヤリヤ５外周端部とともにタイヤ
ホイール６にボルト１５で固着され、内方側内周
部には１対の軸受３２が内装されハブ本体９とア
クスルハウジング７とに回転自在に支承されてい
る。

上記遊星歯車減速機３は、キヤリヤ５と、イン
ターナルギヤハブ８のリング部材１１のリングギ
ヤ１２と、駆動軸１の端部のスプライン軸部１６
にスプライン嵌合された太陽歯車１７と、キヤリ
ヤ５に取付けられた４個の遊星ピン１９と、軸受
メタル１８を介して遊星ピン１９に回転自在に支
持された４個の遊星歯車２０とから構成され、遊
星歯車２０は太陽歯車１７に歯合するとともにリ
ング部材１１のリングギヤ１２に歯合して遊星ピ
ン１９を中心に回転するとともに駆動軸１を中心
にキヤリヤ５及びホイールハブ１４と一体的に回
転し、キヤリヤ５に固着されたタイヤホイール６
を駆動軸１を中心に減速回転させる。

上記各遊星ピン１９について説明すると、外側
端面の駆動軸１側の偏心位置には環状の座金２１
がボルト２２で固着され、内側端面の駆動軸１外
方側には半円状に切り欠かれた係合部１９ａが形
成され、係合部１９ａの円周面略中央部には切欠
き溝部１９ｂが形成され、遊星ピン１９の両端部
がキヤリヤ５に挿通され支持されている。

上記座金２１の内周部はキヤリヤ５とボルト２
２の頭部との間に挟持され、このボルト２２で座
金２１を介して遊星ピン１９とブレーキ板３０と
を外方側へ引きつけるとともに、ボルト２４でキ
ヤリア５に固定されているカバープレート２３の
内方側に形成された溝部２３ａにボルト２２の頭
部を収容して、遊星ピン１９をキヤリヤ５に対し
て廻り止めしている。

上記ブレーキ装置４は、ハブ本体９の外周部の
外端部に形成された略環状のシリンダー溝９ｂ及
びシリンダー溝９ｂに内嵌された環状のピストン
２５とからなるブレーキシリンダー２６と、スプ
ライン軸部１６にスプライン嵌合しているブレー
キスリーブ２７と、キヤリヤ５とハブ本体９との
間に配設されブレーキスリーブ２７にスプライン
嵌合しリングギヤ１２近傍まで連出された円板状
のブレーキデイスク２８と、ブレーキデイスク２
８の内外両端面にライニングされた一対の環状の
摩擦用ライニング（図示略）と、ピストン２５に
対応する半径方向位置でブレーキデイスク２８と
ピストン２５との間に配設されリングギヤ１２と
スプライン嵌合している環状のデイスクプレート
２９と、ピストン２５に対応する半径方向位置で
ブレーキデイスク２８とキヤリヤ５の間に配設さ
れた環状のブレーキ板３０とから構成されてい
る。

上記ブレーキ板３０の内周部には各遊星ピン１
９に対応する位置で部分円状の切欠係合部３０ａ
が形成され、切欠係合部３０ａの内周面の外方側
には係合部１９ａの切欠き溝部１９ｂに係合する
突部３０ｂが形成され、ブレーキ板３０は遊星ピ
ン１９の内端面よりも内方側に突出するととも
に、ブレーキペダル（図示略）を操作しない時
に、ブレーキデイスク２８と接触しないようにま
た常にキヤリア５の内端面に当接するように遊星
ピン１９の切欠き溝部１９ｂと係合してボルト２
２及び座金２１により常に外方側へ引きつけられ
ており、キヤリヤ５と一体的に回転するようにな
つている。

上記デイスクプレート２９はリング部材１１に
対して軸方向移動可能且つ回転拘束でスプライン
嵌合され、油圧供給装置（図示略）からアクスル
ハウジング７及びハブ本体９に形成された油路３
１を通つてブレーキシリンダー２６に油圧が供給
されると、ピストン２５がブレーキ板３０側へ押
圧され、このピストン２５とキヤリア５の間にデ
イスクプレート２９とブレーキデイスク２８とブ
レーキ板３０とを挟持し、ブレーキデイスク２８
に制動力を作用させる。尚、ブレーキ板３０に対
面するキヤリア５の内端面にはブレーキ板３０を
受け止める受部５ａが形成されている。

次に、上記ブレーキ装置４の作動について説明
する。

ブレーキ板３０を遊星ピン１９に組付ける場合
は、遊星ピン１９の各係合部１９ｂを駆動軸１側
に位置させてキヤリヤ５に挿通し、各切欠係合部
３０ａが各係合部１９ｂに対応するようにブレー
キ板２８を取付けてから、各遊星ピン１９を180°
回転させ切欠き溝部１９ｂと突部３０ｂとを係合
させて組付ける。

ブレーキ板３０は切欠係合部３０ａにおいて遊
星ピン１９の係合部１９ａと係合してキヤリヤ５
と一体的に回転するとともにボルト２２と座金２
１により外方側へ位置規制されブレーキ板３０と
ブレーキデイスク２８との間には僅かな間隔があ
けられている。

各遊星ピン１９はキヤリヤ５と一体的に回転す
るとともにボルト２２と座金２１とを介して外方
側へ引きつけられカバープレート２３で受け止め
られている。また、ボルト２２のナツト部がカバ
ープレート２３の溝部２３ａと係合して各遊星ピ
ン１９を回転拘束するので、遊星ピン１９とブレ
ーキ板３０との係合が外れることはない。

次に、車両のブレーキペダルを操作して油圧供
給装置から油路３１を介して油圧がシリンダー２
６へ供給されると、ピストン２５が外方へ進出
し、ピストン２５の外端面でデイスクプレート２
９を押圧してブレーキデイスク２８をブレーキ板
３０の方へ押圧し、キヤリヤ５の受部５ａに当接
させた状態でデイスクプレート２９とブレーキ板
３０間にブレーキデイスク２８を狭持する。この
時のブレーキ板３０へ作用する回転トルクは、固
定され回転しないデイスクプレート２９で減速さ
れるとともに、ブレーキデイスク２８よりも低速
回転する遊星ピン１９の係合部１９ａに伝えられ
る遊星ピン１９で減速され、同時にキヤリア５で
減速される。

本考案の車両の湿式ブレーキ装置においては、
以上説明したように、ブレーキ板３０の内周面の
切欠部係合３０ａに遊星ピン１９の係合部１９ａ
を係合させて固定してあるのでブレーキ板３０の
構造が簡単でしかも製造コストを低く出来る。

また、ボルト１５，２２，２４を取り外すだけ
でブレーキ板３０は取り外せるので、ブレーキ板
３０を容易に交換することができる。

また、座金２１でブレーキ板３０は外方へ常に
引きつけられるので、ブレーキ板３０とブレーキ
デイスク２８との間に一定の間隔を確保出来る。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すもので、第１図は
アクスル装置の縦断面図、第２図は第１図−
線断面図である。 ２……アクスル装置、３……遊星歯車減速機、
４……ブレーキ装置、５……キヤリヤ、１９……
遊星ピン、２５……ピストン、２８ブレーキデイ
スク、３０……ブレーキ板、３０ａ……切欠係合
部。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 遊星歯車減速機を有するアクスル装置に設けた
   車両の湿式ブレーキ装置において、 上記ブレーキ装置の環状ピストンに対応する半
   径方向位置で遊星歯車減速機のキヤリヤとブレー
   キデイスク間に環状のブレーキ板を設け、 遊星歯車減速機の遊星ピンに対応する上記ブレ
   ーキ板の内周部に部分円状の切欠係合部を形成
   し、 各切欠係合部に各遊星ピンの一部を係合させる
   ことにより、ブレーキ板に作用する回転トルクを
   遊星ピンで支承するように構成したことを特徴と
   する車両の湿式ブレーキ装置。