JPH04121465U - コントロールスリーブ付きプランジヤ式燃料噴射ポンプ構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 この考案は、燃料駆動用プランジャとプレス
トローク制御用コントロールスリーブとをそなえたコン
トロールスリーブ付きプランジャ式燃料噴射ポンプ構造
に関し、高負荷域において燃料噴射ポンプの送油率を高
くなるように設定しても低負荷域での燃焼騒音の増大を
招かないようにすることを目的とする。 【構成】 燃料駆動用プランジャ１とプレストローク制
御用コントロールスリーブ８とをそなえた燃料噴射ポン
プにおいて、該コントロールスリーブ８に、エンジンの
低負荷域でポンプ圧を部分的に排除しうるポンプ圧低減
用切欠き部８ｂを設け、低負荷域で燃料噴射ポンプの送
油率を低減できるように構成する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、燃料駆動用プランジャとプレストローク制御用コントロールスリー ブとをそなえたコントロールスリーブ付きプランジャ式燃料噴射ポンプ構造に関 する。

【０００２】

【従来の技術】

ディーゼルエンジンに設けられるプランジャ式燃料噴射ポンプにはプレストロ ーク制御機構がそなえられる。例えば図４はかかるプランジャ式燃料噴射ポンプ の一例を示す模式的な斜視図であり、プランジャ１はプランジャバレル２の内周 に摺接するように設置されており、プランジャ１の下端に設けられた図示しない カム機構によってプランジャ１がプランジャバレル２内を軸方向へ駆動されて燃 料を圧送できるようになっている。

【０００３】 そして、プランジャ１には、その上端から中間部に亘って給排路１ａが形成さ れており、この給排路１ａの下部開口（吸入ポート）１ｂの上方には、吸入ポー ト１ｂに連通してリード１ｃが形成されている。また、プランジャ１の中間部外 周には、排口８ａをそなえたタイミングスリーブ８が外嵌されており、プランジ ャ１のリフトアップによってタイミングスリーブ８が吸入ポート１ｂを閉塞した ところで燃料の圧送が開始され、さらにプランジャ１がリフトアップしてリード １ｃが排口８ａに開通したところで圧送が終了するように構成されている。

【０００４】 燃料の噴射量は、プランジャ１を回転させることで螺旋状に形成されたリード １ｃと排口８ａとの相対位置を変え、これによりプランジャ１の有効ストローク を調整するようにして行ない、プレストロークの調整は、タイミングスリーブ８ を昇降させることによって、排口８ａの軸方向位置を変更し圧送開始タイミング を調整して行なうようになっている。

【０００５】 このタイミングスリーブ８の昇降させるために、アクチュエータ２１によって 回転駆動されるタイミングロッド７が設けられている。つまり、タイミングスリ ーブ８の外周に溝８ｂが設けられる一方でタイミングロッド７の一側にはこの溝 ８ｂに係合するピン７ａが突設されており、タイミングロッド７の回転に伴って ピン７ａを通じてタイミングスリーブ８が昇降されるようになっている。

【０００６】 なお、アクチュエータ２１は、タイミングロッド７の端部に設けられた軸端部 材２３の偏心溝２３ａと、この偏心溝２３ａ内に係合する偏心軸２２を有するア ーマチャ２４と、このアーマチャ２４を一方向へ駆動するロータリソレノイド２ ６と、アーマチャ２４を他方向へ付勢するリターンスプリング２５とからなり、 ロータリソレノイド２６が電力供給されると、アーマチャ２４，偏心軸２２，タ イミングロッド７を通じてタイミングスリーブ８が降下されて、特に、電力供給 量が多いほどタイミングスリーブ８が下方に駆動され、電力供給量が少ないほど リターンスプリング２５によってタイミングスリーブ８が上方に駆動されるよう になっている。

【０００７】 そして、タイミングスリーブ８が上方に位置するほどプレストローク量が大き くなり、タイミングスリーブ８が下方に位置するほどプレストローク量が小さく なるが、一般には、低速時ほどプレストローク量を大きくして燃料の噴射時期を 遅らせ、高速時ほどプレストローク量を小さくしてして燃料の噴射時期を進める ように、図示しないコントローラを通じてプレストローク制御を行っている。

【０００８】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、エンジンの性能向上のためには、特に高負荷域において燃料噴射ポ ンプの送油率を高くすることが有効であるが、上述のような従来のコントロール スリーブ付きプランジャ式燃料噴射ポンプでは、高負荷域において燃料噴射ポン プの送油率を高くするとこれに伴って全負荷域で送油率が高くなってしまい、こ の影響で低負荷域では燃焼騒音が大きくなるという不具合がある。

【０００９】 本考案は、このような課題に鑑み創案されたもので、高負荷域において燃料噴 射ポンプの送油率を高くなるように設定しても低負荷域での燃焼騒音の増大を招 かないようにした、コントロールスリーブ付きプランジャ式燃料噴射ポンプ構造 を提供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】

このため、本考案のコントロールスリーブ付きプランジャ式燃料噴射ポンプ構 造は、燃料駆動用プランジャとプレストローク制御用コントロールスリーブとを そなえた燃料噴射ポンプにおいて、該コントロールスリーブに、エンジンの低負 荷域でポンプ圧を部分的に排除しうるポンプ圧低減用切欠き部が設けられている ことを特徴としている。

【００１１】

【作用】

上述の本考案のコントロールスリーブ付きプランジャ式燃料噴射ポンプ構造で は、ポンプ圧低減用切欠き部を通じて、エンジンの低負荷域でポンプ圧が部分的 に排除されて、燃料噴射ポンプの送油率が低減される。

【００１２】

【実施例】

以下、図面により、本考案の一実施例としてのプランジャ式燃料噴射ポンプ構 造について説明すると、図１はその燃料駆動用プランジャとプレストローク制御 用コントロールスリーブの要部の模式図であって、（ａ）はその模式的な斜視図 、（ｂ）はその模式的な平面図模式図であり、図２はその作動状態を（ａ）〜（ ｄ）の順に示す側断面図、図３はその特性を示すグラフである。

【００１３】 このプランジャ式燃料噴射ポンプ構造の全体構成は、図４に示す従来例とほぼ 同様であるので、ここでは説明を省略するが、この燃料噴射ポンプの燃料駆動用 プランジャ１及びプレストローク制御用コントロールスリーブ８には、図１に示 すように形成されている。

【００１４】 つまり、燃料駆動用プランジャ１の軸心部分には、上端に開口した給排路１ａ が形成されており、この給排路１ａの下部はプランジャ１の側面２箇所の吸入ポ ート１ｂで開口している。そして、各吸入ポート１ｂの上方には吸入ポート１ｂ に連通してリード１ｃが形成されている。また、プランジャ１の外周に外嵌され たプレストローク制御用コントロールスリーブ８には、排口８ａ，８ａが設けら れており、プランジャ１のリフトアップによってタイミングスリーブ８が吸入ポ ート１ｂを閉塞したところで燃料の圧送が開始され、さらにプランジャ１がリフ トアップしてリード１ｃが排口８ａに開通したところで圧送が終了するように構 成されている。

【００１５】 このポンプでは、リード１ｃは軸方向に延びた直線部のみで螺旋状の部分は設 けられておらず、一方、各排口８ａは円形ではなく下縁８Ａの傾斜した台形状に 開口しており、この傾斜して螺旋状をなす下縁８Ａがリード１ｃの螺旋状の部分 の代わりになっている。

【００１６】 したがって、燃料の噴射量は、プランジャ１を回転させることでリード１ｃと 排口８ａとの相対位置を変え、これによりプランジャ１の有効ストロークを調整 することにより行なうようになっている。つまり、下縁８Ａが高くなっている箇 所（排口８ａが軸方向に幅狭になっている箇所）でリード１ｃが開口する時には プランジャ１の有効ストロークが増大してこの分だけ燃料噴射量が増大し、下縁 ８Ａが低くなっている箇所（排口８ａが軸方向に幅広になっている箇所）でリー ド１ｃが開口する時にはプランジャ１の有効ストロークが減少してこの分だけ燃 料噴射量が減少するようになっている。

【００１７】 したがって、例えば低負荷域では、排口８ａの幅広箇所にリード１ｃが開口す るようにして燃料噴射量が小さくなるようにして、高負荷域では、排口８ａの幅 狭箇所にリード１ｃが開口するようにして燃料噴射量が大きくなるようする。

【００１８】 そして、コントロールスリーブ８の内周面には、ポンプ圧低減用切欠き部８ｂ が設けられている。このポンプ圧低減用切欠き部８ｂは、コントロールスリーブ ８の内周面を部分的に薄く切り欠いたもので、その下縁はコントロールスリーブ ８の下端に開口し、その上縁８Ｂは、排口８ａの螺旋状の下縁８Ａと対応するよ うに螺旋状に形成されている。つまり、排口８ａが軸方向に幅広になっていくの に対応して切欠き部８ｂも軸方向に幅広になっていくように形成されている。

【００１９】 したがって、切欠き部８ｂは吸入ポート１ｂとの相対関係によって軸方向長さ を調整でき、燃料噴射量を小さくするほど軸方向長さが大きくなり、燃料噴射量 を大きくするほど軸方向長さが小さくまたは０になるように設定されている。こ のため、例えば低負荷域では、切欠き部８ｂの幅広箇所に吸入ポート１ｂが対面 するようになり、高負荷域では、切欠き部８ｂの幅狭箇所又は切欠き部８ｂの形 成されない箇所に吸入ポート１ｂが対面するようになっている。

【００２０】 また、プレストロークの調整は、タイミングスリーブ８を昇降させることによ って、排口８ａの軸方向位置を変更し圧送開始タイミングを調整して行なうよう になっている。

【００２１】 上述の構成により、このコントロールスリーブ付きプランジャ式燃料噴射ポン プ構造では、図２の（ａ）〜（ｄ）に示すように作動する。なお、図２中、２Ａ は圧力室、２Ｂは油溜室である。

【００２２】 つまり、図２の（ａ）に示すように吸入ポート１ｂがタイミングスリーブ８よ りも下方に位置して開口しているとき（プランジャリフトの低いとき）には、油 溜室２Ｂの燃料油はプランジャ１の吸入ポート１ｂから圧力室２Ａに送られるが 、この状態ではプランジャ１が上昇しても圧力室２Ａ内の燃料油は吸入ポート１ ｂから油溜室２Ｂに漏出するため圧力室２Ａ内の圧力は上昇しない。

【００２３】 そして、図２の（ｂ）に示すようにプランジャ１が上昇すると、従来は吸入ポ ート１ｂがタイミングスリーブ８によって閉鎖されるようになって、この時点か ら、吸入ポート１ｂから油溜室２Ｂへの燃料油の漏出が終わって圧力室２Ａ内の 圧力が上昇するが、この燃料噴射ポンプでは、切欠き部８ｂが形成されているの で、この切欠き部８ｂを通じて燃料油が吸入ポート１ｂから油溜室２Ｂへ僅かに 漏出するので、初期送油率が低減される。

【００２４】 さらに、図２の（ｃ）に示すように、プランジャ１が切欠き部８ｂよりも上昇 してプランジャ１がタイミングスリーブ８の内周面によって閉鎖されるような位 置に来て、はじめて吸入ポート１ｂから油溜室２Ｂへの燃料油の漏出が終わって 圧力室２Ａ内の圧力が所定の上昇を開始する。

【００２５】 特に、低負荷域では、切欠き部８ｂの幅広箇所に吸入ポート１ｂが対面するよ うになって、吸入ポート１ｂから油溜室２Ｂへの燃料油の漏出が長く続き、逆に 高負荷域では、切欠き部８ｂの幅狭箇所又は切欠き部８ｂの形成されない箇所に 吸入ポート１ｂが対面するようになって、吸入ポート１ｂから油溜室２Ｂへの燃 料油の漏出が短くなるか又はなくなってしまう。

【００２６】 そして、プランジャ１の上昇によって圧送を行なって、図２の（ｄ）に示すよ うに、プランジャ１が上昇してリード１ｃが排口８ａに開通するようになるとリ ード１ｃ，排口８ａを通じて燃料油が油溜室２Ｂへ漏出して、圧力室２Ａ内の圧 力が急激に低下して燃料噴射が終わる。

【００２７】 上述の初期送油率の低減を図３のグラフを参照して説明すると、プランジャリ フト量θに対する吸入ポート断面積は、図３の（ａ）に実線で示すように変化し て、鎖線で示す従来例よりも吸入ポート閉鎖タイミングが遅れる。また、プラン ジャリフト量θに対する圧力室の圧力は、図３の（ｂ）に実線で示すように変化 して、鎖線で示す従来例よりも圧力変動のタイミングが遅れる。プランジャリフ ト量θに対する送油率ｑは、図３の（ｃ）に実線で示すように変化して、鎖線で 示す従来例よりも初期送油率が低減され送油率変動のタイミングが遅れる。

【００２８】 このような初期送油率をはじめとした送油率全体の低減は、低負荷域では大き くなるが高負荷域では殆ど又は全く生じないので、低負荷域においては、送油圧 の立ち上がりが緩やかになることや送油率の低減によりアイドル時騒音が低減さ れる一方で、高負荷域においては、燃料噴射ポンプの送油率が確保される。

【００２９】 したがって、高負荷域において燃料噴射ポンプの送油率を高くしても低負荷域 での送油率を低減して低負荷域における燃焼騒音を低減できるようになる。

【００３０】 なお、このようなポンプ圧力の特性は、ポンプ圧低減用切欠き部８ｂの形状、 特にその上縁８Ｂの形状に応じて行なえ、これらの形状を種々設定することで、 最適の特性変更を行なえる。

【００３１】

【考案の効果】

以上詳述したように、本考案のコントロールスリーブ付きプランジャ式燃料噴 射ポンプ構造によれば、燃料駆動用プランジャとプレストローク制御用コントロ ールスリーブとをそなえた燃料噴射ポンプにおいて、該コントロールスリーブに 、エンジンの低負荷域でポンプ圧を部分的に排除しうるポンプ圧低減用切欠き部 が設けられるという構成によって、高負荷域において燃料噴射ポンプの送油率を 高くしてエンジンの性能向上を図りながら、低負荷域での送油率を低減して低負 荷域における燃焼騒音を低減できるようになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例のコントロールスリーブ付き
プランジャ式燃料噴射ポンプ構造の要部の模式図であっ
て、（ａ）はその模式的な斜視図、（ｂ）はその模式的
な平面図である。

【図２】本考案の一実施例のコントロールスリーブ付き
プランジャ式燃料噴射ポンプ構造の作動状態を（ａ）〜
（ｄ）の順に示す側断面図である。

【図３】本考案の一実施例のコントロールスリーブ付き
プランジャ式燃料噴射ポンプ構造の特性を示すグラフで
ある。

【図４】一般的なプランジャ式燃料噴射ポンプ構造の全
体構造を示す斜視図である。

【符号の説明】

１ 燃料駆動用プランジャ １ａ 給排路 １ｂ 吸入ポート １ｃ リード ２Ａ 圧力室 ２Ｂ 油溜室 ８ プレストローク制御用タイミングスリーブ ８ａ 排口 ８Ａ 排口８ａの下縁 ８ｂ ポンプ圧低減用切欠き部 ８Ｂ ポンプ圧低減用切欠き部８ｂの上縁

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 燃料駆動用プランジャとプレストローク
   制御用コントロールスリーブとをそなえた燃料噴射ポン
   プにおいて、該コントロールスリーブに、エンジンの低
   負荷域でポンプ圧を部分的に排除しうるポンプ圧低減用
   切欠き部が設けられていることを特徴とする、コントロ
   ールスリーブ付きプランジャ式燃料噴射ポンプ構造。