JPH0230116Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は消失性原型を鋳型内の砂に埋め、溶湯
の注入により原型を消失させながら鋳造を行なう
鋳造装置に関するものである。

［従来の技術］ 鋳造装置の一種として知られている上記消失性
原型を用いて行なう従来の鋳造装置は、合成樹脂
などを形成した消失性原型を、あらかじめ高圧エ
アを吹込んで流動層状にした砂の中に埋め、この
原型に湯道を介して設けた注湯口へ溶湯を注入し
て原型を消失させながら鋳造を行なうものであっ
て、砂の流動層は一般にセラミツク製の多孔板ま
たはステンレス製の金網によつて支承されてい
る。

［考案の解決しようとする問題点］ しかしながら、このような従来の鋳造装置にお
いては、砂が流動層状であるために原型が埋めに
くく、埋めるときに砂が鋳枠外へ飛散して作業性
がきわめて悪いばかりでなく、原型の細部にまで
砂が行き渡らないために不良製品が発生すること
があつた。さらに、砂を支承する部材としてセラ
ミツクを用いる場合には、材質上0.5〜１mm程度
以下の孔が明けられないために砂が洩れることが
あり、またステンレス金網を用いる場合には、砂
の微粒子が目詰りしてエアが通過しなくなり砂の
流動を妨げるという問題があつた。

［問題点を解決するための手段］ このような問題点を解決するために本考案で
は、注湯装置が付設された筒状鋳枠の内部に、多
孔板で上下から挟持された圧縮ウール板からなる
隔板によつて消失性原型埋設用砂の充填部と、空
間部とを上下に隔成し、空間部に砂流動用の高圧
エア源と砂充填部減圧用の負圧エア源とを接続す
るとともに、鋳枠振動装置と注湯部とを設けた。

さらに、本考案では、鋳枠の上方に昇降可能な
カツプを設け、このカツプに、押湯部加圧用の高
圧ガス源を接続した。

［作用］ 鋳枠に充填した砂に消失性原型を埋設し空間部
へ高圧エアを吹込むとこのエアは隔板の孔とウー
ル繊維間を通つて砂充填部に吹上げ砂の流動層が
できる。これと同時に、あるいはこれに引続いて
鋳枠を振動装置で振動させかつ空間部からエアを
引いて砂充填部内を減圧すると、砂が原型の細部
まで行き渡つてよく締まり、引続き鋳枠に注湯す
ると原型が消失してその後には溶湯が鋳込まれ
る。このとき減圧を続けているので、鋳込部のガ
スが抜ける。

注湯終了後にカツプを押湯部に上側から被せ、
カツプ内に高圧ガスを導入することにより押湯部
の加圧を行ない、押湯効果を高める。

［実施例］ 第１図および第２図は本考案に係る鋳造装置の
実施例を示し、第１図はその縦断面図、第２図は
隔板の拡大断面図である。図において、全体を符
号１で示す円筒状の鋳枠は、本体側の下端にフラ
ンジ接合された底板２を備えており、鋳枠１全体
は、この底板２と架台３との間に複数個の圧縮コ
イルばね４を介装することにより架台３によつて
振動可能に支持されている。鋳枠１は、底板２で
下部開口端を閉塞された円筒状の風箱５と、その
上端フランジにガイド５ａで案内されて着脱自在
に接合されて複数個のクランプ６で固定された円
筒状の鋳枠本体７と、その上端開口に固定された
扁平円筒状の砂止め枠８とで形成されており、砂
止め枠８の中心部には、注湯用筒体９が一体形成
されている。１０は鋳枠本体７の着脱に際しホイ
スト等のフツクを掛ける金具である。

このような鋳枠１の内部には、後述する隔板１
６によつて消失性原型埋設用の砂充填部１１と、
その下方の空間部１２とが上下に隔成されてお
り、砂充填部１１内には、本実施例の場合40〜
100メツシュ程度の粒径のものが混つた珪砂１３
（以下砂１３と言う）が充填される。さらに砂１
３には、例えば発泡ポリスチレン樹脂等により鋳
造品と同形状に形成された消失性の原型１４が、
これと一体の押湯用原型１５を前記注湯用筒体９
の下端と接合させて埋設されている。

前記隔板１６は、鋳枠１内周のフランジに固定
され径２mm程度の複数個の孔１７ａを有する円板
状の下部多孔板１７と、この下部多孔板１７上に
重ねられカーボンウールなどの繊維を圧縮して円
板状に形成した圧縮ウール板１８と、径10mm程度
の複数個の孔１９ａを有し下部多孔板１７とで圧
縮ウール板１８を挟持する円盤状の上部多孔板１
９とで形成されており、これらは複数個のボルト
で固定されている。風箱５の下部には、開閉弁２
０を有し高圧エア源としてのエアコンプレツサに
接続された配管２１と、開閉弁２２を有し負圧エ
ア源としての真空ポンプに接続された配管２３と
がそれぞれ接続されている。そして開閉弁２０を
開くことにより、例えば２〜３Kg／cm²の高圧エア
が風箱５内に送り込まれ、多孔板１７，１９の孔
１７ａ，１９ａと圧縮ウール板１８の繊維間を通
り鋳枠本体７内に吹き込まれて砂１３を流動させ
るように構成されている。また、開閉弁２２を開
くことにより、鋳枠本体７内のエアが隔板１６を
経て例えば、250〜300mmHgが吸引される。さら
に前記底板２には、複数個のユーラスモータ２４
が装着されており、これを回転させることにより
鋳枠１全体が圧縮コイルばね４に弾性支持されて
振動し、前記エアの吸引と相まつて砂１３を原型
１４の細部へ行き渡らせるように構成されてい
る。２５は支持金具２６によつて回動自在に支持
された取鍋であつて、内部に溶湯が供給され、こ
れを図示のように傾動させることにより、溶湯が
注湯用筒体９へ注入され、この溶湯が押湯用原型
１５と製品用原型１４とを溶解により消失させ、
これと入れ代つて両原型１５，１４内に充填され
るように構成されている。さらに風箱５内には、
複数個の貫通孔２７を有する冷却フイン２８が冷
却水源との間を冷却水管２９で接続されて架設さ
れており、原型１４，１５への溶湯充填に際し原
型１４，１５内のガスが前記真空ポンプが吸引さ
れるときにこのガスを冷却して真空ポンプへ高温
のガスが導かれないように構成されている。３０
は、砂１３を覆つて設けられエア吸引時に大気を
遮断する合成樹脂フイルム製のカバーである。

而して、鋳枠１の上方には有蓋無底のカツプ４
０が昇降可能に設置され、このカツプ４０には押
湯部加圧用の高圧ガス源（本実施例では５〜７
Kg／cm²の窒素ガス源）が配管４１を介して接続さ
れている。符号４２はこの配管４１に介設された
電磁弁であり、４３は配管４１の接続開口の下面
側に対向して設けられたガス分散部材であり、そ
の側面に小孔４３ａが複数個穿設されている。

本実施例では、カツプ４０は主柱４４にアーム
４５を介して支持されている。この主柱４４はス
クリユシヤフトとなつており、駆動装置（図示せ
ず）によつてこの主柱４４を回転させることによ
り、該主柱のねじに螺合しているアーム４５が昇
降され、カツプ４０の上下動が行なわれる。

以上のように構成された鋳造装置においては、
図示の装置を１基設けて鋳枠本体７を１回の鋳造
ごとに風箱５に対して着脱させ原型１４，１５の
埋設と砂の充填とを行なつて鋳造を行なうことも
可能であるが、１回の鋳造サイクルが長くなつて
生産性が悪いので、流動ステーシヨンと、鋳込ス
テーシヨンおよび製品取出ステーシヨンを設けて
鋳枠本体７をこれらのステーシヨン間で移動させ
るようにした装置について以下その構成と鋳造動
作とを第４図に示すフローシートに基いて説明す
る。すなわち、装置内には、流動ステーシヨン３
１と、複数個の鋳込ステーシヨン３２、および製
品取出ステーシヨン３３が設けられており、流
動、鋳込両ステーシヨン３１，３２には、第１図
における鋳枠本体７等を除いた風箱５よりも下方
の装置全体がそれぞれ設けられている。鋳枠本体
７は、複数組用意されており、各鋳込ステーシヨ
ン３２の上方には取鍋２５がそれぞれ配設されて
いる。さらに、流動ステーシヨン３１の上方には
砂用のホツパ３４とコンベア３５とが配設されて
いる。なお、流動ステーシヨン３１に設けられる
装置には、前記冷却フイン２８が設けられていな
い。

このように構成された鋳造装置の動作を説明す
る。別工程において発泡ポリスチレン樹脂等の材
料を用いて消失性の原型１５と押湯用原型１４と
を製作し、塗型の塗布と乾燥を行なつて用意す
る。そして、流動ステーシヨン３１では、砂止め
枠８、注湯用筒体９およびカバー３０の置かれて
いない鋳枠本体７をホイストで釣り風箱５上に載
置してクランプ６で固定し、原型１４，１５を所
定位置で保持しながらコンベア３５から砂１３を
鋳枠本体７内に供給して充填する。充填後、砂１
３が飛散して環境が悪化することのないように砂
止め枠８を固定したのち、ユーラスモータ２４を
始動して鋳枠１全体を振動させるとともに、開閉
弁２０を開いて例えば２〜３Kg／cm²の高圧エアを
風箱５内に送り込むと、この高圧エアは上下の多
孔板１９，１７の孔１９ａ，１７ａと圧縮ウール
板１８の繊維間を通つて砂１３内に吹込まれて砂
１３の流動層が形成される。

鋳枠１の振動と砂１３の流動化とにより砂１３
が原型１４の細部にまで行き渡り、また縦だけで
なく、横や斜めの中子に相当する孔の部分を用い
た場合でも隅々まで砂１３が十分に行き渡るの
で、開閉弁２０を閉じ開閉弁２２を開くと、砂１
３に含まれるエアは隔板１６を通つて風箱５から
吸引され鋳枠本体７内が減圧される。この間鋳枠
１の振動が続けられているので、この振動と減圧
とによつて砂１３がよくしまつて原型１４の細部
まで完全に行き渡り、原型１４が所定位置に固定
される。

こうして原型１４が固定された鋳枠本体７を複
数組作つてクランプ６を外したのち各鋳込ステー
シヨン３２へ移動し、風箱５上に載置してクラン
プ６で固定する。そして鋳枠１を振動させながら
砂１３の上をカバー３０で覆つたのち再び減圧を
行なつて砂２３を固め、減圧を続けたまま振動を
停止する。そこで、取鍋２５で汲み上げた溶湯を
中湯用筒体９へ供給すると、この溶湯の高熱によ
つて原型１４，１５が溶解して消失し、消失した
後の砂型内には溶湯が充填される。このとき減圧
が続けられているので、原型１４，１５の消失に
伴なう発生ガスが冷却フイン２８で冷却されなが
ら機外へ吸引される。なお、この減圧は溶湯が固
化するまで続けられる。

而して、注湯が終了した直後に、カツプ４０を
降下させ、注湯用筒体９に被せ、次いで電磁弁４
２を開いて該カツプ４０内に高圧ガスを導入し、
押湯部の加圧を行なう。このガス圧により押湯部
から加圧されながら凝固が行なわれるので、押湯
効果が極めて高くなり、内部欠陥のない健全な鋳
造品が得られる。

溶湯が固化して冷却されたのち、クランプ６を
外して鋳枠本体７を製品取出ステーシヨン３３へ
移動させ、製品を取出して仕上、検査後集積す
る。また、砂１３は冷却後、トロンメル３６で篩
をかけられてホツパ３４へ還元され、空になつた
鋳枠本体７は流動ステーシヨン３１へ還元され
る。なお、製品取出ステーシヨン３３には高圧エ
アの吹込装置を設け、高圧エアで砂１３を流動さ
せながら製品を取出すことが望ましい。

上記流動、鋳込両ステーシヨン３１，３２にお
ける高圧エアの送入ならびに減圧に際しては、砂
１３を多孔板１７，１９で挟持された圧縮ウール
板１８からなる隔板１６で支承したことにより、
エアのみがこの隔板１６を通過し砂１３が下方へ
洩れることがない。

第３図は本考案の他の実施例としての隔板の拡
大断面図であつて、本実施例の隔板１６Ａにおい
ては、圧縮ウール板１８に金網３７が重ねられて
補強されている。なお、第２図、第３図において
圧縮ウール板１８は、高圧エアによつて孔１９ａ
内へ膨出しているところを誇張して示している。

前記各実施例においては圧縮ウール板１８とし
てカーボンウールを用いた例を示したが、例えば
チラノ繊維ウール（商標）などウール繊維を通気
性を保持しながら圧縮したものであればいかなる
材料でもよい。さらに前記冷却フイン２８は鋳枠
１の外部に設けてもよい。さらに鋳枠１、風箱
５、鋳枠本体７、砂止め枠８などは、円筒状に限
られることはなく、角筒状などの筒状に形成して
もよい。

［考案の効果］ 以上の説明により明らかなように、本考案によ
れば消失性原型を用いる鋳造装置において、注湯
装置が付設された筒状鋳枠の内部に、多孔板で上
下から挟持された圧縮ウール板からなる隔板によ
つて消失性原型埋設用砂の充填部と、空間部とを
上限に隔成し、空間部に砂流動用の高圧エア源と
砂充填部減圧用の負圧エア源とを接続するととも
に、鋳枠振動装置と注湯装置とを設けたことによ
り、砂への原型の埋設に際しては鋳枠が振動し高
圧エアによつて砂が流動化するとともに、減圧に
よつて流動状砂内のエアが吸引されるので、砂が
よくしまつて原型の細部にまで完全に行き渡り、
中子を必要としない高品質の製品の鋳造が可能と
なる。また、注湯による原型の溶解消失時におけ
る発生ガスが減圧によつて吸引されるので、砂の
充填層の通気性が良好になつて鋳肌のきれいな鋳
造品が得られ、製品の品質が著しく向上する。さ
らに、砂を支承する隔板が、エアのみを通過させ
砂が洩れないので、きわめて効果的である。加え
て、本考案においては高圧ガスにより押湯部を加
圧できるから、押湯効果が極めて高くなり、内部
欠陥のない健全な鋳造品が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第４図は本考案に係る鋳造装置の
実施例を示し、第１図はその縦断面図、第２図は
隔板の拡大断面図、第３図は本考案の他の実施例
としての隔板の拡大断面図、第４図は鋳造装置の
フローシートである。 １……鋳枠、５……風箱、６……クランプ、７
……鋳枠本体、１１……砂充填部、１２……空間
部、１３……硅砂、１４……消失性原型、１５…
…押湯用原型、１６……隔板、１７，１９……多
孔板、１８……圧縮ウール板、２０，２２……開
閉弁、２１……高圧エア用配管、２３……減圧用
配管、２４……ユーラスモータ、２５……取鍋、
４０……カツプ、４１……高圧ガス配管。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 筒状の鋳枠と、多孔板で上下から挟持された圧
   縮ウール板で形成され前記鋳枠の内部に消失性原
   型埋設用砂の充填部と空間部とを上下に隔成する
   隔板と、前記空間部に接続された砂流動用の高圧
   エア源および砂充填部減圧用の負圧エア源と、前
   記鋳枠を振動させる振動装置と、前記鋳枠へ溶湯
   を供給する注湯部と、前記鋳枠の上方に昇降可能
   に設置された有蓋無底のカツプと、該カツプに接
   続された押湯部加圧用の高圧ガス源と、を備えた
   ことを特徴とする鋳造装置。