JPH0448371Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、たとえばコンプレツサなどの機器の
回転軸周を密封するリツプ型シールの改良に関す
るものである。

〔従来の技術〕

従来から、例えばカークーラーのコンプレツサ
に使用される軸封装置として、第５図に示すよう
に、密封空間Ａ側のゴム材製の第一のリツプ３
と、その反密封空間（大気）Ｂ側の第二のリツプ
６と、この第二のリツプ６をその反密封空間Ｂ側
から支承するとともに背面にダストリツプ８が焼
き付けられた金属バツクアツプリング７と、第一
のリツプ３の外径部３ｂおよび該リツプ３と一体
のゴム材からなる外周装着部４に内向き鍔部９を
含む一端が焼き付け埋設されるとともに内周に前
記第二のリツプ６およびバツクアツプリング７を
組み付け固定してなる金属外環５とを備えたリツ
プ型シールが知られている。

このリツプ型シールは、金属外環５で補強され
た前記外周装着部６がコンプレツサハウジング１
内周面に密嵌され、該ハウジング１の内周段差部
１ａに、第一のリツプ３の外径部３ｂおよび外周
装着部４における接液側端面４ａが当接した状態
に位置決め固定されて、各リツプ３，６，８の内
径端部３ａ，６ａ，８ａが回転軸２の外周面と気
密摺接することによつて軸封機能を営むものであ
る。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかしながら、上記従来の構成によると、回転
軸２との摺動トルクによつて、第二のリツプ６が
第一のリツプ３とバツクアツプリング７との間で
スリツプすることがないように、第二のリツプ６
の外径部６ｂに対する所定の挟持力を維持する必
要から、金属外環５の内向き鍔部９は、第一のリ
ツプ３の外径部３ｂの第二のリツプ６側に偏在し
た位置に埋設されており、したがつて、ハウジン
グ１の内周に圧入された当該リツプ型シールは、
ハウジング１の内周段差部１ａに対してゴム材か
らなる接液側端面４ａが当接するため、ゴム材の
弾性によつて収まりが悪く、したがつてリツプ型
シールを軸方向に対して精度良く位置決めして安
定的に組み付けることができず、しかも、ゴム材
からなる前記外周装着部４が前記内周段差部１ａ
の内周縁の喰い込みによつて破損し易くなり、運
転時のリツプ型シールの振れも増大し易く、シー
ル機能に悪影響を及ぼしていた。

本考案のリツプ型シールは、このような点に鑑
み、ハウジングへの組み付けの不安定さによるシ
ール機能の低下を来さないようにすることを目的
としてなされたものである。

〔問題点を解決するための手段〕

上記課題を解決するため、本考案は、金属外環
の一端に焼き付けられたゴム製の外周装着部から
一体に延びる密封空間側の第一のリツプと、前記
金属外環の内周に固定された金属バツクアツプリ
ングと、このバツクアツプリングと前記第一のリ
ツプとの間に外径部が挟着された反密封空間側の
第二のリツプとを備えたリツプ型シールにおい
て、前記金属外環の一端に形成された内向き鍔部
に、前記外周装着部および第一のリツプ外径部の
接液側端面から露出してハウジングの内周段差部
と当接する露出部と、第一のリツプ外径部の内部
に埋没する埋没部とを周方向に交互に設けたもの
である。

〔作用〕

上記構成によると、金属外環の内向き鍔部に形
成された露出部がゴムからなる外周装着部および
第一のリツプ外径部の接液側端面から露出してハ
ウジングの内周段差部に金属接触することから、
ゴム接触による軸方向への装着精度の不安定さを
解消し、しかも、この露出部と交互に前記内向き
鍔部に形成された埋没部が第一のリツプの外径部
内に埋没していて、その分だけ第二のリツプ側へ
突出していることから、該第一のリツプの外径部
とバツクアツプリングの間での第二のリツプの外
径部に対する良好な挟持力を維持する。

〔実施例〕

以下、本考案を、第１図ないし第３図に示す一
実施例を参照しながら説明する。なお、先に述べ
た第５図の従来構造のものと同一の部分には同一
符号を付し、その説明は省略する。

すなわち本考案のリツプ型シールは、金属外環
５の内向き鍔部９に放射状に延びる凹凸を形成す
ることによつて、ゴム材からなる外周装着部４お
よびこれと一体である第一のリツプ３の外径部３
ｂの接液側端面から露出してハウジング１の内周
段差部１ａと当接する露出部９ａと、第一のリツ
プ３の外径部３ｂの内部における第二のリツプ６
側へ埋没した埋没部９ｂとを周方向に交互に等配
状に設けたものである。

したがつて、本考案の構成においては、内向き
鍔部９の露出部９ａとハウジング１の内周段差部
１ａの金属接触によつて、軸方向への位置決め精
度が向上し、安定的に組み付けることができる。
また、この露出部９ａと交互に形成された埋没部
９ｂが第一のリツプ３の外径部３ｂ内で第二のリ
ツプ６側の位置に埋没していることから、該第一
のリツプ３の外径部３ｂとバツクアツプリング７
の間での第二のリツプ６の外径部６ｂに対する良
好な挟持力が維持され、しかも埋没部９ｂは周方
向に断続したものであるため、第一のリツプ３の
外径部３ｂの背面と、第二のリツプ６の外径部６
ｂとの周方向のスリツプトルクが増大し、シール
性をきわめて安定化させることができる。

ところで、上記した本考案構造および従来構造
のリツプ型シールをカークーラーに実装して、圧
力が２Kg／cm²Ｇ、回転数が6500rpm、温度が80℃
の条件下で、冷凍機油を密封流体として漏洩量の
比較試験を行なつた結果、第４図に示すように、
本考案のリツプ型シール（プロツト：Δ）は、従
来のリツプ型シール（プロツト：○）と比較して
漏れが大幅に減少することが判明した。

なお、本考案は、上記実施例にとくに限定され
るものでないことは勿論である。

〔考案の効果〕

以上、本考案によると、金属外環の内向き鍔部
に、ゴムからなる接液側端面から露出してハウジ
ングの内周段差部に金属接触する露出部と、第一
のリツプの外径部内に埋没して第二のリツプの外
径部を挟圧する埋没部を周方向に交互に設けたこ
とから、第一のリツプの外径部とバツクアツプリ
ングの間での第二のリツプの外径部に対する良好
な挟持力を維持してスリツプトルクを向上させる
と同時に、軸方向への位置決め精度を向上させて
組み付けの不安定さを解消することができるの
で、長期間安定した密封性を維持することができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るリツプ型シールの一実施
例を示す半裁断面図、第２図は同じく金属外環の
正面図、第３図は第２図の−線における断面
図、第４図は本考案のリツプ型シールと従来のリ
ツプ型シールとの時間による漏洩量の比較試験の
結果を示す説明図、第５図は従来のリツプ型シー
ルの半裁断面図である。 １……ハウジング、１ａ……内周段差部、３…
…第一のリツプ、３ｂ，６ｂ……外径部、４……
外周装着部、５……金属外環、６……第二のリツ
プ、７……バツクアツプリング、９……内向き鍔
部、９ａ……露出部、９ｂ……埋没部、Ａ……密
封空間、Ｂ……反密封空間。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 金属外環の一端に焼き付けられたゴム製の外周
   装着部から一体に延びる密封空間側の第一のリツ
   プと、前記金属外環の内周に固定された金属バツ
   クアツプリングと、このバツクアツプリングと前
   記第一のリツプとの間に外径部が挟着された反密
   封空間側の第二のリツプとを備えたリツプ型シー
   ルにおいて、前記金属外環の一端に形成された内
   向き鍔部に、前記外周装着部および第一のリツプ
   外径部の接液側端面から露出してハウジングの内
   周段差部と当接する露出部と、第一のリツプ外径
   部の内部に埋没する埋没部とを周方向に交互に設
   けたことを特徴とするリツプ型シール。