JPH04280957A - 薄膜とその製造方法 - Google Patents

薄膜とその製造方法

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JPH04280957A
JPH04280957A JP6785191A JP6785191A JPH04280957A JP H04280957 A JPH04280957 A JP H04280957A JP 6785191 A JP6785191 A JP 6785191A JP 6785191 A JP6785191 A JP 6785191A JP H04280957 A JPH04280957 A JP H04280957A
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film
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日出海 中井
Hiroaki Kobayashi
浩明 小林
Mikiro Konishi
幹郎 小西
Yoichi Miyazawa
宮沢 陽一
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Nippon Sheet Glass Co Ltd
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Nippon Sheet Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は機械的強度と化学的安定
性を兼ね備えた薄膜及びその薄膜の製造方法に関する。 さらに詳しくは、外気に触れるような厳しい環境下で使
用される薄膜被覆物品とりわけ機械的強度と化学的安定
性を兼ね備えていることが要求される薄膜被覆物品の保
護膜として好適な薄膜や、光学特性を基板に付与するの
に低屈折率層として用いるのに好適な薄膜とその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】基板に薄膜を被覆した製品としては、エ
レクトロニクス、特に情報処理の分野では種々の製品が
知られており、その一つに薄膜記録媒体がある。例えば
、ポリカーボネートのようなプラスチック、ガラス、ア
ルミニウムのような基板上に、CoNiCrのような磁
気膜、TbFeCoのような光磁気膜、レーザー読み取
り用のアルミニウム反射膜などを形成した媒体が挙げら
れる。また熱印字記録の分野では、主として薄膜発熱抵
抗体が形成されたサーマルヘッドとよばれる部品が広く
用いられている。
【0003】また、プラスチック材料の実用的な用途を
広げるために、表面にハードコートを施すということが
行われている。また、ガラスやプラスチックのような透
明基板上に薄膜を被覆して、種々の光学特性を付与した
多くの透明物品が知られている。可視光線の反射率を低
減させディスプレー等を見やすくするための反射防止膜
や、任意の波長の透過率や反射率を選択的に高めたり低
めたりしたエッジフィルター、バンドパスフィルターの
ような光学干渉フィルター、さらには高反射ミラーなど
が例示できる。これらの製品で必要とする光学特性を得
るために、ある特定の波長の光を強めあったり弱めあっ
たりするように、各層の膜の厚みと屈折率を調整して光
学干渉作用を利用することがおこなわれる。この場合、
基本的な特性は、その干渉作用を発現させるために用い
られる高い屈折率膜の材料と低い屈折率膜の材料の屈折
率の比によって決まり、その比が大きいほど得られる光
学特性は優れており、例えば選択された波長域での反射
率や透過率はより高くなる。従って、より高い屈折率の
材料とより低い屈折率の材料の組合せを選ぶことが基本
的に重要となる。上記製品の薄膜の製造に際しては、薄
膜の厚みを厳密に制御する必要があることから、真空蒸
着やスパッタリングのような真空成膜法で被覆される場
合が多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の薄膜被覆物品の
最大の問題点は、直接外部環境に曝されるような使用環
境での、機械的化学的耐久性が不足していたことである
。とりわけ、真空中で成膜された被膜ではこの問題が深
刻であった。すなわち実用的見地から耐摩耗や耐スクラ
ッチなど機械的に強く、かつ、酸、アルカリの両方に対
して化学的に安定な薄膜は得られていなかった。すなわ
ち、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタルなど
は、比較的優れた化学的耐久性を示すが、機械的耐久性
、特に耐摩耗性の点で不十分である。逆に、酸化シリコ
ンは、優れた機械的耐久性を示すが、耐アルカリ性に極
めて劣る。このように、優れた化学的耐久性と機械的耐
久性をあわせもった薄膜は、特に真空成膜法で成膜され
る膜の中には実質上存在しないのが実状であり、このこ
とがこれら薄膜被覆物品の普及を著しく阻害する要因に
なっていた。
【0005】また、薄膜を基板に被覆して光学物品とす
るには、低屈折率の薄膜を得ることが重要であるが、真
空成膜法では得られる低屈折率材料が非常に限られてい
た。すなわち、真空蒸着法の場合は、フッ化マグネシウ
ム(MgF2)を始めとする各種フッ化物や二酸化ケイ
素(SiO2 )が知られているが、スパッタリング法
の場合にはSiO2 だけに限られていた。
【0006】しかしながら、真空蒸着法では、装置の大
きさの制約から大きな面積の基体に成膜することは必ず
しも適当でなく、光学部品や眼鏡のような小さな面積の
基板にもっぱら応用されている。さらに大きな面積の基
板に対して精度よく厚みを制御して成膜する手段として
はスパッタリング法に限られている。その場合は、上述
したように低屈折率材料としては二酸化ケイ素だけしか
用いられないという問題がある。さらに、その二酸化ケ
イ素膜は金属シリコンをターゲットにして酸素を含む雰
囲気中で直流反応性スパッタリング法により成膜する場
合、時間の経過とともにシリコンターゲットの表面が極
めて絶縁性の高いSiO2 膜で覆われるため、直流ス
パッタ放電を持続することが困難になるという重大な課
題が残されている。従って、成膜プロセスが極めて不安
定となるため、工業レベルはもちろん実験室レベルでも
、二酸化ケイ素膜を直流反応性スパッタリングにより形
成することは行われていない。つまり、現状では低屈折
率材料であるSiO2 膜を比較的大きな面積の基板に
安定的に成膜しようとする場合SiO2 からなるター
ゲット(例えば石英ガラス)を用いて、高周波スパッタ
リングによって行われるのが唯一の方法である。
【0007】しかしながら、この高周波スパッタリング
法で大きな面積の基板にSiO2 薄膜を成膜しようと
した場合、ターゲットの面積を大きくしなければならず
、大きなターゲットに効率的に高周波電力を投入する電
源がないという問題があった。さらには、成膜中に時間
の経過とともに装置の内壁に絶縁性のSiO2 膜が形
成されることによって装置の電気インピーダンスが変化
し、高周波電力の投入のマッチングをとることが困難に
なるという問題が生じていたため、大きな面積の基板に
低屈折率であるSiO2 膜を成膜するには、依然とし
て未解決の課題が数多く残されていた。
【0008】本発明は上記の問題点を解決するためにな
されたものであって、薄膜被覆物品とりわけ大きな面積
、たとえば1m×1m以上の大きな面積を有する薄膜被
覆物品を製造するのにも適する機械的強度と化学的安定
性を兼ね備えた薄膜とその製造方法を提供するものであ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、シリコン、タ
ンタル、炭素、窒素、酸素からなり、化学式SiTaj
 Ck Nm On で表される組成を有する薄膜であ
って、前記jの値が0.2以上0.6以下であって、前
記kの値が0.3以上1.0以下であって、前記mの値
が0.1以上1.0以下であって、前記nの値が1.0
以上である薄膜である。
【0010】本発明の薄膜がアルカリと酸の両方に対す
る化学的耐久性と耐摩耗性等の機械的耐久性とをあわせ
もった膜であるためには、jの値は0.2〜0.6の範
囲でなければならない。jの値が0.2より小さいと十
分な化学的耐久性を有する膜とならない。jの値が0.
6より大きいと機械的耐久性が低下する。また、kの値
が1.0以上、あるいはmの値が1.0以上、あるいは
nの値が1.0以下であると、機械的耐久性と、特に耐
アルカリ性が低下してしまう。一方kの値が0.3以下
、あるいはmの値が0.1以下、あるいはnの値が1.
0以上である場合は、化学的耐久性、機械的耐久性とも
低下する。
【0011】さらに本発明の薄膜を、実用的な機械的強
度と化学的安定性を有する上に、可視光線の領域で屈折
率が1.7以下で、かつ、実質的に光の吸収がない膜と
するためには、前記jの値を0.2以上0.5以下、前
記kの値を0.3以上0.8以下、前記mの値を0.2
以上1.0以下、前記nの値が1.5以上とするのが好
ましい。
【0012】jの値が0.6より大きいと屈折率が2.
0より大きくなってしまい、また光吸収を生じやすくな
る。屈折率を1.7以下程度に小さくするには、jの値
は0.5以下であるのが望ましい。kの値とmの値の下
限値は厳密には定めにくいが、ターゲットが少なくとも
50容積%以上のSiCを含み、直流反応性スパッタリ
ングを安定的に行うこと、そして得られる膜が光学薄膜
として実用性を発揮するのに十分な機械的・化学的耐久
性を有するためには、kの値は0.3以上、mの値は0
.2以上であることが好ましい。kとmの値の上限値は
、屈折率を1.7以下程度にし、実質的にほとんど光吸
収をなくすためには、kの値を0.8以下、mの値を1
.0以下とすることが好ましい。nの値の下限値も同様
の理由から1.5以上とすることが望ましい。nの値の
上限値は反応性スパッタリングの雰囲気ガスを酸素10
0%の雰囲気内でおこなっても、約3.0以下の値とな
る。
【0013】本発明の薄膜を薄膜被覆物品の最上層に被
覆して保護膜として用いるときは、前記物品の実用的な
化学的安定性および機械的耐久性を確保するためには、
10nm以上、さらに好ましくは20nm以上の厚みに
被覆するのがよい。一方100nm以上に厚く被覆して
も、化学的・機械的耐久性がさらに向上するわけではな
く、被覆に時間がかかる上に、膜の剥離を生じることが
あるので好ましくない。本発明の薄膜を多層光学薄膜を
構成する低屈折率膜として用いるときは、必要とする光
学特性と光学干渉理論とから膜の構成が定められる。
【0014】本発明の第2は、SiC(炭化ケイ素)と
TaC(炭化タンタル)、TaN(窒化タンタル)、T
aB2 (硼化タンタル)、TaSi2 (珪化タンタ
ル)、TaH2 (水素化タンタル)の群から選ばれた
少なくとも一種以上のTa化合物とを主成分とした焼結
体からなるターゲットを用いて、少なくとも酸素と窒素
とを含む減圧された雰囲気内でおこなう直流反応性スパ
ッタリング法により、基体の上に化学式SiTaj C
k Nm On で表される組成を有する薄膜を製造す
る方法である。
【0015】ターゲット中のTa化合物の混合割合は、
得られる膜の化学的耐久性と機械的耐久性の両方が十分
に高くなるように、また少なくとも酸素と窒素とを含む
減圧された雰囲気中で、安定した反応性スパッタリング
が可能となるように定められる。そのためにターゲット
中のTaC、TaN、TaB2 、TaSi2 、Ta
H2 の群から選ばれた少なくとも一種以上の含有量を
10〜50容積%とすることが好ましい。これにより前
記化学式中のjの値は、0.2以上0.6以下の範囲に
なり、優れた化学的・機械的耐久性を有する膜となる。
【0016】ターゲット中に混合させるTa化合物の混
合割合が、10容積%以下であると反応性スパッタリン
グが極めて不安定になるので好ましくない。ターゲット
中でTa化合物が連続的な構造となり、電気抵抗を低下
させ成膜プロセスを安定化させるためには、Ta化合物
の混合割合は25容積%以上であることがさらに好まし
い。一方50容積%より多いと、得られる薄膜の屈折率
が高くなり、また光吸収が生じやすくなるので好ましく
ない。
【0017】また、反応性スパッタリングを行う際の雰
囲気のガス組成を変えることによって、本発明の薄膜の
組成を調整することができる。少なくとも酸素と窒素と
を含む雰囲気で反応性スパッタリングを行う場合には、
アルゴンやネオンのような不活性ガスの量が多すぎるの
は好ましくなく、窒素の量が少なくとも0.2Pa以上
の分圧を有し、かつ、全圧の40%以上を占めるように
雰囲気のガス組成を調整するのが好ましい。これにより
得られる薄膜の光吸収が少なくなり、直流反応性スパッ
タリングの安定性も増す。さらに重要なのは雰囲気中の
酸素ガスの割合であって、屈折率が1.7程度以下に小
さくかつ光吸収がなく、十分な機械的強度と化学的耐久
性をもった膜とするには、酸素の分圧は全圧の10%以
上とすることが好ましい。
【0018】本発明の薄膜を含む薄膜被覆物品を製造す
るに際しては、本発明の薄膜以外の膜の成膜法は特に限
定されるものではなく、真空蒸着法、イオンプレーティ
ング法、スパッタリング法などが用いられる。必要とす
る薄膜を連続して効率よく成する上からは、スパッタリ
ング法が好ましい。
【0019】
【作用】本発明のSi−Ta−C−N−O系の薄膜中の
炭素、窒素、酸素は、シリコン、タンタルと結合して化
合物を形成し、またそれらの膜中の含有量が限定される
ことにより、薄膜に大きな機械的強度と優れた化学安定
性を付与する。さらに薄膜を可視光線の波長域で透明で
かつ低屈折率にする。
【0020】本発明の薄膜を直流反応性スパッタリング
により製造するに際しては、ターゲット中に混合された
Ta化合物は、ターゲットの電気抵抗を低下させ、また
ターゲット表面上に形成される被膜やスパッタリング装
置の内壁に形成される被膜の電気抵抗を低下させる。こ
れにより成膜プロセスの安定性が向上する。
【0021】
【実施例】以下に実施例に基づき、本発明をさらに詳細
に説明する。図1(a)、(b)は、本発明の薄膜を用
いた薄膜被覆物品の一実施例の一部断面図である。図1
(a)では、ガラス基板3の上に磁気記録膜2が被覆さ
れ、磁気記録膜2の上に本発明の薄膜1が保護膜として
被覆されている。本発明の薄膜を用いた薄膜被覆物品と
しては、基板1としてプラスチックス、アルミニウムな
どの金属板、セラミックス板を用いることができ、磁気
記録膜の他に、透明誘電体膜、電気抵抗膜無反射多層膜
などを用いることが出来る。図1(b)は本発明の薄膜
を低屈折率層、本発明の膜よりも高い屈折率を有する膜
を高屈折率層とする光学多層膜を被覆した物品の一実施
例であり、本発明の薄膜1と高屈折率膜4が交互に被覆
されている。
【0022】実施例1 スパッタリングターゲットとして、65容積%(32重
量%)のSiCと30容積%(66重量%)のTaCと
焼結助剤(残分)とからなるものを用いた。清浄にされ
た2.1mm厚のフロートガラスをスパッタ装置に入れ
、上記ターゲットを設置した真空槽を約5×10−4P
aまで排気し、その後窒素と酸素の合計流量で100s
ccmのガスをスパッタ装置に導入して、真空槽内の圧
力を0.4Paに調節した。そして、直流電源からター
ゲットに電力を投入して放電を開始し、4Aの電流値で
約75nmの厚みの被膜をガラス基板上に成膜した。真
空槽に導入する窒素と酸素のガス流量の比を変えて、同
様の手順を繰り返し、5種類のサンプル1〜5を作成し
た。得られたサンプル1〜5の薄膜の屈折率と化学組成
を表1
【0023】
【表1】
【0024】にまとめて示す。屈折率はエリプソメータ
ーを用いて、632.8nmの波長での屈折率nと消衰
係数kを測定した。化学組成はESCAを用いて測定し
た。 実施例2 ターゲット中に含有するTa化合物の種類と含有割合を
変えて成膜し、成膜時の直流反応性スパッタリングの安
定性を観察すると共に、得られた薄膜の屈折率と化学組
成を分析した結果を、
【0025】
【表2】
【0026】表2に示す。サンプル6〜11の作成は、
それぞれのターゲットをスパッタ装置に設置し、清浄に
された2.1mm厚のフロートガラス板を真空槽にセッ
トした後、約5×10−4Paまで排気し、その後、窒
素70sccmと酸素30sccmの混合ガスをスパッ
タ装置に導入して、真空槽内の圧力を0.4Paに調節
した。そして、直流電源からターゲットに電力を投入し
スパッタ放電を開始し、4Aの電流値で約75nmの膜
厚の被膜をガラス基板上に形成するようにした。
【0027】サンプル6の作成において、同じ条件で約
6時間継続してスパッタリングを行ったが、異常アーク
放電の発生によってプロセスが不安定になるということ
はなかった。スパッタ放電開始直後の放電電圧は約56
0Vであり、6時間経過後の放電電圧は約580Vであ
り、電圧上昇は約4%程度と極めて安定していた。
【0028】サンプル7の作成に用いたターゲットは、
サンプル6のターゲットに比べてTaCの含有量が10
容積%少ないため、ターゲットの導電性がやや低い。そ
のため、スパッタ放電がやや不安定になる現象が観察さ
れた。すなわち、放電開始後約1時間までは、安定に連
続放電していたが、その後異常アーク放電が発生するよ
うになり、約3時間後には、1時間当り数回は電源が停
止し、再放電させる必要があった。しかし、同じターゲ
ットを用いても、反応性スパッタの際の雰囲気中の酸素
の流量比が30%以下の場合には、3時間以上の連続放
電でもプロセスは安定していた。サンプル8は、ターゲ
ット中のTa化合物の含有量は30容積%であるが、T
aCからTaNに変更して行った実施例であって、放電
安定性の点では、TaCを用いた場合よりもやや悪くな
る傾向が認められ、放電開始3時間後くらいから異常ア
ーク放電が散発的に発生するようになった。
【0029】サンプル9〜11は、ターゲット中のTa
化合物の量が40〜50容積%と多い例である。サンプ
ル9の作成においては、サンプル6に比べて、放電安定
性に向上はみられなかった。また、屈折率がやや高くな
りまた若干の光吸収が生じていた。サンプル10,11
においては、成膜中の放電安定性はサンプル6と同程度
に優れており、異常なアーク放電が発生するということ
は少なくとも6時間以内には起こらなかった。但し、両
方のサンプルとも薄膜の屈折率が1.8以上にまで高く
なってしまい光吸収が認められた。
【0030】実施例3 3つのカソードが設置できるマグネトロンスパッタ装置
の第1のカソードに金属クロムを、第2のカソードに金
属チタンを、第3のカソードに65容積%(32重量%
)のSiCと30容積%(66重量%)のTaCと焼結
助剤(残分)とからなるターゲットをそれぞれセットと
した。清浄にされた3mm厚のフロートガラス板を真空
装置内に入れ、真空ポンプで約5×10−4Paまで排
気した。次いで、100sccmの流量のアルゴン(A
r)ガスを真空槽に導入し0.4Paの圧力に調整した
のち、第1のカソードに電力を投入してスパッタ放電を
開始し5Aの電流値に維持した。第1のカソードの上を
所定の速度でガラス基板を通過させることにより、約6
0nmのクロム膜を形成した。再び約5×10−4Pa
まで排気した後、Arガスを50sccm、酸素ガスを
50sccmの流量で真空槽内に導入し圧力を0.4P
aに調整した。第2のカソードに電力を投入しスパッタ
放電を開始し5Aの電流値に維持した。そして、第2の
カソード上を所定の速度でガラス基板を通過させること
により、クロム膜の上に70nmの酸化チタン膜を形成
した。再び約5×10−4Paまで排気した後、窒素ガ
スを70sccm、酸素ガスを30sccmの流量で真
空槽内に導入し圧力を0.4Paに調整した。第3のカ
ソードに電力を投入しスパッタ放電を開始し3Aの電流
値に維持した。そして、第3のカソードの上を所定の速
度でガラス基板を通過させることにより、酸化チタン膜
の上に約15nmの厚みのSi、Ta、C、N、Oから
なる薄膜を形成した。
【0031】このようにして得られたサンプル12は、
波長450nmでの反射率が約55%で、青色の反射色
を示す自動車用の車外用ミラーとして好適な光学特性を
示していた。このサンプルの耐摩耗性、耐酸性、耐アル
カリ性を評価した。耐摩耗性は市販のテーバー摩耗試験
機を用いて、No.CS10Fの2つの摩耗輪に各50
0gの荷重をかけ60rpmの回転数で500回転の摩
耗を被膜に加えた後のヘイズ率で評価した。ヘイズ率は
2.1%と低く優れた耐摩耗性を示した。耐酸性と耐ア
ルカリ性はそれぞれ0.1NのH2 SO4 中、Na
OH中に6時間浸漬した後の透過率の変化とヘイズ率を
測定することにより評価した。耐酸性テストでは、透過
率変化が2.5%、ヘイズ率も0.8%と低く優れた耐
酸性を示した。耐アルカリ性テストでも透過率変化が1
.8%、ヘイズ率も0.6%と低く優れた耐アルカリ性
を示した。最上層の膜の組成をESCAにより測定した
ところ、SiTa0.45C0.65N0.41O2.
55という原子組成比で表されることがわかった。
【0032】実施例4 スパッタリングターゲットとして、実施例3で用いた第
3のターゲットと同じものを用いた。基板として、10
cm×10cm×6mm厚の有機プラスチック(CR3
9)を市販のオルガノシロキサン塗布液で浸漬塗布し、
空気中で硬化させさらに85℃のオーブンで熱的硬化さ
せたハードコート層を有するものを用いた。この基板を
清浄にした後、スパッタ装置に入れ、上記ターゲットを
設置した真空槽を約5×10−4Paまで排気し、その
後窒素ガスを70sccm、酸素ガスを30sccmの
流量でスパッタ装置に導入して、真空槽内の圧力を0.
4Paに調節した。そして、直流電源からターゲットに
電力を投入して2Aの電流で放電を維持し、このターゲ
ット上を繰り返し、基板を通過させることにより約80
nmの厚みの被膜を基板上に形成した。
【0033】得られたサンプル13の耐摩耗性、耐酸性
、耐アルカリ性を評価した。耐摩耗性は市販のテーパー
摩耗試験機を用いて、No.CS10Fの2つの摩耗輪
に各250gの荷重をかけ、60rpmの回転数で50
0回転の摩耗を被膜に加えた後のヘイズ率で評価した。 ヘイズ率は0.5%という優れた値を示した。加えて、
#0000のスチールウールで約5kgの荷重で被膜面
をこすり、傷のつき具合いを判定したところ、わずかに
傷あとが認められる程度であった。耐酸性と耐アルカリ
性はそれぞれ0.1NのH2 SO4 中、NaOH中
に24時間浸漬した後のヘイズ率を測定することにより
評価した。耐酸性テストではヘイズ率は0.3%、耐ア
ルカリ性テストではヘイズ率は0.5%という優れた化
学的耐久性を示した。
【0034】実施例5 実施例3、4で用いたのと同様のスパッタ装置の第1の
カソードに金属磁性層として用いられるコバルト−ニッ
ケル−クロム合金ターゲットを、第2のカソードにSi
C70容積%とTaN30容積%を微量の焼結助剤で焼
結させたものをターゲットとして設置した。実施例3と
同様の手順を用いて、2mm厚フロートガラス基板上に
約50nmの厚さのCo−Ni−Cr合金からなる第1
層と、約30nmの厚さのSi−Ta−C−N−Oから
なる第2層を形成した。
【0035】実施例3と同じ方法で耐摩耗性、耐酸性、
耐アルカリ性を評価したところ、ヘイズ率は1.8%と
低く優れた耐摩耗性を示した。耐酸性テストでは、透過
率変化が2.2%、ヘイズ率も0.7%と低く優れた耐
酸性を示した。耐アルカリ性テストでも透過率変化が2
.0%、ヘイズ率も0.5%と低く優れた耐アルカリ性
を示した。最上層の膜の組成をESCAにより測定した
ところ、SiTa0.44C0.35N0.60O2.
28という原子組成比で表されることがわかった。
【0036】比較例1 実施例1のサンプル1〜5を成膜したときとは異なるガ
ス流量を用いて、同様の手順でガラス基板上に被膜を成
膜し、比較サンプル1および2を作成した。得られた比
較サンプル1および2の屈折率と化学組成を表1に示す
【0037】比較例2 リンをドープすることによって比抵抗を0.0012Ω
・cmに低下させたシリコンターゲットを用いて、実施
例1〜11と同じ装置で、直流反応性スパッタリングに
よるSiO2 膜の成膜を行った。清浄にされた2.1
mm厚のフロートガラス板を真空槽にセットした後、約
5×10−4Paまで排気し、その後、窒素90scc
mと酸素10sccmの混合ガスをスパッタ装置に導入
して、真空槽内の圧力を0.4Paに調節した。そして
、直流電源からターゲットに電力を投入してスパッタ放
電を開始し、1Aの電流値にセットした。約10分経過
後からすでに異常アーク放電が発生し始め、約20分後
にはスパッタ放電を維持することが困難になり、実験を
中止した。
【0038】比較例3 市販されている、反応焼結法により製造されたSiCス
パッタリングターゲットを用いて、比較例2と同一の条
件で反応性スパッタリングを行ったところ、放電開始後
30分くらいから異常なアーク放電が発生し始めた。放
電電圧は初期には約440Vであったのに対して、30
分後には約550V程度まで上昇していた。そして、約
45分後には放電を維持し膜を形成することが困難にな
り実験を中止した。
【0039】比較例4 実施例3と比較するサンプルとして、本発明の薄膜を最
上層に保護膜として被覆しない薄膜被覆物品を作成した
。実施例3に記述したのと同様の方法で、3mm厚フロ
ートガラス基板上に、約60nmの厚みのクロム膜と、
約75nmの厚みの酸化チタン膜を形成し比較サンプル
4を得た。この比較サンプル4は実施例3と同様の光学
特性を有した青色反射ミラーであった。実施例3で述べ
たのと同様の方法で耐摩耗性、耐酸性、耐アルカリ性を
評価した。耐摩耗性テストでのヘイズ率は4.3%であ
り、耐酸性テストでの透過率変化は2.9%、ヘイズ率
は1.2%、耐アルカリ性テストでの透過率変化は2.
4%、ヘイズ率は0.9%と、いずれのテストにおいて
も、実施例3で得られたサンプルより劣ることがわかっ
た。
【0040】比較例5 実施例4と比較するサンプルとして、プラスチック基板
上に本発明の薄膜を最上層に保護膜として被覆しない薄
膜被覆物品を作成した。実施例4で用いたのと同じハー
ドコート層を有する有機プラスチック(CR−39)を
比較サンプル5として評価した。実施例4と同じ方法で
耐摩耗性、耐酸性、耐アルカリ性を評価した。テーバー
摩耗試験でのヘイズ率は4.8%、耐酸性テストでのヘ
イズ率は0.9%、耐アルカリ性テストでのヘイズ率は
1.4%と、いずれのテストにおいても、比較サンプル
5は実施例4で得られたサンプル13より劣ることがわ
かった。また、#0000のスチールウールによる傷つ
き性も劣ることがわかった。
【0041】比較例6 実施例5と同様の方法でガラス基板上にCo−Ni−C
r磁性層を形成したのち、現在磁性層の保護膜として最
もよく用いられているカーボン膜を40nmの厚みで形
成し、比較サンプル6とした。実施例5と同じ方法で耐
摩耗性、耐酸性、耐アルカリ性を評価したところ、ヘイ
ズ率は2.5%であった。耐酸性テストでは、透過率変
化が2.9%、ヘイズ率が1.2%、耐アルカリ性テス
トでは、透過率変化が3.4%、ヘイズ率が0.9%と
いう値を示した。これらの結果から、本発明に基づく最
上層の膜が、磁気ディスクの耐久性を向上させることが
わかった。
【0042】
【発明の効果】本発明の薄膜を、薄膜被覆物品の最上層
に保護膜として用いることにより、化学的耐久性と機械
的耐久性の両方に優れた物品とすることが出来る。これ
により外部環境に触れる状態で使用される薄膜被覆物品
の被膜の耐久性が大幅に向上する。本発明の方法によれ
ば、このような優れた耐久性を有する被膜を、直流の反
応性スパッタリングにより形成することを可能にするの
で、薄膜付物品を真空成膜法により製造する場合に極め
て有利であり、また大きな面積の基板に安定に被覆する
ことができるので、量産性を向上させコストを低下させ
ることに寄与する。本発明の薄膜は屈折率が低いので、
光学干渉作用を利用した光学フィルターなどの光学膜の
低屈折率層として用いると、機械的強度が大きくかつ化
学的安定性が優れた光学薄膜被覆物品が得られる。また
、本発明の薄膜の製造方法は、とりわけ大面積の基板に
安定したグロー放電を長時間維持して成膜することが出
来、操業安定性、量産性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜を用いた薄膜被覆物品の一部断面
【符号の説明】
1    Si、Ta、C、N、Oからなる薄膜2  
  磁気記録膜 3    ガラス基板 4    高屈折率膜

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】  シリコン、タンタル、炭素、窒素、酸
    素からなり化学式SiTaj Ck Nm On で表
    される組成を有する薄膜であって、前記jの値が0.2
    以上0.6以下であって、前記kの値が0.3以上1.
    0以下であって、前記mの値が0.1以上1.0以下で
    あって、前記nの値が1.0以上である薄膜。
  2. 【請求項2】  SiCとTaC、TaN、TaB2 
    、TaSi2、TaH2 の群から選ばれた少なくとも
    一種以上のTa化合物とを主成分とした焼結体からなる
    ターゲットを用い、少なくとも酸素と窒素とを含む減圧
    された雰囲気内でおこなう直流反応性スパッタリング法
    により、基板の上に化学式SiTaj Ck Nm O
    n で表される組成を有する薄膜を製造する方法。
  3. 【請求項3】  前記ターゲット中のTaC、TaN、
    TaB2 、TaSi2 、TaH2 の群から選ばれ
    た少なくとも一種以上の含有量を10〜50体積%とし
    たことを特徴とする請求項2に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111812764B (zh) * 2019-04-10 2024-02-06 迪睿合株式会社 光学元件用薄膜及其制造方法、无机偏振片及其制造方法

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