JPH0460173B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はプレストレスト・コンクリート（以下
「PS」という。）造の梁の構造に係り、とくに、
梁成が小さいときのプレストレス用テンドンの配
置に関するものである。

〔従来の技術〕

鉄筋コンクリート造の建築物において、梁成を
小さくする目的で、梁成に対して幅を大きくした
偏平梁が使用され、梁の端部下方にはハンチを設
けるとともに、プレストレス用テンドンを配置し
てプレストレスを導入する構造設計が採用され
る。

この構造を第３図によつて説明すると、１は鉄
筋コンクリート造の柱であり、２はプレストレス
鉄筋コンクリート梁である。この梁２は梁成ｄを
小さくするために幅ｂを十分大きくとつてあり、
この幅ｂの中に上下の主筋２１を配置してある。
第２の端部にはハンチ３を設け、端部の成d₁を大
きくして応力に対抗し、さらに、断面内にはプレ
ストレス用テンドン４を配置する。テンドン４は
梁中央部で下ば側に配され、両端部近くでは上ば
側に曲げあげられていて、その高低差ｒをライズ
と呼び、これによつて、梁の全長に亘つてプレス
トレスを有効に導入している。５は鉄筋コンクリ
ートスラブである。

〔発明が解決しようとする問題点〕

上述のような梁２にあつては、梁成ｄが小さい
ために、梁２の断面内でのテンドン４のライズｒ
を十分大きく取ることができず、ライズｒによる
吊上げ力のプレストレス効果は大きく取れない。
従つて、偏平梁を採用してもその梁成を十分小さ
くできず、建築物の空間利用効率をあまり向上さ
せることはできない。また、梁成の制約を受ける
場合には、建築物の柱間隔ｌを大きくする要望に
も対応できない。

一方、このような梁２は全断面をコンクリート
スラブ５の厚さの中に完全に内蔵させることもあ
る。このときハンチ３は建築物の空間利用効率
や、高所における上向き作業の型枠工事を伴い、
施工に対して大きな障害となる。また、スラブの
厚さの制約を受けると、テンドン４の配置におけ
るライズｒは小さいものとなつて、十分なプレス
トレス効果を得ることができない。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明は、上述したような偏平梁における問題
点を解決するために開発され、完成されたもので
ある。即ち、本発明は、偏平梁の端部のハンチを
梁の上面側に付加し、プレストレス用のテンドン
の配置をこの逆ハンチ内で行い、テンドンに大き
なライズを与えることを要旨としている。そし
て、本発明はテンドンの配置を、梁中央部の下ば
側から梁端に向かつて曲げ上げ、その端部を梁の
上面を越えて逆ハンチの上ば端部に配線すること
を特徴としている。従つてこの梁のテンドンは従
来のライズにハンチ成を加えた新しい高さのライ
ズを有し、プレストレスの効果が大きくなり、す
ぐれた梁を完成させる。

〔実施例〕

本発明のPS造の梁を実施例の図面に基づいて
詳細に説明する。

第１図は本発明の梁の立断面図で、第２図は平
面図である。図中左半１は一般形の梁を示し、右
半２では梁がスラブに内蔵された構造を採用した
ときの梁を示す。第３図で与えた参照符号は共通
に表示されている。

第１図１において、柱１と梁２とは鉄筋コンク
リートの架構を形成し、梁２にはプレストレス導
入用の緊張材４を配設してある。通常は撚り鋼線
をボイド形式またはアンボンド形式としたテンド
ンを使用する。６は梁２の端部に設けたハンチで
あつて、第３図の従来例と異なつて、梁２の上面
側に突出させて、いわゆる逆ハンチとなつてい
る。このハンチ６の長さＳは、柱１のスパンｌに
対して1/3〜1/4に選ばれる。

このように構成した梁２におけるテンドン４の
配置は、梁２の中央部では下ばに位置し、梁２の
端部側ではハンチ６の先端部で梁２の上ばを通過
し先端ではハンチ６の上面近くに配線される。こ
の配線は、外側柱にあつてはその外面側で常法に
よつて定着される。そしてこのときにテンドン４
の新しいライズＲはハンチ６の成に対応して十分
大きな高さとなつている。

第１図２と第２図２では、スラブ５の表現がそ
れぞれの１図と相異している。即ち２図側では梁
２の成ｄがスラブ５の厚さｔと等しく、従つて、
梁２は全くスラブ５の厚さ内に内蔵されており、
梁２の幅ｂは点線で表示されていて、スラブ５の
下面は平版スラブと同じになつている。

第１図中の７は上階の床面を示し、スラブ５に
対し二重床を形成し、床下空間８を形成している
から、ダクトの配置やフリーアクセス二重床など
の構成をとることができる。

〔作用〕

本発明の作用を上記実施例の工程に基づいて説
明する。柱１と梁２とスラブ５との鉄筋コンクリ
ート工事の施工は通常の通り行われるが、この間
にハンチ６の形成とテンドン４の配設とが行われ
る。ハンチ６は梁２の上面に突出して形成される
から、梁２またはスラブ５の型枠の上面から梁２
またはスラブ５の厚さだけ隔てた型枠を支持して
おいて梁２またはスラブ５のコンクリートに引続
いて打設してもよく、また梁２またはスラブ５の
打設後その上面に型枠を設置して後打ちによつて
形成してもよい。テンドン４には所定の緊張力が
加えられて、梁２をPS造とする。

このとき、テンドン４にはライズＲが与えられ
るから、プレストレスは梁２とハンチ６とにわた
つて有効に導入され、とくに大きなライズＲによ
つて大きなプレストレス効果を持たすことができ
る。

また、梁２をスラブ５の厚さ内に内蔵させる偏
平梁としても、ハンチ６によつて達成される大き
なプレストレス効果が得られる。

実例として、第１図、２図に示す建築物におい
て、柱１の間隔ｌを８ｍ、ハンチ６の長さｓを２
ｍ、ハンチ６の突出高さを25cmとすると、梁２に
おけるライズＲは Ｒ＝ｒ＋25 となつて、常に25cm分のライズの利得があり、柱
幅１ｍに対して梁幅ｂを１ｍとするようなPS梁
では、スラブの構造形式如何に拘わらず有効なプ
レストレス効果のあるプレストレスの導入をした
梁となつている。

〔発明の効果〕

本発明の梁は上述したような構成と作用によ
り、従来のような通常ハンチのPS造の梁と比較
して有効なプレストレス導入を可能とする。この
ことはひいては建築物の基本の設計において、梁
成によつて規制を受けない階高の有効な積層を可
能とし、さらに、同一の梁成の範囲内では、柱間
隔の増大を可能にし、大型建築物への貢献が大き
い。また、柱頭部におけるキヤピタルの形成に伴
う施工を全廃して逆ハンチの形成に変えたことは
著しく施工性を改善するばかりでなく、ハンチの
突出による空間利用効率も改善する。反面、上階
における床を二重床に構成することが必要となる
が、スラブ上面で空調ダクトの配管空間を得ら
れ、スラブ下面での空調ダクトの配管空間に代え
られて従来のものと比べて損失がなく、さらにフ
リーアクセスフロアとして利用できる副次効果を
も有している。

総じて、本発明のPS造の梁は、ハンチの構成
を変化させた以外には従来の梁と同一の梁成、ハ
ンチ成、テンドン量、プレストレス導入力とした
ときでもテンドンのライズを大きくとることがで
き、それによつて基本の設計に寄与することが誠
に大きい。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明のPS梁を説明するための実施例
の概略構成図である。第１図は本発明の梁を含む
建築物の立断面図、第２図はその平面図であつて
両図の左半の１図は一般形の梁を示し、右半の２
図は梁内蔵のスラブ構造を採用したときの梁を示
す。第３図は従来の技術による通常のハンチを有
する梁の立断面図である。 １……柱、２……梁、３……ハンチ、４……緊
張材、テンドン、５……スラブ、６……ハンチ、
逆ハンチ、ｄ……梁成、d₁……ハンチ成、ｂ……
梁幅、ｔ……スラブ厚、Ｒ……ライズ、ｌ……柱
間隔、スパン。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ せいに対して幅を比較的大きくし、プレスト
   レスを導入した鉄筋コンクリート梁において、こ
   の梁の端部には逆ハンチを設け、この梁のプレス
   トレス導入用緊張材を梁の中央部の下ば側から曲
   げ上げて、その端部を、このハンチの上面寄りの
   端部に定着させてあることを特徴とするプレスト
   レスト・コンクリート造の梁。 ２ 鉄筋コンクリート梁は、この梁が支持するコ
   ンクリート・スラブの厚さ内に内蔵された偏平梁
   であることを特徴とする特許請求の範囲第１項記
   載のプレストレスト・コンクリート造の梁。