JPH0227209Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〈本考案の産業上の利用分野〉 本考案はプラスチツクで一体成形されたナツト
に関する。

〈従来技術〉 従来より、ボルトにネジ込むナツトは、金属製
のものが一般に用いられている。しかし、金属製
のナツトは重量が大きい。

このため、軽量であるプラスチツク製のナツ
ト、即ち、プラスチツクの筒体の中空孔の内壁に
メネジ溝を備えたナツトが、実用されている。

しかし、このようなプラスチツク製のナツトで
は、型抜きの問題のため、ボルトの挿通するナツ
トの中空孔内壁に、ボルトのオネジ溝に充分に噛
み合う深いメネジ溝を一体成形時に設けること
が、困難である。即ち、プラスチツク成形におい
て、ナツトの筒体の中空孔の軸方向にしか、型抜
きできないため、中空孔内壁のメネジ溝を、中空
孔の軸方向に対して垂直方向に深く形成すること
は不可能で、浅く、しかも斜めに傾斜した溝し
か、形成できない。

従つて、このような中空孔中壁にメネジ溝を設
けたプラスチツク製のナツトでは、ボルトのオネ
ジ溝との充分な噛み合いが得られないため、ボル
トに強い抜去力が作用すると、ナツトのメネジ溝
とボルトのオネジ溝との係合が簡単にはずれ、ナ
ツトがボルトから抜けはずれる欠点があつた。

このため、深いメネジ溝を構成するために、従
来、実開昭59−43708号において、プラスチツク
製のナツトの改良が提案されている。

この実開昭59−43708号によるプラスチツク製
のナツトは、筒体及び中空孔のために軸方向に型
抜きするだけでなく、ナツトの筒体の一部を貫い
てメネジ溝成型のための中型を挿入し、ナツトの
筒体の一部を成す係止片（筒体からコ字状切込溝
で切込かれ、内側に傾斜している。）の内面に、
この中型でメネジ溝成形をした後に、筒体の中空
孔の軸方向に対して垂直な方向にこの中型を型抜
きして作成したものである。

即ち、このナツトは、筒体の一部を貫くこの中
型のために筒体の一部に大きな窓孔があき、この
窓孔に対向する位置の筒体の一部分（係止片）の
内面にメネジ溝が形成されている。この係止片
は、ボルトに弾圧的に接して噛み合い力を増大さ
せるために、内側（窓孔側）へ傾斜している。

従つて、ボルトを筒体の中空孔内へ軸方向へ挿
入すると、係止片はボルトで押し上げられ軸方向
になつて、ボルトのオネジ溝と係止片内面のメネ
ジ溝とが噛み合う。

このナツトでは、メネジ溝の成形のために、中
空孔の軸方向に対して垂直方向に中型を型抜きす
ることによつて、前記した中空孔の軸方向に型抜
きしたものより、深いメネジ溝が形成される。

〈本考案が解決しようとする問題点〉 しかしながら、実開昭59−43708号のプラスチ
ツク製ナツトでは、 (イ) 筒体の窓孔に対向した片側の係止片のメネジ
溝のみで、ボルトに噛み合う（即ち、ボルトの
片側のみで噛み合う）ため、充分に強固な噛み
合いが得られず、強い引抜き力が加わると抜け
としまう。

(ロ) 係止片の内側にメネジ溝を成形するために、
筒体に大きな窓孔があけられてしまう（メネジ
溝の成形範囲を広くすればする程、窓孔も大き
くなる）ので、ただでさえ金属性ナツトに比べ
て強度の劣るプラスチツク製のナツトの全体的
強度が、この筒体の大きな窓孔のために著しく
劣下し、強い外力が加わると、ナツト全体が変
形したり、破損したりして、ボルトからはずれ
てしまう。

(ハ) 筒体及びその中空孔の成型のために、型抜き
を中空孔の軸方向に行なうと共に、メネジ溝の
成型のためにこの軸方向に対して垂直な方向に
も型抜きしなければならないため、金型のコス
トが高くなる。

(ニ) 係止片が窓孔側へ傾斜しているため、ボルト
を中空孔に挿入する際に、ボルト先端が窓孔側
へ傾きやすく、まつすぐ軸方向へ挿入しにく
い。また、ナツトを回転してはずすときにも、
このため、ナツトが傾いてはずしにくい。

などの問題点があつた。

本考案は上記の問題点を改めたプラスチツクで
一体成形されたナツトを提供することを目的とし
ている。

〈前記問題点を解決するための本考案の手段〉 上記目的を達成するために、本考案のプラスチ
ツク製のナツトでは、 軸方向に貫通した中空孔１２を有する筒部１１
と、 前記筒部１１の開口端部から筒部１１の内側へ
突設された複数の薄肉部１６ａと、 前記薄肉部１６ａからさらに、軸方向に対して
ほぼ垂直方向に、且つ軸中心に向つて互いに接近
するように突設された複数の係止片１６と、 前記係止片１６の開口外面側に形成された、ボ
ルトのオネジ溝に噛み合うためのメネジ溝１８と を備えている。

〈作用〉 このように、本考案のプラスチツク製のナツト
は構成されているので、メネジ溝は、筒部１１の
中空孔１２の開口縁部から中空孔軸方向に対して
ほぼ垂直方向に突設された係止片１６の開口外面
に設けるため、メネジ溝の成形においても型抜き
は軸方向のみで済む。そして、この型抜き方向に
メネジ溝を構成するため、メネジ溝が深く成型さ
れる。

ボルトの先端でナツトの複数の係止片１６に強
く押し付けて押し込むと、ボルトの先端によつて
複数の係止片１６が、その薄肉部１６ａにおいて
屈曲して、筒部１１の中空孔１２内に押し曲げら
れ、中空孔１２内においてボルトを複数の係止片
１６が取り囲み、弾性復帰力でボルト外面を強く
押し付けた状態で、ボルトのオネジ溝と複数の係
止片１６のメネジ溝とが強く噛み合う。ナツトを
はずすには、ナツトを回転させる。

〈本考案の実施例〉 第１図は本考案の一実施例を示している。

図中、１０はプラスチツクで一体成形された本
考案の一実施例によるナツトである。

１１は、軸方向に貫通した中空孔１２を有する
円筒状の筒部である。

筒部１１の開口部の一端には、外周方向へ次第
に厚みが減少した傘型の弾性のあるフランジ部１
３が、外方斜め下方（第３，４図において）へ向
つて突設されている。

筒部１１の一端内方には、底縁部１４が設けら
れ、この底縁部１４から、対向した２つの内筒部
１５，１５が、筒部１１と同心に立設されてい
る。この内筒部１５，１５の内径は、第６図ｂに
示すようにボルト３１の外径とほぼ等しく設定さ
れている。内筒部１５，１５の基部内側には、ボ
ルト先端の挿入を容易にするためのテーパー部１
５ａ，１５ａが設けられている。

底縁部１４の前記内筒部１５，１５の間の間隙
部分からは、中空孔１２の軸方向に対してほぼ垂
直方向に、２つの係止片１６，１６が、互いに接
近する方向に突設されている。

この係止片１６の基部には、係止片１６が中空
孔１２の内方へ（第３，４図において上方へ）と
曲げやすいように、薄肉部１６ａが設けられてい
ると共に、底縁部１４に切込み１７，１７が設け
られている。

係止部１６，１６の開口外面側は、ナツトのボ
ルトへの挿入により内筒部１５，１５とほぼ同一
曲率に円弧状に湾曲し、ボルトのオネジ溝に噛み
合うためのメネジ溝１８，１８が設けられてい
る。

係止片１６，１６の先端には、係止片１６，１
６が内方へ押し曲げられたときに筒部１１の内壁
に当接してストツパーの役割を果たすための、耳
部１９，１９が突設されている。

〈上記実施例の動作〉 従つて、第５図に示すように、取付板３０から
突設したボルト３１を、被取付物３２の取付穴３
３から挿通し、被取付物３２の裏側で、ボルト３
１の先端部３１ａにこのナツト１０の係止片１
６，１６を当てて強く押し込むと、薄肉部１６ａ
において屈曲されて、係止片１６，１６が中空孔
１２内へ次第に押し曲げられる。

そのまま、さらにボルト３１を押し込むと、係
止片１６，１６はさらに押し曲げられて、２つの
内筒部１５，１５の間の間隙部分から、係止片１
６，１６の耳部１９，１９が筒部１１側へ進入
し、第６図ｂに示すように、耳部１９，１９が筒
部１１の内壁に当接して第６図ａに示すように係
止片１６，１６は筒部１１の軸方向と一致した方
向に押し曲げられた状態になる。そして、ボルト
３１は第６図ｂに示すように内筒部１５，１５及
び係止片１６，１６で囲まれ、係止片１６，１６
の弾性復帰力で押圧された状態となり、第６図ａ
に示すようにボルト３１のオネジ溝３４に係止片
１６，１６のメネジ溝１８，１８が噛み合つた状
態に保持される。

従つて、第６図ａに示すように、ナツト１０を
そのフランジ部１３が弾性変形するように強く被
取付物３２に押し込むと、取付板３０は被取付物
３２に強く固定される。

このナツト１０では、係止片１６，１６のメネ
ジ溝１８，１８は外面側に成形できるので、プラ
スチツク成型において上下方向の型抜きによつて
成型できる。

従つて、深いメネジ溝に形成できるから、ボル
ト３１のオネジ溝３４と深く強く噛み合わせるこ
とができる。

また、係止片１６，１６が弾性変形しているの
で、その復帰力によつてボルト３１を強く挾持す
るので、強固に取付けられる。また、耳部１９，
１９が筒部１１の内壁に当接しているので、強い
外部振動を受けても抜けることがない。

ナツト１０をボルト３１からはずすには、ナツ
ト１０を捻つて回転させればよい。

第７図は、このナツトの他の使用例を示してい
る。

即ち、トランク内のトリムボードの固定に用い
る例であつて、自動車のリヤコンビランプ３５に
植設されたボルト３６を、自動車のトランクのボ
デイー３７の取付穴３８に挿通して、このトラン
ク４０内（ボデイー３７の内側）に突出させ、金
属製ナツト３９を介して、ボルト３６の先端を、
トリムボード４１の取付穴４２に挿通し、その上
から、本実施例のナツト１０を押し込んでボルト
３６に固定する。

〈本考案の他の実施例〉 第８〜１３図はそれぞれ本考案のプラスチツク
で一体成形されたナツトの他の実施例を示してい
る。

第８図は、ナツト１０をはずすときに捻りやす
いように、第１〜４図の実施例における筒部１１
の外周面を多角形状にした実施例を示している。

第９図は同じく捻りやすいように第１〜４図の
実施例における筒部１１に２つのスリツト２０，
２０を設けた実施例を示している。

第１０図は第１〜４図の実施例における内筒部
１５を省略した実施例を示している。

第１１図の実施例では、フランジ部１３は、第
１〜４図の実施例とは逆向きに設けられ、さら
に、筒部１１にはコ字状のスリツト２１，２１で
囲まれた係止突起２２，２２が設けられている。

従つて、第１２図に示すように、ボルト４３に
このナツト１０を押し込んで係止片１６，１６を
押し曲げて取付け、さらに、取付板４４の穴４５
に筒部１１を、係止突起２２，２２を内側へ弾性
変形させつつ押し込んで、通過させて、係止突起
２２，２２とフランジ部１３との間に、取付板４
４を挾持させる。

第１３図は本考案のさらに他の実例を示すもの
である。

この実施例では、係止片１６，１６のメネジ面
を強化するために、湾曲した（あるいは平らな）
金属片２３，２３が、成形において係止片１６，
１６のメネジ面の内方に埋設されている。

以上、本考案の実施例を説明したが、本考案は
これらの実施例に限定されるものではなく、各部
の構造において種々の変形が可能なことは勿論で
あり、例えば、係止片１６は上記実施例のように
２個に限らず、例えば３個あるいはそれ以上設け
てもよい。

〈本考案の効果〉 本考案のプラスチツク製のナツトでは、 (a) メネジ溝１８がナツト１０の外面側（即ち筒
部１１の開口端部から横方向へ突出した係止片
１６の外面側）にあるので、プラスチツク成型
において、軸方向に型抜きしてメネジ溝を成型
する従来のプラスチツク製ナツトに比べて、は
るかに深い完全なメネジ溝に形成でき、そのた
め、ボルトに強く噛み合うことができ、従来の
プラスチツク製ナツトに比べると、格段に大き
な抜去力に耐えることができる。

(b) このメネジ溝１８の成型のために、実開昭59
−43708号のように筒部に大きな窓孔を設ける
必要がないので、本考案では全体の強度も弱く
ならない。

(c) 実開昭59−43708号のようにメネジ溝を有す
る係止片がボルトの片側のみに噛み合うのでな
く、本考案では複数の係止片１６でボルトを取
り囲んで噛み合うから、はるかに大きな抜去力
に耐えることができる。

(d) 実開昭59−43708号では僅かな傾斜の１つの
係止片を押し上げた状態でボルトと噛み合つて
いるが、本考案では複数の係止片１６をほぼ
90゜押し曲げた状態でボルトと噛み合つている
ため、はるかに強い弾性復帰力で、複数の係止
片１６がボルトに強く押圧されているので、一
層強い噛み合いが得られる。

(e) 実開昭59−43708号ではメネジ溝の成型のた
めに軸方向への型抜きの他にその垂直方向への
型抜きも必要なため、金型コストが高くなる
が、本考案では軸方向への型抜きのみでよいか
ら、金型コストが高くならない。

(f) 実開昭59−43708号では係止片が筒体の一方
側にのみ存在して、しかも傾斜し、他方側には
窓孔が存在するため、ボルトを挿入する際にま
つすぐ入りにくく窓孔側へねじれやすく、ま
た、ナツトをはずす際にもねじれやすいが、本
考案では、複数の係止片１６でボルトを取り囲
むため、このようなねじれが生じにくい。

などの大きな効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１〜４図は本考案の一実施例を示すもので、
第１図は一部破断して描いた斜視図、第２図は上
下を逆にして描いた斜視図、第３図は第１図にお
ける−断面図、第４図は第３図における−
断面図である。第５図はボルトにナツトを押し
込んだ途中の状態を示す断面図、第６図ａはボル
トにナツトを取付けた状態を示す断面図、同図ｂ
はその平面図である。第７図は他の使用状態を示
す断面図である。第８〜１０図はそれぞれ本考案
の他の実施例を示す斜視図である。第１１図は本
考案の他の実施例を示す正面図、第１２図は第１
１図の実施例のナツトの使用状態を示す断面図で
ある。第１３図は本考案の他の実施例を示す断面
図である。 １０……ナツト、１１……筒部、１２……中空
孔、１３……フランジ部、１４……底縁部、１５
……内筒部、１５ａ……テーパー部、１６……係
止片、１６ａ……薄肉部、１７……切込み、１８
……メネジ溝、１９……耳部、２０……スリツ
ト、２１……スリツト、２２……係止突起、２３
……金属片、３０……取付板、３１……ボルト、
３１ａ……先端部、３２……被取付物、３３……
取付欠、３４……オネジ溝。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 軸方向に貫通した中空孔１２を有する筒部１１
   と、 前記筒部１１の開口端部から筒部１１の内側へ
   突設された複数の薄肉部１６ａと、 前記薄肉部１６ａからさらに、軸方向に対して
   ほぼ垂直方向に、且つ軸中心に向つて互いに接近
   するように突設された複数の係止片１６と、 前記係止片１６の開口外面側に形成された、ボ
   ルトのオネジ溝に噛み合うためのメネジ溝１８と
   を備えた、プラスチツクで一体成形されたナツ
   ト。