JPH05109125A - 光デイスクの製造方法およびその材料 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 低密度ピットのディスク成形時における二重
転写をなくすこと。 【構成】 情報用光ディスクであって、溝等の面積がデ
ィスク全体の面積に対して小さい低密度ピットのディス
ク製造方法において、成形時に原盤からピット等を転写
した後ディスクを剥離するとき、成形材料に原盤の表面
張力を大きくさせる成分を含有する添加剤を０．０１重
量％以下としてアンカー効果を増加させるようにしたこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、転写すべきピット等の
面積密度が比較的小さい光ディスクの製造方法およびそ
の材料に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】光ディスクは、ＣＤやＬＤのような再生
専用型、ＣＤ−Ｒ、情報用追記形ディスクのような一度
しか記録再生できない、所謂、追記型、相変化ディスク
のような繰返し記録再生することができる書込型がある
が、特に、記憶容量が大きいことから追記型や書込型は
近年コンピュータ・ファイル等の情報蓄積に広く利用さ
れている。

【０００３】これらの光ディスクのトラッキング方式と
しては、連続サーボ方式とサンプルサーボ方式が知られ
ている。連続サーボ方式は従来開発されてきた方式であ
るが、サンプルサーボ方式はトラッキング安定性が良い
ことから、最近、実用化が進んできている。

【０００４】このサンプルサーボ方式は、サーボ領域と
データ領域を完全に分離しているが、特に追記型や書込
型ではデータをディスク製造後にユーザが記録するため
ディスク製造時には、サーボ領域のピットしか存在して
おらず、転写すべきピットの数が、これまで実用化され
てきた再生専用型のＣＤやＬＤと比較して極端に少な
い。

【０００５】このディスクは、所定形状の金型に成形材
料（ここでは、プラスチック樹脂）を射出成形法により
充填して製造する。図１にその射出成形に用いる射出成
形金型の断面を模式的に表した図を示す。１，２は金
型、３は原盤（スタンパ）、４は金型キャビティ、５は
成形材料の導入部に形成されたスプルを示す。通常、こ
の射出成形は、加熱溶融した成形材料（樹脂）を予め閉
じられた金型キャビティ４に射出充填した後、固化また
は硬化させて成形して行う。その成形品を金型から取り
出す際、金型と成形品との離型操作を容易にするため離
型剤を用いる。

【０００６】成形金型１，２内で配置されたスタンパ３
を基材としてピットを成形材料（プラスチック樹脂）に
転写し、転写された成形品をディスク基板として金型か
ら剥離して取り出すが、この際プラスチック樹脂は冷却
されて固化等するとき急速に収縮する。このとき、ピッ
ト密度の大きなＣＤや超小型情報用ディスク（ＰＯ）の
中でもデータ部のある再生専用型等のピット密度が大き
いディスクは、そのピットがストッパーとして働き（ア
ンカー効果）、形成されたプラスチック基板は、金型を
開いても離型操作により剥離しなければスタンパに固定
されている。

【０００７】しかし、この離型剤はスタンパ３の表面張
力を大きくする性質をも有するものであるため、成形さ
れたディスク基板を金型から剥離するとき、アンカー効
果を小さくしてしまうため高密度ピットの場合には都合
よいが低密度ピットの場合には、ピットがアンカーとし
て働かず、金型を開くと同時に冷却によりプラスチック
基板の収縮が始るためスタンパ３の凸状ピットによって
すでに成形されたピットを破壊し、内周部から外周部へ
尾を引いた、所謂、二重転写状態が発生しそのピットよ
り生成されるトラッキング信号に異常を発生してトラッ
キングが正常に動作しなくなる。

【０００８】また、この離型剤は、成形枚数を重ねてい
くと、次第にスタンパ３表面に蓄積されてしまい二重転
写をより一層増長させてしまう。この問題を解決するた
め、特開昭６３−２１１３７号公報には、サンプルマー
クを有するトラック領域の内側および外側にトラック領
域に近接してグルーブやピットを複数トラックに設け
て、アンカー効果を増加する技術が開示されている。

【０００９】また、特願平３−１２２２８５号公報に
は、サンプルマークを有するトラック領域の内側および
外側にトラック領域に近接してサンプルマークに同期し
たミラー部を配置した断続的な溝（グルーブ）を０．２
５ｍｍ〜０．７５ｍｍの幅で設けてアンカー効果を増加
する技術が開示されている。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の方法で
は必要以外の領域にしか配置できない連続溝等のみでは
プラスチック樹脂の収縮を完全に防止することはできな
い。すなわち、サンプルマークを有する領域に近接して
配置されている連続溝のすぐそばの外周部では大きな効
果を奏するが、最外周部から０．５ｍｍ程度内周に位置
したピットの成形性を向上させる効果は乏しく、その結
果良好なトラッキング信号を得ることができなくなる。

【００１１】本発明の目的はこのような課題を解決する
ことにあり、低密度ピットのディスク成形時における二
重転写をなくし良好なトラッキング信号を得ることがで
きる光ディスクの製造方法およびその材料を提供するこ
とにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
本発明の請求項１に係る光ディスクの製造方法は、成形
時に原盤からピット等を転写した後ディスクを剥離する
とき、成形材料に原盤の表面張力を大きくさせる成分を
含有する添加剤を０．０１重量％以下添加する。

【００１３】前記課題を解決するため本発明の請求項２
に係る光ディスクの製造方法は、成形時に原盤からピッ
ト等を転写した後ディスクを剥離するとき、成形材料に
原盤の表面張力を大きくさせる成分を含有する離型剤を
０．０１重量％以下添加する。なお、成形材料として
は、種々の条件を満たすポリカーボネート樹脂またはア
クリル樹脂を用いるのが好ましい。

【００１４】

【作用】本発明に係る光ディスクの製造方法によれば、
スタンパと樹脂の剥離に原盤の表面張力を大きくさせる
成分を含有する添加剤や離型剤の含有量を少量またはな
くしてアンカー効果を大きくする。

【００１５】

【実施例】以下、本発明に係る光ディスクの製造方法お
よびその材料について説明する。射出成形される光ディ
スクの成形材料としては、光学的に透明で、偏向特性
を乱さない、吸水率が小さく、記録層を十分に保護で
きる、平坦性がよく、形状の経時変化が小さい、安
価である、表面が傷つき難い等の条件を満たす材料と
してポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂が用いられ
る。アクリル樹脂は吸水率が高く（１％以上）、ポリカ
ーボネート樹脂は従来複屈折が大きく光学特性の点で問
題があったが、ポリカーボネート樹脂は射出成形プロセ
スの大幅な改良により実用上ほとんど問題ない程度に改
善されたことから、このポリカーボネート樹脂が成形材
料として使用される場合が多い。その中でも、情報用デ
ィスクはデータの保存性の観点から一般ＣＤ用に製造さ
れた材料（ＣＤグレード）と比較して成形後に形成され
る記録層（薄膜）を変質させないよう保護する重合禁止
剤、未反応モノマーその他の添加剤を極力削減した材料
を使用する。

【００１６】なお、信頼性の点で問題があるが、ポリカ
ーボネート樹脂に比べ１桁以上も複屈折、吸水率の小さ
いポリオレフィン系の基板を使用することも可能であ
る。

【００１７】ところで、これらの材料には金型キャビテ
ィ４で成形されたディスクをスタンパ３や金型１，２か
ら剥離し易くして生産性を向上させるため、脂肪酸エス
テル、ステアリン酸モノグリセリド等の離型剤を添加し
ている。すなわち、従来からこの離型剤を金型１，２や
スタンパ３に付着させてそれらの表面張力を大きくする
ことにより金型１，２やスタンパ３と樹脂の接着を防止
して剥離し易くしている。

【００１８】しかし、前述したようにこの離型剤はスタ
ンパ３の表面張力を大きくするものであるため、成形さ
れたディスク基板を金型から剥離するとき、アンカー効
果を小さくして、所謂、二重転写状態を発生させてしま
う。

【００１９】そこで、低密度ピットのディスク成形にお
いては、スタンパ３と樹脂の剥離には離型剤は特別必要
でないことから、ピット等の成形時にスタンパからピッ
ト等を転写した後ディスクを剥離するとき、成形材料に
は樹脂導入部に形成されるスプル等に固化した材料を剥
離するために必要な０．０１重量％以下の離型剤を含有
することとした。

【００２０】なお、特に離型目的で添加していない添加
物でもスタンパまたは金型に付着して剥離効果を奏する
ものがあるため、そのようなときには離型剤は全く使用
しないようにしてもよい。

【００２１】このように添加剤を低減することにより、
成形後にディスク基板の表面に蒸着される誘電膜や金属
膜等の記録層が変質しなくなる。さらに、この成形され
たディスク基板の表面は、添加剤を低減すると表面張力
が小さくなる。

【００２２】なお、この製造方法およびその材料を前述
した特開昭６３−２１１３７号や特願平３−１２２２８
５号と組合せれば、金型に射出された樹脂材料によるサ
ンプルマークのずれをグルーブ領域と相俟って支えるこ
とで２重転写を防止するため、その効果は一層顕著なも
のとなる。

【００２３】

【発明の効果】本発明に係る光ディスクの製造方法およ
びその材料によれば、下記のような効果を奏することが
できる。 離型剤の含有量を低減して表面張力を小さくしてアン
カー効果を増加させるので、低密度ピットにおけるサン
プルマークの２重転写を防止する。 離型剤その他の添加剤を低減したので、成形後におけ
る記録層（薄膜）の変質が少なくなる。 添加剤を低減することにより表面張力を小さくするこ
とができるので、成形後における記録層（薄膜）の密着
力を向上できる。 上記、の効果を奏する結果、耐候性を向上でき
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】金型の模式図

【符号の説明】

１，２…金型、３…原盤（スタンパ）、４…金型キャビ
ティ、５…スプル。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 久保 進 神奈川県横浜市神奈川区守屋町３丁目12番 地 日本ビクター株式会社内 (72)発明者 町田 秀夫 神奈川県横浜市神奈川区守屋町３丁目12番 地 日本ビクター株式会社内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 記録再生可能、一度だけ記録再生可能、
   再生専用、またはそれらを組合せた光ディスクであっ
   て、射出成形、圧縮成形またはその両者の成形方法を併
   用して、原盤に記録されたピット、溝、またはその両方
   を可塑性を有する成形材料に転写してディスクを成形す
   る光ディスクの製造方法のうち、転写すべきピット、溝
   等の面積がディスク全体の面積に対して小さいディスク
   の製造方法において、成形時に原盤からピット等を転写
   した後ディスクを剥離するとき、成形材料に原盤の表面
   張力を大きくさせる成分を含有する添加剤を０．０１重
   量％以下添加することを特徴とする光ディスクの製造方
   法。
2. 【請求項２】 記録再生可能、一度だけ記録再生可能、
   再生専用、またはそれらを組合せた光ディスクであっ
   て、射出成形、圧縮成形またはその両者の成形方法を併
   用して、原盤に記録されたピット、溝、またはその両方
   を可塑性を有する成形材料に転写してディスクを成形す
   る光ディスクの製造方法のうち、転写すべきピット、溝
   等の面積がディスク全体の面積に対して小さいディスク
   の製造方法において、成形時に原盤からピット等を転写
   した後ディスクを剥離するとき、成形材料に原盤の表面
   張力を大きくさせる成分を含有する離型剤を０．０１重
   量％以下添加することを特徴とする光ディスクの製造方
   法。
3. 【請求項３】 前記成形材料は、ポリカーボネート樹脂
   またはアクリル樹脂であることを特徴とする請求項１ま
   たは２記載の光ディスクの材料。