JPH027254Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 考案の目的 ［技術分野］ 本考案はデイーゼルエンジンの燃料噴射弁に燃
料を圧送する分配型燃料噴射ポンプに関するもの
である。

［従来技術］ 従来、デイーゼルエンジンの分配型燃料噴射ポ
ンプは、そのガバナ機構、即ちエンジン回転数に
対応して回転する遠心式メカニカルガバナとアク
セルレバー位置に対応して変位するテンシヨンレ
バーとコントロールレバーとを互いに適宜関連さ
せてスピルリングの位置を変位させることによつ
て、噴射燃料量の調節を行つている。つまり、従
来のデイーゼルエンジンの分配型燃料噴射ポンプ
は、エンジン特性に対応した噴射終了時期の調節
により燃料噴射量を制御している。従つて、噴射
時間（噴射開始時期から噴射終了時期までの時
間）によつて噴射量が必然的に決定され、噴射時
間と無関係に噴射量を設定できない。

燃料噴射時間に対応している噴射量を一定条件
下に変更できる燃料噴射ポンプとして、特開昭54
−105615号公報及び特開昭54−134222号公報に記
載の燃料噴射ポンプが提案されている。これは燃
料の噴射開始タイミングをアイドル時に遅延させ
ることにより、ポンププランジヤの移動速度の低
い領域で燃料を噴射させ、結果的に平均の噴射率
を低下させている。この平均の噴射率の低下、即
ち単位噴射時間あたりの噴射量の低下によりアイ
ドル時には同一の燃料噴射時間であつても燃料噴
射量を通常の噴射量より低くできるものである。

［考案が解決しようとする課題］ しかし、これでは噴射開始時期の変更を伴い、
しかもまだ噴射時間に対して噴射量が任意に選択
できるわけではなかつた。

他の装置として、燃料の圧送室に連通する圧力
調節装置を設け、その圧力調節機能により燃料噴
射率を可変することによつて、噴射開始時期を変
更することなく、同一の噴射時間に対する噴射量
を可変とし、噴射時間とは独立に噴射量を調節可
能とする構成が考えられる。例えば、圧力調節装
置として背圧を所定圧に調節可能なアキユムレー
ト室を備えて、そのアキユムレート室と圧送室と
を連通する通路に開閉弁を設け、アイドル時・低
負荷時にそのアキユムレート室と圧送室とを連通
し、他の条件の際には遮断する開閉弁を設ける構
成が先に提案されている（特願昭57−195559号）。

しかし、噴射率を任意に調節するためのアキユ
ムレート室の背圧調節は、製造時や補修時に可能
なのであつて、デイーゼルエンジンの運転時には
もはや一定の背圧に固定されている。従つて単に
レバーにより開閉弁を、アイドル時・低負荷時に
至つた場合に開き、それ以外の場合に閉じるよう
に制御していたのでは、燃料噴射率は一律に上下
するのみであり、噴射時間に対して２通りの噴射
量が設定できるだけである。従つて、燃料噴射量
を噴射時間に対して独立して任意に設定できると
は言えない。即ち、デイーゼルエンジンの運転状
態に応じて、燃料の噴射時間と噴射量（噴射率）
とを各々種々の値に調節して所望の燃焼制御を実
行しようとしても、噴射率が２通りのみであり、
各噴射率では燃料噴射量が噴射時間により決定さ
れるので自由に噴射量を調節することができず、
燃焼制御に制限を受ける。

本考案の目的は、燃料噴射時間と燃料噴射量ま
たは平均の燃料噴射率（＝燃料噴射量／燃料噴射
時間）とを独立して制御できる分配型燃料噴射ポ
ンプを提供することにある。

考案の構成 ［課題を解決するための手段］ 本考案の分配型燃料噴射ポンプは、 ドライブシヤフトの回転に連動して、往復動す
ることにより燃料の圧送行程と吸入行程とを繰り
返し、圧送行程においては燃料を押圧し該燃料を
高圧にするとともに、前記ドライブシヤフトの回
転に連動して回転することにより、刻設された分
配ポートを回転させ前記高圧の燃料を各燃料噴射
弁へ送出するポンププランジヤを備えた分配型燃
料噴射ポンプにおいて、 前記分配ポートと連通した環状溝と、 前記環状溝と燃料通路にて連通し摺動可能なピ
ストンによつて画設された油溜め室と、 前記ピストンに油溜め室方向への付勢力を与え
る調圧手段と、 前記燃料通路に介装され燃料通路を開閉する開
閉手段と、 各圧送行程における前記開閉手段の開時間をデ
イーゼルエンジンの運転状態に応じて調整する制
御手段と、 を備えたことを特徴とする。

［作 用］ 上記構成を有する本考案の分配型燃料噴射ポン
プは、 制御手段により、燃料の各圧送行程において、
制御される開閉手段の開時間の割合、即ち開閉手
段が開となつている期間と閉となつている期間と
の比は、デイーゼルエンジンの各種運転状態に応
じた所望の割合とすることが出来る。即ち、燃料
の圧送行程に対応する各燃料噴射時間において、
２種の燃料噴射率の割合を任意に設定できること
になる。

このため、燃料噴射時間が同一であつても、平
均の燃料噴射率をデイーゼルエンジンの各種運転
状態に適合させて２種の燃料噴射率の間で任意に
変化させることが出来る。即ち、１つの圧送行程
中において、開閉手段の開時間を長くすれば、燃
料噴射率が低い状態が長期継続し、１つの圧送行
程での平均の燃料噴射率は低下し、これに応じて
当然、燃料噴射量は少なくなる。逆に開閉手段の
開時間を短くすれば、燃料噴射率が高い状態が長
期継続し、平均の燃料噴射率は上昇し燃料噴射量
は多くなる。その中間に開時間を持つて来れば、
当然に噴射率・噴射量はその中間の値となる。

このように、噴射時間は一定でも、各圧送行程
中での開時間の割合、即ち低噴射率の割合を調節
すれば、その割合に応じた平均の燃料噴射率また
は燃料噴射量を実現することが出来る。即ち、噴
射時間を変更することなく、１つの燃料噴射（圧
送行程）において全体としての噴射量または噴射
率を噴射時間から独立して任意に変更できること
になる。

［実施例］ 次に本考案の分配型燃料噴射ポンプの構成を一
層明らかにするため好適な実施例を図面と共に説
明する。

第２図は本考案の一実施例である。ここで分配
型燃料噴射ポンプ１１は、エンジン回転数に同期
した図示省略ドライブシヤフトの回転によるフイ
ードポンプの作動とポンププランジヤ１２の回転
往復動とにより、燃料の圧送行程と吸入行程とを
繰り返し、圧送行程においては油加圧室１３に圧
送されて来た前記フイードポンプからの高圧燃料
をポンププランジヤ１２で更に加圧した状態でポ
ンププランジヤ１２の分配ポート１４よりデリバ
リバルブ１５を通つて燃料噴射弁１６に圧送する
よう構成されている。上記分配型燃料噴射ポンプ
１１の前記ポンププランジヤ１２には分配ポート
１４に通じる環状溝１７が形成され、かつ、燃料
噴射ポンプ１１のポンプデイスヘツド１８には、
ピストン１９を押圧するスプリング２０の付勢力
によつて背圧が設定される油溜め室２１が形成さ
れ、該油溜め室２１と前記ポンププランジヤ１２
の環状溝１７とを連通する燃料通路２２上には、
電磁コイル２３の励磁によるスプリング２４の付
勢力に抗してのプランジヤ２５の吸引と電磁コイ
ル２３無励磁でのスプリング２４付勢力によるプ
ランジヤ２５の復帰とによつてプランジヤ２５と
一体の弁体２６を開閉制御する開閉制御弁２７が
取り付けられている。上記電磁コイル２３は図示
省略各センサからのエンジン回転数、負荷、吸気
温度、吸気圧力、エンジン温度等各信号を入力及
び演算処理する電子制御回路２８からの出力によ
つて、予め設定した燃料減少あるいはカツト必要
時にオン作動し、弁体２６のくびれ部分２６ａを
介して環状溝１７と油溜め室２１とを連通させ
る。

なお、２９は図示省略ガバナ機構によつてポン
ププランジヤ１２の軸方向に変位するスピルリン
グ、３０はポンプハウジング内に通じる通路を示
す。

このように構成された分配型燃料噴射ポンプ１
１において圧送行程前に開閉制御弁２７がオフの
場合、油加圧室１３からの高圧、例えば200Kg／
cm²の高圧燃料は総てデリバリバルブ１５を通つて
燃料噴射弁１６に圧送される。圧送行程中に電磁
コイル２３が励磁されて開閉制御弁２７がオンす
ると、環状溝１７と油溜め室２１とが連通するた
めポンププランジヤ１２による燃料圧送時におい
て、油加圧室１３からの燃料がスプリング２０で
低圧、例えば140Kg／cm²に設定した油溜め室２１
にも流入してピストン１９を押し上げる。その結
果、燃料噴射弁１６から噴射される燃料圧力は第
１図に実線Ａで示す圧力線から点線Ｃに移行し
て、それ以後の油溜め室２１への容積増加分に応
じて減少するので、燃料噴射率は低下し、圧送行
程全体としての平均の燃料噴射率も燃料噴射量も
低下するものの、燃料噴射時間は変化しない。こ
の開閉制御弁２７のオン時間が１回の圧送行程
（つまり噴射時）内で長時間にわたれば、それだ
け１回の噴射時間の中で、噴射率が低い期間の割
合が増加し、圧送行程全体としての平均の噴射率
も当然に低下して、噴射量も低下する。

このオン時間の長短を調節すれば同一噴射時間
でも噴射量を任意に設定できる。つまり、開閉制
御弁２７のオン時間の調節、即ち開閉制御弁２７
による油溜め室２１への燃料の流入量の調整によ
り、噴射時間を変化させずに燃料噴射率を自由に
制御できる。即ち、噴射時間とは独立に燃料噴射
量を自由に調節することができる。

勿論、この自由な調節は、圧送行程全体で開閉
制御弁２７がオンである際の最少噴射量と圧送行
程全体でオフである際の最大噴射量との間での自
由な調節を意味する。しかし、スプリング２０の
付勢力を、製造時や補修時に適当に選択すれば、
上記最小噴射量を変更できるので、油溜め室２１
の容量に応じて、自由に噴射量を噴射時間とは独
立して設定できると言える。

なお、ピストン１９はポンププランジヤ１２が
スピルリング２９側へ移動し、油加圧室１３内に
燃料が供給される際に油溜め室２１内の燃料が油
加圧室１３及びポンプハウジング内へスプリング
２０及びピストン１９の復帰とともに燃料を排出
する。この排出された燃料は燃料噴射弁１６側へ
供給されないようにスプリング２０の荷重はデリ
バリバルブ１５の開弁圧より低く設定される。

このように噴射量と噴射時間とを独立して自由
に調節できるため、各種センサからの出力によつ
て判定される任意のエンジン運転時において、電
子制御回路２８が開閉制御弁２７の電磁コイル２
３をオン・オフ制御することによつて、例えば次
のような制御が可能となる。

即ち、第３図イに斜線部分ａで示す始動後の始
動時増量分をカツト、第３図イに斜線部分ｂで示
すように、吸気温上昇あるいは高地運転時に燃料
量を減少、第３図ロに斜線部分ｃで示すようにオ
ーバ過給時の噴射量を減少させることができる。
あるいは、第３図ハにエンジン無負荷曲線ｆ以下
にある斜線部分ｄ（減速時）、ｅ（加速時）で示す
軽負荷時に送油を停止させることもできる。

このように、所定のエンジン運転状態におい
て、燃料噴射量を減少させると共に、第３図の斜
線部分から明らかなようにその減少量がエンジン
の回転数に応じて変化している。このことによ
り、 (1) 軽負荷時（負のトルク発生時）の白煙発生を
防止してしかも燃費を向上させることができ、 (2) オーバ過給時にエンジンが破損することを防
止することができ、 (3) 吸気温度の上昇あるいは高地運転におけるス
モークの悪化を防止することができ、 (4) エンジン始動時、始動後の始動増量をカツト
して同じくスモークの悪化を防止することがで
きる。

また、通常運転時に開閉制御弁２７をオフ状態
に維持した場合には、高圧の燃料が油溜め室２１
に至らない。従つて、その際にはピストン１９等
に高圧がかからないので、構成を簡易にすること
ができる。

尚、本実施例においては、スプリング２０が調
圧手段に対応し、開閉制御弁２７が開閉手段に対
応し、電子制御回路２８が制御手段に対応する。

考案の効果 本考案の分配型燃料噴射ポンプによると、簡易
な構成により燃料噴射時間と燃料噴射量または平
均の燃料噴射率とを独立して任意に設定できる。
従つてデイーゼルエンジンの運転状態に従つた精
密な燃焼制御を実行することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来例と本考案との差異を示す特性比
較図、第２図は本考案の一実施例の要部破断正面
図、第３図はその噴射燃料減量あるいはカツトの
特性図である。 １１……分配型燃料噴射ポンプ、１２……ポン
ププランジヤ、１４……分配ポート、１５……デ
リバリバルブ、１６……燃料噴射弁、１７………
環状溝、１９……ピストン、２０……スプリン
グ、２１……油溜め室、２２……燃料通路、２７
……開閉制御弁、２８……電子制御回路。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 ドライブシヤフトの回転に連動して、往復動す
   ることにより燃料の圧送行程と吸入行程とを繰り
   返し、圧送行程においては燃料を押圧し該燃料を
   高圧にするとともに、前記ドライブシヤフトの回
   転に連動して回転することにより、刻設された分
   配ポートを回転させ前記高圧の燃料を各燃料噴射
   弁へ送出するポンププランジヤを備えた分配型燃
   料噴射ポンプにおいて、 前記分配ポートと連通した環状溝と、 前記環状溝と燃料通路にて連通し摺動可能なピ
   ストンによつて画設された油溜め室と、 前記ピストンに油溜め室方向への付勢力を与え
   る調圧手段と、 前記燃料通路に介装され燃料通路を開閉する開
   閉手段と、 各圧送行程における前記開閉手段の開時間をデ
   イーゼルエンジンの運転状態に応じて調整する制
   御手段と、 を備えたことを特徴とする分配型燃料噴射ポン
   プ。