JPH04251750A - インクジェット記録ヘッド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はアナログ式記録計等に用
いられるインクジェット記録ヘッドに関し、詳しくはカ
イザー式オンデマンド型インクジェット記録ヘッドを構
成する複数のインクノズルを備えた記録ヘッドに関する
。

【０００２】

【従来の技術】従来のアナログ式の印字をする記録計は
、測定対象から入力された温度、圧力等の変化が直観的
に把握できる利点があり、そのため、計測・計装制御シ
ステム等の産業用分野においても、また、開発、研究部
門においてもデータの記録、監視、保存の手段として幅
広く採用されている。これらの記録計には、各種の記録
ヘッドが搭載されており、外部から入力された信号を記
録紙等に線またはキャラクタとして印字している。ここ
で、記録ヘッドにはその印字方式により各種のものが存
在する。以下、代表的なものをそれぞれ説明する。

【０００３】■ワイヤドット方式 記録ヘッドをインクリボン、ワイヤ部、電磁ハンマによ
り構成し、記録パルスが印加されると電磁ハンマがワイ
ヤを打ち出し、インクリボンのインクを記録紙上に転写
するものである。アナログデータとしての点を印字する
場合は１回の打印で済むが、キャラクタを印字する場合
は数字１桁あたり８〜２５回の打印が必要である。カラ
ー印字する場合は、異なる色をしたインクリボンを複数
用意しておき、印字しようとする色に従いインクリボン
を換えている。 ■サーマルヘッド方式 絶縁板上に発熱抵抗体からなる記録用電極を複数個形成
して記録ヘッドを構成する。記録紙には熱反応により発
色する化学薬品を塗布した用紙を使用する。アナログデ
ータとしての点を印字する場合は、測定値に対応する一
つの電極にパルスを印加し、加熱・発色させる。キャラ
クタを印字する場合には、キャラクタに対応する位置の
電極にパルスを印加し、加熱・発色させる。 ■ペン打印方式 記録ヘッドに記録ペンを用い、これを電気信号により制
御して印字する。アナログデータを印字する場合は、記
録ペンを紙面に接触させてのトレースにより連続記録を
行うことができる。キャラクタを印字する場合は、ペン
の上下機構により、キャラクタに対応する位置への打点
を繰り返して数字１桁あたり８〜２５回の打印が必要で
ある。

【０００４】■インクジェット方式 記録ヘッドとして、いわゆるグールド式の記録ヘッドを
用いた一例を図１３に示す。図において、１はヘッドノ
ズル部、２はノズル板、３はインクタンク、４は記録媒
体としての記録紙である。ヘッドノズル部１を拡大した
のが図１４であり、図において、５は圧電素子円筒体、
６は内部が液室になるガラス管、７はオリフィス、８は
フィルタである。このヘッドノズル部１は圧電素子円筒
体５にガラス管６が嵌入されており、圧電素子円筒体５
の内面及び外面には図示しない電極が形成され、外部電
源と接続されている。この圧電素子円筒体５にパルス状
の電圧が印加されると、内側のガラス管６内部の液室が
収縮して容積が減少する。その結果、フィルタ８を介し
て外部のインクタンク３から供給されたインクは、オリ
フィス７を通じてノズル板２から外部へ噴射され、記録
紙４上にドットを印字する。記録紙４とヘッドノズル部
１との相対位置を変えながら印字することで、線画やキ
ャラクタが描かれる。図１３の記録ヘッドでは、アナロ
グ用として横一列にシアン、マゼンタ、イエローの３色
のインク噴射用のノズルが配設され、キャラクタ用とし
て縦２行に８個の黒色インク用のノズルが配設される。 これらのノズルには、インクタンク３に収納されている
インク袋から各色のインクが供給チューブを経由して供
給される。

【０００５】このグールド方式の記録ヘッドによりアナ
ログデータを印字する場合、それぞれの機械的位置と測
定値とが一致したタイミングで上述した駆動原理により
インクが噴出し、上記３色のドットが記録紙４上に印字
される。また、上記３色を組み合わせることより、紫、
緑、橙の色が合成され、計６色の印字を行うことができ
る。また、キャラクタを印字する場合は、黒色インクを
噴出するキャラクタ専用のノズル部１に対し所定のタイ
ミングでパルス状の電圧を印加することにより、英数字
等のキャラクタが印字される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従
来の各印字方式は、それぞれ次の表１に示す特徴を有し
ている。

【０００７】

【表１】

【０００８】これらの比較からも判るように、従来の印
字方式のなかでは一応、インクジェット方式が優れてい
るため、各種記録計にはグールド式のインクジェット記
録ヘッドが最も多く用いられている。しかしながら、こ
のグールド式のインクジェット記録ヘッドには、次のよ
うな問題がある。

【０００９】■インク噴射の駆動源として圧電素子円筒
体を用いており、記録ヘッドを小型化するにはこの圧電
素子円筒体を小型化しなければならない。しかし、圧電
材料の外径及び内径を小さくして円筒体を製作し、更に
その内周面に内側電極を形成するには高度な微細加工技
術を必要として、現在の加工技術では外径１ｍｍ程度ま
でしか製作できない。そのため、記録ヘッドの小型化は
、外径１ｍｍの圧電素子円筒体を用いた大きさが限界と
なる。■記録ヘッドに多色印字機能を持たせようとする
と、使用する色の数だけ圧電素子円筒体すなわちヘッド
ノズル部が必要になるため、記録ヘッド全体がその分、
大型になって小型化の要請に逆行する。■一般的な構造
として、オリフィスの前部にノズル板を貼着して組み立
てられているため、オリフィスとノズル板に形成された
微細な孔とを精密に位置合わせしなけれればならない。 従ってこの工程における歩留りが悪く、その分、記録ヘ
ッド全体のコストが高くなる。

【００１０】本発明は上述したグールド式の記録ヘッド
が有する種々の問題点を解決するためになされたもので
、その目的とするところは、薄型化・小型化を図ると共
に低コスト化を可能にし、しかも印字品質の向上を図っ
たインクジェット記録ヘッドを提供することにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、カイザー式オンデマンド型インクジェッ
ト記録ヘッドを構成するインクノズルを、同一基板上に
複数並設したものである。

【００１２】ここで、前記基板をシリコンにて形成する
と共に、この基板表面に、インクノズルに連通するイン
ク流路をドライプラズマエッチングにより刻設し、上記
基板上面に振動板としてのガラス板を静電接合すること
が好ましい。また、インク流路表面をアルカリ洗浄し、
インク吐出口周囲の基板端面に撥水性を有する被膜を形
成することが望ましい。更に、隣合うインク吐出口の間
の基板端面に、インクノズルの断面積よりも大きい断面
積を有する切欠き部を形成してもよく、インク流路が位
置する基板表面に加熱ヒータを配置してもよい。加えて
、記録ヘッドとインク供給用のインクタンクとを同一容
器内に収納して着脱可能なカートリッジを形成し、この
カートリッジ前部に、回動によってインク吐出口を被覆
可能なキャップを設けてもよい。

【００１３】

【作用】本発明においては、カイザー式オンデマンド型
インクジェット記録ヘッドを構成するインクノズルを、
同一基板上に複数並設したことにより、多色の印字が可
能となり、しかも記録ヘッド全体を薄型・小型に形成す
ることができる。また、ヘッドの主要部が基板上に集中
して形成されるため製作が容易となり、コストダウンも
可能になる。

【００１４】ここで、基板をシリコン基板により形成す
るものとし、シリコン基板表面にドライプラズマエッチ
ングによりインク流路を刻設してその上にガラス板を静
電接合すると、加工が一層容易になる。また、基板に形
成されたインク流路の表面をアルカリ洗浄し、インク吐
出口周囲の基板端面に撥水性を有する被膜を形成すると
、インク流路内ではインクと流路との濡れ性が増してイ
ンク内の気泡を容易に除去でき、インク吐出口周囲の基
板端面では逆に濡れ性が減ることによりインクが付着し
て溜まることが防止される。更に、インク吐出口の間に
インクノズルの断面積よりも大きい断面積を有する切欠
き部を形成すると、インク吐出口の間でインクが端面を
伝わって互いに混合するのを防止することができる。 また、インク流路が位置する基板表面に加熱ヒータを設
置し、雰囲気温度が低下した場合にインクを間接的に加
熱することにより、インクの粘度上昇による凝固を防止
することが可能である。更に記録ヘッド本体とインクタ
ンクとを同一容器内に収納してカートリッジを形成する
ことにより、カートリッジのみの交換や取扱いが可能に
なる。また、カートリッジの前部にキャップを回動自在
に軸支することにより、不使用時にキャップを回動させ
てインク吐出口を被覆可能としてインクの物性変化を防
止することができる。

【００１５】

【実施例】以下、図に沿って本発明の実施例を説明する
。まず、図２はこの実施例に用いられるカイザー式のオ
ンデマンド型インクジェット記録ヘッドの基本的な構成
を示す説明図である。図において、９はインクタンク、
１０はインク供給路、１１はインク加圧室、１２はイン
クノズル、１３はインクノズル１２に連通するインク供
給路、１４はインク加圧室１１の外側に設けられた振動
板、１５は振動板１４に貼着された電気機械変換素子と
しての圧電素子であり、これら振動板１４及び圧電素子
１５によりバイモルフが構成される。１６はヘッド基板
であり、このヘッド基板１６上にインク供給路１０，１
３及びインク加圧室１１、インクノズル１２が形成され
る。以上の構成において、圧電素子１５にパルス状の電
圧を印加すると、圧電素子１５がその厚さ方向に膨張す
ると共に長さ方向に収縮し、振動板１４がインク加圧室
１１の内側方向にたわむ。これによりインク加圧室１１
の容積がわずかながら減少し、振動板１４の変形によっ
て生じた圧力波によりインク加圧室１１のインクがイン
ク滴となってインクノズル１２のインク吐出口から図中
のａ方向に噴射される。

【００１６】図２に示したインクジェット記録ヘッドは
全体を平板状に形成できるので、複数のインクノズルを
有する記録ヘッドであっても比較的薄くかつ小型に製作
することができる。そこで、複数のインクノズルを同一
基板上に並設することにより、多色印字用かつ全体が小
型のインクジェット記録ヘッドを実現することが可能に
なる。

【００１７】図１は本発明の第１実施例の構造を説明す
るための分解斜視図であり、図３は図１の断面図である
。これらの図において、１７はＳｉ（シリコン）からな
るヘッド基板であり、その厚さは０．５〜１．０ｍｍで
ある。このヘッド基板１７の表面には、ドライプラズマ
エッチングにより、インク流路を構成するそれぞれ４組
のインク池１８、インク供給路１９，２１、インク加圧
室２０が形成され、更にインクノズル２２が連続して形
成される。ここで、インク池１８、インク加圧室２０、
インク供給路２１は、ヘッド基板１７を深さ１５０〜２
００μｍの範囲に加工して形成される。また、インクノ
ズル２２の断面は幅６０〜８０μｍ、深さ３５〜４０μ
ｍの半円形状であり、その長さは０．３〜０．８ｍｍの
範囲である。インク供給路１９の深さはインクノズル２
２の深さと同一に形成する。また、隣合って配設される
インクノズル２２間のピッチＬ１は１ｍｍである。

【００１８】これら各部がヘッド基板１７上に刻設され
た後、その上面にガラス板からなる振動板２３が静電接
合により接合され、ヘッド基板１７と一体化される。そ
の後、インク加圧室２０の位置に対応する振動板２３の
上面に圧電素子２４が貼着されて記録ヘッドの主要部が
形成される。なお、図示しないがインク池１８にはイン
クチューブを介して４色のインク袋がそれぞれ接続され
る。これらのインク袋から供給されたインクは、インク
池１８を満たし、更にインク供給路１９を通ってインク
加圧室２０へ送られる。インク加圧室２０上面の振動板
２３に貼着されている圧電素子２４に電圧パルスが印加
されると、振動板２３が変形して圧力波を発生し、図２
において説明したようにインクノズル２２のインク吐出
口からインクを噴射する。この実施例では、印加する電
圧パルスの周波数が上限６ｋＨｚまでは安定したインク
ジェットが得られることを確認できた。なお、この実施
例ではヘッド基板１７の材質をＳｉとしてドライプラズ
マエッチングにより各部の加工を行ったが、これは加工
精度、加工の再現性、接合精度、歩留り、コスト等の点
で、他の材質、加工法に比較し最も優れているためであ
る。

【００１９】ここで、比較例として、ヘッド基板１７に
感光性ガラス及びステンレス鋼を用いた場合の得失を説
明する。感光性ガラスは、インク流路部分のみに光を照
射して結晶質とし、その後、弗酸溶液で結晶質部分をエ
ッチングし、そのヘッド基板に振動板としての同質の感
光性ガラスを重ね合わせ、これを５００°Ｃ前後に加熱
して熱拡散により接合した。ステンレス鋼の場合はイン
ク流路以外は感光性レジストにてコーティングし、弗酸
溶液で所要の深さまでエッチングした。その後、振動板
用のステンレス鋼薄板を重ね合わせ、８００〜１０００
°Ｃ前後の真空雰囲気にて拡散接合して一体化した。感
光性ガラスを用いた場合は、その材質が異方性であるた
め、インクノズル形状が台形状となり、更にインクノズ
ルとインク供給路との深さの異なる部分が急峻な段とな
ってしまうため、その部分でインク流の渦などが発生し
、応答周波数の向上と印字品質の確保に問題があった。 また、振動板の接合が困難であり、その接合歩留まりが
極端に低下して経済性にも欠点が認められた。ステンレ
ス鋼の場合は、エッチングは可能なものの、各ロットご
とに寸法のばらつきが大きく、記録ヘッドごとに特性の
違いが発生し、記録計用のヘッドとしては不十分であっ
た。

【００２０】続いて、前記の第１実施例において、イン
ク加圧室２０に気泡が浸入した場合の挙動及びその対応
について説明する。周知のようにこの種の記録ヘッドで
は、圧力波を発生させてインクを噴出させる場合、イン
ク中に気泡が含まれていると発生した圧力波が気泡に吸
収されてしまい、有効に動作しないことがある。そこで
第２実施例では、インク中に浸入した気泡を簡単に排除
するため、ヘッド基板１７上に形成されたインク流路の
表面のインクに対する濡れ性を増す処理を施した。この
インクの濡れ性は接触角として定量的に表わせるので、
以後、接触角として説明する。発明者は上記ヘッド基板
１７と振動板２３とについて、表面の処理を各種の方法
、条件で実施し、それぞれのインクとの接触角を顕微鏡
により拡大して測定した。以下の表２はこれらの実験結
果の代表的なものを示し、アルカリ溶液中に６時間浸漬
して洗浄した場合が最も接触角が小さくなることが確認
された。

【００２１】

【表２】

【００２２】このアルカリ溶液は水酸化カリウム（ＫＯ
Ｈ）溶液に希釈水を混合してｐＨを調整したものである
。更に、水酸化カリウム溶液について、条件を変えて実
験したところ、ｐＨ値が１２〜１４の範囲で浸漬時間が
５〜１２時間の範囲であれば、ほぼ同様に接触角を減少
させる効果があることが確認されている。

【００２３】これらの処理により、インク供給路２１、
インクノズル２２等のインク流路の接触角が小さくなり
、濡れ性が増す。その結果、インクとインク流路表面と
の付着力が増してインク内に浮遊する気泡の移動が容易
になる。具体的には、インク流路内のインクに気泡が浸
入した場合、インクノズル２２のインク吐出口に吸い取
り紙を押し当てるという操作だけで、吸い取り紙に吸い
取られるインクと共に気泡を引き寄せて排除することが
できる。このようにして気泡を除去すれば、気泡の浸入
によるインクの不吐出を容易に解消することができる。

【００２４】なお、上述したアルカリ洗浄の条件として
ｐＨ値を１２以下にすると、ほぼ同様な効果が得られる
ものの、充分な効果が得られるまでの処理時間が長くな
ってしまう。また、ｐＨ値が１２〜１４の範囲であって
も、処理時間を必要以上に長くすると表面の浸食が進み
過ぎ、接触角が反対に大きくなる。そのため、ｐＨ値と
処理時間とはその都度、最適な組合せを選択することが
必要である。

【００２５】次に、上記の実施例においてインクノズル
２２のインク吐出口周囲にインクが付着したままとなっ
て印字品質が低下する場合の対応を説明する。周知のよ
うにこの種のインクジェット記録ヘッドでは、振動板２
３が変形して圧力波が発生したときにのみインクが噴出
する。つまり、インク滴がインク吐出口から断続的に噴
出するため、インクが噴出していない期間は、インク吐
出口では本来インクが途切れているはずである。しかし
ながら、長時間にわたり多数回のインク噴射を続けると
、インクの一部がインク吐出口周囲に付着し始め、徐々
に大きくなることがある。このようなインク溜まりが発
生すると、インク噴出の際に、インクノズルから噴出し
たインク滴と吐出口周囲に形成されたインク溜まりとが
相互に影響し合って紙面に到達するインク滴の大きさが
変動したり、サテライト（副インク滴）が発生して印字
品質を損なうことになる。

【００２６】そこで、第３実施例として、インク滴がイ
ンク吐出口の周囲に付着しないように、インク吐出口周
囲のヘッド基板１７及び振動板２３の端面に撥水性を増
す処理を施した。この撥水性は濡れ性と相反する特性で
あり、撥水性が大きい程、インク滴をはじき付着を防ぐ
。具体的には、インク吐出口の周囲のヘッド基板１７及
び振動板２３の端面にシリコーンオイルを塗布し、１５
０〜２００°Ｃで数時間加熱して焼付けることにより撥
水性の被膜を形成する。形成される撥水膜の厚さは１μ
ｍ程度であるが、インクに対する撥水性は充分である。 実験の結果、長時間の印字を行ってもインクが付着せず
、インク溜まりが形成されずに高品質の印字が保たれる
ことが確認された。

【００２７】次に、本発明の第４実施例を図４により説
明する。この実施例も前述の第３実施例と同様に、イン
ク吐出口周囲にインク溜まりが形成されるのを防止する
ものである。この実施例において、図４に示すように記
録ヘッド自体は図１とほぼ同様に構成され、インクノズ
ル２２ａ〜２２ｄの両側及び中間部にスリット２５ａ〜
２５ｅが形成される。これらのスリット２５ａ〜２５ｅ
の幅Ｌ２は６０〜８０μｍとし、ダイシングカッタによ
り形成する。このようにしてインク吐出口の両側及び中
間部にスリット２５による切欠き部を設け、しかも切欠
き部の断面積をインクノズル２２の断面積よりも大きく
すると、インク吐出口周囲にインクが付着してインク溜
まりが形成された場合でも、インクはインクノズル２２
に引き戻されて、インク溜まりが拡大することがなくな
る。その結果、常に安定した良質の印字が保たれるよう
になる。また、インク吐出口周囲に付着形成されたイン
ク溜まりが隣の吐出口まで拡大して、異なる色が混合さ
れる現象をも完全に防ぐことができる。界面下における
このようなインクの挙動や、インクの動作を制御するた
めのスリット２５からなる切欠き部及びその断面積等の
関係は、発明者の実験により確認できたものである。

【００２８】次に、本発明の第５実施例を図５により説
明する。この実施例も前述の第３、第４実施例と同様に
、インク吐出口周囲にインク溜まりが形成されるのを防
止するものである。この実施例は、図５に示すように、
ヘッド基板１７をドライプラズマエッチングにより加工
する際に、インクノズル２２ａ〜２２ｄの両側及び中間
部に溝２６ａ〜２６ｅを形成し、その溝幅Ｌ３を８０〜
１５０μｍとする。この溝２６ａ〜２６ｅによる切欠き
部の断面積はインクノズル２２の断面積よりも大きなも
のとする。この実施例においても、第４実施例と同様な
作用により、常に安定した良質な印字を保つことができ
る。

【００２９】次に、本発明の第６実施例を図６により説
明する。この実施例は、記録ヘッドの雰囲気温度が変化
しても安定した印字品質を保つことができるようにした
ものである。インクの物性は温度により変化し、特にイ
ンクジェット記録ヘッドの吐出特性はインクの粘性によ
って大きく左右される。すなわち、温度が低下してイン
クの粘性が増すと、インク流路における摩擦抵抗が大き
くなりインク速度が小さくなる。同時にインクの吐出量
も減り、印字品質が低下する。通常、インク温度が１５
〜４０°Ｃの範囲であれば、粘性の変化による印字の劣
化等の現象は見られず、１５°Ｃよりも低温のときに影
響が現われる。そこでこの実施例では、雰囲気温度が１
５°Ｃを下回った場合にインクを間接的に加熱し、イン
クの粘度を一定値以下に保持するようにしたものである
。

【００３０】すなわち図６に示すように、第１実施例と
同様に構成された記録ヘッドにおいて、インク加圧室２
０が形成された位置のヘッド基板１７の下面に面状の加
熱ヒータ２７を貼着する。図からも明らかなように加熱
ヒータ２７の貼着位置は圧電素子２４に対し表裏の位置
となる。加熱ヒータ２７としてはＰＴＣサーミスタやチ
ップ抵抗体等が用いられる。雰囲気温度が所定温度まで
低下した場合に加熱ヒータ２７に通電すると、インク加
圧室２０内のインクが間接的に加熱されて所定温度まで
昇温する。これによってインクの粘度も一定値以下に保
たれ、インク吐出口からは常に一定量のインクが吐出さ
れることになり、印字品質が安定する。発明者の実験で
は、雰囲気温度が０°Ｃの状態であっても加熱ヒータ２
７により加熱することで良好な印字を行えることが確認
されている。

【００３１】次に、本発明の第７実施例を図７により説
明する。この実施例は、第６実施例に示した加熱ヒータ
２７の貼着位置を変えたものである。つまり、図７に示
すように、加熱ヒータ２８をインクノズル２２の上方の
振動板２３の上面端部に貼着したものであり、加熱ヒー
タ２８の作用・効果は第６実施例とほぼ同様である。特
にこの実施例の場合、インクノズル２２の近傍の加熱ヒ
ータ２８によりインクをその噴出直前で加熱するため、
低温の雰囲気中において休止後に印字を再開する場合に
印字品質の立ち上がり応答性が改善される。また、記録
計の動作中において使用頻度の少ない色のノズル吐出口
を一定温度に保つことができ、印字品質の劣化を防止す
ることができる。

【００３２】次に、図８及び図９は、前述した第６実施
例を、記録計等に取付けやすいようにインクタンクと一
体にしてカートリッジ化した第８実施例を示す。具体的
には、記録ヘッド本体３０及びこの本体３０へインクを
供給するインク袋３１を、一体的に成形された容器３２
内に収納してカートリッジ３３を形成したものである。 容器３２内では、容器３２の先端下部の貫通孔に本体３
０の先端が挿通・支持される。本体３０の他端はコネク
タ３４に嵌着され、インク袋３１に連なるチューブ３５
と接続される。更に、本体３０の圧電素子２４が支持部
材３６により容器３２に支持・固定される。また、本体
３０の圧電素子２４及び加熱ヒータ２７にはそれぞれコ
ード３７，３８が結線され、その他端が容器３２右端の
ソケット部３９に接続されている。

【００３３】このように記録ヘッド本体３０及びインク
袋３１を同一の容器３２内に収納してカートリッジ３３
を形成することにより、本体３０及びインク袋３１の記
録計等への取付け、取り外しがワンタッチできるように
なり、記録ヘッドの点検やインク補給等のための交換、
メンテナンスが容易になる。特に、記録計の作動中に印
字に不具合が生じた場合は、カートリッジ３３ごと短時
間で交換することにより印字中断時間を最小にして復旧
させ、記録の連続性を維持することができる。

【００３４】次に、図１０〜１２は、本発明の第９実施
例であり、カートリッジ３３の構造が異なるものである
。インクジェット記録ヘッドに用いられるインクは、水
性、油性に関わらず水その他の溶剤が含まれており、イ
ンクノズル２２を空気中に長時間放置して置くと、水そ
の他の溶剤が蒸発してインクの組成比率が変化し、イン
ク不吐出等の原因となって印字能力を損なうことがある
。そこで、この実施例は、カートリッジ３３にキャップ
４０を取付け、このキャップ４０により必要に応じてイ
ンク吐出口を覆うようにしたものである。図に示すよう
に、キャップ４０は容器３２の先端側面にピン４１によ
り軸支されて上下に回動可能である。カートリッジ３３
が記録計に取付けられて印字動作する間は、図１１に実
線で示すようにキャップ４０を上方に開き、印字の障害
にならない位置に保持しておく。また、カートリッジ３
３が記録計から外されている状態の保管時、及び取り付
けられている状態でも印字を休止している期間は、キャ
ップ４０を図１１に想像線で示すごとく下方に回動し、
記録ヘッド本体３０のインク吐出口に嵌着する。このと
き、キャップ４０の内側で板バネ４２に支持されたゴム
パッド４３がインク吐出口に密着してインク中の溶剤の
蒸発を防止する。このようにキャップ４０を取付け、し
かも不使用時はインク吐出口を覆うことにより、常時、
インクの物性が一定に維持されて良質な印字を行うこと
ができる。

【００３５】

【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、カイ
ザー式オンデマンド型インクジェット記録ヘッドを構成
する複数のインクノズルを、同一基板上に複数並設した
ことにより、多色の印字が可能となるにも関わらず記録
ヘッド全体を薄型・小型に形成することができる。また
、記録ヘッドの主要部が基板上に集中して形成されるた
め、製作が容易になってコストダウンを図ることができ
る。更に、インクの物性に着目し、必要に応じてインク
流路や基板端面に種々の加工を施すことにより、インク
中の気泡の除去やサテライトの解消が可能であり、印字
品質の向上並びにインク吐出の安定化が可能である。 しかも、インクタンクを一体化してその全体をカートリ
ッジ化した場合には、取扱い及び保守が容易になり、使
い勝手を向上させることができる。以上のような効果に
より、本発明をアナログ式記録計に適用した場合には、
記録計自体の薄型化・小型化、コストの低減、更には信
頼性の向上を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例の構造を説明するための分
解斜視図である。

【図２】本発明が適用されるカイザー式オンデマンド型
インクジェット記録ヘッドの基本的な構成図である。

【図３】本発明の第１実施例を示す断面図である。

【図４】本発明の第４実施例を示す斜視図である。

【図５】本発明の第５実施例を示す斜視図である。

【図６】本発明の第６実施例を示す断面図である。

【図７】本発明の第７実施例を示す断面図である。

【図８】本発明の第８実施例を示す部分断面図である。

【図９】本発明の第８実施例を示す縦断面図である。

【図１０】本発明の第９実施例を示す外観図である。

【図１１】第９実施例の動作説明図である。

【図１２】第９実施例の側面図である。

【図１３】従来の技術を示す断面図である。

【図１４】従来の技術の要部を拡大した断面図である。

【符号の説明】

９　　インクタンク １０，１３，１９，２１　　インク供給路１１，２０　
　インク加圧室 １２，２２，２２ａ，２２ｂ，２２ｃ，２２ｄ　　イン
クノズル １４，２３　　振動板 １５，２４　　圧電素子 １６，１７　　ヘッド基板 １８　　インク池 ２５ａ，２５ｂ，２５ｃ，２５ｄ，２５ｅ　　スリット
２６ａ，２６ｂ，２６ｃ，２６ｄ，２６ｅ　　溝２７，
２８　　加熱ヒータ ３０　　記録ヘッド本体 ３１　　インク袋 ３２　　容器 ３３　　カートリッジ ４０　　キャップ ４１　　ピン ４３　　ゴムパッド

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】　　カイザー式オンデマンド型インクジェ
   ット記録ヘッドを構成するインクノズルを、同一基板上
   に複数並設したことを特徴とするインクジェット記録ヘ
   ッド。
2. 【請求項２】　　シリコン基板表面に、インクノズルに
   連通するインク流路をドライプラズマエッチングにより
   刻設し、前記基板の上面に振動板としてのガラス板を静
   電接合した請求項１記載のインクジェット記録ヘッド。
3. 【請求項３】　　インクノズルに連通するインク流路表
   面をアルカリ洗浄した請求項１または２記載のインクジ
   ェット記録ヘッド。
4. 【請求項４】　　インクノズルのインク吐出口周囲の基
   板端面に撥水性を有する被膜を形成した請求項１，２ま
   たは３記載のインクジェット記録ヘッド。
5. 【請求項５】　　隣合うインクノズルのインク吐出口の
   間に、インクノズルの断面積よりも大きい断面積を有す
   る切欠き部を形成した請求項１，２，３または４記載の
   インクジェット記録ヘッド。
6. 【請求項６】　　インク流路が位置する基板表面に加熱
   ヒータを配置した請求項１，２，３，４または５記載の
   インクジェット記録ヘッド。
7. 【請求項７】　　インクノズル及び基板を含む記録ヘッ
   ド本体と、インク供給用のインクタンクとを同一容器内
   に収納してカートリッジを形成した請求項１，２，３，
   ４，５または６記載のインクジェット記録ヘッド。
8. 【請求項８】　　カートリッジに対して回動自在に軸支
   され、回動によりインクノズルのインク吐出口を被覆可
   能なキャップを有する請求項７記載のインクジェット記
   録ヘッド。