JPH0435255Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は鉄道車両の板ばね式軸箱支持装置の支
持板に装着するダイナミツクダンパーに関する。

〔従来の技術〕

鉄道車両、特に高速車両用台車の板ばね式軸箱
支持装置は、車輪の軸受けを収めた軸箱と台車枠
の中央寄りとを板ばねからなる支持板で連結した
ものであり、摺動摩耗部分がないこと、及び軸箱
支持剛性が前後に硬く左右に比較的柔らかくなつ
ており安定した支持性能を維持できること等から
近年多用されている。

しかし、板ばね式軸箱支持装置は摩擦部分がな
いため振動減衰能が小さく、板ばね自身の振動減
衰能も小さい。従つて、軸箱の振動に伴なつて板
ばねからなる支持板が振動し、特に支持板の共振
が280〜300Km／hr程度の走行速度で起こるため、
高速走行時になるほど応力振幅が著しく増大しこ
れが車両騒音の原因となると共に、台車の振動の
原因ともなる。

そこで、板ばね式軸箱支持装置の支持板に板ば
ね振動系とは別の振動系を装着することにより、
板ばね振動系に対して減衰を与えてその振動を小
さくする試みが行われている。例えば、鉄道技術
研究資料、1982年５月，第224頁の「961形試作電
車の軸箱支持板振動対策試験」と題する制振材と
ダイナミツクダンパーを用いた試験報告には、制
振材は有効ではないが、ダイナミツクダンパーは
軸箱支持板の振動抑制に有効であることが記載さ
れている。

しかし、上記報告に記載された従来のダイナミ
ツクダンパーは、走行中にウエイト部材等が外れ
ると脱線などの事故の原因ともなり得るので、支
持板にＵ字状の保持枠を取り付け、この保持枠の
内側に弾性部材でウエイト部材を固着し、更にウ
エイト部材をボルトで支持板に固定することによ
り、各部材が保持枠から容易に外れない構造にな
つていたため、複雑で部品点数も多く、軸箱支持
板への取付が容易でなく非能率的にあつた。又、
ウエイト部材と弾性部材が直接固着されているた
め、傷んだ弾性部材の交換等の保守点検が面倒な
うえ、チユーニングによるウエイト部材の交換が
困難であつた。

〔考案が解決しようとする問題点〕

本考案は、板ばね式軸箱支持装置の支持板に装
着して支持板の振動を抑制するダイナミツクダン
パーであつて、特に構造が簡単で支持板への装着
が容易であり、且つ弾性部材やウエイト部材の交
換を含め保守点検やチユーニングが簡単なダイナ
ミツクダンパーを提供することを目的とする。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案による鉄道車両の軸箱支持板用ダイナミ
ツクダンパーは、中央貫通孔を有する筒状の内筒
金具と、内筒金具の外周に配置した外筒金具と、
外筒金具と内筒金具との間にあつて両者を結合し
た弾性部材と、外筒金具の外周面に装着した筒状
のウエイト部材と、一端にストツパー部を有し他
端に締結手段を備えた固定用ピン部材とを具備
し、前記内筒金具の中央貫通孔に通した固定用ピ
ン部材を軸箱支持板に設けた開口に挿通して締結
手段で固定するものである。

〔実施例〕

図面を参照して本考案の一実施例を説明する。

このダイナミツクダンパー２は、第１図及び第
２図に示すように、中央貫通孔を有する円筒形の
内筒金具４を備え、内筒金具４の外周面にはゴム
等の弾性部材５を介して円筒形の外筒金具６が同
心円状に固定されている。弾性部材５は筒形でも
第２図の如く複数個の部材を均等に配置しても良
い。外筒金具６の外周面には円筒形のウエイト部
材７を圧入した後カシメて固定してあるが、必要
に応じてダイナミツクダンパー２の固有振動数を
変えるために別の寸法のウエイト部材と交換する
ことができる。

内筒金具４の中央貫通孔には固定用ピン部材と
して固定用ボルト８が挿通される。固定用ボルト
８の一端にはストツパー部である円形のストツパ
ープレート９が形成され、他端には締結手段とし
てナツト１０を具えている。

このダイナミツクダンパー２を鉄道車両の軸箱
支持板１に装着する手順としては、弾性部材５、
外筒金具６及びウエイト部材７を組合せた内金具
４を、中央部に開孔を有するウレタンゴムプレー
ト等の弾性体からなる円形の座板３に載せ、内筒
金具４の中央貫通孔及び座板３の開孔が共に軸箱
支持板１の所定位置に設けた開孔と一致するよう
に軸箱支持板１上に置く。次に、内筒金具４の中
央貫通孔に固定用ボルト８を挿入し、ストツパー
プレート９で内筒金具４を押え、固定用ボルト８
の他端に別の座板３を挿入した後ナツト１０で固
定する。

次に、本考案に係わるダイナミツクダンパーの
配置部位を第３図に示す。この図は片ミンデン式
と呼ばれる板ばね式軸箱支持装置であり、車輪１
４の車軸１３を支持する軸箱１２の上に軸バネ１
５を介して台車枠１１の両端寄りが支持され、更
に台車枠１１の中央寄りに固定した台車側ばり１
６と軸箱１２の間が板ばねからなる上下２枚の軸
箱支持板１で支持されている。ダイナミツクダン
パー２は各軸箱支持板１のほぼ中央部に取り付け
られ、軸箱支持板１の応力振幅を大幅に減少させ
るものである。

上記実施例では、ダイナミツクダンパーの各部
材を円筒形ないし円形にしてあるが、バランスが
保たれる形状であれば良く、例えば内筒金具、弾
性部材、外筒金具及びウエイト部材を多角筒形と
し、座板及びストツパープレートを多角形として
も良い。又、ゴム等弾性部材は中実形でも、内筒
金具の外周面に沿つて等間隔に穴抜きした形状で
あつてもよい。

固定用ボルトの一端に形成されたストツパープ
レートのようなストツパー部は内筒金具を押えう
る大きさであれば良いが、外筒金具の外周面まで
の大きさより大きく形成すれば、ウエイト部材等
が万一離脱した場合でも、これが固定用ボルトか
ら外れて飛び出すことを防止できる。

〔考案の効果〕

本考案によるダイナミツクダンパーは構造が極
めて簡単であり、その組み立て及び軸箱支持板へ
の装着並びに保守点検が簡単容易である。

また、ダイナミツクダンパーのウエイト部材は
外筒金具の外周面に圧入した構成であるから取替
えが可能である。従つて、ウエイト部材を取替え
ることによつて、ダイナミツクダンパーの固有振
動数を軸箱支持板の固有振動数と容易に一致させ
ることができる、つまりダイナミツクダンパーの
チユーニングが簡単にできる利点がある。

更に、固定用ボルトの一端に形成するストツパ
ープレートの大きさを外筒金具の大きさよりも大
きくすることによつて、車両送行中にウエイト部
材等が内筒金具から脱離した場合でも、脱離した
外筒金具等が固定用ボルトから外れることがなく
安全である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のダイナミツクダンパーを軸箱
支持板に装着した状態を示す概略断面図である。
第２図は第１図の−線にそつた断面図であ
る。第３図は軸箱支持板に本考案のダイナミツク
ダンパーを取り付けた板ばね式軸箱支持装置の側
面図である。 １……軸箱支持板、２……ダイナミツクダンパ
ー、３……座板、４……内筒金具、５……弾性部
材、６……外筒金具、７……ウエイト部材、８…
…固定用ボルト、９……ストツパープレート、１
０……ナツト。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 中央貫通孔を有する筒状の内筒金具と、内筒金
   具の外周に配置した外筒金具と、外筒金具と内筒
   金具の間にあつて両者を結合した弾性部材と、外
   筒金具の外周面に装着した筒状のウエイト部材
   と、一端にストツパー部を有し他端に締結手段を
   備えた固定用ピン部材とを具備し、前記内筒金具
   の中央貫通孔に通した固定用ピン部材を軸箱支持
   板に設けた開口に挿通して締結手段で固定する、
   鉄道車両の軸箱支持板用ダイナミツクダンパー。