JPH0311225Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はクランクシヤフト、特にジヤーナル部
の焼入れに適する改良された高周波焼入用コイル
に関するものである。

（従来の技術） クランクシヤフトのジヤーナル部を高周波焼入
れするには、実公昭56−48764号等の如く半円状
の高周波焼入コイルを上下、或は左右からジヤー
ナル部に遊嵌し、コイルに高周波電流を流してジ
ヤーナル部の表面を加熱し、加熱後コイルに内蔵
した冷却水ジヤケツトから冷却水を加熱部に噴射
し、冷却等して焼入れを行つている。

（考案が解決しようとする問題点） 以上の従来技術においては、ジヤーナル部の軸
部周囲に焼入れして所定深さの硬化層を形成し、
強度、耐摩耗性を向上せしめ、併せてジヤーナル
部の軸方向両端のＲ部、即ちフイレツト部表面に
も焼入れ硬化層を形成し、この部分の疲労強度を
向上せしめるものであるが、ジヤーナル部両端の
フイレツト部分の肉厚はピン部との連続部は厚肉
であるが、これの反対側の部分の肉厚は極端に薄
く、厚い側でもピン部に比較した場合肉厚が薄
い。従つて焼入用コイルによる加熱時にはフイレ
ツト部の薄肉部はヒートマスが小さいことから過
加熱されることとなり、この結果冷却時には薄肉
部の冷却速度が速く、且つ過加熱されていること
からフイレツト部と軸部との間の冷却速度に極端
な差が生じ、焼き割れが発生する虞れがある。

そこで上記に対処すべく特公昭61−887号、特
開昭61−64819号等の如く誘導電流、電圧、焼入
用コイルの形状、コイルの移動速度、加熱温度、
冷却速度等の高周波焼入条件を設定して高周波焼
入れを行つているのが現状である。上記によれば
充分でないにしても焼割れは防止できるが品質的
には不安定であり、フイレツト部分の疲労強度、
耐摩耗性を充分に得ることは困難である。

本考案は以上の問題点を解決すべくなされたも
ので、その目的とする処は、クランクシヤフトの
ジヤーナル部、フイレツト部夫々の焼入硬化特性
を満足させつつフイレツト部薄肉部の焼割れを防
止し、品質の優れたクランクシヤフトを安定した
品質で得せしめるようにした高周波焼入用コイル
を提供することにある。

（問題点を解決するための手段） 以上の問題点を解決するための手段は、一対の
端子部を備え、接合箇所のない一本のコイル材か
らなり、正（背）面視が略半円形で底面視が略矩
形枠状をなし、左右の部分は左右に離間して軸方
向に延び、該左右の部分の後端部は半円形の後部
分の両端と連続し、前端部は対称的な略1/4円部
分からなる左右の分割前部と連続し、該分割前部
の対向端は前記一対の端子部の夫々と連続する形
状であつて、左右の分割部の一方が軸方向一方に
突出してクランクシヤフトの軸部端のフイレツト
部に近いフイレツト部用加熱部を構成し、該加熱
部と軸方向に離間する半円状後部の半部はこの側
のフイレツト部から離間して、軸部周のフラツト
部用加熱部を構成し、分割前後部の他方及びこれ
の軸方向後方の半円状後部の半部は前記とは対称
形状とし、各加熱部とクランクシヤフト軸部周と
の間隙を一定にした高周波焼入用コイルである。

（上記手段による作用） 上記手段によれば、高周波加熱コイルは略1/4
円部で対称的にジヤーナル部上でフイレツト部薄
肉部に近いフイレツト加熱用部分を備え、クラン
クシヤフトを回転させ、薄肉部に該加熱部分が臨
んださいコイルの出力を低下させることにより薄
肉部の過加熱が防止でき、他の部分でコイル出力
を上げることによりジヤーナル部軸周及び他のフ
イレツト部に好ましい加熱焼入れが行える。

（実施例） 次に本考案の好適する一実施例を添付図面を参
照しつつ詳述する。

第１図は本考案に係る高周波焼入用コイルを用
いた焼入の一例を示す概略説明側面図で、１はク
ランクシヤフトを示し、クランクシヤフト１は回
転軸線をなすジヤーナル部１０１，１０２，１０
３，１０４，１０５と、この間のピン部１０６，
１０７，１０８，１０９とを備え、実施例は四気
筒用のものを示している。本考案に係るコイルで
焼入れが実施されるジヤーナル部は１０２及び１
０４で、ジヤーナル部軸部１０２ａ，１０４ａの
軸方向両端部にフイレツト部１０２ｂ，１０２
ｃ，１０４ｂ，１０４ｃが形成され、フイレツト
部は軸方向一端のピン部への連続立ち上がり部１
０２ｄ，１０４ｄは厚肉に形成されるが、該立ち
上がり部１０２ｄ，１０４ｄと反対側の部分は薄
肉部１０２ｅ，１０４ｅ、となり、薄肉部１０２
ｅ，１０４ｅは軸部１０２ａ，１０４ａの軸方向
両端で円周方向に角度、実施例では90゜位相がズ
レて形成される。

以上のクランクシヤフト１のジヤーナル部１０
２，１０４周に高周波焼入機構２をこれの半周を
コイル２１０が囲むように臨ませ、該焼入機構２
は不図示の電源に制御装置３を介して接続され、
制御装置３はクランクシヤフトのジヤーナル軸心
の回転角度変化を検出する位相検出器４の検出信
号で制御され、焼入機構２の出力を制御する。焼
入機構２は実施例では冷却ジヤケツト２０１を備
えるタイプを示し、門型で下端の対向する面には
冷却媒体噴出用のノズル２０２……を備え、内部
にコイル２１０を備える。一方、上からジヤーナ
ル部半周を囲むように焼入機構２を臨ませるとと
もに、下方にはフイレツト部冷却機構５を臨ま
せ、フイレツト部加熱時の冷却を行う。

高周波焼入コイル２１０を詳細に説明すると、
コイル２１０は第３図、第４図に示される如く
で、正（背）面視（ジヤーナル部の軸方向から見
て）半円形をなし、ジヤーナル部軸方向一端側、
例えばこれを前側とすればこれの中央部に接近し
て平行し、起立する二本の端子部２１１，２１２
を備える。該端子部２１１，２１２の下端から対
称的に略1/4円状の前部２１３，２１４が延設さ
れ、前部は半円が左右に二分割された形状をな
し、これら前部２１３，２１４でジヤーナル部の
軸周に離間して融合する前部半円部２１５を形成
する。前部２１３，２１４の各下端から後方に左
右のジヤーナル部と平行する左右の部分２１６，
２１７を一体に延出し、該左右の平行する部分２
１６，２１７の後端から前部と軸方向（前後方
向）に離間して対向する半円状の後部２１８を連
設し、後部２１８は前部と異り連続して一体であ
る。以上の一方の端子部２１１から他方の端子部
２１２の間は連続して一体でコイル２１０は一本
のコイル材で形成されている。以上のコイル２１
０は第４図の底面図に示す如く底面視横長の矩形
枠状をなし、横の平行部２１６，２１７はジヤー
ナル部の軸方向両端のフイレツト部間に収まる長
さに設定されている。

以上のコイル２１０はジヤーナル部の軸部の軸
方向を第４図の上下方向として左右に対称形状に
仮想に分割し、第４図明示の如く右側の分割され
た前部２１４は前後方向の幅を大きくして前方に
突出してフイレツト部用加熱部分Ａとし、右側の
平部の前部が該部分Ａとなる。隣接する左側の部
分２１３は右側の部分２１４よりも後方に一段下
がつてフラツト部用加熱部分Ｂとする。このよう
に各部分Ａ，Ｂは半円形、従つて180゜の弧をなす
前部２１５を90゜に円周方向に分けて設けられる。
半円形、従つて180゜の弧をなすように設けられた
後部２１８は前部に対応し、180゜の弧を仮想に左
右に分けて右側、即ち前部２１４がフイレツト部
用加熱部分Ａと対応する後方の半部２１８ａをフ
ラツト部用加熱部分Ｂとし、左側、即ち前部２１
３がフラツト部用加熱部分Ｂと対応する後方の半
部２１８ｂを後方に突出したフイレツト部用加熱
部分Ａとする。即ちコイル２１０は左右の半部
ａ，ｂで軸方向に位相がズルるように構成する。

従つて第５図、第６図の如くジヤーナル部１０
４の軸部１０４ａに遊合した状態が、第５図の如
くフイレツト部用加熱部分Ａはフイレツト部１０
４ｂの起壁１０４ｆとの間隔Ｄが小さく、フイレ
ツト部１０４ｂのＲ部１０４ｇと対向する角部の
ｒは小さく、軸部１０４ａ周との間に間隔Ｃを保
持し、一方、ジヤーナル部１０４の円周方向に位
相がずれた同側の部分はフラツト部用加熱部分Ｂ
となり、この部分Ｂは起壁１０４ｆとの間隔Ｅが
前記Ｄよりも大きく、Ｒ部１０４ｇと対向する角
部のＲはｒよりも大きく、軸部１０４ａ周との間
の間隔Ｃは前記と同じとする。

従つてＤ＜Ｅ，ｒ＜Ｒ，Ｃ＝一定の関係に設定
する。

以上の焼入用コイルによるジヤーナル部の焼入
れを述べると、既述の如くクランクシヤフト１の
中心軸を中心にして回転させ、コイル２１０はジ
ヤーナル部１０４の軸部１０４ａ周に遊合し、固
定とする。ジヤーナル部１０４は回転し、一方、
固定側のコイル２１０には通電し、ジヤーナル部
１０４の軸部１０４ａ周及び軸方向両端のフイレ
ツト部１０４ｂ，１０４ｃを高周波加熱する。

ところでフイレツト部１０４ｂ，１０４ｃは軸
方向端の一方が略1/4周近く薄肉部１０４ｅであ
り、軸方向端の他方が前記とは位相を円周方向に
ズラせて略1/4周近くが薄肉部１０４ｅである。
そこでフイレツト部に接近する加熱部分Ａ，Ａ−
コイルの軸方向両端に90゜位相をズラせて設けら
れて前後一対ある−が該薄肉部１０４ｅに接近し
たときにコイルへの出力を低下させ、軸部周より
も低温で加熱する。これを第７図、第８図で示す
と、クランクシヤフトのジヤーナル部１０４を前
後から見た図で、第７図を例えば前方から、第８
図を後方から見た図としよう。今ジヤーナル部１
０４を四等分し、をフイレツト部薄肉部とし、
薄肉部は軸方向に離間して実施例では180゜位相
がズレている。コイル２１０の第７図では前部の
左半Ａが、又第８図では右半部Ａがフイレツト部
用加熱部分で、第７図の正面側でジヤーナル部１
０４、従つてクランクシヤフト１が図中右方向に
回転するとすると第８図の背面側では反対の左方
向の回転となり、軸方向前後の位相の180゜異なる
薄肉部，の中心部がフイレツト部用加熱部分
Ａ，Ａに臨んださいコイル２１０の出力を低下さ
せる。このように薄肉部，の加熱にさいして
は他の部分に比して低出力で加熱し、該加熱時に
既述の冷却機構５から例えば水の如き冷却媒体を
噴射させ、過加熱を抑制しても良い。これにより
薄肉部，の過加熱は抑制され、焼割れの生じ
ない焼入れが行え、一方、薄肉部，がフイレ
ツト部用加熱部分Ａ，Ａを通過した角度を既述の
位相検出器４で検出し、他のゾーン，，で
はコイル２１０の出力を高める。これにより軸部
１０４ａ及びフイレツト部１０４ｂ，１０４ｃは
フイレツト部薄肉部１０４ｅ以外の部分が高出力
で加熱され、フイレツト部１０４ｂ，１０４ｃは
薄肉部以外の部分が起立部１０４ｄ，１０４ｄに
より充分の肉厚を備え、ヒートマスが大きいこと
から、又フイレツト部用加熱部分がフイレツト部
１０４ｂ，１０４ｃに接近していることから高出
力で充分に加熱され、加熱後冷却水の供給で焼入
れされる。

第９図は以上によるジヤーナル部１０４の焼入
れパターンを示し、フイレツト部１０４ｂ，１０
４ｃの薄肉部１０４ｅ，１０４ｅは焼入れ硬化層
Ｈが浅く、軸部１０４ａ周では薄肉部から反対方
向へ順次深くなり、フイレツト部の薄肉部以外の
部分は更に深くなる。従つてかかる焼入れ硬化パ
ターンに従えば、薄肉部においては焼割れが防止
でき、その反対側のフイレツト部のＲ部分は焼入
れ深さが深くなるので疲労強度が更に向上する。

他のジヤーナル部１０２も同様に焼入れする。

以上実施例ではクランクシヤフトを中心軸を中
心にして回転させたが、コイル側をジヤーナル周
で回転させても良い。

（考案の効果） 以上で明らかな如く本考案によれば、焼入れ用
コイルを上記の如くしたので、略90゜離間して軸
方向両端のフイレツト部用加熱部が薄肉部に臨ん
ださいコイルの出力を低下させ他の部分ではコイ
ルの出力をもとにもどすことによりコイルとクラ
ンクシヤフトジヤーナル部の相対回転により一回
転する間に薄肉部、フイレツト部、軸部周を夫々
の焼入温度に適した温度に加熱することができ、
薄肉部の焼割を防止し、薄肉部、これ以外のフイ
レツト部、軸部の各部夫々に必要な焼入硬化層を
生成せしめることができ、疲労強度、耐摩耗性に
優れた品質良好なクランクシヤフトを得ることが
できるとともに、コイルを上記の如くしたので例
えばクランクシヤフトを回転させ、これの位相を
検出し、コイルの出力を制御するという容易な制
御方法で品質良好なクランクシヤフトを安定して
得ることができ、クランクシヤフトの生産上有利
である等の利点がある。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示すもので、第１図
はクランクシヤフト焼入れの説明的側面図、第２
図は高周波焼入機構の斜視図、第３図は焼入コイ
ルの斜視図、第４図は同底面図、第５図、第６図
はコイルのフイレツト部加熱部及びフラツト部加
熱部とジヤーナル部の関係を示す説明的断面図、
第７図及び第８図はフイレツト部加熱部とジヤー
ナル部のフイレツト部薄肉部との関係を示す説明
図、第９図は本考案に係る加熱コイルによつて得
られたクランクシヤフトジヤーナル部の焼入パタ
ーンの説明図である。 尚図面中１はクランクシヤフト、１０４ａは軸
部、１０４ｂ，１０４ｃはフイレツト部、１０４
ｅは薄肉部、２１０はコイル、２１１，２１２は
端子部、２１３，２１４は前部の分割部、２１
６，２１７は左右の部分、２１８は半円形後部、
Ａはフイレツト部用加熱部、Ｂはフラツト部用加
熱部である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 一対の端子部を備え、接合箇所のない一本のコ
   イル材からなり、正（背）面視が略半円形で底面
   視が略矩形枠状をなし、左右の部分は左右に離間
   して軸方向に延び、該左右の部分の後端部は半円
   形の後部分の両端と連続し、前端部は対称的な略
   １／４円部分からなる左右の分割前部と連続し、該
   分割前部の対向端は前記一対の端子部の夫々と連
   続する形状であつて、左右の分割部の一方が軸方
   向一方に突出してクランクシヤフトの軸部端のフ
   イレツト部に近いフイレツト部用加熱部を構成
   し、該加熱部と軸方向に離間する半円状後部の半
   部はこの側のフイレツト部から離間して、軸部周
   のフラツト部用加熱部を構成し、分割前後部の他
   方及びこれの軸方向後方の半円状後部の半部は前
   記とは対称形状とし、各加熱部とクランクシヤフ
   ト軸部周との間隙を一定にしたことを特徴とする
   クランクシヤフトの高周波焼入用コイル。